CPX・運動療法ハンドブック 改訂3版 心臓リハビリテーションのリアルワールド
内容
近年,循環器疾患の病態解析や治療技術は著しく進歩し,心臓リハビリテーションへの社会的欲求もより一層高まっている.そんな状況のなか,本書は心肺運動負荷試験と運動療法の実際を“リアル”に解説し,心臓リハビリに関わる多くの医師,スタッフから好評を得てきた.第3版では,単なる運動処方の求め方のみならず,運動中の病態をできる限り詳細に記述.CPXを利用し尽くして,心血管疾患の病態をより深く理解できる1冊だ.
序文
改訂3版の序
早いもので本書の初版が出版されてからすでに6年が経ちました.この間,循環器疾患の病態解析や治療技術の進歩は凄まじいもので,侵襲は少なく効果は最大にという贅沢な目標を達成できる治療法がたくさん出現してきました.そのために,循環器内科医や心臓血管外科医の仕事量は激増し,一緒に働くコメディカルの方々の帰宅時間もどんどん遅くなってきています.
こう書きますと,進歩した治療手技とは低侵襲の経皮的カテーテル治療やEVAR,TEVAR,TAVRを思い浮かべるかもしれません.これらは確かに素晴らしい治療法で,すでに恩恵にあずかった方もたくさんいらっしゃいます.しかし,本当に侵襲が少なく,しかも最も根本的に循環器疾患を治す治療法は心臓リハビリテーションです.労作性狭心症の70%は心臓リハビリテーションで治せますし,慢性心不全においては予後を改善させる最善の治療法で,心房細動の心拍制御もお手の物です.運動療法や食事療法に対する社会的要求の高まりもあり心臓リハビリテーションの普及は目覚ましく,2008年に 5,000人だった心臓リハビリテーション学会会員数が2014年には10,000人に達しました.
しかし,心臓リハビリテーションの柱の一つである運動療法に必要な運動生理学の理解は相変わらず深まっているとは言えません.その結果,科学的な運動処方がなされず,なんとなく歩かせているだけ,という心臓リハビリテーションが実施されていることもあります.「心臓リハビリテーションをしてもらったらこんなに良くなった」と笑顔で言ってもらえるために,病態を正しく把握し,正しい運動処方を作成しなければなりません.忘れてはならないことは,心疾患は動いたときに症状が出現し,どれくらい動けるのかが重症度であるということです.左心室や左前下降枝を一生懸命治しても予後は改善しません.安静時に一生懸命検査しても,正しい病態を把握することはできません.運動負荷をかけて,どの程度の運動負荷のときにどのような変化が生じるのかを把握しなければ始まらないのです.
第3版では,単なる運動処方の求め方にとどまらず,運動中の病態をできる限り詳細に記述しました.CPXを利用しつくして,心血管疾患の病態をどこまでも深く理解できるようになっていただければ幸甚です.
2015年6月
群馬県立心臓血管センター 安達 仁
目次
目次
第1章 CPXの目的 〈安達 仁〉
1 CPXで何がわかるか,誰にできるか
2 CPX中の測定項目
3 CPXの目的
A 運動耐容能評価
B 運動処方作成・日常活動指導
C 息切れの鑑別
D 虚血重症度の判定・労作性狭心症治療方針決定
E 慢性心不全の病態解明・重症度把握・治療法決定
F ペースメーカー至適モードの設定
G 心不全における僧房弁置換術(MVR)/形成術(MVP)の治療効果の予測
第2章 CPXの準備 ─ハード面─ 〈小林康之〉
1 呼気ガス分析装置
A ガス分析計の校正(キャリブレーション)
B 流量計の校正(キャリブレーション)
C 日常管理(精度管理)
D 呼気ガス分析器の検定
2 負荷装置
A サイクルエルゴメータ
B トレッドミル
3 フェイスマスクとマウスピース
A フェイスマスク
B マウスピース
4 室内環境
A 緊急事態への準備
5 呼気ガス分析装置のモニタ画面の設定
第3章 CPXの準備─ソフト面─ 〈上田正徳〉
1 電極の貼りかた
A 事前準備
B 電極とコード
C 誘導法
2 検査の説明
3 運動負荷試験の禁忌
4 運動負荷試験中止基準
5 心電図異常陽性基準
A ST-T変化
B 不整脈
6 負荷試験中の注意点─呼吸法,漏らさないコツ─
A 呼吸法
B 顔の向き(センサの向き)
7 ウォームアップ,クールダウンの意味
8 患者の異常と考える前に─おしゃべり,呼気ガス分析装置の異常─
9 運動中の心拍出量および血管拡張能の測定
第4章 運動中の血行動態と血流分配 〈安達 仁〉
1 心拍数
2 心拍出量・心収縮能・心拡張能
3 肺動脈楔入圧・肺動脈圧
4 血流分配
第5章 ランプ負荷試験の実際 〈安達 仁〉
1 ランプ負荷強度設定法
2 安静時にみるべきポイント
A 心電図,血圧
B 心拍数
C 酸素摂取量(VO2)
D 二酸化炭素排出量(VCO2)・ガス交換比(R)
E VE/VCO2
3 ウォームアップ
A 持続時間と強度決定法
B 酸素摂取量(phaseI,phaseII,τon)
C VE/VO2,VE/VCO2の変化
