多発性骨髄腫診療ポケットマニュアル

定価:
4,950円(本体価格4,500円+税)

在庫あり

書誌情報

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サイズ B6
頁 280頁
ISBN 978-4-498-22570-1
発行日 2026年10月09日

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内容


多様化する骨髄腫治療を,ベッドサイドで確認
2006年のボルテゾミブ承認以降,多発性骨髄腫の治療は大きく変わった.現在は再発・難治例に対するCAR-T細胞療法や二重特異性抗体,未治療例に対する4剤併用療法が加わり,治療選択は多様化している.本書は,多くの症例を経験してきた日本赤十字社医療センターのスタッフが,診断・リスク分類から治療効果判定,移植適応・非適応それぞれの治療戦略,再発難治例への対応,免疫細胞療法,支持療法,類縁疾患までを解説.ガイドラインには記載されにくい実臨床のマネジメントを,ベッドサイドで確認できるポケットサイズにまとめた.

序文

監修言

 多発性骨髄腫は,治療により良好な奏効が得られても再発を繰り返す,依然として治癒の難しい血液疾患である.一方,その治療法の進歩は目覚ましく,わが国で2006年にボルテゾミブが承認されて以降,プロテアソーム阻害薬,免疫調節薬,モノクローナル抗体など,作用機序の異なる新規薬剤が相次いで臨床導入されてきた.しかし,複数の併用療法を経ることで多くの薬剤に耐性を獲得し,有効な治療選択肢が限られることも少なくない.特に主要5剤に不応となった患者では,全生存期間中央値が6ヵ月未満との報告もあり,新たな治療法の開発が強く求められてきた.
 近年,骨髄腫治療に大きな変革をもたらしたのが,B-cell maturation antigen(BCMA)などの新たな抗原を標的とする免疫療法である.キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法や二重特異性抗体は,プロテアソーム阻害薬,免疫調節薬,抗CD38モノクローナル抗体の3クラスに不応となった再発・難治性多発性骨髄腫に対しても高い治療効果を示し,治療戦略に大きなブレイクスルーをもたらした.さらに,GPRC5Dを標的とする二重特異性抗体トアルクエタマブも使用可能となり,テクリスタマブとの併用療法を含め,従来治療が困難であった髄外病変に対しても新たな可能性が示されている.
 現在,CAR-T細胞療法や二重特異性抗体をより早期の治療ラインに導入する臨床試験に加え,三重特異性抗体など次世代の免疫療法の開発も進んでいる.また,一定期間の治療後に治療を中止する戦略も検討されており,将来,長期間にわたる無治療寛解,さらには一部の患者における「治癒」が現実の目標となることが期待される.
 このように多発性骨髄腫の診療が大きく変貌するなか,最新の知見を整理し,現在使用可能な治療法を適切に選択しながら,一人ひとりの患者に最善の医療を提供することを目的として,本書『多発性骨髄腫診療ポケットマニュアル』を作成した.本書が日々多発性骨髄腫の診療に携わる皆様の実臨床の一助となり,より良い患者診療につながることを心より願っている.

2026年9月
石田禎夫

序

 2006年10月にボルテゾミブが再発または難治性の多発性骨髄腫に対し承認され,2011年9月に未治療の多発性骨髄腫に適応拡大された.私が日本赤十字社医療センターに赴任したのがその直後の2011年10月であり,以後15年にわたる骨髄腫治療のパラダイムシフトを本書にまとめることができたことに,深い感慨を覚えている.
 実際,この15年間に多くの新規治療が再発・難治例に承認され,未治療例に対しても適応拡大されてきたが,それらの臨床試験に数多く携わることができた経験は,現在の当院における骨髄腫診療にも大きな影響を与えている.
 本書の出版を思い立ったのは2024年の夏であった.再発・難治例に対するCAR-T細胞療法や二重特異性抗体が普及し,未治療例に対する4剤併用療法が登場するこの時期に本書を世に問うことは,私にとって一つの目標でもあった.多様化する多発性骨髄腫の治療選択と実臨床におけるマネジメントについて,医師,看護師,薬剤師をはじめとする医療関係者の皆様に,少しでも分かりやすくお伝えできる内容を目指した.また,外来診療やベッドサイドでの診療に活用できる内容とするために,本書の執筆は2024年から2026年に日本赤十字社医療センターで苦楽をともにしたスタッフにお願いし,編集にはもはや欠くことのできない片腕として活躍してくれている菊池拓先生に加わってもらった.また10年来の師である石田禎夫先生に監修をお願いした.
 Evidence-based medicine(EBM)が一般化し,ガイドラインが重視される昨今,AIに問いかければ模範的な答えが瞬時に返ってくる時代となった.しかし,我々が日々診療する患者さんの大半は,AIの模範解答やガイドラインの基盤となっているランダム化試験の対象に,必ずしも合致しない可能性があることを忘れてはならない.EBMの実践においては,背景因子や自身の経験を踏まえ,目の前の患者さんにとって最適なdecision makingを行う力が問われているといえよう.一方で治療選択肢は増え,患者さんの価値観を重視しながら治療を選択する協働意思決定(shared decision making:SDM)という考え方も広く浸透してきた.治療の恩恵を受けるのも,有害事象を経験するのも,医療費を負担するのも患者さんであり,患者さんと医療者の双方にとって後悔のない治療選択を実現することが,SDMの本質であると考えている.
 本書をお手に取ってくださった皆様にとって,多発性骨髄腫の診療が少しでも身近なものとして感じられたなら本望である.また,本邦の骨髄腫診療の均てん化に,そして一人でも多くの患者さんを機能的治癒(functional cure)に導くことに微力ながら貢献できれば幸いである.

