がん患者の運動器疾患の診かた ―新たなアプローチ「がんロコモ」―

定価:
4,840円(本体価格4,400円+税)

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書誌情報

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サイズ A5判
260頁
ISBN 978-4-498-05482-0
発行日 2019年10月24日

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内容

「がんロコモ」とは,「がんに関連した運動器障害によって移動能力が低下した状態」である.がん治療の進歩に伴い,「がんロコモ」に対応し,患者の運動器という観点からがん診療に取り組むことが望まれている.運動器の機能を維持・改善することは,がん患者が自身の力で動くため,生活するため,治療を受けるために極めて重要であり,本書は,このがん患者の運動器疾患についてまとめた新しいアプローチの書籍となっている.

序文

序 文

 がん治療における技術革新はめざましく,画像診断やロボット手術,分子標的薬の研究開発,がんゲノム医療,最近ではがん診療への人工知能(AI)導入など,以前は想像もできなかった展開をみせている.もちろん医療費高騰の問題はあるが,これらの技術革新により,わが国が先進諸国の中でトップレベルの治療成績をあげていることは疑いようのない事実である.
 そして,これらの研究開発はがん患者にとっても生命予後の改善という大きな福音をもたらした.がん患者の生命予後を第一義とし,医療者が研究を積み重ね,技術を磨いてきたことはもちろん正しい.編者らも同様に,共に整形外科医であるがその専門は骨・軟部腫瘍であり,この疾患群に含まれる肉腫から患者の生命を救うことに長年多くの力を注いできた.しかし,がん治療の進歩に伴い,生命予後を考えるだけでは患者は救われない時代となった.働きざかりのがん患者はがん治療と就労を両立しなければならない.また,がん治療の最中にいるがん患者は,パフォーマンスステータス(PS)を維持することで治療の継続が可能になる.そして,残念ながら生命予後が限られているがん患者は,自身の尊厳を全うするため最後まで自分で動きたいと考える.このように,がん患者の側に立ち,就労や治療,QOLを維持するために,がん患者の運動器という観点からがん診療に取り組もうとする概念が「がんロコモ」である.
 運動器は,消化器や呼吸器などの臓器を乗せた機関車のような存在であり,がんは時に,運動器をも障害し,機関車の機能を停止させてしまう.運動器の機能を維持・改善することは,がん患者が自身の力で動くため,生活するため,治療を受けるために極めて重要であり,本書は,このがん患者の運動器疾患についてまとめた新しいアプローチの書籍になる.その内容では,がん患者の運動機能低下を引き起こす運動器疾患に対して,その概念と対策が詳細に述べられている.がん患者が運動器疾患を患い動けなくなることは,患者自身にとって尊厳に関わる大きな問題であることは論をまたないが,治療を行う医療者にとっても治療遂行の障壁になることは日常診療で多く経験することである.多くのがん診療医が,本書を活用し「がんロコモ」を解決することは,わが国のがん診療のさらなる向上をもたらすと確信している.

2019年10月
森岡秀夫 河野博隆

目次

目 次

ch. 1 がん患者の運動器疾患 ─がんロコモとは─
 1 がんとロコモティブシンドローム 〈大江隆史〉
  がん患者の移動機能/がん患者の運動器障害/
  がん患者の運動器障害に整形外科が果たすべき役割/がん患者の運動器障害を疑ったら
 2 がんロコモの概念 ─がんロコモの目指すもの─ 〈河野博隆〉
  わが国は「がん大国」/がんは原発科が診るという文化/
  なぜ,整形外科は「がん」を診ないのか?/骨転移診療のあるべき姿/
  パフォーマンスステータス(PS)と運動器障害の関係/
  がんとロコモティブシンドローム(がんロコモ)/
  がん患者が「動ける」ことの意義/運動器診療科の潜在能力を発揮すること
 3 がんロコモの分類 〈森岡秀夫〉
  がんロコモの定義と分類
 4 がん患者の運動機能評価 〈高木辰哉〉
  関節可動域(ROM)/徒手筋力検査(MMT)/
  パフォーマンスステータス(PS)/Frankel分類およびAIS/Barthel Index(BI)