D 心拍応答
4 ランプ負荷中に得られる指標
A 酸素摂取量
B 最高酸素脈(peak VO2/HR,oxygen pulse)
C VE/VO2,VE/VCO2
D VE vs. VCO2 slope
E PETCO2,PETO2
F TV-RR関係
G RR threshold
H Ti/Ttot
I 呼吸予備能(breathing reserve)
J SpO2
K Oscillatory ventilation
L OUES
5 回復期
A VO2/HRのjump up phenomenon(ジャンプアップ現象)
B VO2(τoff)
第6章 9パネルの読みかた 〈安達 仁〉
パネル3 VO2,VCO2
パネル5 Vスロープ
パネル6 VE/VCO2,VE/VO2のトレンドグラフ
パネル2 VO2/HRとHR
パネル8 ガス交換比(R)
パネル4 VE vs. VCO2 slope
パネル9 ETCO2,ETO2のトレンドグラフ
パネル1 VE
パネル7 TV/VE slope
第7章 パラメーターの総合的解釈 〈安達 仁〉
1 運動耐容能の指標
2 総合的解釈
A 運動耐容能
B 心ポンプ機能
C 息切れ感
D %peak VO2と%VE/VCO2の関係
E VE/VCO2とVE vs. VCO slope
第8章 疾患・病態別のCPX 〈安達 仁 村田 誠〉
1 虚血性心疾患
2 心不全
3 不整脈(発作性心房細動と心室頻拍)
4 肺高血圧症
5 R-Lシャント
6 成人先天性心疾患
7 CRT-D設定不全
第9章 運動処方 〈安達 仁〉
1 AT処方
A AT決定法と運動処方
B ATが決定不能な場合の運動処方
C 自転車エルゴメータとトレッドミルの対比
2 心拍処方(Karvonenの式)
3 自覚的運動強度による処方
4 トークテストによる処方(坂道が多い地域での運動処方)
5 RR thresholdを用いた運動処方
6 重症心不全への処方
7 不整脈患者への処方
8 ICD,CRT-D患者への処方
9 ポジティブリモデリングと運動処方
10 HR<110の勧め
11 運動処方レベルの確認法
第10章 運動療法実施法リアルワールド
1 心筋梗塞 〈設楽達則〉
A 発症から運動療法までの流れ
B リスク管理
C メディカルチェック
D ウォームアップ
E 有酸素運動
F レジスタンストレーニング
G クールダウン
H 維持期(phaseIII)心臓リハビリについて
2 狭心症 〈安達 仁〉
A 狭心症の至適治療
B 運動療法の効果と危険性
C 運動療法実施法
D 運動療法実施時の注意点
E PCI施行後の狭心症に対する心臓リハビリ
3 開心術後 〈鳥越和哉〉
A 開心術後のリハビリ
B 【PhaseI:急性期】術後1週間:個別プログラム
C 【PhaseII:回復期】術後2〜3週間:個別プログラム
D 【PhaseII:回復期】退院まで:集団プログラム
E 【PhaseIII:維持期】外来プログラム
F 開心術後のレジスタンストレーニングについて
4 心不全,LVAS植込み患者
A 心不全に対する心臓リハビリの効果
B 心不全患者に対する運動療法導入期の注意点
C 心不全患者介入の実際
D 個別運動療法
E 近監視〜遠監視型の運動療法
F LVAS(Left Ventricular Assist System)のリハビリ
G LVAS装着者のリハビリの目的
H LVAS使用者のリハビリの実際
I 心臓リハビリ室でのリハビリ
J 外来リハビリ
K 加圧トレーニング
5 ICD,CRT-D植込み術後 〈猪熊正美〉
6 糖尿病 〈設楽達則〉
A 運動処方
7 成人先天性心疾患 〈猪熊正美〉
A 心不全
B 不整脈
C チアノーゼ性心疾患の患者の合併症
D 肺高血圧
8 慢性腎臓病 〈猪熊正美〉
9 高齢者 〈鳥越和哉〉
A 高齢者の心臓リハビリの効果
B 高齢者の心臓リハビリの実際
C 当院での高齢者に対する心臓リハビリ
第11章 CPXの実例 〈伴野潤一 安達 仁〉
1 正常1
2 正常2
3 重症肥満
4 重症糖尿病
5 低体力(骨格筋の著明な萎縮)
6 トレーニングされた健常者
7 狭心症(多枝のびまん性病変,冠動脈バイパス術前・後)
8 狭心症(末梢病変)
9 広範囲心筋梗塞(peak CPK 9,757 IU/L) 発症3カ月目
10 拡張型心筋症
11 大動脈弁閉鎖不全症
12 僧房弁閉鎖不全症
13 僧房弁狭窄症
14 心房中隔欠損症
15 肺気腫
16 LVAS植込み術後
第12章 呼気ガス分析装置 ミナトAE 310S解析手順 〈安達 仁〉
1 ATの決定
2 各区間の決定
3 VE vs. VCO2 slopeの決定,印刷
4 VE/VO2-VE/VCO2関係の表示されたグラフの印刷
5 HR-VO2関係の回帰
6 TV/RR slopeの回帰
7 Ti/Ttotの評価
8 RR曲線の評価
9 エネルギー消費量の評価
Appendix 心電図 〈安達 仁〉
略語集 〈上田正徳〉
索引