お前は小児外科医になれない ―誰かの大切な子供にメスを入れるということ―

定価:
3,300円(本体価格3,000円+税)

在庫あり

書誌情報

書誌情報
サイズ A5
178頁
ISBN 978-4-498-04604-7
発行日 2026年08月18日

内容


アメリカで小児外科医になった歴代初の日本人医師の挑戦と臨床の記録
アメリカで正規ルートを経て外科研修に入ること自体が外国人にとって極めて困難ななか、さらに外科のサブスペシャリティの中でも最難関とされ、多くのアメリカ人医師でさえ志半ばで断念する「小児外科フェローシップ」に進んだ異色のキャリア。本書はそんな著者の失敗と挫折を重ねながら夢を実現させた自伝的記録.国境を越えて患者と向き合い続ける一人の小児外科医の姿を通じて、「仕事のやりがいとは」「人を救うとは」そして「成長するとは何か」を深く考えさせられる一冊

序文

推薦文



 本書は日本の医学部を卒業後、アメリカでの外科研修を経て米国小児外科指導医となるという途方もない夢の頂に立った宮田真先生のパーソナルドキュメンタリーです。宮田先生は、独学でネイティブレベルに英語を修得してしまうという稀有な才をもちながらも、その感性の純朴さについ共感してしまう愛媛育ちの人です。北米最高クラスの競争率である小児外科。その狭き門をくぐるべく、フランス語圏の小児外科フェローシッププログラムを受験し、覚えたてのフランス語の寸劇で面接を突破するなど、その酔狂とも言えるクリエイティビティが、彼の唯一無二の物語を生んでいきます。
アメリカでの外科修行中からリアルタイムでブログに書き残されていた内容をそのまま掲載しているエピソードが多く、成功者の目線ではない、迷える挑戦者としての等身大の息吹が感じられます。第一幕を「冒険譚」としてワクワクしながら読み進められるのはそのためでしょう。第二幕は小児外科という夢の門をくぐった先の物語です。臨場感に満ちた手術描写、難症例を乗り越える中で抱く外科医としての葛藤、たくましく生き抜く小さな患者さんや頼もしい仲間たちの出会いと別れを通じて見えてくる、小児外科医という仕事。その素晴らしさが生き生きと感じられます。一方で、アメリカの医療業界のリアリティが内面から描かれ、厳しさに直面するエピソードも少なくありません。
 米国小児外科指導医として疾走し、挑戦を心から楽しむ宮田先生の現在地が描かれます。米国腎臓内科指導医であり、宮田家の軍師でもある奥様、子供たちとの異国での生活風景から、アメリカ文化を垣間見るのも本書の楽しみ方の一つです。
 宮田先生の指揮する小児外科フェローシッププログラムを卒業した日本人小児外科フェロー「マホ先生」として、私は本書に登場します。師匠ができあがるまでの舞台裏“The making”は、迷いや苦難の時期が師にも存在していたことを教えます。「明日は1%でも良い自分になっていたい」という渇望こそが、夢を実現できる人のマインドセットである、とこれ以上ない説得力で、静かに胸に迫ってくるのです。
この破天荒な挑戦の物語が、なにかを成したい人の心に灯をともし、背中を押してくれることでしょう。その数ページとなれたこと、そして宮田先生を生涯、師として仰げる幸運に感謝しています。

