子どもの心を診る医師のための発達検査・心理検査入門
内容
神経発達障害の診療にあたっては,客観的なアセスメントツールとしての発達検査・心理検査に対する知識が必要になる.しかし,これらは臨床心理学の専門家が扱うものとされ,医師にとってその理解は必ずしも容易ではない.小児科医,総合診療医として発達障害児などの診療に長年携わってきた著者が贈る,医師のための,簡にして要を得た入門書.
序文
序
私は研修医時代から,知的障害のある児や重症心身障害児,あるいは,さまざまな障害のある子どもたちの診療を経験し,小児の発達に強い関心を抱くようになった.
そして,精神・運動発達,あるいは,行動発達について学び,発達心理学については入門書「ポケット図解 発達心理学がよ〜くわかる本」(秀和システム)を2006年に刊行するに至った.その後も小児科臨床において,さまざまな神経発達障害(神経発達症)や神経疾患などがある子どもたちの診療を通じていろいろなことを学ぶ機会を得た.本書は,その過程で私が知り得たことのいくつかをまとめたものである.したがって,学習の機会ごとに熟読を重ねた既存の成書による内容が多く,その著者各位に敬意と感謝を表したい.
神経発達障害があるかどうか,あるとすれば,それがどんな問題で,どんな援助を必要とするかを客観的にはかるアセスメントツールが必要になる.これまでにさまざまなツールが開発され,改良が重ねられてきたし,現在も新しいツールの開発や改良が世界中で行われている.しかしながら,これらのツールは大学院で臨床心理学を学んだ者が行うべきだとされる難解ものが多く,一般的な臨床医,小児科医,小児を診療する総合診療医には実施が難しいものが少なくない.しかも,解説書は一般に難解過ぎる傾向にある.
本書では,私が診療を行う際に利用しているアセスメントツールとなる諸検査について知っておくべきだと考える事柄をできるだけ簡潔な形でまとめてみた.
新版K式発達検査やWISC-IVなどは,児童相談所や児童精神科などでは広く行われているものの,一般的な小児科医には難解な検査法である.しかし,他の施設で行われたこれらの検査結果のレポートを地域医療連携において入手し,発達相談や心理相談に活用することは有意義であり,そのための基礎知識も記述するように努めた.
また,実際の臨床においてどのような考え方で心理検査を組み合わせるか,という点にも解説を加えた.
日本小児科学会による小児科専門医の教育目標として,心理学的分野にも目を向けることができる広い視野をもった全人的・包括的なプライマリケアの実現に向けた教育が掲げられている.しかしながら,小児に対する心理検査に関する医師向けの情報は,現状では残念ながら,さほど多くない.本書により心理検査の概要を把握したうえで専門書に当たれば,効率よく学習を進めることができると考えている.
それぞれの検査法には,考案者による著作権があり,詳しい実施マニュアルが刊行されている.本書では,それを踏まえたうえで,各検査のマニュアルや解説書を理解するための道標になるようにと配慮した.その結果,各検査方法の総合ガイドブックの形態をとることになったことをご理解賜りたい.
なお,本書の執筆にあたり,参考とした文献や読者にお勧めしたい文献を巻末に一括してまとめて掲示させていただいた.
2017年2月
東大阪生協病院小児科・内科
橋本 浩
目次
目 次
Chapter 1 概説
1 臨床心理検査・神経心理検査とは何か
2 臨床心理検査・神経心理検査を活用するための基本作法
3 検査の実施に際しての注意事項
Chapter 2 各検査の概要
1 発達および知能検査の概要
(1)津守式乳幼児発達診断法
(2)遠城寺式乳幼児分析的発達検査法
(3)DAMグッドイナフ人物画知能検査
(4)新版K式発達検査
(5)田中ビネー知能検査V
(6)ベイリー発達検査(日本版ベイリーIII乳幼児発達検査)
(7)WISC-IV(児童版ウェクスラー式知能検査第4版)
(8)日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査
(9)フロスティッグ視知覚発達検査(視覚認知発達テスト)
(10)コース立体組み合わせテスト
(11)その他
2 人格検査の概要
(1)バウムテスト
(2)描画テスト(HTPP法)
(3)統合型描画テスト(S-HTP法)
(4)ロールシャッハ法
(5)P-Fスタディ(PFスタディ)
(6)精研式文章完成テスト(SCT)
(7)その他の検査
3 認知機能検査とそのほかの心理検査
(1)音読検査
(2)標準読み書きスクリーニング検査(STRAW-R)
(3)日本版KABC-II
(4)日本語版M-CHAT(エムチャット)
(5)日本語版SDQ(子どもの強さと困難さアンケート)
(6)小児自閉症評定尺度(CARS)
(7)日本語版KINDL®
(8)DN-CAS認知評価システム
(9)ベントン視覚記銘検査
(10)TK式幼児用診断的親子関係テスト
(11)TK式診断的新親子関係テスト
(12)AQ日本語版・児童版(Autism-Spectrum Quotient Children’s Version)
(13)CAS不安測定検査
(14)ベンダー・ゲシュタルト検査(ベンダー視覚・運動ゲシュタルト検査)
(15)PARS-TR(パース-ティーアール)
(16)その他の検査
Reference 非眼科医にもできる発達を考慮した視力異常スクリーニング法
Chapter 3 主要な検査の実際と活用のための基礎知識
1 発達および知能検査
(1)遠城寺式乳幼児分析的発達検査法
(2)DAMグッドイナフ人物画知能検査
(3)新版K式発達検査
(4)田中ビネー知能検査V
(5)WISC-IV(児童版ウェクスラー式知能検査第4版)
(6)フロスティッグ視知覚発達検査(視覚認知発達テスト)
2 人格検査
(1)バウムテスト
(2)ロールシャッハ法
(3)P-Fスタディ(PFスタディ)
3 認知機能検査とそのほかの心理検査
(1)音読検査
(2)KABC-II
(3)日本語版M-CHAT
(4)日本語版SDQ(子どもの強さと困難さアンケート)
(5)小児自閉症評定尺度(CARS)
(6)DN-CAS認知評価システム
(7)ベントン視覚記銘検査
(8)TK式幼児用診断的親子関係テストとTK式診断的新親子関係テスト
(9)AQ日本語版・児童版(Autism-Spectrum Quotient Children’s Version)
(10)CAS不安測定検査
(11)ベンダー・ゲシュタルト検査
(BG検査:ベンダー視覚・運動ゲシュタルト検査)
Chapter 4 心理検査活用に際しての考え方
1 はじめに
2 医師のための心理検査の基本原則
3 臨床心理検査バッテリーを考えるための基本
4 検査結果のフィードバックの考え方とその方法
5 子ども支援ツールとしての心理検査
6 心理検査を行う心理職のために
【参考文献】
【索引】