小児心電図のみかた,考えかた
内容
小児科診療に心電図をもっと活用してみませんか? 豊富な実症例を用いた解説で,様々な年齢の心電図の読みかたが身につく.基本的な心電図のみかたから先天性心疾患,不整脈,後天性心疾患の典型例や,運動負荷や長時間記録まで,診断に必要な知識がすっきりわかる.心電図を日常診療でますます活用できるようになる小児科医必携書.
序文
序 文
心電図は,小児循環器疾患の専門診療はもちろん,小児科の一般診療でもとても有用な検査です.血液検査や画像検査に比べとっつきにくい面はあるかもしれませんが,決して難しくはありません.痛みも被曝もなく,簡便に,豊富な情報を得ることができる検査です.
本書は,その「小児の心電図」をやさしく学び,判読の苦手意識を払拭し,日常臨床に活用していただくことを目的に企画されました.たくさんの実際の心電図を,形式を整えて見やすく掲載し,読影のポイントを明示しました.
小児科診療における心電図の主な意義は,
1)先天性心疾患の術前・術後の状態の把握
2)不整脈の確定診断
3)心筋疾患,冠動脈疾患,肺高血圧など後天性心疾患の診療
4)学校心臓検診の判定・精査
5)適切な運動管理の決定
などと思います.小児循環器診療でメインとなる先天性心疾患では,心エコー,CT,MRI,心血管造影など画像検査が診断の主役で,確かに心電図は脇役ですが,ときに主役をしのぐ活躍をすることもあるのです.
本書の構成は,基本的な心電図のみかたから始まり,先天性心疾患,不整脈,後天性心疾患の典型例を示し,運動負荷や長時間記録についても述べています.各疾患の説明は,治療に関する記述を最小限にとどめ,心電図を中心に診断に至る考えかたを詳しく解説しました.
成人に比べ小児では,心電図が軽視されているように思われます.啼泣や体動で記録しにくいこともあるでしょうが,工夫すれば大丈夫です.虚血性心疾患が少ないことは間違いありませんが,小児でも重症不整脈や心筋疾患など致死的な疾患の診断に心電図は欠かせません.成長による変化を踏まえ,適切に判読できる小児科医が少ないためもあるかもしれませんが,これは由々しき問題です.
本書の執筆者は,東京都立小児総合医療センター循環器科・集中治療科と慶應義塾大学医学部小児科のスタッフとOB・OGです.数年前までは心電図を読めなかった若手医師が,専門医の指導のもとに執筆したからこそ,わかりやすい内容になった面もあると思います.また,チーム医療を重視し,看護師と検査技師の方にも加わっていただき,さまざまな技術・工夫も紹介されています.
若手からベテランまで,小児科医だけでなく小児医療に携わるすべての医療関係者にとって,必ずや役立つ書籍になったと確信しています.ぜひお手元に置いて,今日からの診療に役立てていただけければ幸いです.
2022年1月吉日
三浦 大
東京都立小児総合医療センター循環器科
山岸敬幸
慶應義塾大学医学部小児科
目次
目 次
Part I 小児心電図の基本
1 小児心電図の成り立ちと特徴 〈内田敬子〉
2 P波と心拍数のみかた 〈山田浩之〉
3 QRS波のみかた 〈岩下憲行〉
4 ST—T部分のみかた 〈三浦 大〉
【コラム】心膜炎 〈三浦 大〉
5 小児心電図の検査の工夫(検査技師の立場から) 〈吉田 圭〉
【コラム】電子カルテ時代の心電図 〈三浦 大〉
6 刺激伝導系の発生と心電図異常・不整脈 〈山岸敬幸〉
Part II 先天性心疾患
1 心房中隔欠損 〈小山裕太郎〉
2 動脈管開存 〈山形知慧〉
3 心室中隔欠損 〈小柳喬幸〉
4 房室中隔欠損 〈佐藤麻朝〉
5 Fallot四徴,両大血管右室起始,総動脈幹 〈前田 潤〉
6 完全大血管転位 〈大木寛生〉
7 修正大血管転位 〈安原 潤〉
8 三尖弁閉鎖 〈三浦 大〉
9 純型肺動脈閉鎖 〈小柳喬幸〉
10 総肺静脈還流異常 〈森川哲行〉
11 大動脈縮窄,大動脈弓離断 〈山形知慧〉
12 単心室,内臓錯位 〈永峯宏樹〉
13 左心低形成症候群 〈大木寛生〉
14 冠動脈起始異常(Bland-White-Garland症候群) 〈柴田映道〉
15 肺動脈弁狭窄 〈仲澤麻紀〉
16 僧帽弁狭窄・閉鎖不全 〈荒巻 恵〉
17 大動脈弁狭窄・閉鎖不全 〈多喜 萌〉
18 Ebstein病 〈福島直哉〉
19 Fontan術後 〈福島直哉〉
Part III 健常児にもみられる心電図異常
1 洞不整脈,洞頻拍,洞徐拍 〈矢内 俊〉
2 接合部調律 〈山田浩之〉
3 期外収縮 〈森川哲行〉
4 促進心室固有調律 〈土橋隆俊〉
5 軽度の房室ブロック,房室解離 〈水野風音〉
6 右胸心,漏斗胸 〈山本一希〉
Part IV 頻脈性不整脈
1 発作性上室性頻拍,WPW症候群 〈高橋 努〉
2 異所性心房頻拍 〈小島拓朗〉
3 接合部異所性頻拍 〈小島拓朗〉
4 心房粗動・細動 〈清水寛之 上田秀明〉
5 特発性心室頻拍 〈土橋隆俊〉
6 QT延長症候群 〈中村隆広〉
【コラム】電解質異常 〈中村隆広〉
7 カテコラミン誘発多形性心室頻拍 〈住友直文〉
8 Brugada症候群 〈三浦 大〉
Part V 徐脈性不整脈・伝導障害
1 洞不全症候群 〈矢内 俊〉
2 重度の房室ブロック,進行性心臓伝導障害 〈住友直文〉
3 脚ブロック 〈石崎怜奈〉
4 ペースメーカ心電図 〈葭葉茂樹 連 翔太〉
Part VI その他の疾患
1 川崎病 〈宮田功一〉
2 急性心筋炎 〈小谷匡史〉
3 心筋症 〈古道一樹〉
4 肺高血圧 〈福島裕之〉
Part VII その他の検査
1 モニター心電図(看護師の立場から) 〈三浦桂子〉
2 運動負荷心電図 〈徳村光昭〉
3 長時間心電図 〈吉田 祐〉
付録1:学校心臓検診 2次検診対象者抽出のガイドライン―1次検診の心電図所見から―(2019年改訂)
付録2:器質的心疾患を認めない不整脈の学校生活管理指導ガイドライン(2013年改訂)
付録3:Vaughan Williams 分類による抗不整脈薬の分類
付録4:Sicilian Gambit の提唱する薬剤分類の枠組
本書の参考文献
索引