エビデンスで語れない乳癌診療の極意 臨床30年の経験から伝えたいこと
内容
患者との意思決定が重要な周術期の乳癌診療,確固たるエビデンスが存在しない転移・再発乳癌診療について,1つの施設に長く在籍する著者だからこそ見えてきた治療の本質.難しい状況に置かれた乳癌患者を目の前にしたとき,トップランナーはいかに考えているかがわかる.理論の組み立て方や患者への寄り添い方について,豊富な実例やセカンドオピニオン症例をもとに紹介する.
序文
はじめに
今回の企画を出版社の方からいただき,30年の乳腺専門医としての経験を一冊にまとめて世に残すこととした.
私は,昭和62(1987)年名古屋市立大学医学部を卒業後,ただちに当時の第2外科医局に入局した.野球部の先輩が多く体育会系の雰囲気が気に入り,何より正岡昭教授(胸腺腫の正岡分類,重症筋無力症に対する拡大胸腺的手術で有名)にあこがれて外科の道に進んだ.大学および関連病院での外科一般のトレーニングの後,医師5年目(1992年)に大学に戻り研究生活に入った.当時大学の講師をしていた小林俊三先生が指導する内分泌グループに所属し,ここから私の乳腺科医としての歴史が始まった.がんの浸潤・転移に関する因子に関する研究で学位をいただいた後,地域医療の最前線の病院(当時100床)に赴任,大学に戻って2年間は大学の助手(乳腺・内分泌外科医)として働いた.平成10(1998)年に愛知県がんセンターに着任して25年,乳腺専門医として働いてきた.
30年間に自ら執刀した乳癌の患者さんは1,000人を超え,チームで経験した乳癌患者数は1万人を超える.再発患者さんも1,000人を超える方を自ら治療した.乳癌治療の大きな変革の時代に,乳癌診療の最前線にいられたことに運命を感じる.多くの患者さんから学び,教えられ,先輩・後輩との議論の中で,様々なアイデアが生まれた.
エビデンスや標準治療の記載ではなく,技術的なノウハウでもなく,30年間,私が常に考え(今も考え),後輩に残しておきたい想いを綴った.
目次
目 次
はじめに
略語表
周術期乳癌診療への想い
1)正しく乳癌と診断するために 〜第一歩は正しい診断〜
2)他の疾患も念頭に診断を 〜乳癌以外の疾患も知っておこう〜
3)乳癌の発生について
4)究極の二者択一 〜全摘or部分切除〜
5)患者さんと医療者の予後の見込みには乖離がある
6)Informed consentとshared decision making
7)病人を診る
8)多様性を尊重して
転移・再発乳癌診療への想い
1) 乳癌がなぜ再発するのか
2) 再発が起きる前に 〜初期治療の段階で〜
3) 治る再発と治らない再発
4) 転移・再発した患者さんへの説明
5) 今後の見通しと治療開始時の戦略
6) 具体的な治療戦略
7) 治療変更のタイミングと薬剤
8) 患者さん・家族との外来での接し方
9) 医師はソムリエ,野球の監督の素質が大切
10) 患者さんは何を望んでいるのか
11) あきらめない気持ち
12) 治ったかもしれないケース
13) 治験とは
14) 民間療法
15) がんの気持ちになって考える
16) 最期の時をどう迎えるか
17) 患者さんの声
18) セカンドオピニオン症例
column
1 針生検をしたらすぐに手術は都市伝説
2 マンモグラフィの石灰化はがん細胞の死滅した痕跡
3 がん細胞の周囲の正常乳管上皮細胞もなぜがん化するのか?
4 オカルト乳癌の新考察
5 がんは毎日発生しているわけではない
6 乳癌細胞も生まれた場所に帰る?
7 Life threateningとは
8 再発治療の3つのP
さいごに
索引