動画で学ぶ! 婦人科腹腔鏡手術トレーニング 〜手術経験数より大事なトレーニング法を知る〜
内容
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身近にTLHを学ぶ機会が無いとあきらめていませんか?
ボックストレーニング・SNSを使った遠隔トレーニングなど,off the jobで腹腔鏡手術手技をスキルアップするための実際のメソッドを動画付きでわかりやすく伝授!環境整備,解剖など術前の準備や指導のポイントも解説.
レベル別トレーニングでこれから始める人・より上を目指す人・指導医の全員に役立つ新時代の婦人科腹腔鏡手術書!
序文
この本の内容
新潟大学産科婦人科学 磯部真倫
世の中に婦人科領域の腹腔鏡手術の教科書はたくさんあふれている.その中であえてこの教科書を作った理由は何か? この本の特徴を上げると以下の5つとなる.
1.金尾祐之先生が主催した若手医師のために腹腔鏡特訓セミナー「TRYセミナー」で学んだとことを基本とし,言語化した教科書である.
2.執筆者はTRYセミナーの枠を超えた,全国でコミュニティを形成する腹腔鏡手術の習得と教育に情熱を燃やす若手〜中堅医師とした.
3.腹腔鏡手術を「学びたい人」のみならず,「教えたい人」にとってもわかりやすい教科書にした.そのため多数の動画と言語化を重視した.
4.腹腔鏡手術に必要な知識,技術はもちろんのこと,態度面(心構え)を重視した.
5.単なるHow to本ではなく,「なぜ必要なのか?」「なぜ学ぶのか?」といった,各々の背景にある行動規範となる「哲学」を重視した.
人には人生を変える出来事やきっかけというものが存在する.私にとっては,「TRYセミナー」がそれにあたる.TRYセミナーがなかったら,この教科書を書くこともなかったであろう.私自身が腹腔鏡技術を習得するきっかけになったのも,医師としての心構えに強い影響を受けたのも,教育者としての目覚めがあったのもTRYセミナーであった.
TRYセミナーとは,2011年から3年にわたって開催された若手医師のための腹腔鏡特訓セミナーである.エチコンがスポンサーとなり,当時倉敷成人病センターに所属していた金尾祐之先生が中心となって企画された.何が一般のセミナーと違うのか? 何が人生を変えるのであろうか? 詳細は第1章で述べるが,TRYセミナーは世に多くの技術認定医を輩出しただけでなく,セミナー卒業生は各地で指導者となり後進を育て,学会での発信など多くの活動を行っている.また,卒業生の枠を飛び越え,全国各地で同様の意思を持つ医師とコミュニティを形成しお互いを高め合っている.
TRYセミナーで学んだことを教科書にしたいという考えは以前よりあった.そんな中,2019年の7月に新潟で行われた第61回日本婦人科腫瘍学会学術講演会におけるシンポジウム「外科系教育の新時代」でTRYセミナーに関する講演を行った.その際,中外医学社の上岡さんよりTRYセミナーを教科書にしないかという提案をいただいた.TRYセミナーの卒業生で教科書を作る案もあったが,より多様性のある教科書を作るためにTRYセミナーの枠を超えて,腹腔鏡手術の技術向上,後進の育成への情熱を燃やす全国の医師が集い教科書を作ることが最良と考えた.よって執筆者は,TRYセミナーにこだわることなく,全国各地にいる若手医師・中堅医師にお願いした.
この教科書の執筆者にお願いしたことは,「言語化と動画」である.言語化することや動画を多用することで,腹腔鏡を学びたい医師のみならず,教える側の教育者にとっても有用な教科書となる.そのためにページ制限はほとんどなくすようにした.
また,知識や技術はもちろんのこと,態度面(心構え)にも力を入れた.それは,TRYセミナーとは知識,技術のみならず態度面を鍛えるセミナーであったからである.
さらに,日々学習や教育を行うことで重要と考えたことは,学習,教育には各々の「哲学」が存在するということである.教育とは単なる方法論を語るものではなく,各々の人生観や社会的背景,哲学が大きく影響を与える.「なぜ必要なのか?」「なぜ学ぶのか?」といった,各々が自分の行動規範となる哲学に従って前に進んでいるのだ.こういった点も教科書に含めることとした.How to本では内容が薄っぺらで面白みがないのである.
この本を通して,読者が腹腔鏡手術にまつわる様々な能力を身に付けた時,先生方の日々の手術が大きく変わり,そして患者が低侵襲手術の恩恵を受けることを切に望む.また同様に,教えることに悩む教育者がこの本を通して日々の手術教育に変化が生まれ,学習者の成長を通して患者が低侵襲手術の恩恵を受けることを切に望む.
目次
目次
Chapter 1 TRYセミナーとは?[磯部真倫]
はじめに
コンセプト
募集要項,選抜方法
実際のセミナー
TRYセミナーのその後
Chapter 2 腹腔鏡の必要性[古俣 大]
良性疾患への腹腔鏡手術
腹腔鏡手術はサブスペシャリティ?
腹腔鏡手術習得への難関
腹腔鏡手術は「すっぱいブドウ」!?
腹腔鏡手術習得への「扉」
扉は必ず開かれる
自分自身で扉に鍵を掛ける!?
未来の立ち位置は?
Chapter 3 環境整備[堀澤 信]
ドライボックストレーニングに必要な機材
Column J-ボックス,おかげさまで売れています!
