がん遺伝子・がん抑制遺伝子
- 定価:
- 9,460円(本体価格8,600円+税)
在庫なし
書誌情報
| サイズ | B5判 |
|---|---|
| 頁 | 318頁 |
| ISBN | 978-4-498-02232-4 |
| 発行日 | 1998年10月01日 |
内容
この約20年でがんの発症に関する分子レベルの理解は飛躍的に進歩し,がん遺伝子,がん抑制遺伝子の存在および遺伝子変化の発見は,現代のがん研究の輝かしい成果である.本書は,これらの変化と細胞内ネットワークの実態を伝えることを目的としたものである.この分野の研究をサムアップし,今日どこまで解明されたか,未解決の問題として何が残されているかをビビッドに解説した.治療を目的とした独創的ながん研究への一助となる,貴重な1冊でとして広く関係者にお奨めしたい.
序文
序
1970年代の後半にがん遺伝子v-srcが発見されて以降,この約20年間にがんの発症に関する分子レベルの理解は飛躍的に進歩した.がん化を促進させる多くのがん遺伝子が次々に発見され,さらにそれらのがん遺伝子の活性化機構として,遺伝子増幅,染色体転座,点突然変異などの機構が明らかにされた.一方,それらとは全く異なる機構で細胞がん化に関与するがん抑制遺伝子の発見は,多くのがん研究者にとって,大変な驚きであった.RB,p53,APCなどの基本的ながん抑制遺伝子が単離され,それらが各々2コピーずつ1個の細胞に存在すること,2コピー共に失われると細胞がん化の重要な一段階が踏み出されること,などの極めて重要な概念が明らかにされた.このようながん遺伝子とがん抑制遺伝子の存在および遺伝子変化の発見は,現代のがん研究が挙げた輝かしい成果と言ってよい.本誌の目的の第一は,これらの成果と細胞内ネットワークの実態を読者にお伝えすることである.
しかし,これらによってがん化の全体が解ったかというと,まだほんの一部しか理解が及んでいないというのが実情である.なぜ細胞はがん化するとゲノムが不安定になり,次々と変異が蓄積するのであろうか.なぜ,組織ごとに異なるがん遺伝子やがん抑制遺伝子が,細胞がん化に用いられるのであろうか.なぜがん細胞は不死化し,浸潤,転移を繰り返すのであろうか.これらの臨床的にも非常に重要な問題については,我々はほとんど正確な知識を持っていない.従って,真の新しいがん治療を目的とするがん研究は,今始まったばかりであると言っても過言ではない.このような未解決の多くの問題についても,本誌の中から汲み取っていただき,その解決へ向けての独創的な研究を進める一助としていただければ,編集に携わった者として誠に幸いである.最後に,大変お忙しい中を,貴重な時間を割いて執筆して下さった多くの先生方に厚く御礼を申し上げたい.
1998年9月
編 者
目次
目 次
I.対 談
これからのがん研究-21世紀の新しいがん研究・予防・治療へ向けて-<渋谷正史 山本 雅>
II.がん遺伝子群
A.増殖因子と受容体
1.erbBファミリー<山本 雅>
erbBファミリー遺伝子とその産物 erbBファミリー蛋白質とヒト癌 erbBファミリー蛋白質の正常機能
2.FGF/KGF<竹内郁登 吉竹佳乃 西川克三>
FGFファミリー FGF受容体(FGFR)ファミリー FGFの細胞内シグナル伝達機構 細胞内に存在するFGF がんとFGF FGFやその阻害剤などの臨床応用
3.PDGF受容体研究の新しい展開 <松井利充>
PDGFシステムとsis癌遺伝子 ノックアウトマウスの作製により明らかになってきたこと PDGF受容体の活性化機構とヒト悪性腫瘍の発生・進展 中枢神経系における機能と病態
4.インスリン/IGF-1のシグナル伝達<的崎 尚 春日雅人>
インスリン/IGF-1受容体の構造と自己リン酸化 インスリン/IGF-1受容体チロシンキナーゼの基質蛋白質 IRS-1以降のシグナル伝達カスケード
