Dr.TT流 アクセプトされるケースレポート論文 9つの頻出パターンと攻略法
出版社からのコメント
お寄せいただきました書評をご紹介
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滋賀医科大学総合内科学講座
杉本俊郎先生より
医師にとって、ケースレポートを書くことは、「習慣」であり、「倫理」であり、「信頼」を得ることである。
本書は、「勤務医の働き方改革」時代に、睡眠時間を削ってまで、金にもならない症例報告を執筆する意味があるのかということに解答を与える一冊であると私は思う。
近年、論文がオンラインで掲載されるようになり、紙媒体の特徴である紙面の制限から解き放たれたことから、最も臨床医にとって身近であるケースレポートが再注目されているのが現状である。よって、ケースレポートの書き方の方略を解説した書籍の出版も増えている。
谷口先生がご自分の経験に基づき執筆されたと思われる本書は、従来の類書と大きく異なる特徴が2点あると私は感じた。1つは、タイトルにある「ケースレポートのパターンを9つに分類し、平易な図と伴に解説していること」、そして、2つ目は、ケースレポートが科学研究であることから当然のことであるのだが、しばしばないがしろにされている「確定診断の根拠を明確に提示する」が鉄則として記載されていることである。本書が示す方略に従えば必ず論文は受理されると感じた(私は、英文のケースレポートを50編程度執筆した経験があり、ある程度信憑性はあると思う)。
「勤務医の働き方改革」時代の卒後5年から15年ぐらいの若手の先生をみていると、資本主義社会の「搾取」構造から逃れられずにいて、非常に気の毒に思う。つまり、マルクス流で言えば、労働が商品化・貨幣化していることから、私も含め、「搾取」から逃れられないのである。この資本主義の宿痾から逃れるためには新たな価値を生み出すことだと私は思う。医師は医学者でもあるので、研究することで新たなる価値を創造することが可能である。経験した症例をケースレポートの執筆を介して研究することは、「搾取」から逃れる方略になるのである。
ドイツの医師フーフェーラント(1762-1836)先生は、医師として日々実践すべき12の戒律に、「毎日夜間に、昼間に診た患者について考察し、詳細に記録すべき」というものがある(この12の戒律は、緒方洪庵が、「扶氏医戒之略」で我国に紹介している)。日々患者の診療を行い、それを記録に残すことは医師の習慣なのである。習慣は、古代ラテン語の「ethos」であり、現在は、「ethics」倫理である。
そして、アリストテレスの弁論術の信頼、「ethos」であることから、ケースレポートを書くことは、倫理的な生き方、つまり、善き生あり、医師としての信頼を得る、プロフェッショナリズムであるのだ。
本書の読者の先生方が、日々経験した症例を研究し、ケースレポートを執筆することで、善き医師として日々生きられることを切望する。
最後に還暦を過ぎた老医師から、本書を手に取り、これから、ケースレポートを執筆しようと考えている若い先生方に、元サッカーイタリア代表のロベルト・バッジョ氏の言葉を送りたい。
「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」
もう臨床医は、ケースレポートを執筆するしかないのである。
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内容
『無敵の腎臓内科』著者・Dr.TTによる,“アクセプトされる”ケースレポート論文の書き方解説本が登場!
『無敵の腎臓内科』著者・Dr.TTによる,“アクセプトされる”ケースレポート論文の書き方解説本が登場!
まだケースレポート論文を書いたことがない人から,何度か挑戦してみては挫折してしまった人にも使えるように,モチベーションの保ち方から,症例選びのコツ,投稿先の決め方,実際に書き上げる段階まで,この1冊に完全収録.著者の研究と経験から導き出された,アクセプトされるために必要な再現性の高い理論やノウハウを,優しく平易な言葉遣いと豊富な図表を用いて分かりやすく解説します.
序文
まえがき
2020年10月10日―著者にとって忘れられない日だ.
最初にケースレポートがPubMedへ掲載された日であり,同時に祖父の命日でもあった.英語論文が掲載された喜びと,祖父を亡くした悲しみが入り交じり,私の心境は複雑な矛盾を抱えていた.
