周産期心筋症診療の手引き

定価:
3,960円(本体価格3,600円+税)

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書誌情報

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サイズ B5判
120頁
ISBN 978-4-498-13652-6
発行日 2019年03月28日

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内容

本書は,心疾患を指摘されていなかった妊産婦が突然心不全を発症する「周産期心筋症」をなるべく早期に診断・治療するため,日本産科婦人科学会、日本新心不全学会の評価,賛同のもと作成された.産期心筋症は本邦では稀な疾患だが,妊産婦の高齢化などの要因により,今後増加していく可能性がある.産婦の心不全症状の初診医の3/4を占める産科医・総合医にもその疾患概念を広く周知し,診療の質を向上させる一歩となる一冊.

序文

第I章 序文

心疾患を指摘されていない妊産婦が,妊娠後半から産後に拡張型心筋症類似の病態を呈し,うっ血性心不全を発症する原因不明の心筋症を,周産期心筋症(産褥性心筋症)と称する.英語病名はperipartum cardiomyopathy)や診断時期の違いによりpregnancy associated cardiomyopathy)などが使用されてきたが,わが国では「産褥性心筋症」と称され,ICD-10コードでも同病名が使用されている.しかしながら,妊娠中に診断される症例も多く,英語病名を直訳した「周産期心筋症」を,本診療の手引きでは使用・推奨する.
周産期心筋症は,産科と循環器科の境界領域にある希少疾患であり,長年,疾患概念の周知も不十分であった.平成21年に実施されたわが国初の全国調査では,患者が心不全症状を訴えた際の初診医は,産科医が63%,開業医など総合内科医が12%と全体の4分の3を占め,最初から循環器医が診療した症例はわずか9%であった).また,息切れや浮腫などの初期心不全症状は,健常妊産婦も訴える症状と似ており,診断遅延に陥りがちである.一方,同全国調査での母体死亡率は4%3),妊産婦死亡症例検討評価委員会の報告では,心血管疾患原因による母体死亡において,大動脈解離に次いで2番目に多い疾患であり),急性期予後改善のためには,早期診断が望まれる.
周産期心筋症は,「妊産婦」以外,疾患特異的項目がなく,心筋梗塞や心筋炎など他に心機能低下をきたす原因がない場合の除外診断病名である.そのため,血管障害,炎症,遺伝性など複数の病態が関与する疾患群と考えられる.同年代女性では,心筋炎や拡張型心筋症よりも高率に妊産婦で診断され),心不全発症のタイミング)や予後)が,既存の拡張型心筋症合併妊娠とは異なっており,独立した疾患と考えられるが,家族歴や遺伝子変異など,両者にオーバーラップする病態も報告されている).
「疾患群」であるがゆえ,疾患概念は未だ混沌としている.家族性心筋症の遺伝背景をもつ患者を含めるか否かなど,世界的コンセンサスがまだ得られていない事項は複数ある.その中で,初回心不全発症の妊産婦をできるだけ早く診断し,治療することを第一義に,家族性心筋症の遺伝背景をもつ患者も含めるなど,あえて疾患概念を広くとらえ,本診療の手引きを作成した.また,妊産婦という特異な背景から,これまでに実施された臨床介入研究が非常に少なく,エビデンスレベルの提示には至っていない.そのため,今後も多くの先生方から意見をいただき,かつ新たなエビデンスを加えつつ,改訂を重ねていく予定である.
最後に,周産期心筋症の臨床像を捉え,その診療の質を上げるべく,これまでにさまざまな形でご協力・ご支援いただいた全国の先生方に深く感謝申し上げ,本診療の手引きが周産期心筋症の予後向上に寄与することを切に願います.

〈神谷千津子 吉松 淳〉

目次

目 次

第I章 序文

第II章 診断基準

第III章 疫学
 1.発症率
 2.日本における疫学
 3.発症率に関する先行研究の問題点

第IV章 リスク因子
 SECTION 1 妊娠高血圧症候群
  1.定義と臨床分類について
  2.病態
  3.妊娠高血圧症候群と周産期心筋症
  4.周産期心筋症とsFlt-1
 SECTION 2 多胎
  1.疫学的要素
  2.生理的変化
  3.妊娠高血圧症候群
  4.切迫早産
  5.帝王切開分娩
 SECTION 3 切迫早産治療
 SECTION 4 高年妊娠
  1.出産年齢と周産期心筋症発症の関係
  2.出産年齢と周産期心筋症経過・予後との関係
  3.出産年齢の高齢化との関係

第V章 病因
 SECTION 1 血管機能障害
  1.用語解説
  2.正常妊娠における血管内皮機能変化
  3.正常妊娠における血管機能の変化
  4.妊娠高血圧症候群における血管機能指標の変化
  5.妊娠高血圧腎症の女性における産後微小血管障害の病態とは
 SECTION 2 遺伝性心筋症
 SECTION 3 血管障害因子とそのほか
  1.血管障害因子説
  2.ウイルス性心筋炎説
  3.妊娠に対する異常な免疫反応説
  4.妊娠による心負荷への反応説

