誰も教えてくれなかった癌臨床試験の正しい作法
内容
医師は個人的な意見を患者に語るべきか? 試験の最終結果は患者に知らせなくてはならないのか? 長大な説明文書は患者に読ませるべきものなのか? 臨床研究において実際に直面する様々なジレンマを活写した,ウィットに富む16のvignette(小品)を手がかりに,臨床医・臨床倫理学者・生物統計家が,答えの出ない問題の答えを求めて熱く語り合う.臨床試験を実施する医師の,プロフェッショナリズムを考えるよすがとなろう.
序文
略歴
國頭英夫(くにとう・ひでお)
日本赤十字社医療センター化学療法科部長。昭和36年鳥取県米子市生まれ。昭和61年東京大学医学部卒業。横浜市立市民病院呼吸器科、国立がんセンター中央病院内科、三井記念病院呼吸器内科などを経て平成26年より現職。日本臨床腫瘍学会協議員・日本肺癌学会評議員、杏林大学腫瘍内科客員教授、日本赤十字看護大学非常勤講師。「里見清一」名義の著書に『偽善の医療』(新潮新書)、『誰も教えてくれなかった癌臨床試験の正しい解釈』(中外医学社)、『見送ル』(新潮社)、『医者と患者のコミュニケーション論』(新潮新書)など。
佐藤恵子(さとう・けいこ)
京都大学医学部附属病院臨床研究総合センターEBM推進部特任准教授。東京都生まれ。東京薬科大学薬学部卒、同大大学院博士前期課程修了、東京大学大学院健康科学看護学博士後期課程修了。薬剤師、保健学博士。田辺三菱製薬医薬研、国立がん研究センター中央病院、和歌山県立医科大学、京都大学大学院医学研究科などを経て現職。専門は研究倫理、臨床倫理学。共著に『これからの臨床試験』(朝倉書店)、『薬剤疫学の基礎と実践』(医薬ジャーナル社)、『がん臨床試験テキストブック』(医学書院)、『Informed Consent』(NOVA)など。幹細胞研究や再生医療の倫理的問題を考えてもらうための冊子『幹細胞研究ってなんだ』をHP(http://www.cape.bun.kyoto-u.ac.jp/project/project02/)に掲載。
吉村健一(よしむら・けんいち)
生物統計家。金沢大学附属病院先端医療開発センター特任教授/生物統計部門長。神戸大学大学院医学研究科客員教授。昭和51年愛知県碧南市生まれ。平成17年東京大学大学院医学系研究科博士後期課程修了(生物統計学/疫学・予防保健学)。国立がんセンターがん予防検診・研究センター、国立がんセンターがん対策情報センター、京都大学医学部附属病院探索医療センター、神戸大学医学部附属病院臨床研究推進センターを経て、平成26年8月より現職。これまで、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)データセンター統計家、西日本がん研究機構(WJOG)統計顧問、日本小児がん研究グループ(JCCG)生物統計委員会委員、愛知県立がんセンター客員講師なども務める。
目次
もくじ
第1部 情報開示の諸問題
VIGNETTE 1 試験の途中経過の開示
Discussion 途中経過の開示と選択バイアス
Adaptive randomizationについて
第II相試験で、成績がよくないことが分かってきた時に
臨床試験の参加と利他主義
VIGNETTE 2 たまたま私は知っている
Discussion 中間解析と試験の継続・中止
たまたま知った情報を「私用」してよいか
VIGNETTE 3 試験治療と医者の「個人的見解」
Discussion ランダム割り付けにおけるequipoise
医師は個人的な意見を患者さんに言うべきか
プロトコール逸脱と日常臨床
VIGNETTE 4 試験治療の提示
Discussion 臨床試験と標準治療の関係
第I相試験での問題
患者さんへの情報は、何をどこまで提供すべきか
VIGNETTE 5 よその試験の結果
Discussion 他の試験の結果をどこまで患者さんに伝えるか
並行する試験でネガティブな結果が出たら
VIGNETTE 6 最終結果の公表と開示
Discussion 試験の最終結果は患者に知らせなくてはならないか
試験の結果を公表できない場合
説明文書にどこまで載せるべきか
「患者様」?
第2部 試験デザインの妥当性
VIGNETTE 7 病院の方針
Discussion クラスターランダム化と患者さんの自己決定権
ランダム化比較試験とpropensity score
大きく異なる治療法の比較
救命救急治療の比較
VIGNETTE 8 もう1回やるのか
Discussion Randomized phaseIIとphaseIII
Randomized phaseIIの結果と治療の選択
エビデンスの強さ
VIGNETTE 9 同じことやるのか
Discussion とにかく「やる」ことが大事!?
試験登録制度
PhaseII試験は必要か
VIGNETTE 10 後出しジャンケン
Discussion エンドポイントの閾値設定によって評価は変わる
OSかPFSか
VIGNETTE 11 非劣性試験は倫理的か
Discussion 非劣性試験の問題点
患者にどう説明するか
ハイブリッドデザインとは
QOLをどう測るか
VIGNETTE 12 IRB承認の問題
Discussion なぜ施設ごとにIRBがあるのか
外部委員・専門外委員の役割
外科領域における審査
第3部 試験と治療の境界
VIGNETTE 13 臨床試験参加の本質は利他的なものか(その1)
Discussion BRIM3試験の概要
ランダム化比較やクロスオーバー禁止は必要だったか
VIGNETTE 14 臨床試験参加の本質は利他的なものか(その2)
Discussion Off-protocol治療の是非
患者さんは利他的な動機で試験に参加する?
Equipoiseは必要か
VIGNETTE 15 希望を与える臨床試験
Discussion 患者さんから臨床試験参加を希望してきたら
患者さんの同意をめぐって
エンドポイントをどう設定するか
VIGNETTE 16 医療とビジネスの境界
Discussion 説明文書は何のためにあるか
「研究病院」の周知
医師と患者の関係
エンドポイントの考え方
臨床データの研究利用をめぐって
おわりに