斎場で亡骸に対面して数時間後,祖父の姿は灰となり空に帰っていった.内科医として働いてきたなかで,人の死に慣れていると思っていたが,それは幻想だった.
「形あるものが,こんなにも儚いのか」
人の死を肌で感じたのは,初めてであった.
祖父の死から数日経ったが,まるで何事もなかったかのように,普段と変わらない日常が続いていた.海外誌に掲載された当初の喜びは,いつしか焦りに代わっていた.
「年1本ペースで英語論文を出し続けても,医者人生30年間で高々30本.競争が熾烈なトップジャーナルに掲載されるためには,30回挑戦しても厳しいのではないか」
「何も残せないまま,自分も同じように灰になるのではないか」
「このままでは駄目だ.もっと多く打席に立って,何か爪痕を残さなければ」
祖父の死後,己の存在の証を形に残そうと模索し続けた.
「ケースレポートになりそうな症例はないだろうか?」
「どうすれば,もっとケースレポートが上手に書けるだろうか?」
最初の頃はもがき苦しんでいた.ある時は,5回連続リジェクトされたこともあった.トップジャーナル掲載は夢のまた夢かと思っていたが,年2本程度のペースで地道に論文を書き続けた.試行錯誤を重ねて4年,初めて腎臓分野のトップジャーナルに掲載された.
振り返ってみると,著者がケースレポート作成に邁進できたのは,祖父の死がきっかけであった.著者が灰になっても論文は残る.死を意識することで,大切なものを形に残す意味を実感した.
成功もあれば,何度もリジェクトされる苦い経験もあった.それでも筆を止めずに挑み続けたのは,誰かの助けになるかもしれないという信念があったからだ.そして,その積み重ねを,1冊の本にしたためた.
本書は,ケースレポート作成に数年間心血を注いだ著者の想いが詰まっている.ケースレポート作成で悩みを抱える方にとって,本書が“一筋の光”になれば幸いである.
2025年5月31日
谷口智基
目次
目 次
総論 ケースレポートの基本的な考え方
第0章 ケースレポートをまだ書いたことがない方へ
0-1 “書いてみたい”を“書ける”にする
“今でも忘れられない症例”をケースレポートにしよう!
本書の目標
著者のこれまでの実績
0-2 ケースレポートを書く理由=自己満足
要は“意識高い系”じゃないとダメってこと?
なぜお金にならないのにケースレポートを書くの?
勉強になる+社会貢献になる→自己満足度をさらに上げる
好きこそものの上手なれ:テストの成績のよさは関係ない!
“学会発表止まり”はもったいない! 論文化せよ!
0-3 思わず読みたくなるケースレポートとは?
臨床家(読者)vs査読者:求めるものの違い
第1章 ケースレポートを書き始めて間もない方へ
1-1 Dr.TT流! ケースレポート 鉄の掟3か条/御法度3か条
ケースレポート作成における“鉄の掟”と“御法度”
editorにはカバーレター,reviewerには本文でアピール
1-2 ケースレポートの種類/投稿先を決めよう 話はそこからだ
Full length論文vs Image論文
(1)“新規性の有無”で論文の種類を決める
(2)“掲載費用”で論文の種類を決める
自分の専門分野において,どのような投稿先があるのか調べる方法は?
1-3 ジャーナルの投稿規定を効率よく読む裏ワザ2選
裏ワザその1:ショートカットキー“Ctrl+F”を駆使せよ!
裏ワザその2:AIに投稿規定のPDFファイルを読み込ませよ!
1-4 症例選びのコツ=上司チャレンジ
適切な症例選び=上司チャレンジ
上司チャレンジに失敗=伸びしろ
第2章 何回かケースレポートを書いたことがある方へ
2-1 “お蔵入り”回避のコツ2選
お蔵入り回避のコツ その1:英語で書く
お蔵入り回避のコツ その2:リアルタイムで書き進める
2-2 症例提示は型通りに書こう
テンプレートを用いて実際に書いてみよう
2-3 読みやすいケースレポートをつくろう
ケースレポートは読みやすいほどよい!