第VI章 生理・画像検査
 SECTION 1 心エコー検査
  1.正常な妊娠中の心エコーの変化
  2.心エコーの適応
  3.心エコーによる左室収縮能評価
  4.予後と心エコー
  5.合併症と心エコー
 SECTION 2 心電図
  1.周産期心筋症における心電図所見
  2.心電図所見と周産期心筋症患者の予後
 SECTION 3 MRI
  1.周産期心筋症の診断
  2.心臓MR
  3.周産期におけるMRI検査の安全性について
  4.周産期心筋症患者におけるCMRの役割

第VII章 病理組織学的診断

第VIII章 妊産婦における症状・身体所見の診方と検査の進め方
 1.妊娠・産後経過における症状・身体所見
 2.検査の進め方

第IX章 鑑別診断
 1.妊娠関連急性心筋梗塞
 2.肺血栓塞栓症
 3.心筋炎
 4.後天的な要因による心筋症

第X章 遺伝学的検査
 1.拡張型心筋症関連遺伝子の関与
 2.妊娠高血圧症候群関連遺伝子の関与

第Ⅺ章 治療
 SECTION 1 心不全治療
  1.周産期心筋症における心不全治療
  2.周産期心筋症を疑った場合に施行する検査
  3.初期治療
  4.薬物療法
  5.非薬物的治療
  6.その他の注意事項
 SECTION 2 疾患特異的治療

第Ⅻ章 予後
 SECTION 1 心機能予後
  1.死亡率
  2.心機能回復の頻度
  3.心機能回復の予測因子
  4.妊娠高血圧と予後の関係
  5.拡張型心筋症とのオーバーラップと予後について
 SECTION 2 次回妊娠予後
  1.母体予後
  2.胎児予後
  3.次回妊娠に関するカウンセリング
  4.避妊方法

付記1 ハイリスク妊娠における早期診断法
付記2 周産期心筋症 症例集

索 引

執筆者一覧

  • 厚生労働科学研究(難治性疾患政策研究事業)「周産期(産褥性)心筋症の、早期診断検査確立研究の継続と診断ガイドライン作成」班・「特発性心筋症に関する調査研究」班 編集
  • 国立循環器病研究センター周産期・婦人科部医師 神谷千津子
  • 国立循環器病研究センター周産期・婦人科部部長 吉松 淳 
  • 浜松医科大学周産母子センター講師 鈴木一有 
  • 東京都立多摩総合医療センター循環器内科医長 磯貝俊明 
  • 国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター 母性内科医員 三戸麻子 
  • 東京都立墨東病院産婦人科部長 兵藤博信 
  • 静岡県立こども病院産科副医長 増井好穂 
  • 静岡県立こども病院副院長兼周産期センター長 西口富三 
  • 久留米大学医学部医学科内科学講座心臓・血管内科部門 森川 渚 
  • 久留米大学医学部医学科内科学講座心臓・血管内科部門主任教授 福本義弘 
  • さいたま赤十字病院総合臨床内科 江口和男 
  • 札幌医科大学循環器・腎臓・代謝内分泌内科助教 小山雅之 
  • 大阪医科大学産婦人科学教室医師 大門篤史 
  • 筑波大学医学医療系循環器内科講師 石津智子 
  • 福岡市民病院循環器内科医師 長山友美 
  • 九州大学医学研究院保健学部門教授 樗木晶子 
  • 国立循環器病研究センター心臓血管内科医師 井上優子 
  • 国立循環器病研究センター心臓血管内科部長 草野研吾 
  • 三重大学医学部産科婦人科学教室助教 二井理文 
  • 三重大学医学部産科婦人科学教室教授 池田智明 
  • 国立循環器病研究センター病理部医長 大郷恵子 
  • 国立循環器病研究センター病理部部長 植田初江 
  • 北里大学医学部循環器内科学講師 小板橋俊美
  • 北里大学医学部循環器内科学教授 阿古潤哉 
  • 国立循環器病研究センター研究所再生医療部上級研究員 大谷健太郎
  • 国立循環器病研究センター研究所生化学部室長 徳留 健 
  • 防衛医科大学校循環器内科医師 弓田悠介 
  • 聖路加国際病院循環器内科医員 椎名由美 
  • 広島市民病院循環器内科副部長 臺 和興 
  • 広島市民病院循環器内科主任部長 塩出宣雄 
  • 榊原記念病院産婦人科医師 中尾真大 
  • 榊原記念病院産婦人科部長 桂木真司 
  • トヨタ記念病院副院長/統合診療科科部長 小口秀紀 
  • トヨタ記念病院病院長 岩瀬三紀 
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