今日から実践! 心不全地域連携ハンドブック
- 定価:
- 5,500円(本体価格5,000円+税)
在庫あり
書誌情報
| サイズ | A5 |
|---|---|
| 頁 | 268頁 |
| ISBN | 978-4-498-13692-2 |
| 発行日 | 2026年10月16日 |
内容
心不全マネジメントの鍵は地域連携にあり!
心不全診療は急性期病院だけで完結するものではなく,退院後の生活を支える医療・介護・福祉が一体となった地域連携が不可欠である.本書では,急性期から在宅まで,医師・看護師・薬剤師・リハビリテーション職・介護職等の多職種がどのように連携し,心不全の増悪・再入院を防ぎ,患者の生活を守るかを実践的に解説する.地域の医療・介護スタッフが主体となって心不全マネジメントを実践するための具体的な方法をまとめ,心不全パンデミックを地域で食い止めるための1冊である。
序文
はじめに
「心不全パンデミック」―この言葉が医療現場で叫ばれるようになって久しくなりました.超高齢社会を迎えた我が国において心不全患者数は爆発的に増加しており,入退院を繰り返しながら徐々に悪化していくこの疾患は,患者さんご本人とご家族の生活を脅かすだけでなく,地域の医療・介護提供体制にも大きな負荷をかけています.
心不全は急性期病院の中だけで完結できる疾患ではありません.病院から生活の場へとシームレスにつなぎ,増悪を防ぐ「地域連携」が不可欠であり,昨今の診療報酬改定で「心不全再入院予防継続管理料」が新設されたことも,地域一丸となり再入院を防ぐことの重要性を国が強く認識した結果にほかなりません.
私自身,長年にわたり鳥取大学において,重症心不全診療の最前線に立ってきました.補助人工心臓(LVAD)や心臓移植といった高度な集学的治療を要する患者さんのマネジメントに加え,多職種チームによる介入や地域連携の有用性を広く発信してきました.また,日本循環器学会の「心不全ガイドライン」の作成や,「心不全療養指導士」制度にも従事し,全国的な診療の質向上に努めてまいりました.
しかし,この声が届くのは主に病院であり,地域の医療介護スタッフにはまだ十分届いていません.また,急性期病院は目の前の高度な急性期治療をこなすだけで手一杯で,退院後の生活までには十分目が届いているとはいえず,地域での生活基盤が崩れれば,患者さんは再び救急搬送されてきます.この悪循環を断ち切るためには,病院からの指示を待つのではなく,地域が主体となって動く体制へとパラダイムを転換しなければなりません.
患者さんの「生活を守る」のは他でもない地域の役割であり,地域社会そのものが自立して心不全マネジメントを担っていく必要があります.患者さんが住み慣れた場所で,その人らしい人生を最期まで送れるよう社会全体で支える「People-centered care(市民中心のケア)」です.その思いから,私は2026年4月,大きな節目を迎えました.大学病院を離れ,在宅医として地域医療の現場へと飛び込んだのです.自らが地域社会に入り込み,地域主導で草の根からパンデミックを終息させる――それが私の新たな挑戦です.
本書は,こうした強い問題意識を共有する,全国の心不全診療・ケアのエキスパートたちとともに創り上げた一冊です.実践の中で培われた貴重なノウハウと工夫を,出し惜しみすることなくすべて共有していただきました.急性期から在宅,医療から介護福祉まで,あらゆる職種が一つのチームとして「自立した地域」を創り上げるための,極めて実践的な道しるべです.
地域医療・介護の最前線で日々奮闘されている多くのスタッフの皆様の手に本書が届き,明日のケアの力強い武器となること,そして,一人でも多くの心不全患者さんが地域で安心して暮らせる社会が実現することを心より祈念しております.
2026年7月
編集責任者 衣笠良治
目次
目次
Ⅰ章 ▶ なぜ心不全の地域連携が必要か?
1.高齢心不全パンデミックの地域への影響 〈藤本 恒〉
2.高齢心不全患者が抱える多様な問題と地域連携
A.Multimorbidity(複数疾患併存)×地域連携 〈水田栄之助〉
B.ポリファーマシー(多剤併用)×地域連携 〈芦川直也〉
C.フレイル×地域連携 〈齊藤正和〉
Ⅱ章 ▶ 多職種チームによる包括的心不全ケア
1.多職種チーム介入は予後・QOL改善に不可欠! 〈北川知郎,中野由紀子〉
2.その人中心のケア(person-centered care)が重要! 〈中島菜穂子〉
3.セルフケア教育と支援が鍵! 〈岡田明子〉
4.最適な心不全治療できてますか? ―ガイドラインに準じた薬物療法の総論と重要性 〈木田圭亮,村田理沙子〉
5.減塩・水分制限の誤解を解く!―個別化した栄養介入 〈宮島 功〉
6.心不全だからこそ動こう!―運動療法の科学的根拠と実践 〈村井亮介〉
7.心の負担も重要!―精神・心理・社会的な支援 〈庵地雄太〉
8.健康は環境で決まる?―健康の社会的決定要因 〈鈴木隆宏,水野 篤〉
Ⅲ章 ▶ 心不全のステージに応じた地域連携
1.心不全のステージ分類とは? 〈奥村貴裕〉
2.ステージA/Bにおける地域連携 〈久保 亨〉
3.ステージCにおける地域連携
A.心不全退院後の脆弱期と移行期ケアの重要性 〈衣笠良治〉
B.心不全入院患者の効果的な退院後の移行期ケアモデル 〈佐藤幸人〉
C.入院早期からの退院支援と退院調整 〈仲村直子〉
D.継続したGDMTが重要! 〈河野隆志〉
E.退院前・退院後のうっ血評価 〈中根英策〉
F.情報共有の標準化と質向上 〈中村研介〉
G.退院後早期(2週間以内)のフォローアップの重要性 〈松川龍一〉
4.ステージDにおける地域連携
A.心不全の全人的ケア 〈大石醒悟〉
B.アドバンス・ケア・プランニング(ACP) 〈柏木秀行〉
C.難治性心不全患者の治療選択(補助循環,移植) 〈中村牧子〉
D.在宅静注強心薬療法 〈嘉悦泰博〉
E.グリーフケア 〈柴田龍宏〉
Ⅳ章 ▶ 地域で支える心不全患者の継続的ケアの実際
1.訪問診療による在宅ケアの実践 〈肥後太基〉
2.クリニックの看護師による在宅ケアの実践 〈富山美由紀〉
3.薬剤師による在宅ケアの実践 〈澤田和久〉
4.在宅心リハの実践とエビデンス 〈大浦啓輔,神谷健太郎〉
5.コミュニティホスピタルの活用 〈勝木達夫〉
Ⅴ章 ▶ 心不全地域連携における課題と今後の展望
1.効果的な地域連携モデルの構築 ―地域連携モデルに関するランダム化比較試験 〈加藤尚子〉
2.病院と地域での連携のギャップ 〈肥後友彰〉
3.デジタル技術を活用した地域連携 〈下島正也,野村章洋〉
4.心不全療養指導士への期待 〈眞茅みゆき〉
5.社会的処方への期待 〈杉原志伸〉
索引