エキスパートが教える高血圧診療の勘所44
- 定価:
- 6,600円(本体価格6,000円+税)
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書誌情報
| サイズ | A5 |
|---|---|
| 頁 | 400頁 |
| ISBN | 978-4-498-13690-8 |
| 発行日 | 2026年10月13日 |
内容
高血圧患者を日常診療で診る際のエッセンスが集約
高血圧患者はかなりの人数がいるが、実情としてその管理・治療が理想通りに行えている、ということはあまり多くない。本書では、非専門医やプライマリケアといった現場で、実際の診断・治療・患者管理に重要なさじ加減、テクニックやポイントを解説する。薬や日常生活で気を付けてもらうことなど患者管理に必要な知識から、腎疾患や糖尿病など、他の診療科の合併症がある場合に気を付けるべきことなどまでわかりやすくまとめ、高血圧診療の勘所を伝える1冊。
序文
監修言
時として医療者は,患者さんの生活実態やその感情を十分理解しないまま,科学的な根拠としての医学的必然性のみで,患者さんの生活に踏み込んでしまいます.エビデンスに基づく体系的な学問としての医学だけでなく,医師とメディカルスタッフの実地診療におけるさまざまな実体験と知識を集約した「高血圧医療学」として取り組むことが重要と考えます.
実際の臨床場面では様々な患者が存在し,我々もまた同様に様々です.その幾通りもの組み合わせの中で実地診療は進行していくはずです.「同空間異光景」という言葉を造語として考えました.例えば,桜が咲いています.だれもが,「素敵だね」「来年もまた来ようね」と思います.しかし,重い病を患った人は,「散ってしまうね……来年はもう見ることが出来ないかもしれない」と同じ桜を見て思うかもしれません.同じ空間の中に人によって異なる光景があるのでしょう.医療者が見る光景と患者さんが見る光景は同じように見えて全く違うということを常に意識しなければ「高血圧医療学」は成り立ちません.
実地臨床においては,いかなる手段をもっても患者さんが継続可能な治療法を作り上げることこそが大切であり,それを見出すことができなければ日常診療は成り立たないと言っても過言ではありません.
高血圧患者さんに対峙したとき,「診る」「寄り添う」「伴走する」という過程の中で,日常診療が成り立っていくのでしょう.わたしたちの医療を取り巻く状況は変化してきました.高血圧の診断・治療の主体は患者さんであり,医療者の役割は専門家としての適切な情報提供や問題解決の的確な援助をしていくことだという考え方は,次第に当たり前の状況となってきました.
まさに「高血圧診療の勘所」はそこに焦点をあてて,様々な観点から高血圧の日常診療を掘り下げていただきました.
2026年8月
宮川内科小児科医院院長
宮川政昭
目次
目 次
Chapter 1 社会背景・生活にかかわる問題
1.高血圧治療に向き合って頂くための工夫 〈八田 告〉
1. 勘所その1 高血圧10のファクトを診療に利用する!
2. 勘所その2 臓器障害の見える化
3. 勘所その3 降圧治療を受けて良かったことを言語化してもらう
4. 勘所その4 降圧治療初心者向けの注意点
5. 勘所その5 患者の心理を理解する! 現状維持バイアス,現在バイアス,両価性とは
2.独居高齢者の高血圧管理 〈髙見武志〉
1. 独居高齢者の疫学
2. 独居高齢者の特徴
3. 独居高齢者における高血圧の特徴
4. 独居高齢者の高血圧管理の実際―実地医家への提言
3.減塩の社会実装の必要性 〈日下美穂〉
1. まず自分の食塩摂取量と尿Na/K(ナトカリ)比を知る
2. 診療の場では,行動変容を支える医療用アプリが有効
3. 地域で実践的な第一歩
4. 長期的な将来を見据える
5. 世論の盛り上がりを促す
4.地域密着の高血圧対策 家庭血圧測定 〈白戸隆洋〉
1. 地域の循環器病対策をどう進めるべきか
2. 久慈地域の現状と健康課題
3. 健康課題を共有し,多職種連携で取り組む
4. 家庭血圧測定の継続は臨床イナーシャの改善に欠かせないプロセス
5. 地域密着の高血圧対策がもたらした成果
6. これからの取り組み ― 途絶えさせないために
5.地元におけるこれまでの減塩,血圧対策と日常診療 〈髙瀨浩之〉
1. 浜松市医師会主催の「減塩・低カロリープロジェクト」
2. 当院の人間ドック受診者における減塩指導
3. 当院の健診受診者における血圧対策
4. 日常臨床の実際
6. 高血圧ガイドラインの沿革から考えた東京下町(塩分過剰地域)の高血圧診療 〈谷田貝茂雄〉
1. 日本人の高血圧の特徴
2. 臨床イナーシャ(Clinical Inertia)
3. 高血圧ガイドラインの沿革で注目すべきこと
4. 降圧薬選択から心不全への移行の抑制と臓器保護
5. 食塩過剰な地域での診療の実際
7.心臓血管外科医から見た震災復興と高血圧症 〈坪井潤一〉