読みやすくするコツ
2-4 ケースレポート 書く順番のおすすめは?
症例提示を最初に書く理由
考察を日本語で考える理由
導入を症例提示・考察の後に書く理由
2-5 “稀なことが起きました!”これって論文になりますか?
“稀です!すごいでしょ!”を主張するのは御法度
“稀な事象”を報告する意義
第3章 ケースレポートを書き慣れてきた方へ
3-1 この時代だからこそ使いこなせ!AIを用いた時短作業
ケースレポート作成:AIによる時短術
Consensus
Connected paper
3-2 医学生が理解できるレベルまで病態を“因数分解”しよう
病態を“因数分解”するとは?
医学生が理解できるレベルまで“病態を因数分解”する重要性
3-3 カバーレターを侮るなかれ!
カバーレターはeditorに売り込む唯一のチャンス
editor kickを避けるカバーレターの書き方
3-4 “代替マーカー”を設定しよう
代替マーカーの設定:どういう考え方?
溢水に伴う腎うっ血:代替マーカーの設定
応用編 ケースレポートの頻出パターン
頻出パターン1 (標準治療ではない)治療Aが奏効した○○の1例
その1:できるだけ確定診断をつけること!
その2:治療Aを選択した理由を明確にすること!
実際のお手本論文
頻出パターン2 薬剤Bを投与後に○○(有害事象)をきたした1例
その1:他の原因を確実に除外する!
その2:薬剤Bが体内に吸収されたことを客観的に示唆する所見を示す!
その3:薬剤Bの“臓器特異的な毒性”を直接的に示す所見を示す!
実際のお手本論文
頻出パターン3-1 ○○に関連して発症した疾患Cの1例
その1:原疾患○○への治療に伴い,併発症Cも改善したことを示す!
その2:共通の“代替マーカー”を設定する!
実際のお手本論文
頻出パターン3-2 偶発的に疾患Cを併発した○○の1例
実際のお手本論文
頻出パターン3-3 (典型的な併発症とは真逆の)疾患Cを併発した○○の1例
実際のお手本論文
頻出パターン4 術後に疾患Dという稀な合併症を呈した○○の1例
その1:手術との因果関係を考察する!
その2:“稀である”ことを前面に押し出さない!
実際のお手本論文
頻出パターン5-1 疾患Dとの鑑別診断に苦慮した○○の1例
その1:一見すると○○にみえてしまう臨床経過
その2:○○以外の疾患を疑うポイント
その3:誤診することで生じる不利益
実際のお手本論文
頻出パターン5-2 非典型的な画像(血液)所見を呈した○○の1例
その1:様々な検査所見を組み合わせて議論する!
その2:診断を惑わせる患者背景
実際のお手本論文
頻出パターン6 重症例の疾患Eを救命し得た1例
実際のお手本論文
頻出パターン7 「言われてみれば確かに」診断(治療)のピットフォール
実際のお手本論文 その1
実際のお手本論文 その2
頻出パターン8 従来と異なる薬剤の投与経路
その1:経口投与・経静脈的投与が継続困難であった理由を明示する!
その2:有効であったことを客観的に示す!
その3:安全性を示す!
その4:“使いどころ”を明示する!
実際のお手本論文
頻出パターン9 新たな疾患概念
実際のお手本論文
実践編 ケースレポートの実際の書き方例
Full length論文の作り方
ケースレポート作成に取りかかる前に
初診の腎機能障害を診たら何をする?
両側の腎杯拡張を診た際に何を考える?
論文を書き始める前に:本症例のどこにフォーカスするか?
症例の経過:謎解きのヒントを探せ!
実際に論文を書いてみよう
1) 症例提示
2) 考察(日本語で書く)
3) 導入
4) 2—3)の内容を英文で書く
5) 要約
Image論文の作り方
ケースレポート作成に取りかかる前に
本症例のどこにフォーカスするか?
症例の経過:謎解きのヒントを探せ!
実際に論文を書いてみよう
実際に書いていく前に……
実際に書いていこう
索引