ch. 2 がんロコモの原因と対策
 2―1 がん治療に関連する運動器疾患
  1 がん治療と骨代謝 〈宮本健史〉
   がんによる骨代謝への影響/がん治療による骨代謝への影響
  2 薬剤性末梢神経障害 ─原因とその対応─ 〈高橋秀和,加藤俊介〉
   末梢神経障害発症のメカニズムとその特徴/評価/予防・治療
  3 がん患者の廃用症候群 ─がんロコモにおける特徴─ 〈緒方直史〉
   廃用症候群とは/がん患者における廃用症候群/がんロコモ患者における特徴
  4 がんとリハビリテーション ─がんロコモへの取り組み─ 〈杉浦英志〉
   がん周術期患者に対するリハビリテーション/
   抗がん剤治療患者に対するリハビリテーション/悪液質とリハビリテーション
 2―2 運動器疾患としての骨転移
  1 骨転移の疫学 ─がん時代をむかえて─ 〈片桐浩久〉
   骨転移の発生頻度/骨転移の原発/骨転移部位/Skeletal related event(SRE)と治療
  2 骨転移の病態とメカニズム 〈堀内圭輔,須佐美知郎,千葉一裕〉
   なぜ腫瘍細胞は骨に転移するのか/腫瘍細胞による骨代謝への干渉
  3 骨転移の臨床症状とがんロコモ 〈中田英二,国定俊之,尾崎敏文〉
   骨転移による臨床症状/骨転移による痛みに対しては緊急対処が必要な場合がある/
   四肢長管骨転移の症状:痛みは骨折の危険信号である/
   脊椎転移による背部痛を見逃さないために:痛みは麻痺の危険信号である(Red flag)/
   早期診断・早期治療のキー:患者指導
  4 骨転移の画像診断 ─良性骨病変との鑑別・麻痺や骨折リスクなど─  〈植野映子〉
   骨病変の指摘/質的診断
  5 造骨性と溶骨性骨転移 ─組織像から見た骨折リスク─ 〈山口岳彦〉
   がん骨転移と骨折/転移性癌腫に対する骨組織反応/
   がん骨転移による骨折リスク/溶骨型転移での骨折/
   混合型転移での骨折/造骨型転移での骨折/骨梁間型転移での骨折/
   転移性骨腫瘍の背景疾患
  6 骨転移患者に対する装具治療の基本 ─がんロコモを防ぐには─ 〈篠田裕介〉
   基本的な考え方/装具療法の適応/体幹装具/
   四肢骨転移に対する装具/歩行補助具/車椅子
  7 病的骨折の治し方 ─がん患者が動けるために─ 〈松井健太郎,渡部欣忍,河野博隆〉
   病的骨折を治すとはどういうことか/
   誰が転移性骨腫瘍によって生じた病的骨折を治すのか/
   切迫骨折を治す/術式決定で知っておくべきこと/固定の原則
  8 外科的切除を行う骨転移 ─がんロコモとがん治療─ 〈中川瑠美,山口さやか,中山ロバート〉
   一般的な骨転移手術治療の適応/骨転移に対する外科的切除の適応/
   骨転移に対する外科的切除の実際/合併症
  9 脊椎転移外科的治療のタイミング 〈大島和也〉
   介護社会から自立支援社会へのパラダイムシフト/
   がん診療に必要とされるのは“専門領域+α”(アサーティブコミュニケーション)/
   脊椎転移のケアがなぜ必要か?/脊椎転移の手術のタイミングはいつか?/
   なぜ「動けない」「生活できない」のか?/
   脊椎転移による脊髄麻痺は,除圧が早ければ早いほど機能予後が良い!/
   脊椎転移の手術はPSを改善する!/
   Frankel Aは実用性の回復が困難であり,早期離床を目標とすべき/
   脊椎転移の治療において大切なこと(予後予測ではない)/
   患者の健康と満足度を高めるQoS
  10 脊椎転移に対する低侵襲治療 ─新しい取り組み─ 〈磯貝宜広,船尾陽生,石井 賢〉
   姑息的手術/手術適応と低侵襲化の必要性/脊椎手術の低侵襲化/
   低侵襲化の利点と問題点/PPSの進歩/根治的手術
  11 骨転移に対する放射線治療 ─がんロコモ対策を中心に─ 〈中村直樹〉
   脊髄圧迫症状(麻痺)の予防・改善を目的とした放射線治療/
   骨折の予防を目的とした放射線治療
  12 骨転移に対するIVR ─がん患者のQOL改善への取り組み─ 〈中塚豊真〉
   治療対象と適応基準/使用機器/CT透視ガイド下ablation治療手順とその工夫/
   しばしば行う追加手技を伴う工夫方法/RFAとCryoの比較・相違
  13 骨転移と骨修飾薬 〈高橋俊二〉
   はじめに:骨転移によるQOL低下/
   骨転移の機序と骨特異的な薬物治療:骨修飾薬(BMA)/
   がん患者における骨粗鬆症・骨密度低下とその治療
  14 骨修飾薬による顎骨壊死 ─対策と臨床経過─ 〈百合草健圭志〉
   顎骨壊死/骨修飾薬の対象となる患者/
   口腔管理の目的は,患者の日常生活を支えること/
   対策:医科歯科連携による感染源となりうる歯牙の管理/
   潜在的な歯性感染症リスク/感染源の管理とQOLの維持のバランスを/
   医科歯科連携の現状
  15 骨修飾薬長期投与に伴う非定型大腿骨骨折の病態と治療 〈須佐美知郎,堀内圭輔,千葉一裕〉
   AFFの病態/AFFの診断/AFFに対する保存的治療/AFFに対する手術療法
  16 骨転移の痛みとオピオイド ─がんロコモにおけるオピオイドの位置づけ─ 〈岩瀬 哲〉
   骨転移の痛み/疼痛患者の管理/骨転移の痛みと事例/
   がんロコモにおけるオピオイドの位置づけ
  17 骨髄癌腫症について 〈後藤秀彰,南 博信〉
   機序/疫学/症状・症候/検査所見/治療/予後
  18 原発不明骨転移とゲノム医療 〈小林 寛〉
   原発不明がんについて/原発不明がんのゲノム解析について
 2―3 がん患者と良性運動器疾患
  1 がん患者と良性脊椎疾患 〈大鳥精司〉
   危険信号を有し,重篤な脊椎疾患(腫瘍,炎症,骨折)の合併が疑われる背部痛/
   悪性腫瘍と骨粗鬆症性椎体骨折の鑑別は特に重要/
   良性の神経症状を伴う背部痛(つまり下肢に麻痺や神経痛を伴うもの)/
   良性の腰椎由来の下肢神経症状と関節疾患との鑑別に注意/
   非特異的な背部痛(X線,MRIなどで異常がないが背部痛を伴う)
  2 がんの好発年齢に一致して発生する良性関節病変 〈豊岡青海,中川 匠〉
   肩関節/手関節/股関節/膝関節
  3 がん患者と関節リウマチ 〈廣瀬 旬,田中 栄〉
   がんとリウマチ性疾患/がん患者が有するリウマチ性疾患に対する治療