1. 東日本大震災前後の周術期高血圧治療と口腔管理
2. 震災後の高血圧管理および生活習慣病管理
Chapter 2 日常診療に役立
1. 高血圧管理・治療ガイドライン2025はこう使ってください─日常診療・実地医家でのガイドライン活用法 〈大屋祐輔〉
1. JSH2025の基本方針
2. 対象者・利用者の明確化のための三部構成
3. 実地医家の視点からの三部構成の利用法
4. 国民へのガイドライン内容の幅広い呼びかけ
2.心不全と高血圧 〈大西勝也〉
1. 高血圧により心不全が発症するメカニズム
2. 心不全を併存した高血圧の治療
3. 心不全予防を目指した高血圧の治療
3.血液透析患者の血圧管理の勘所について 〈中村敏子〉
1. 透析患者の血圧測定の留意点
2. 血圧管理の目標値
3. 血液透析患者の高血圧の病態生理と治療
4. 降圧薬の選択
4. 「認知症の人は血圧が高めでいい」にエビデンスはあるのか?─ガイドラインと実臨床の接点を探る 〈玄 哲樹〉
1. 高血圧と認知症のパラドックス
2. 脳血流の調整能〜「認知症の人は血圧が高めでいい」の理論的背景
3. 臨床試験の転換点:SPRINT-MIND試験
4. アジア人高齢者のエビデンス:STEP試験
5. 認知症患者への降圧治療のエビデンス
6. なぜ降圧が脳を守るのか?
7. Case Study
8. 認知症患者の降圧治療におけるピットフォール
9. 認知症予防に「ベストな降圧薬」はあるか?
10. 睡眠時無呼吸症候群の検索
11. Q&A:家族・介護者からの質問にどう答えるか
5.健診結果を受けて受診する患者を診る際の留意事項 〈淺山 敬〉
1. 生涯を見据えた血圧の管理
2. 臨床医・実地医家として
3. 産業医として
6.小児の高血圧 〈藤丸季可〉
1. 血圧測定法
2. 血圧の基準値
3. 病因・病態
4. 管理手順
5. 治療
7.血圧測定と管理, CKDへの配慮 〈森島淳之〉
1. 腎不全と高血圧
2. 高血圧と腎臓病のガイドライン
3. 生活習慣の改善
4. CKDでの降圧薬
5. CKDで使用する際の各種降圧薬の注意点
8. CKDと高血圧:J-DOMEから全国アンケート調査まで 〈小林一雄〉
1. CKDの血圧管理状況
2. 日本におけるCKDキャンペーン
3. 食生活改善による血圧管理
4. 実効性のある降圧薬の併用法
5. RAS阻害薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬と高カリウム血症
9.SGLT2阻害薬の降圧効果 〈古木隆元〉
1. 心不全とSGLT2阻害薬
2. CKDとSGLT2阻害薬
3. SGLT2阻害薬発売時は,脱水が懸念されていた
4. 実地医家による2型糖尿病患者における尿中アンジオテンシノーゲン排泄に対するSGLT2阻害薬の効果
5. 実地医家による2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の降圧効果研究
6. SGLT2阻害薬はなぜ血圧が下がるのか
7. 日本人の糖尿病患者にSGLT2阻害薬を投与した研究
10. 低血圧をきたしうる疾患(パーキンソン病など)の高血圧治療について 〈長尾 信,長尾龍之介〉
1. 低血圧をきたしうる疾患と病態生理
2. 評価のポイント:血圧は「一時点」ではなく「変動」で捉える
3. 高血圧治療目標の再考
4. 薬物療法の勘所:何を避け,何を選ぶか
5. 非薬物療法と生活指導の実践
6. プライマリケア・非循環器診療科での実践的アプローチ
7. 他疾患・多剤併用時代における高血圧治療
8. 患者・家族への説明と共有意思決定
11.閉塞性睡眠時無呼吸症候群と高血圧 〈古味良亮〉
1. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と高血圧
2. OSAの診断と評価
3. OSAを考慮した高血圧診療プロセス
4. CPAP療法と血圧への影響
12.糖尿病合併高血圧患者における血圧測定の意義 〈牛込恵美〉
1. なぜ糖尿病合併高血圧では血圧測定が重要なのか
2. 診察室血圧の限界と測定の基本
3. 家庭血圧測定の意義と実地での活用
4. 24時間血圧測定(ABPM)が有用な症例
5. 血圧目標値と「下げすぎ」への配慮
6. 血圧測定と生活指導:減塩指導の実際
7. 糖尿病患者と食事性低血圧
13. 高血圧診療の質を高める漢方を用いたアプローチ ―「漢方薬で血圧は下がりませんか?」に答える 〈神吉佐智子〉
1. 漢方医学の歴史的背景:二千年の「臨床実験」が教えるもの
2. 東洋思想「三因」で読み解く高血圧
3. 養生:治療の土台としてのライフスタイル改善
4. 理論的機序:なぜ漢方で血圧が下がるのか
5. 実践:タイプ別・高血圧診療への漢方薬選択例
14.血圧とスポーツ医学に基づく運動処方 〈井上晃太〉
1. 血圧が下がる運動は? 有酸素運動? レジスタンス運動?