5.HGFとそのレセプターMETによるがん化ならびにがん悪性化機構<小清水右一 中村敏一>
がん遺伝子としてのMET/HGFレセプター がん浸潤・転移とHGF 腫瘍抑制因子としてのHGF
6.腫瘍血管とVEGF<渋谷正史>
腫瘍血管の特徴 VEGFの構造と性質 VEGF受容体(Fltチロシンキナーゼ群)の構造 VEGFとその受容体遺伝子群の発現調節 VEGF-Fltファミリーの作用機構とシグナル伝達
B.細胞内情報伝達
1.Rasシグナル伝達系<服部成介>
遺伝子変異によるRasの活性化 Ras活性化因子 Ras GAP Rasのエフェクター Rasシグナル伝達系の神経系への関与
2.Rhoと細胞骨格 <中村奈央 貝淵弘三>
Rhoの活性化機構 Rh生理機能 Rhoの標的蛋白質 Rhoの標的蛋白質による細胞骨格と細胞接着の制御
3.Rafキナーゼ<上代淑人 水谷 伸>
歴史とあらまし Rafをコードする遺伝子とその発現 Rafの構造と機能 細胞内シグナル伝達系におけるRafの役割 ノックアウトマウスの解析 Rafの活性化機構
4.Rhoファミリーによるアクチン細胞骨格系の時間的,空間的制御<萬本明子 佐々木卓也 高井義美>
Rhoファミリーの機能 Rhoファミリーの作用機構 Rhoの活性化機構
5.MAPキナーゼカスケード<後藤 勇 福田 真 西田栄介>
MAPキナーゼスーパーファミリー MAPキナーゼキナーゼのNESと細胞癌化 MAPキナーゼカスケードと細胞癌化
6.PtdIns(3)キナーゼと新規リン脂質による細胞内シグナル伝達<深見希代子 竹縄忠臣>
PtdIns(3)キナーゼの発見 PI(3)キナーゼアイソザイムの活性調節機構と基質特異性 PtdIns(3)キナーゼへのシグナル伝達 PHドメインとD3ポリホスフォイノシタイド PtdIns(3)キナーゼのターゲットと細胞での機能
7.SHC<後藤典子 渋谷正史>
shc遺伝子の発見とその後の経緯 shc遺伝子,Shc分子の構造と機能 細胞内情報伝達におけるShcの機能
C.核内がん遺伝子
1.myb遺伝子<鎌野 寛>
myb遺伝子の構造と転写因子としての機能 マウスmyb遺伝子発現およびトランスジェニックマウス
2.fos/jun遺伝子ファミリー<伊庭英夫>
Fos/Junファミリータンパク質の転写制御活性 AP-1発現の制御 fos/junと細胞のトランスフォーメーション 腫瘍形成とAP-1 ノックアウトマウスを用いた解析
3.myc遺伝子<椎尾 譲> 141
myc遺伝子と遺伝子産物 Mycネットワーク Mycネットワークの生物学的機能
4.Rel/NFκBファミリーの活性制御機構と生理機能<井上純一郎>
Rel/NFκBファミリー転写因子の活性制御機構 Rel/NFκBファミリーの生理機能 リンパ球を宿主とするレトロウイルスとNFκB Rel/NFκBを介するシグナル伝達経路の異常とリンパ球の癌化
III.がん抑制遺伝子群
A.ゲノム解析
1.RLGS法を用いた癌関連遺伝子探索<水野洋介 岡崎康司 林崎良英>
RLGS法の原理と特徴 RLGS法の癌解析への応用例 染色体の位置情報を利用したRLGS法の癌関連遺伝子探索への応用
B.細胞周期とがん抑制遺伝子
1.RB癌抑制遺伝子と細胞周期制御<畠山昌則>
細胞周期とRestriction point レチノブラストーマ癌抑制遺伝子(RB)ならびにその産物(pRB) pRB不活化とR点通過機構
2.p53<新田 愼 山泉 克>
p53の構造と変異 p53の誘導と量的調節 transactivator(転写因子)としてのp53 細胞周期,アポトーシス,DNA修復への関与 ウイルス感染とp53
3.p16INK4a,p21CIP1ファミリーとCDK<平井 洋>
サイクリンとCDK CDKインヒビター
4.IRF-1<田中信之>
