PNES(心因性非てんかん発作)臨床講義
内容
自分のなかの陰性感情は大丈夫なのか
PNESの診療ではそれが問われます
日本におけるてんかん診療の第一人者・兼本浩祐 先生(愛知医科大学名誉教授)によるPNES臨床講義が開講! 臨床現場でしばしば問題となる心因性非てんかん発作(PNES)への対応について,医療の視点だけに留まらず,多彩な臨床知が生き生きと語られる.講義は全4回で構成され,「総論」「診断」「治療(環境調整)」「治療(精神療法)」についてかなり踏み込んだものとなっているが,『ハイライト』『註釈』『解説』などの補足説明も充実し,初学者でも安心して読み進められる.
序文
はじめに
この本は半年かけて行われた,兼本浩祐先生と僕との心因性非てんかん発作(PNES)に関する対談をもとに作成されたものである.
まず初めに本書を執筆する経緯から説明する.
新型コロナウイルスが流行する前には合宿形式で兼本先生を慕う有志で,てんかんに関する勉強会・症例検討会をやっていた.そして,合宿の参加者からは兼本先生に対してPNES診療の疑問が投げかけることがしばしばあったが,兼本先生はユーモアを交えながらひとつひとつ丁寧に回答・解説してくださるのだった.
兼本先生との語らいは,既存の教科書(そもそもPNESについてはあまり語られていないものが多い)や論文には載っていないような生き生きとした,色彩に満ちたものであり,参加者たちはPNESに対する苦手意識が和らぎ,PNES診療に前向きになることができたのだった.
こうした貴重な体験を書籍という形で残し,多くの医師(PNESは様々な診療科の医師が関わる可能性がある.また多くの診療科の協働や連携が望まれる疾患である)やメディカルスタッフと共有することはPNESの理解や診療の向上につながり,PNESのある人や支援をする人たちにとってもプラスになるかもしれない,と考えこのような本を企画・執筆させてもらった.
本書の題名は,シャルコーがサルペトリエール病院で行っていた「火曜講義」を真似して「PNES臨床講義」とした.
兼本先生を講師としてお迎えした,バーチャルな臨床講義というイメージで,「PNESとは何か」「診断」「治療:環境調整」「治療:精神療法」の,1限目から4限目のパートに分かれている.
これまであまり語られることのなかったPNESの治療に関しては特に時間を割いた.
そして,各パートは「Highlight」「本文」「Lecture」で構成されている.
言うまでもなく「本文」が本著の中心となるが,兼本先生と僕との対談を再構成したものである.兼本先生の数々の金言や名言を読者の皆さんも存分に味わっていただければ幸いである.「Highlight」は対談の中で特に強調したいポイントをピックアップしたので時間のない場合にはこちらを参照していただければと思う.「Lecture」は対談内容をもとに僕がまとめたものである,いわば,臨床講義の聴講者のまとめノート的な存在である.また本文中の註釈は,補足情報として僕が記載したものである.
帯の色はPNES awareness ribbonから選んだ(紫はてんかんのイメージカラーであるのは知っていたが,青緑はPTSDのイメージカラーらしい.PNESは両者の色を反映しているようだ).表紙のデザインの由来に関してはここでは語らないが,とても満足のいくものである.
中外医学社の桂彰吾さんには本書の企画の段階から最後まで様々な面でご支援いただいた.
桂さんの人柄,知識や熱量がなかったら本書は世に出ることはなかったと思っている.桂さん,そして中外医学社の皆様にはこの場を借りて感謝申し上げます.
また,愛知医大精神科教授の退官前後のお忙しい時期にもかかわらず対談を快く引き受けていただき,多くの知見をご教授いただいた兼本先生に深く感謝いたします.
シャルコーのもとでフロイト(精神科医)やバビンスキー(脳神経内科医)が学んだように,診療科を問わず多くの臨床医に本書を読んでいただけること,そしてPNES診療の協働や連携が進むことを著者として願っている.
令和5年10月
谷口 豪
目次
Contents
1限目 PNESとは何か
PNESとはどのような病気か
クレッチマー型から考える
PNESの疫学について整理しよう
診療の問題点を考える
1.心因性非てんかん発作(PNES)はどのような病気なのか
1−1.PNESは転換性障害と解離性障害の中間あるいは合併という病態が基本
1−2.PNESには様々な医師が診察する機会がある
1−3.PNESの複雑さ(難しさ)に困っている医療者は少なくない
1−4.PNESは多種多様な病態・グループから成る
2限目 PNESの診断
ガイドラインについて
PNESを疑う病歴はどのようなものか
てんかんとPNESを鑑別する―発作の症候学
長時間ビデオ脳波について
PNESの診療で問われること
2.PNESの診断
2−1.問診
2−2.長時間ビデオ脳波検査
2−3.経過観察
3限目 PNESの治療:環境調整
「満ち足りた無関心」
心理的なアセスメント
診断告知のポイント
救急時の対応のポイント
環境調整について
3.PNESの治療:環境調整
3−1.La belle indifférence(満ち足りた無関心・美しき無関心)について
3−2.心理検査
3−3.PNESの診断告知・病状説明
3−4.PNESの発作時の対応について(「発作に対応する周囲の人が 無理をしない」と「本人の安全」のバランス)
3−5.環境調整
4限目 PNESの治療:精神療
PNESに対する認知行動療法(CBT)
病理が重い人への支援・介入
PNESの臨床を広げるために
PNESの治療のゴールとは
4.PNESの治療:精神療法
4−1.PNESに対する認知行動療法(CBT)
4−2.精神医学的視点に基づいた,CBT以外の支援・介入
4−3.本邦で実践可能な,これからのPNES治療のあり方
4−4.PNES治療のゴール
索引