2. メディカルチェックと運動処方
3. ナトリウム排泄能の違いと運動処方への影響
4. 降圧薬ごとの運動療法の注意点
5. アスリートの心血管リスク管理
Chapter 3 他科との連携,非専門医で
1. 非専門医であっても高血圧診療に積極的に取り組む意義と実践 〈杉原雄策〉
1. 高血圧診療を実地医家が担う必然性
2. 家庭血圧測定の重要性と課題
3. 非専門医実地医家の実臨床における高血圧診療の実際
4. 非専門医が抱く心理的障壁とその克服
5. 専門医との連携と紹介のタイミング
6. ガイドラインは「知っている」から「使われる」へ:実地医家の社会的責務
2.糖尿病と高血圧の重複リスクに挑む実地診療 〈紅林昌吾〉
1. 糖尿病合併高血圧のやっかいさ
2. JDDMとJ-DOMEが示す実地診療の現実
3. 薬剤調整だけでは足りない ─血圧マネジメントの勘所
4. SGLT2阻害薬がもたらす降圧戦略の価値
5. 実地医家のための診療Tips
3.整形外科医としての高血圧診療への取り組み 〈木村皇太郎〉
1. 山口県の現状
2. 内科以外の実地医家が行う高血圧診療の実態
3. 日本高血圧学会による「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」の他科への認知度
4. 薬剤誘発性高血圧
5. 2024年の診療報酬改定に対する課題
6. 管理料を取らなくなった医師達
7. 整形外科医が高血圧症に対し,今すぐできそうなこととは?(提案)
8. 高血圧症診療における「内科と整形外科の医療施設間連携」の提案
4. 高血圧診療における病診連携のあり方―氷山に埋もれたコントロール不良高血圧を捉える 〈吉田哲郎〉
1. 何から着手すればよいか? 3ステップで進めていく
2. 血圧を“見える化”する! “点”ではなく“線”で!
3. 仮面高血圧を疑う! 早朝夜間高血圧に注目!
4. 二次性高血圧のスクリーニング PA・SASを疑う
5. 高血圧の奥にある病態を診る ― 血管老化・炎症・RASから再考する高血圧診療 ― 基礎研究を積み重ねた臨床医の視点から 〈石田万里〉
1. 高血圧を“血管老化”として捉える
2. 細胞老化・慢性炎症と高血圧
3. アンジオテンシンIIシグナル伝達の再考
4. プライマリケアにおける診断と評価のポイント
5. 治療と患者管理の実践的Tips─ 血圧を下げる治療から,血管を守る治療へ
6.血尿がある患者の血圧管理 〈宇津 貴〉
1. 血尿とは
2. 健診・スクリーニング検査における血尿の頻度と問題点
3. 顕微鏡的血尿と血圧
4. 肉眼的血尿と血圧
5. 抗凝固薬服用中の血尿(抗凝固薬関連腎症)
7. 皮膚とRASと高血圧 〈森田隆太郎,涌井広道,田村功一〉
1. RASと高血圧
2. 皮膚と高血圧の関連
3. 皮膚組織RASと高血圧
4. 皮膚組織RASが全身血圧に関与するメカニズム
8. 妊娠高血圧と女性の高血圧予防医学─ライフコースで診る実地診療の勘所 〈松本知沙〉
1. 女性と高血圧
2. 妊娠可能女性と高血圧
9.歯肉腫脹とCCB 〈尾﨑幸生〉
1. CCBの種類と発症率
2. リスクファクター
3. CCB性歯肉増殖症の病態像
4. CCB性歯肉増殖症の治療
10.β遮断薬と気管支喘息―原則禁忌から慎重投与へ 〈神元章雄〉
1. β受容体の分布と機能
2. β遮断薬の分類
3. β遮断薬が積極的適応となる疾患
4. 気管支喘息におけるβ遮断薬の選択と安全性
5. 心不全とβ遮断薬
6. 心不全以外でβ遮断薬の効果が期待されるケース
7. 実臨床での気管支喘息合併高血圧治療
Chapter 4 新しい注目の
1. 実地医家のリスキリングとしての新・高血圧専門医制度 〈甲斐久史〉
1. 高血圧学会のめざす高血圧専門医像
2. これまでの高血圧専門医のあゆみ
3. なぜ,新・高血圧専門医制度なのか?
