東北大学病院緩和ケアBOOK改訂2版 緩和ケア専門外の医療者も知っておきたいエビデンス
内容
緩和ケアのエビデンスやハウツーをコンパクトに収載
緩和ケアの充実のために,治療を行う診療科の力は必要不可欠である.本書では,緩和ケア専門外の医療者に役立つよう,様々な苦痛に対する症状緩和に必要な知識と対処法を簡潔にまとめた.今回の改訂版では全体の記述をアップデートし,また「終末期がん患者の鎮静」を新規項目として追加した.
序文
改訂2版の序
このたびは本書を手に取っていただき,誠にありがとうございます.
本書は,宮城県のがん診療連携拠点病院である東北大学病院の緩和ケアセンターが作成している院内マニュアルがもととなっています.国の重要課題にもなっている「がんと診断された時からの緩和ケア」を同院内で普及させるために,まずは基本的な緩和ケアを患者さんの主治医や担当看護師に実践していただけるよう「非専門家にもわかりやすい」内容とし,電子カルテ上で閲覧できるようにしています.それらを,中外医学社さんのご厚意で書籍化したところ,2022年の発売以来おかげさまで好評を得て,このたび改訂版を出していただけることになったのは望外の喜びです.
がん・非がんを問わず,患者さんを悩ませる疼痛や呼吸困難,不眠・せん妄その他のさまざまな苦痛症状に対して,エビデンスに基づいた対処法が示されています(改訂版では難治性疼痛への対処法として重要な選択肢となりうる「神経ブロック」に関する記載が大幅に増えています).また,患者さんに過度な負担をかけないための「輸液の調整」や,治療方針の決定・ご家族への説明において極めて重要な「予後予測」についてもぜひご理解ください.基本的緩和ケアを実践いただくことで,多くの患者さんが苦痛から解放されるとされますが,思うように症状が改善しない場合は,遠慮なくご施設の緩和ケア専門家にご相談ください(自身の限界を適切に見極めることも主治医としての責務です).本書が皆さんの診療の一助となり,患者さん・ご家族のQOLが良く保たれることを願います.
最後に,本改訂版の作成にあたりご尽力いただいた岩松宏典さんほか中外医学社の皆さんにこの場を借りて厚く御礼申し上げます.
2025年4月
井上 彰
緩和ケア専門外の医療者のために
早期からの緩和ケア提供体制構築の必要性が提言されていますが,実臨床における緩和ケアの主体は,治療を行っている診療科によるものであることは間違いありません.いわばプライマリケアの一環としての緩和ケアが,がん治療をはじめとした治療の現場における緩和ケアの軸であり,「緩和ケアを専門としていない医療者」の提供する緩和ケアの質の向上が求められています.
本書のもととなっているのは緩和ケアを専門としない医療従事者を対象に作られたマニュアルであり,どのようなエビデンスや症状緩和に必要な病態の整理があると助かるのかを主眼にして,これまで3回の改訂を繰り返してきました.「東北大学流」が色濃く反映している内容ではありますが,年間600件に迫る介入数を誇る当院の緩和ケアチームの実臨床を反映した一冊であり,多くの現場でお役立ていただけるのではないかと思っています.
多くの患者さんの背中から,我々はたくさんの大切なことを学んできました.若くして亡くなられた方,そして幼いお子さんを残して旅立たれた患者さんも少なくありません.これまで出会ってきた患者さんへの感謝の意を込め,少しでも病気などでご両親を亡くして経済的な援助を受けにくいお子さんたちの支援になるよう,本書の印税は一部をあしなが育英会に寄付します.
本書の出版にあたり,我々を育てて下さったすべての患者さんやご家族に,改めて心から敬意を表します.
2025年4月
田上恵太
「じゃあ,実際に何をするの?」
題名は私が初期研修医時代に指導医に問われた一言です.当時,北海道の砂川市立病院が主催する緩和ケア研修会を受講した私は,その熱い緩和ケアマインドに心打たれ緩和ケアの重要性について同僚や指導医とお話をする機会がありました.そんな時,当時の指導医から「緩和ケアが素晴らしいのは皆わかっているよ.じゃあ,実際に何をすれば良いの? みんなそれがわからなくて困っているんだよ」と返答があり,当時の私は何も答えられなかったことを今も鮮明に覚えています.
本書はそんな「じゃあ,実際に何をするの?」に対して,「実際はこうしてみよう!」が詰まった一冊と自負しています.
本書は「なぜその一手が有効なのか」についてエビデンスや最新のトピックスを簡潔に織り交ぜた構成になっています.ご一読いただき緩和医療の全体像をつかんでいただくのも良し,症状別に困った時に適宜項目ごとに確認をいただくのも良し,色々な使い方ができる一冊です.ぜひ,日常診療のなかで「症状緩和のために何か良い手はないか」と悩んだ時にお手に取っていただけると幸いです.必ずや皆様の力になってくれると信じております.少しでも患者さんが穏やかに過ごすことのお手伝いになると幸いです.
最後に本書の作成に多大なるご指導を頂きました中外医学社の岩松様,中村様におかれましてはこの場をお借りし,改めて御礼申し上げます.
2025年4月
猪狩智生
目次
目次
● 資料集 ●
表見返し オピオイド量換算の目安
ⅻ 各章の処方例のまとめ
裏見返し 予後予測ツール
1がん性疼痛
▶病態による疼痛の分類
▶疼痛の評価
▶時間経過による疼痛の分類
▶疼痛の病歴聴取
▶対処
突出痛のサブタイプごとの治療アプローチ
放射線照射
神経ブロック
薬物療法(1)アセトアミノフェン/非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
薬物療法(2) オピオイド
薬物療法(3)鎮痛補助薬
2がん関連呼吸器症状
▶呼吸困難
評価
対処
▶咳嗽
評価
対処
▶喀痰
評価
対処
▶死前喘鳴
評価
対処
3がん関連消化器症状
▶便秘
治療
▶がん性腹水による腹部膨満感
対処
▶悪性消化管閉塞
対処
▶化学療法による悪心
対処
▶放射線照射による嘔吐
対処
▶原因不明の悪心
評価
対処
▶吃逆
対処
4がん患者の終末期の輸液の考え方
▶輸液の考え方
▶皮下輸液について
5がん関連発熱
▶病態生理
▶評価と対処
評価
原因別の病態と対処
6がん関連電解質異常
▶高カルシウム血症
評価
対処
▶低ナトリウム血症
検査/診断
治療
7がん関連倦怠感
▶評価
▶対処
8がん患者のせん妄
▶評価
評価ツール
せん妄の準備因子,直接因子,誘発/促進因子
緩和ケア領域におけるせん妄の鑑別診断
せん妄の診断をする際の注意点
▶対処
▶緩和ケアで使用する主な抗精神病薬一覧
▶せん妄の評価ツール
9がん患者の不眠
▶原因による不眠の分類
▶症状による不眠の分類
▶評価ツール
▶緩和ケア領域における不眠の鑑別診断
▶不眠症の診断をする際の注意点
▶対処
▶不眠の評価ツール
10がん患者の予後予測
▶予後予測ツール
▶臨死期の徴候
▶アドバンスケアプランニング(ACP)の重要性
▶サプライズクエスチョン
11終末期がん患者の鎮静
▶評価
▶対処
事項索引
薬剤名索引