読んで見てわかる免疫腫瘍学

定価:
5,060円(本体価格4,600円+税)

在庫あり

書誌情報

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サイズ B5判
170頁
ISBN 978-4-498-02264-5
発行日 2017年04月19日

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内容

本書は,がん免疫療法や研究に携わろうとする医師やメディカルスタッフを対象に,免疫や免疫を担う細胞や組織などの基本的な知識の解説に始まり,がんと抗原の分類,免疫反応などを解説する腫瘍免疫学について,そして,最新のがんの免疫療法について解説するという3部構成になっている.これまで免疫の本は外来抗原に対する感染症をテーマにしたものが多いが,本書は内在抗原である「がん」の視点からの解説していることが大きな特徴である.

序文

発刊にあたって

 本書『読んで見てわかる免疫腫瘍学』は,これから腫瘍免疫学を学び,がん免疫療法に携わる全医療人のため執筆しました.読者の皆さんと同じように,私も毎日ひとりで外来診療にたち,免疫学,腫瘍免疫学,免疫腫瘍学をどのように学び,自らの実地医療に生かすか常に模索してきました.本書は基礎免疫学から連続して免疫腫瘍学を解説することで,がん免疫療法への理解を深め,さらに臨床研究を始める人達の手助けになるよう配慮しました.本書では,免疫学と免疫腫瘍学の歴史をふり返り,未来のがん免疫療法を担う若手研究者への期待を込めています.

 この約10年間,我々は肺がん患者で恒常的な免疫監視の存在を明らかにし,がんワクチン,制御性T細胞の除去療法,複合免疫療法の臨床試験と医師主導治験を実施しました.また免疫モニタリングを通して,末【梢】血やがん組織の腫瘍微小環境を解析しました.その免疫応答は個体差をもって,刺激に対し促進と抑制が微妙に変化します.実際,Tリンパ球やBリンパ球には,微小環境に応じて腫瘍を抑制ないし促進するサブセットが存在します.これら免疫系の極めて緻密な個体維持の仕組みには,改めて驚かされます.近年,がん免疫は腸内細菌や免疫細胞のエネルギー代謝との関連が注目され,免疫代謝学の新潮流が生まれてきています.

 日本の研究者は免疫学において,数々の重要なサイトカイン,免疫細胞や関連分子を発見し,世界に冠たる貢献をしてきました.例えば,IgE,IL-2,IL-5,IL-6は,治療薬や標的分子として臨床応用されています.いま世界を席巻している免疫チェックポイント療法も,1992年に本庶佑研究室で発見されたPD-1分子に端を発し,がん免疫療法は免疫賦活型から抑制解除型へのパラダイムシフトによって,がん治療の表舞台に登場しました.

 がん薬物療法の歴史は,1943年のリンパ腫に対するnitrogen mustard(化学兵器),1997年から抗体薬,2001年に小分子標的薬(imatinib)が登場しました.その開発は,正常細胞とがん細胞の相違を革新的な技術によって特定し,その相違分子に対し創薬する潮流が現在も続いています.しかしがんは不均一性を示し,一対一の創薬には限界があります.免疫療法では,無数のレパトアつまりスペクトラムをもつ自らのリンパ球集団を活性化し増殖させ,不均一ながん集団を撃破します.いま免疫学の革新的な発見によって,リンパ球という極めて多様性に富んだ,無数のがん免疫分子標的薬を手にしたのです.がん薬物療法は病理所見に基づくphenotypeからgenotype,そしてimmunotypeへと変遷し,確実にPrecision MedicineとPersonalized Medicineへ向かっていることを実感します.免疫腫瘍学が凄まじい速度で日々進歩している今そして将来,本書が病める人々のためお役に立てることを祈念して止みません.

 最後に,腫瘍免疫学を身近で直接ご指導頂いた中山睿一教授(次頁に紹介)に感謝申し上げます.また上田龍三教授をはじめ,先進的がん免疫療法の班研究でお世話になった班員の先生に厚く御礼申し上げます.そして,がん免疫研究を強力に遂行して頂いた教室員の皆様に感謝いたします.

2017年4月
 岡 三喜男


本書の利用について

1)治療薬の適正使用について

本書に記載しているがん免疫治療薬の多くは,海外での治験や臨床試験で用いた用量と用法です.本邦での使用については,日本国内で承認された適応疾患,用量,用法を参照して下さい.また,下記に示す厚生労働省からの「最適使用推進ガイドライン」の遵守をお願い致します.

2)厚生労働省ホームページ 

平成29年2月14日(保医発0214第4号)

「抗PD-1 抗体抗悪性腫瘍剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について」

平成29年2月14日(薬生薬審発0214第1号)

「ニボルマブ(遺伝子組換え)製剤及びペムブロリズマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進

ガイドライン(非小細胞肺癌及び悪性黒色腫)について」

3)現在,免疫学とがん免疫療法の進歩は著しく,日々新しい知見が集積されています.その結果,本書の記載内容が一部において,誤記となる可能性がありますのでご注意下さい.本書の図表は 全て著者作で簡略化していますが,誤りなどあれば読者からのご指摘をお待ちしています.