4. 新・高血圧専門医制度の特徴
5. 新・高血圧専門医のカリキュラム研修
6. 今後の課題
2. 高血圧診療に「味覚」を活かす! 美味しい社会的減塩 〈水田栄之助〉
1. 味覚の生物学的意義と「塩味オンチ」の恐怖
2. 「味覚リセット」という医学的アプローチ
3. 高齢者における「フレイル」と「薬剤性味覚障害」のジレンマ
4. 産官医連携による「美味しい社会的減塩」
3. 食塩摂取量を「測る」ことから始める食育プログラムと栄養指導―高血圧予防における行動変容を促す実践モデル 〈森 真理〉
1. 科学的根拠に基づき「自分の食事を評価し,改善する力」を身につける食育プログラム
2. 食育プログラムが行動変容を生み出す仕組み―5つの視点が無理なく実践につながる理由―
3. 美・ランチとは何か―改善ポイントを基準とする1食のお弁当開発プログラムの効果―
4. 食育実践の現場から得られた健康変化の示唆―食育先生プログラムの経験的知見―
5. 医療と食環境をつなぐ予防栄養モデルの可能性―医療連携による食育プログラムと美・ランチ認証制度の社会実装―
4. 尿Na/K比のセルフモニタリング機器,尿Na,Cr測定による推定食塩摂取量のセルフモニタリング機器 〈土橋卓也〉
1. 尿Na/K比の意義
2. 尿Na/K比の測定と評価
3. 尿Na,Cr測定による推定食塩摂取量の評価
4. 尿Na/K比,推定食塩摂取量のセルフモニタリング
5. 野菜果物積極的摂取による高血圧症合併症の脳心腎イベント予防対策―1日尿中K排泄量を指標とした大規模臨床試験からのメッセージ 〈湊口信也,皆川太郎〉
1. 野菜果物摂取と高血圧
2. 野菜果物摂取と脳心腎イベント,全死亡との関係
3. 尿中Na/K比と脳心腎イベント,全死亡率の関係
4. 野菜果物摂取が脳心腎イベントと全死亡率を低下させるメカニズム
6. クリニカルイナーシャの克服に向けて:診療現場での阻害要因と実践的対応 〈工藤博司〉
1. 医師側の要因
2. 患者側の要因
3. 環境側の要因
7.世界の潮流の中で感じる日本の高血圧診療 〈水野 篤〉
1. デジタル技術がもたらす「診療の深化」
2. ゲノム・オミックス研究が拓く「個別化医療」の未来
3. 実臨床の勘所:未来の技術を「ナッジ」として使う
8. 英国NHS家庭医に学ぶ高血圧診療—JSH2025とNICEの比較からみえる実地診療の勘所— 〈杉原隆太〉
1. 診断戦略:英国はABPM,日本はHBPM
2. 治療戦略:人種・社会経済的リスク・集団アプローチ
3. 医療シスムと治療介入:標準化されたチーム医療
9.「血圧の薬が足りなくなるの?」Drug Loss? 〈髙橋栄一〉
1. Drug Lag(ドラッグ・ラグ)とDrug Loss(ドラッグ・ロス)
2. 既存の降圧薬が足りなくなるのか?
10.サプリメントで血圧は本当に下がるのか? 〈大野 智〉
1. 保健機能食品制度の概要
2. 機能性関与成分の作用メカニズム
3. 臨床試験の対象者と実際の降圧効果
4. 食品としての位置付けと法的制約
5. 患者への対応と医師の役割
11. 地域フォーミュラリについて─基本的知識と実際の運用 〈永澤 昌〉
1. フォーミュラリの基本的知識
2. 広島県備北地区の地域フォーミュラリ運用の実際
3. 広域災害における地域フォーミュラリの有用性
12.酒と血圧─少しのお酒はいいですか? 〈河野雄平〉
1. アルコールの心血管作用
2. アルコールと高血圧
3. アルコールと循環器疾患,総死亡
4. ガイドラインと高血圧管理における飲酒
13. 減塩の敵!「しょうゆ・味噌・漬物(発酵食品)」は本当に悪者なのか? 〈水田栄之助〉
1. しょうゆ
2. 味噌
3. 漬け物(発酵食品)
あとがき 〈勝谷友宏〉
索引