図説よくわかる臨床不妊症学 一般不妊治療編 3版
内容
不妊治療の最前線で活躍する専門家が,不妊治療の学問的総論と現場での治療の実践を解説して好評を博した書の改訂3版.理解を助ける図表を多用し,不妊治療に携わるスタッフ全てが知っておくべきポイントを分かりやすく紹介するというコンセプトはそのままに,近年の進歩を踏まえてブラッシュアップ.最近の大きなトピックである「子宮移植」について新項目を追加するなど,基本から最新の知見まで網羅した,臨床不妊症学の入門書.
序文
序
このたび「図説 よくわかる臨床不妊症学 生殖補助医療編」の姉妹編と致しまして,「図説 よくわかる臨床不妊症学 一般不妊治療編」を上梓する運びとなりました.
このテキストでは図説により初心者にも理解しやすい内容を目指し,かねてより本邦において生殖補助医療(ART)はもとより,不妊治療全般にわたり造詣が深いエキスパートの先生方から,臨床不妊症学の基本に忠実で,かつ質のよい原稿を頂戴致しました.
本テキストの「不妊症学総論」は,以下の内容で構成しています.すなわち初診後のクライアントに対し,まずは迅速かつ正確に不妊原因を明らかにするために行う,内分泌・画像・内視鏡などによる検査・診断法を解説します.クラミジアやHIVなどによる感染症の知識や,遺伝カウンセリングの技法も習得しておきたいところです.
不妊検査後の種々の治療により妊娠に至らず,結果的にARTが適応されることになるクライアントの多くは,初めて不妊相談のため病院を訪れた際に,まさか自分達がARTを受けることに選ばれてしまうとは思いもよりません.そこでこのような時にこそ,心理カウンセリングのテクニックが最も必要とされます.同時に不妊治療をめぐる倫理と法律の話題についても学びたいと思います.
続いて「不妊治療の実践」は,各種不妊検査法の実際のほか,不妊症の三大原因である排卵障害,卵管因子および男性因子について,最新の知見も含めてまとめていただきました.また子宮・頸管因子,子宮内膜症の話題や,頻度は高くないものの抗精子抗体による免疫性不妊症についての知識を習得します.
これら器質的な不妊原因が特定できない場合に,原因不明不妊症という診断に至ります.その頻度は,診断法の進歩や,ARTを行ってみて初めて受精,発生あるいは着床などに不妊原因を見出すことができる時代に入り,減少する傾向にあります.
一般不妊治療の中で,人工授精は切り札的な存在です.この段階で不妊治療を卒業できなければ,いずれARTが適応されることになります.ただし一般不妊検査の見直しや,二次検査と位置づけられる腹腔鏡,あるいは精子の受精機能検査などにより,ARTへの厳密な移行のタイミングを計る方法を学びます.
ところで本邦におきましては少子化問題がクローズアップされ久しいですが,特に女性の社会進出が盛んになり,おのずと晩婚化が進みました.その結果,リプロダクションにとっては大きなハンディキャップとなる卵巣のエイジングという問題に直面するまでに,女性は妊孕性を意識した生活設計を行うべきとの観点から,不妊予防という概念が最近生まれています.
日常の不妊治療の現場で活躍される皆様が様々な疑問点に遭遇されました際に,このテキストが少しでもブラッシュアップに貢献できましたら幸いでございます.是非とも多くの皆様にご覧いただきたく存じます.
末筆になりましたが,たいへんご多忙のところご執筆を賜りました先生方に,編集者一同,心より感謝申し上げます.
2007年9月吉日
柴原 浩章
森本 義晴
京野 廣一
目次
目次
【1】不妊症学総論
1 女性内分泌 藤間芳郎・田原隆三
A.性機能系ホルモン
B.視床下部-下垂体-卵巣系
C.卵巣の周期的変化
2 男性内分泌 小島聡子・市川智彦
A.視床下部-下垂体-精巣系の調節
B.精子形成
C.精子成熟と精液
3 妊娠の成立 松林秀彦
A.妊娠診断法
B.異常妊娠の診断と対応
C.習慣流産,不育症
4 画像診断 高見澤 聡
A.超音波検査
B.MRIとCT
5 内視鏡診断 鈴木達也
A.子宮鏡
B.経腟的腹腔鏡
C.経腹的腹腔鏡
6 感染と不妊症 高橋敬一
A.Chlamydia trachomatisと不妊
B.HIV感染者の不妊治療
7 不妊治療と遺伝 澤井英明
A.染色体・遺伝子の知識
B.染色体異常による不妊症
C.染色体異常による不育症
D.遺伝カウンセリング
8 生殖心理カウンセリング 平山史朗
A.生殖心理カウンセリング(不妊カウンセリング)と日常的心理社会的ケア
B.生殖心理カウンセリングに対する誤解
C.むすび〜再び,生殖心理カウンセリングとは
9 不妊治療と倫理 石原 理
A.生殖医療と胚研究の規制とガイドライン
B.ARTにおける安全・品質の保証,および治療成績調査登録の重要性
C.第三者の関与する生殖医療とグローバル化
D.患者中心主義とパターナリズム
10 不妊治療と法律 家永 登
A.不妊治療が適法とされる要件
B.生殖補助医療に対する法的対応
C.生殖補助医療の実施の可否と条件
D.生殖補助医療によって生まれた子の法的地位
【2】不妊治療の実践
1 女性不妊症の検査法 遠藤俊明
A.初期スクリーニング検査
B.二次検査
2 排卵障害 齊藤英和
A.排卵障害の種類
B.排卵誘発法
C.副作用
3 卵管異常 末岡 浩
A.卵管不妊の原因と新たな卵管鏡下卵管形成法の意義
B.FTシステムの基本構造と治療の概念
C.操作方法
D.治療の効果
E.卵管内腔の正常所見と病変
F.卵管不妊に対する検査と治療の指針
G.Q&A
4 男性不妊 谷口久哲・松田公志
A.男性不妊症の診断
B.治療(非ART治療)
5 子宮・頸管因子
A.子宮性不妊とは 藤井俊策
B.子宮筋腫は必ず不妊の原因になるか 藤井俊策
C.手術以外に治療法はあるか 藤井俊策
D.子宮腺筋症とは 藤井俊策
E.子宮腺筋症の治療 藤井俊策
F.子宮奇形も不妊の原因になるか 藤井俊策
G.子宮内膜菲薄化の治療 藤井俊策
H.頸管因子とは 藤井俊策
I.PCTとCMTはどのように行うか 藤井俊策
J.排卵期に性交できなかった場合はどうするか 藤井俊策
K.PCTの結果からどのように治療方針を決めるか 藤井俊策
L.子宮移植の現状 菅沼信彦・林 文子
6 子宮内膜症 泉谷知明・前田長正
A.子宮内膜症とは
B.診断
C.不妊症との関連
D.治療
7 免疫性不妊症 柴原浩章
A.女性の抗精子抗体
B.男性の抗精子抗体
C.よくある質問
8 原因不明不妊 伊藤啓二朗・森本義晴
A.原因不明不妊の定義
B.非ART治療
9 AIHとAID 戸屋真由美・中條友紀子・京野廣一
A.原理
B.AIH(配偶者間人工授精)
C.AID(非配偶者間人工授精)
10 体外受精への移行タイミング 香山浩二
A.卵管性不妊症
B.乏精子症
C.免疫性不妊症
D.原因不明不妊症
11 不妊の予防 久保春海
A.不妊の社会学
B.不妊になる可能性
C.不妊人口と不妊症予防
D.予防できる不妊要因
E.これからの不妊予防医学
索引