京都府立医科大学小児外科
元カーディナルグレノン小児病院小児外科フェロー
井上(倉島)真帆

まえがき


「お前には無理だ」
何年も見続けてきた夢に対して、面と向かってこのように言われた経験はあるでしょうか?  言われた時の反応は、人それぞれだと思います。
この本を手に取ってくださった人の中には、医学部を目指す高校生やその親御さん、海外志向の医学生、研修医、若い医師、あるいはベテラン医師の方もいるかもしれません。本書は、そのような方々に向けて、僕のこれまでの歩みを2つの「幕」として描いたものです。
 第1幕では、外国人で凡人である僕が、失敗と再挑戦を繰り返しながらアメリカの小児外科医になるまでの“Making”の紆余曲折を、そして第2幕では、念願の小児外科医として独り立ちしてからの、たくさんの仲間や患者さんとの出会いと別れのドラマを記しています。エリートたちがしのぎを削るアメリカ小児外科の世界に飛び込むには、失敗しても立ち上がる「グリット(やり抜く力)」が不可欠でした。また、小さな患者さんたちとの経験を通して感じた小児外科医療の素晴らしさと、思い通りにいかないときの落胆や歯がゆさも、ありのままに綴っています。
 本書は、いわゆる「海外臨床留学指南書」ではありません。必要な情報やHow toを小ぎれいにまとめた本でもなければ、同じことをすれば結果が出るという再現性もないでしょう。「ふーん、珍しい生き方だな」「こんな医者のキャリアもあるんだな」という感想の人もいれば、中には少し嫌悪感を抱く人もいてもおかしくはありません。でも僕は、読者の10%くらいの人にとっては、本書が魂を揺さぶられるような高揚感や、「自分もやってやる」というやる気の源になってくれたらと願っています。そのさらに一部の人が、実際に自分の行動やその後の人生を変えるきっかけになれば、これ以上の喜びはありません。その熱量が向かう先は、小児外科でなくても、医学でなくても構わないのです。
 タイトルの由来は、僕が2007年の渡米前に始めたブログ『The Making Of A Pediatric Surgeon  ―  誰かの大切な子供にメスを入れるという仕事』です。自己満足で始めたブログには、外科研修プログラムに入るための奮闘、生き残るためのあがき、そして夢への挑戦と挫折が克明に記されています。今読み返すと、懐かしくもあり、こっぱずかしくもあるその記録が、本書のベースとなっています。
「誰かの大切な子供にメスを入れるという仕事」―小児外科ほど、時に涙が出るほどの嬉しさ、楽しさ、やりがい、そして悔しさ、怖さ、ストレス、尊さを兼ね備えた分野はないと、僕は思っています。さあ、幕を開けましょう。

「お前には無理だ」と言われながら、この最高のフィールドにたどり着くまでの冒険と、その先で繰り広げられるドラマを、ご一緒に。

2026年春
宮  田  真

目次

目 次


プロローグ:Gratitude Rock

第1幕 The Making of a Pediatric Surgeon
◆鬼才・アルビアー先生との出会い
◆「手元の一羽」か「茂みの二羽」か  ―  アメリカ外科レジデンシーへの挑戦
◆デトロイトでの試練  ―  1年契約の現実
◆頑固親父系外科医、ファーガソン先生
◆エイプリルフールの面接
◆メリーランドの迷宮  ―  ドラクエの洞窟をさまよう日々
◆Young Manからの卒業
◆外国人フェローたち
◆ボルチモアの洗礼
◆手術は国境を越えて
◆レジデントをすることでしか学べないもの
◆お前は小児外科医になれない
◆メモリーパレス  ―  記憶の宮殿
◆Traffic University  ―  ロサンゼルスの渋滞を味方につける
◆Comment est ton français?  ―  フランス語どうなの?
◆シュレイヤスの死
◆初日から愕然
◆終わらない手術記録
◆Last General Surgeon  ―  最後の一般外科医
◆双子の未熟児
◆バイリンガル賞を逃すという「名誉」
◆Welcome back to America!
幕間Intermission Life between Surgeries
◆セントルイスにないはずのLittle Tokyo
◆妻は名軍師
◆会うまで信じられないアメリカ人
◆ことばで見るアメリカの外科文化
◆肥満大国アメリカ  ―  Love Handlesとの闘い

第2幕 Beyond the Dream
◆日本人小児外科フェロー、マホ先生
◆パンデミックの思わぬ恩恵
◆Push the envelope!  ―  低侵襲外科を究める
◆骨の髄までしゃぶりつくす
◆小児外科医、時々、外傷外科医
◆3Dプリントで見えていたものと、見えなかったもの
◆チーム医療の光と影
◆子供が死ぬということ
◆SKILLとの出会い
◆アメリカ外科医の働き方と収入  ―  研修医の10倍!?
◆日米医師の人事とヒエラルキーと自動販売機
◆膨大な症例を可能にする北米のシステム
◆敏腕ナビゲーター、クリスティン
◆クビにされた同僚たち
◆ビリーmy love  ―  難治性便秘に対するMACE手術
◆宮野先生がくれたヒントと学び
◆ホンジュラス再び  ―  キャロルの独壇場
◆Traffic University再入学
◆1% Better Every Day  ―  良い外科医になりたい
エピローグ:Gratitude Rock

執筆者一覧

  • セントルイス大学医学部・カーディナルグレノン小児病院 宮田真
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