周産期遺伝カウンセリングマニュアル 改訂3版
内容
最新の版はこちら ⇒ 『周産期遺伝カウンセリングマニュアル 改訂4版』
周産期医療の現場で遭遇することのある疾患について,実際の遺伝カウンセリングの場を想定して解説!クライエントの理解を深めるために使用できる図表資料がパワーアップ.
遺伝子情報解析や画像診断技術の進歩が著しい周産期領域で多職種に活きる実践的知識をまとめた好評書の最新版.
序文
改訂3版の序
ゲノム研究の進歩は医療全体に大きな変化をもたらしています.最近では,数十万種類に及ぶ遺伝子多型や数千〜数万種類の遺伝子発現情報の体系的な解析により,多くの疾患の原因遺伝子が同定され,また疾患発症メカニズムの解明が可能になってきています.周産期領域においても,出生前遺伝学検査でマイクロアレイが利用されるようになり,また,胎児の形態異常などに対して次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析や全ゲノム解析が行われるようになっています.さらに,シークエンスの技術を応用し,母体血中のcell‒free DNA を用いた無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)が,2011 年に米国で開始され,世界で2019年には1,000万件の検査が実施されたと推定されるなど,急速に利用が拡大しています.一方,超音波をはじめとする画像診断技術の進歩も著しく,胎児診断が詳細になって精度が高まっているとともに,診断時期が早期化しています.このような状況において,周産期医療を担う医療者には遺伝学的検査や形態学的検査の双方について専門的な知識をもつことが求められています.
上記のような最先端技術を駆使した検査結果は,カップルの妊娠継続の判断に大きく影響することから倫理,社会的な側面からの議論の重要性が指摘されています.日本産科婦人科学会が2013 年に発表した 「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解」では,「出生前に行われる遺伝学的検査および診断には,胎児の生命にかかわる社会的および倫理的に留意すべき多くの課題が含まれており,遺伝子の変化に基づく疾患・病態や遺伝型を人の多様性として理解し,その多様性と独自性を尊重する姿勢で臨むことが重要」と記載されています.また,2011 年に日本医学会が示した「医療における遺伝学的検査・診断のガイドライン」では「出生前診断を行う場合には,適宜遺伝カウンセリングを行った上で実施する」と遺伝カウンセリングの重要性が強調されています.
このような状況のなかで周産期医療に従事する医療者が知っておくべき知識を整理すること,また,そのことを実際にわかりやすく患者さんに伝えることを支援することなどを目的に本書は編集されています.本書の特徴は周産期医療の現場で遭遇する疾患について,実際の遺伝カウンセリングの場を想定して解説したこと,また,遺伝カウンセリングでクライエントの理解を深めるために使用できる図表を「カウンセリング資料」として掲載したことにあります.改訂第3版においては記載内容を最新の情報に更新するとともに,本書の特徴である遺伝カウンセリング資料をさらに充実させました.臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーまたはその認定取得を目指すもの,産科医,新生児科医,小児科医,看護師,助産師,保健師,臨床心理士ならびに,メディカルソーシャルワーカーなどの様々な職種の医療者が本書を参考に,周産期医療や周産期遺伝カウンセリングを実践していただければ幸いです.
なお,本書の発刊に際し中外医学社の中畑謙氏,岩松宏典氏に多大なる尽力をいただきました.この場を借りて深謝いたします.
2020 年4 月吉日
関沢 明彦
佐村 修
四元 淳子