IRFファミリー転写制御因子の機能 IRFファミリー転写制御因子と癌 遺伝子欠損マウスによるIRF-1の癌抑制遺伝子としての同定 IRF-1によるアポトーシス,細胞周期制御の分子機構 IRF-1のヒト癌化への関与
IV.アポトーシスと細胞増殖制御
1.Fas/Fasリガンドとアポトーシス<長田重一>
アポトーシスのシグナル伝達 Fas,Fasリガンドの生理・病理作用
2.bcl-2,bcl-x<石田尚臣>
bcl-2,bcl-x遺伝子の構造 遺伝子産物の機能と構造 Bcl-2蛋白質とBcl-x蛋白質の機能的な差異 B細胞の成熟過程で生じる細胞死とCD40を介した細胞死抑制の情報伝達機構
3.TGF-βによる発がん抑制<竹之下誠一 宮園浩平>
TGF-βのシグナル伝達機構 TGF-βの細胞増殖抑制作用と細胞周期 癌細胞におけるTGF-βシグナル伝達機構の異常
V.ヒトがんの進展とがん遺伝子・がん抑制遺伝子
1.retと内分泌腫瘍<浅井直也 高橋雅英>
ret遺伝子の構造 Retの発現様式 MEN2型におけるRetの活性化 Hirschsprung病におけるRetの不活性化 甲状腺乳頭癌におけるRetの活性化 GDNF,neurturinによるRetの活性化とRetのシグナル伝達
2.ALKとリンパ腫―染色体転座によるALKチロシンキナーゼの活性化<岩原寿典 藤元次郎>
未分化大細胞型リンパ腫における80kDaリン酸化蛋白質(p80)の同定 染色体転座によるnpm-alk融合遺伝子の生成 新規受容体型チロシンキナーゼALK チロシンキナーゼ融合蛋白質の活性化メカニズム NPM-ALKの標的分子,下流の因子
3.Rasとヒト癌<清水憲二>
ras遺伝子群研究小史 ヒト腫瘍におけるras活性化変異 RASp21と細胞の癌化 ras遺伝子変異の高感度検出
4.APCと大腸癌<秋山 徹>
APC遺伝子の大腸癌での異常 APC遺伝子の機能 APC遺伝子産物の発現と局在 APC遺伝子産物の構造 APC蛋白質によるWntシグナル伝達経路の制御 APC蛋白質とDLG蛋白質の複合体形成
5.BCR-ABLと慢性骨髄性白血病<武田憲文 丸 義朗>
慢性骨髄性白血病とBCR-ABL BCR-ABLの生物学的活性 ABLの機能 BCRの機能 BCR-ABLの活性化機序 BCR-ABLの分子間相互作用と発癌シグナル 問題点
6.AML1遺伝子と白血病<平井久丸>
AML1蛋白質とその機能 AML1遺伝子と白血病 個体におけるAML1の機能
7.BRCA1,BRCA2と乳癌<黒瀬圭輔 江見 充>
乳癌の遺伝的背景 BRCA1遺伝子 BRCA2遺伝子 家族性乳癌の発症前診断
VI.ウイルス発癌
1.B型肝炎ウイルス(HBV)<小池克郎>
HBV遺伝子の構造と機能 X遺伝子と発癌誘導能 X蛋白質の転写調節機能 p53遺伝子とX遺伝子の機能的桔抗
2.C型肝炎ウイルス(HCV)<土原一哉 下遠野邦忠>
HCVゲノム・タンパク質の構造 HCV持続感染機構 HCVタンパク質と宿主因子の相互作用
3.ヒトパピローマウイルス(HPV)<平岩厚郎 石橋正英>
HPV(human papillomavirus,ヒトパピローマウイルス)とは HPV-16などの子宮頸癌関連ウイルスについて HPV-5,8,47などの皮膚扁平上皮癌関連ウイルスについて
4.ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)<鈴木健之>
Taxによる遺伝子発現制御 Taxによる転写活性化の分子機構 Taxの細胞周期への関与 Taxによる細胞の不死化,癌化
5.Epstein-Barr virus(EBV)<高田賢蔵>
EBVと胃癌 日和見リンパ腫 EBNA2はRBP-Jκを介して標的DNAに結合する LMP1はシグナル伝達分子である BLとEBV
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