2026年8月
塚田信弘

目次

目 次

1 序論 〈塚田信弘〉
 多発性骨髄腫の治療の変遷,現在の潮流と今後の展望
 多発性骨髄腫の病態
 治療目標
 ガイドラインの考え方とリアルワールドデータの重要性

2 診断 〈菊池 拓〉
 血液・尿検査で必須の項目
 骨髄検査
 画像検査
 病期分類・リスク分類
 Ultra high-risk / functional high-risk
 MGUS,SMM

3 治療効果判定 〈武井智美〉
 IMWGによる評価
 MRD評価
 画像評価

4 未治療移植適応多発性骨髄腫 〈塚田信弘〉
 寛解導入療法
 幹細胞採取
 自家末梢血幹細胞移植併用大量メルファラン療法の実際
 地固め療法
 維持療法

5 未治療移植非適応多発性骨髄腫 〈阿部 有〉
 Frailty評価
 寛解導入療法
 維持療法

6 再発・難治性多発性骨髄腫の治療
1.総論 〈菊池 拓
 再発時治療選択の基本原則
 再発時に確認すべき評価項目
 治療ライン数の考え方
 再発時の予後予測
2.各論 〈佐藤広太,余語 萌,國定浩大
 再発・難治性多発性骨髄腫に対する治療レジメン
 中枢神経系(central nervous system: CNS)
 CNS再発に対する治療
 研究的治療
 緩和的治療
 治療シークエンスの設計〈症例に基づく検討〉

7 多発性骨髄腫に対する免疫細胞療法
1.序論 〈菊池 拓
2.CAR-T細胞療法 〈余語 萌
 イデカブタゲン ビクルユーセル(ide-cel)
 シルタカブタゲン オートルユーセル(cilta-cel)
 その他の新規CAR-T
 CAR-T細胞療法の実情と問題点
 今後の展望
3.二重特異性抗体 〈渡邊美友,杉田祥太郎
 二重特異性T細胞誘導抗体
 MMに対するBsAb
 BCMA/CD3 BsAb: エルラナタマブとテクリスタマブ
 BCMA/CD3 BsAbの投与スケジュール
 BCMA/CD3 BsAbで注意すべき有害事象
 BCMA標的二重特異性抗体の今後の展望
 GPRC5D標的二重特異性抗体の背景と特徴
 有効性
 GPRC5D/CD3BsAbの実臨床における位置づけ
 GPRC5D/CD3BsAbの投与スケジュール
 有害事象とそのマネジメント
 外来での多職種連携
 GPRC5D標的二重特異性抗体の今後の展望
 debulkingの重要性
 BsAb vs CAR-T細胞療法どちらを先行すべきか
 BsAbに期待される役割と今後の展望
4.ADC 〈近藤右京
 はじめに
 作用機序
 有効性
 当院での具体的なスケジュール
 有害事象と管理方法
 実臨床での使いどころ
 おわりに
5.同種移植 〈塚田信弘
 MMに対する同種移植の歴史
 本邦におけるMMに対する同種移植の後方視的解析
 前処置強度とタンデム移植のトレンド
 日本赤十字社医療センターにおけるMMに対する同種移植の 後方視的解析

8 多発性骨髄腫に対する支持療法
1.骨病変 〈佐藤広太,國定浩大
 疫学と評価方法
 疼痛コントロール
 外科的アプローチ・放射線療法
 患者への指導
 骨修飾薬
2.腎障害 〈佐藤広太,國定浩大
 病態と疫学
 腎障害に対する治療
 腎機能障害時の各クラスの薬剤投与量
3.高カルシウム血症 〈佐藤広太,國定浩大
 病態と疫学
 治療
4.感染症予防・治療 〈佐藤広太,國定浩大
 疫学と病態
 ウイルス感染症
 細菌感染症
 真菌感染症
 免疫グロブリン補充
 G-CSF製剤
 ワクチン

9 多発性骨髄腫類縁疾患
1.ALアミロイドーシス 〈余語 萌,塚田信弘
 病態・疫学
 症候
 診断
 予後
 治療
 治療効果判定
 支持療法
 臓器移植
 患者・患者家族とのかかわり方
2.POEMS症候群 〈武井智美
 概要
 疫学
 診断基準
 症状
 治療
3.MGRS 〈小倉瑞生
 概念
 疫学
 病態
 病理分類と臨床的特徴
 診断
 治療
 予後
 本邦における保険診療の課題
 おわりに

索 引

執筆者一覧

  • 日本赤十字社医療センター骨髄腫アミロイドーシスセンター長 石田禎夫 監修
  • 日本赤十字社医療センター血液内科部長 塚田信弘 編著
  • 日本赤十字社医療センター血液内科副部長 菊池拓 編著
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