出会いが変えた腹腔鏡人生
Chapter 4 ドライボックストレーニングの基本
1ドライボックストレーニングの必要性[竹中 慎]
ドライボックスでのトレーニングが
上手いと手術は上手いのか
「 」のトレーニングの重要性
高額なシミュレーターを使う前に
シミュレーション教育のメリット
ドライボックストレーニングで身に付くもの
ドライボックストレーニングを続けるための工夫
Column 学会賞(動画部門)の受賞を目指そう!
2 結紮・外科結紮[砂田真澄]
「Cループ法」を発展させた「Pループ法」
鉗子操作の基本要素
Pループ法を用いた結紮方法
オーバーラップとアンダーラップ,どちらを選択するか
糸を牽引する方向について
第二結紮に関して
第二結紮の方法
第二結紮で緩みのない結紮を行うために
外科結紮
3 持針・ダンシングニードル[羽田智則]
基本5ステップ
応用編
片手での持針
Column 鉗子先端の回転
トロッカー配置の呼称
4 スリップノット[羽田智則]
スリップノットとは
スリップノットの理論
婦人科手術でのスリップノット
スリップノットでの注意点
ワンハンド・スリップノット
ワンハンド・スリップノットのコツ
内無双
内無双のコツ
連続スリップノット
Column スリップノットという名称
5 パラレル法[堀澤 信]
パラレル法による腹腔鏡手術
パラレル法での結紮法
パラレル法での持針法
Chapter 5 実際のトレーニングメソッド
1 初級:十字トレーニング[今井 賢]
十字トレーニングの目的と意義
十字トレーニングの実際
Column 技術の向上で変わるもの・変わらないもの
アイデア工場
2 初級:3回結紮のタイムトライアル[竹中 慎]
3回タイムトライアルによって得られるもの
高い頻度でタイムトライアルを行い自己評価しよう
週1回,同僚で集まってタイムトライアルを行おう
効率のよいトレーニングをするためにコツを知ろう
持針のコツ
ループ作成のコツ
糸の巻き付けのコツ
結紮のコツ
切断のコツ
タイムトライアルの後は反省的観察を行おう
3 中級:マットレス縫合[平石 光 小野健太郎]
練習準備
練習方法
手技のポイント
Column ドライボックスと旅した半年[小野健太郎]
3Dパッドの呼び方[平石 光]
4 中級:腟断端縫合モデル[近澤研郎 伊東孝晃 今井 賢]
腟断端の縫合の難しい点
Column 手術指導の難しさ,教育の難しさ[近澤研郎]
5 中級:筋腫核出術縫合モデル[黒田 浩]
総論
各論
Column TLHにおける基靭帯血管スリップノット縫合トレーニング
直接視下でのドライボックストレーニングと深い運針操作
LM縫合トレーニングモデル考案とドライボックストレーニング
6 中級〜上級:囊腫摘出モデル[出浦伊万里]
OVCモデルの作成
セッティング
Cystectomyの実際
7 上級:さらに上を目指すために[棚瀬康仁]
何のためにトレーニングするか?どこまでやるか?
何をするのがよいか?
どれくらいするのがよいか?
よもやま話
8 ラパロハイボリュームセンターでの研修〜一人前の婦人科腹腔鏡手術医を目指して〜[高野みずき]
模倣する題材の質と手技の理解
実践に即した練習
経験手術数
倉敷成人病センターでの手術トレーニングの実際
倉敷セミナー,学会発表
Chapter 6 TLHにおける解剖の理解と尿管損傷防止のために必要な手術手技[近澤研郎]
解剖理解の必要性
子宮周辺の尿管の局所解剖
通常行われる尿管へのアプローチ法,それぞれのメリット・デメリット
当科での尿管同定法(前方側方アプローチ)
その他,手術のキーポイント
Column 部分執刀から先発完投執刀へつなげる手術教育
Chapter 7 手術動画を見る〜手術動画を見て,言語化することの重要性〜[松浦基樹]
言語化の実際
言語化のステップ
なぜ言語化が重要なのか
Column 「言語化」での学習の重要性
Chapter 8 エネルギーデバイスを安全に使用する[玉手雅人]
Step 1:電気メスの原理を知ろう
Step 2:電気メスの臨床効果を知ろう
Step 3:バイポーラー・超音波装置を学ぼう
Step 4:有害事象のパターンを知ろう
Step 5:ESU/Deviceの選択にTRYしよう
Step 6:有害事象の回避をGETSしよう
Column こんな場面どうしますか? 緊急手術への対応と理論
FUSEとの出会いによって電気メスの自由と制約に気が付いた
Chapter 9 手術の心構え〜手術にあたり行うべきこと(術者になるためには)〜[林 茂徳]
腹腔鏡手術の術者になるためには
ある程度行うと必ず訪れること─合併症
術者として筆者が意識していること
Column 上手な手術とは?
助手力とは
Chapter 10 e-learning
1 学びにおけるe-learningの重要性[磯部真倫]
e-learningを使った学習,教育の実例
2 Facebookを使ったトレーニング[磯部真倫 土田奈々枝]
Facebookを用いたトレーニングの
実例
Column Facebookを用いた遠隔指導を受けての振り返り[土田奈々枝]
3 LINEを使った遠隔トレーニング[堀澤 信]
指導方法の実際
遠隔指導の成果
遠隔指導の課題
Column 腹腔鏡修練はどこにいても可能だった〜遠隔指導と習慣化の力〜[武内詩織]
4 OSVD(Online Surgical Video Discussion)[山本さやか 堀澤 信]
OSVD誕生の背景
OSVDのコンセプト
OSVDの実際
倫理的問題への配慮
OSVDの展望
Column クラウドファンディング体験記[山本さやか]
索引