アルコール依存症治療革命
内容
長年にわたって停滞しているわが国のアルコール依存症治療は、そのあり方を根底から見直される必要がある。「底つき」は本当に必要なのか? 「自助グループ」しか手立ては無いのか? 「ハームリダクション」の発想はわが国には当てはまらないのか? 数々の常識を覆し,アルコール依存症治療のあるべき姿に迫る!
序文
はじめに
不適切な飲酒は,アルコール健康障害の原因になる.そして,本人の健康問題だけではなく,飲酒運転,暴力,虐待,自殺などさまざまな問題にも密接に関係している.平成25年12月にアルコール健康障害対策基本法が成立し,平成26年6月に施行された.そして,平成28年5月にアルコール健康障害対策推進基本計画が策定された.アルコール関連問題に関して,国を挙げて具体的な取り組みが始まろうとしている.
筆者はアルコール依存症の教科書的な本を書こうとしているわけではなく,この病気の治療の在り方を根底から見直すことを提案したくて筆を執った.「革命」という題は,青臭くて気恥ずかしい思いもしたが,「変化」や「改革」などという言葉を遥かに超えた転換を表現するには,「革命」とでもいうしかないと,敢えてこの言葉を使った.筆者の思いが多くのアルコール依存症患者や,その方々に関わる医療者・支援者に本意が通じることを切に願うものである.
今回著した内容は,「革命」の外枠を示したものに過ぎず,具体的な実践内容については,触れていない.これから詳細な検討が必要である.本書がよりよいアルコール依存症の治療の在り方の議論の端緒になることを期待している.
本書が長年にわたって停滞しているわが国のアルコール依存症の治療・支援がよい方向に動き始める一助となれば幸いである.
2017年8月
成瀬暢也
目次
目 次
1章▶アルコール依存症についての基本的なこと
アルコール関連問題を取り巻く状況
アルコール依存症とは?
アルコール依存症の診断
アルコール依存症の治療
2章▶これまでのアルコール依存症の治療
わが国のアルコール依存症治療の歴史
これまでのアルコール依存症治療の特徴と問題点
3章▶新たなアルコール依存症治療の導入
エビデンスに基づいた心理社会的治療
海外で実践されている心理社会的治療
埼玉県立精神医療センターでの依存症治療の実践
4章▶新たなアルコール依存症患者への対応
アルコール依存症の背景にある問題
当事者中心の依存症治療・回復支援
ハームリダクションの考え方
5章▶アルコール依存症患者の家族の現状と必要な支援
アルコール依存症家族の全国調査より
6章▶これからのアルコール依存症の治療を考える
依存症者への望ましい対応
「断酒の強要は禁忌」「再飲酒を責めてはいけない」
回復とは何か? どうすれば回復するのか?
依存症の回復に必要なもの
依存症が教えてくれるもの
7章▶アルコール依存症治療革命
治療者・支援者の意識改革
診断名の改革
治療構造の改革
治療スタンスの改革
人材開発の改革
地域連携の改革
家族支援の改革
インセンティブ保障の改革
8章▶新たな中核群に対してどのように医療を提供するのか
新たな中核群に対する治療の提供のために
身体科医療での受け入れのために
一般精神科医療での受け入れのために
依存症専門医療での受け入れのために
9章▶精神医療へ期待すること
10章▶自助グループに期待すること
断酒会に期待すること
AAに期待すること
自助グループと医療機関・相談機関の連携
マック(メリノール・アルコール・センター)
おわりに
文献
索引