ch. 3 がん患者の社会復帰
 1 がん患者の在宅支援 ─がんロコモ対策が果たす役割─ 〈酒井良忠〉
  がん患者の在宅支援に対するがんロコモ対策の重要性/
  外来がん化学療法やその他外来通院患者へのがんロコモ対策/終末期患者の在宅支援/
  外来でのがん患者へのリハビリテーション治療の提供について
 2 がん患者の運動器管理と医療連携 ─ 一般整形外科医によるがんロコモ対策─ 〈阿部哲士〉
  がん患者の運動器障害の診断は整形外科が行う/
  がんによる痛み(骨転移)に対して一般整形外科医が求められること/
  がん治療による運動器障害に対して一般整形外科医が求められること/
  がんが原因でない運動器障害に対して一般整形外科医が求められること
 3 がん患者の就労と運動器管理 ─就労支援とがんロコモ─ 〈城戸 顕,塚本真治,石田由佳子〉
  職業復帰とリハビリテーション治療/
  リハビリテーション医学の視座から見るがん複合障害/
  運動器診療を専門とする“がん専門医”に対診する/
  就労支援の具体的な形/主治医の責任としての“運動器管理”

ch. 4 キャンサーボードと骨転移外来
 1 がん診療拠点病院とキャンサーボード ─がんロコモにおける役割─ 〈小林英介〉
  がん診療拠点病院とは/キャンサーボード/
  がんロコモにおけるがん拠点病院およびキャンサーボードの役割
 2 骨転移キャンサーボード ─立ち上げから運営まで─ 〈佐藤信吾〉
  なぜ骨転移キャンサーボードが必要なのか?/
  骨転移キャンサーボードはどの診療科が主導すべきか?/
  骨転移キャンサーボードの立ち上げに必要な準備/
  骨転移キャンサーボード開催までの実際の取り組み/
  東京医科歯科大学における骨転移キャンサーボードの運営方法について
 3 骨転移キャンサーボードの実際 ─その内容と結果─ 〈澤田良子〉
  当院の骨転移キャンサーボードについて/症例提示/骨転移キャンサーボードの効果
 4 骨転移外来 ─外来でできるがんロコモ─ 〈山口さやか,中山ロバート〉
  骨転移の外来診療とは/骨転移外来の形態と実践例/外来診療前の準備/
  骨転移外来での診察/骨転移外来で行う検査/骨転移外来で行う治療