目次

目次

第I部 免疫学の基本的な知識
 1 免疫と免疫反応
 2 免疫系を担う細胞と組織
  1) 貪食細胞―好中球単球マクロファージ
   memo 1 サイトカイン
   memo 2 ケモカイン
  2) 好酸球,好塩基球,肥満細胞
  3) 抗原提示細胞(APC)―樹状細胞(DC) 濾胞樹状細胞(fDC)
    その他の抗原提示細胞
  4) NK細胞
  5) T細胞(Tリンパ球)―細胞傷害性T細胞(CTL) ヘルパーT細胞(Th 細胞)
    制御性T細胞(Treg) γδ 型T細胞NKT細胞
  6) B細胞(Bリンパ球)
  7) 自然リンパ
 3 自然免疫と適応免疫
  1) 自然免疫
  2) 適応免疫(獲得免疫)
 4 抗原と抗原認識
  1) 抗原―自然免疫の抗原抗原ペプチド
  2) 抗原認識―主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の構造と機能
    抗原受容体の構造と機能
 5 T細胞の活性化と免疫応答
  1) T細胞の免疫応答
  2) CD4+T細胞とその亜群
  3) CD8+T細胞
 6 B細胞の活性化と免疫応答
  1) B細胞の免疫応答
  2) 抗体産生―T細胞依存性と非依存性の抗体応答
    抗体のクラス(アイソタイプ)転換〔class(isotype)switching〕
 7 抗体の構造と機能
  1) 構造
  2) 機能
 8 免疫寛容と自己免疫
  1) 中枢性寛容
  2) 末梢性寛容
  3) T細胞の免疫寛容―抑制性サイトカイン免疫チェックポイント
  4) B細胞の免疫寛容
  5) 自己免疫とその誘導
 ひとやすみ 1Jennerと種痘伝来,そして種痘の普及

第II部 腫瘍免疫学
 1 がんと免疫
 2 がん抗原
  1) がん抗原の分類
  2) がん精巣抗原(CTA)とがん精巣遺伝子(CTgene)
  3) 新生抗原(neoantigen)
 3 がん細胞およびがん抗原の認識と免疫応答
  1) 自然免疫系―NK細胞γδT細胞NKT細胞腫瘍関連マクロファージ(TAM)
    骨髄由来抑制細胞(MDSC) 好酸球と肥満細胞
  2) 適応免疫系―樹状細胞と抗原提示T細胞とその亜群B細胞
 4 がんの免疫編集と腫瘍微小環境
  1) がん免疫編集
  2) 腫瘍微小環境(TME)
  3) 免疫微小環境の解析―メラノーマ肺がん腎細胞がん大腸がんその他
 5 免疫代謝
 ひとやすみ 2 Abbie Lathrop“, TheMouseWoman”of Granby

第III部 免疫腫瘍学
 1 がん免疫療法の歴史
 2 がん免疫療法とその考え方
  1) 基本的な考え方
  2) 能動および受動免疫療法
 3 免疫療法の各論
  1) がん治療ワクチン
  2) 樹状細胞ワクチン
  3) T細胞輸注療法―TIL療法TCR-T細胞療法CAR-T細胞療法
  4) Abscopal効果と免疫放射線療法
  5) がんの抗体療法
 4 免疫チェックポイント阻害薬の基礎と臨床
  1) 免疫寛容と免疫チェックポイント
  2) 免疫応答の共刺激分子と共抑制分子
   memo 3 B7-CD28スーパーファミリー
   memo 4 TNF受容体スーパーファミリー(TNFR-SF)
  3) がんにおける免疫チェックポイント分子―CTLA-4 PD-1 LAG-3
    TIM-3 TIGIT
  4) 免疫チェックポイント分子の動態と階層性
  5) 免疫チェックポイント療法の考え方
 5 免疫療法の効果と有害事象
  1) 免疫療法の効果―免疫関連奏効パターン免疫療法の効果判定
  2) 免疫療法の耐性因子と効果予測因子―がんのPD-L1 発現とTIL
    がんイムノグラムその他の耐性因子
  3) 免疫療法の有害事象―定義と発現機序,治療各種の免疫療法とirAE
    免疫チェックポイント阻害薬による間質性肺炎,稀な有害事象
 6 免疫解析法と免疫モニタリング
 7 併用免疫療法と複合がん免疫療法
  1) 従来療法との併用
  2) 複合がん免疫療法―複数の免疫チェックポイント阻害薬の併用
    共刺激分子のアゴニスト抗体との併用代謝酵素薬との併用
    その他のT 細胞以外を標的とした薬剤
 ひとやすみ 3 Pompe の日本種痘録

参考書と引用文献
索引

執筆者一覧

  • 川崎医科大学呼吸器内科学 主任教授 岡 三喜男
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