ch. 5 がんロコモへの対応の具体例(セルフチェック)
 問題
 解答と解説

索引

執筆者一覧

  • 国立病院機構東京医療センター整形外科 医長 森岡秀夫   編著
  • 帝京大学医学部整形外科学講座 主任教授 河野博隆   編著
  • NTT東日本関東病院整形外科部長 ロコモ チャレンジ!推進協議会委員長 大江隆史  
  • 順天堂大学医学部整形外科・リハビリテーション科・緩和ケアセンター准教授 高木辰哉  
  • 熊本大学大学院生命科学研究部総合医薬科学部部門感覚・運動医学分野整形外科学講座教授 宮本健史  
  • 慶應義塾大学医学部整形外科・先進運動器疾患治療学講座II特任教授       
  • 順天堂大学医学部附属浦安病院がん治療センター助教 高橋秀和  
  • 順天堂大学大学院医学系研究科臨床腫瘍学教授 加藤俊介  
  • 帝京大学医学部リハビリテーション科教授 緒方直史  
  • 名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻理学療法学講座教授 杉浦英志  
  • 静岡県立静岡がんセンター整形外科部長 片桐浩久  
  • 防衛医科大学校医学教育部整形外科学講師 慶應義塾大学医学部整形外科 特任准教授 堀内圭輔  
  • 防衛医科大学校医学教育部整形外科学講師 須佐美知郎 
  • 防衛医科大学校医学教育部整形外科学教授 千葉一裕  
  • 岡山大学医学部整形外科学講師 中田英二  
  • 岡山大学医学部整形外科学准教授 国定俊之  
  • 岡山大学医学部整形外科学教授 尾崎敏文  
  • がん研究会有明病院画像診断部医長 植野映子  
  • 獨協医科大学日光医療センター病理診断科/病理部教授 山口岳彦  
  • 東京大学医学部附属病院リハビリテーション科准教授 篠田裕介  
  • 帝京大学医学部整形外科学講座助教 松井健太郎 
  • 帝京大学医学部整形外科学講座教授 渡部欣忍  
  • 慶應義塾大学医学部整形外科助教 中川瑠美  
  • 慶應義塾大学医学部整形外科助教/慶應義塾大学病院骨転移診療センター 山口さやか 
  • 慶應義塾大学医学部整形外科講師/慶應義塾大学病院骨転移診療センター 中山ロバート
  • ベルランド総合病院リハビリテーション科部長/整形外科副部長  大島和也  
  • 国際医療福祉大学医学部整形外科学助教 磯貝宜広  
  • 国際医療福祉大学医学部整形外科学准教授 船尾陽生  
  • 国際医療福祉大学医学部整形外科学主任教授 石井 賢  
  • 国立がん研究センター東病院放射線治療科医長 中村直樹  
  • 鈴鹿中央総合病院IVR科部長 中塚豊真  
  • がん研究会有明病院総合腫瘍科部長/化学療法部部長 高橋俊二  
  • 静岡県立静岡がんセンター歯科口腔外科部長 百合草健圭志
  • 埼玉医科大学病院救急科・緩和医療科教授 岩瀬 哲  
  • 神戸大学医学部附属病院腫瘍・血液内科 後藤秀彰  
  • 神戸大学医学部附属病院腫瘍・血液内科教授 南 博信  
  • 東京大学医学部附属病院整形外科助教 小林 寛  
  • 千葉大学大学院医学研究院整形外科学教授 大鳥精司  
  • 帝京大学医学部附属病院整形外科 豊岡青海  
  • 帝京大学医学部整形外科学講座教授 中川 匠  
  • 東京大学医学部附属病院整形外科講師 廣瀬 旬  
  • 東京大学医学部附属病院整形外科教授 田中 栄  
  • 神戸大学大学院医学研究科リハビリテーション機能回復学特命教授 酒井良忠  
  • 帝京大学医学部附属病院整形外科病院教授 阿部哲士  
  • 奈良県立医科大学附属病院リハビリテーション科病院教授 城戸 顕  
  • 奈良県立医科大学附属病院リハビリテーション科臨床助教 塚本真治  
  • 奈良県立医科大学附属病院リハビリテーション科臨床助教 石田由佳子 
  • 国立がん研究センター中央病院骨軟部腫瘍科医長 小林英介  
  • 東京医科歯科大学医学部附属病院腫瘍センター/ 佐藤信吾  
  • 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科整形外科学分野講師       
  • 東京大学医学部附属病院整形外科/リハビリテーション科 澤田良子  
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