ここが知りたい!内分泌疾患診療ハンドブック Ver.2
内容
非専門医・研修医に向けて,内分泌疾患診療に必須の知識・ノウハウをわかりやすく解説した好評書の最新版.初版刊行後2年間の動向を踏まえ,全面的に修正を加えた.新規追加項目として「非機能性下垂体腫瘍」「下垂体ゴナドトロピン産生腫瘍」「下垂体炎」「免疫チェックポイント阻害薬の副作用と自己免疫性内分泌疾患」「IgG4関連疾患」など.
序文
2版の序
「ここが知りたい! 内分泌疾患診療ハンドブック Ver.2」を出版する運びとなった.本書は,ともすると“取っ付きにくい”印象を持たれがちな内分泌疾患の診療エッセンスを,専門医だけでなく,初期研修医を含む非専門の先生方に理解し実践して頂くための手引き書として2016年4月に初版が刊行された.同版が思いのほか好評を頂いたため,当初のコンセプトはそのままに,この領域における最新の動向を踏まえ,全体にわたって必要な修正を加えた次第である.
臓器別の診療と教育が花盛りの今日,臓器横断的,言い換えれば全人的医療の重要性が改めて語られるようになった.その表れの一つとして総合診療が注目されている訳だが,いわゆる“ドクターG”が対象とする診断困難症例には,少なからず内分泌疾患が隠れている.すなわち,全身諸臓器に及ぶ多彩な症状をもたらすとともに,一たび原因を特定し,その根本に関わる内分泌腺の治療やホルモン補充を行えば,患者の症状が著しく改善,QOLを高められることが内分泌診療の醍醐味といえる.
今回の改訂では,最新の知見に基づき初版の記述をアップデートしたことに加え,「非機能性下垂体腫瘍」「下垂体ゴナドトロピン産生腫瘍」「下垂体炎」「免疫チェックポイント阻害薬の副作用と自己免疫性内分泌疾患」「IgG4関連疾患」など,最近のトピックスを含む前版では取り上げていなかった重要な項目を新規に追加した.
ご多忙な本務の合間をぬって各項の内容更新にご尽力下さったエキスパートの先生方,初版に引き続き編集の労をお取り頂いた岩岡秀明先生,龍野一郎先生,橋本尚武先生,そして中外医学社の沖田英治様,五月女謙一様に心より御礼申し上げたい.本書が,臨床の第一線で活躍される医師・医療スタッフの知識を深め,楽しみながら診療の質向上に貢献できることを願っている.
平成30年4月
横手幸太郎
はじめに
内分泌疾患と言えば,「珍しい病気」「診断が難しい」というイメージを持たれる方が多いのではないだろうか? 確かに,稀であったり,診断のため煩雑なホルモン負荷試験を要する疾患も少なくない.一方,原発性アルドステロン症や甲状腺疾患は,外来で頻繁に遭遇する疾患であり,また,X線CTやMRI検査の普及したわが国では,副腎や下垂体の偶発腫がしばしば発見される.さらに,肥満や浮腫,多尿や月経異常など,ありふれた症候の陰に内分泌疾患は潜んでいるため,それを疑い,診断への道筋をつけられるかどうかによって患者の予後,特に生活の質(QOL)が大きく左右される.したがって,内分泌疾患の特徴を知り,診断や治療のポイントを身に付けることは,この分野を専門とする医師はもちろん,非専門の一般臨床医にとってこそ重要であり,日々の診療に面白さを増し,充実をもたらしてくれる.
本書は,実践的な診療ガイドブックとして好評を博している「ここが知りたい! 糖尿病診療ハンドブック(岩岡秀明,栗林伸一,編)」の姉妹書である.その長所を受け継ぎ,重要なポイントを「ここが重要!」として冒頭に,特にしてはいけないこと・注意すべきことを「これはご法度」として該当箇所にまとめた.さらに,各項目に「症例呈示」を行い,典型例や教訓的な事例をわかりやすく記載,主要症候からのアプローチや鑑別診断を重視し,ポイントを具体的に学べるようにした.検査とその数値に関する基本的な知識も,コンパクトに理解しやすく整理して提供するよう工夫してある.このような意図から,ごく稀な疾患は大胆に割愛した反面,重要疾患については最新のガイドラインも反映させた内容となっている.
最後に,編集にご尽力頂いた橋本尚武先生,龍野一郎先生,岩岡秀明先生,そして各項目をご執筆下さったエキスパートの先生方に心より御礼申し上げるとともに,本書が内分泌診療のエッセンスを集約した実践書として,多くの医師・医療スタッフのスキル向上に役立ち,患者さんのQOL向上に資することを祈念している.
平成28年4月
横手幸太郎
目次
目 次
第1章 総論
■1.内分泌と疾患 日常診療における内分泌疾患(内分泌疾患は稀ではない)〈杉澤千穂 西川哲男〉
■2.内分泌疾患を診断する検査法〈宗 友厚〉
1.ホルモン測定法の歴史
2.検査値解釈の基本
3.負荷試験の意義
4.検査のピットフォール
第2章 主要症候からのアプローチ
■1.肥満〈佐藤悠太 龍野一郎〉
1.肥満と肥満症の定義
2.原発性肥満と二次性肥満
3.検査
4.治療
■2.体重減少〈橋本尚武〉
1.鑑別診断
2.内分泌疾患としての体重減少
■3.低身長〈成瀬裕紀〉
1.低身長の鑑別診断
2.低身長児を診るときに必要なポイント
■4.浮腫〈山本恭平〉
1.浮腫の原因疾患
2.浮腫をきたす主な内分泌疾患
■5.多尿〈岩岡秀明〉
1.病態
2.主要症候
3.検査・診断
4.中枢性尿崩症,腎性尿崩症,心因性多飲症の鑑別診断
■6.脱毛〈植木理恵〉
1.毛器官の構造
2.毛周期(ヘアサイクル)
3.脱毛症の分類
■7.多毛〈廣井直樹〉
1.概念
2.原因
3.診断
4.治療
■8.月経異常〈生水真紀夫〉
1.月経異常の発見とその手がかり
2.続発性無月経と妊娠
3.月経異常の診かた
4.月経周期の異常がみられる疾患
■9.高血圧〈市原淳弘〉
第3章 内分泌緊急症
■1.下垂体卒中〈堀口健太郎 佐伯直勝〉
1.神経症状
2.内分泌症状
3.画像診断
4.治療
5.予後
■2.甲状腺クリーゼ〈岩岡秀明〉
1.病態
2.疫学
3.主要症候
4.検査
5.診断
6.治療
7.予後
■3.粘液水腫性昏睡〈寺野 隆〉
1.診断基準(甲状腺学会 粘液水腫性昏睡の診断基準 3次案)
2.治療指針
■4.高カルシウム血症性クリーゼ〈田井宣之 井上大輔〉
1.高Ca血症性クリーゼの診断
2.高カルシウム血症の治療
■5.副腎クリーゼ〈森尾比呂志〉
1.病態
2.症状
3.検査所見
4.診断
5.治療
第4章 主要疾患編
A 視床下部・下垂体
■1.非機能性間脳下垂体腫瘍〈川俣貴一〉
1.疫学・診断・特徴
2.症状
3.内分泌検査
4.その他の検査
5.治療
■2.先端巨大症〈東條克能〉
1.病態
2.疫学
3.主要徴候
4.検査
5.診断
6.治療
7.予後
■3.クッシング病(サブクリニカルクッシング病)〈片上秀喜〉
1.クッシング症候群の臨床徴候
2.病因と病態
3.クッシング病の鑑別診断アルゴリズム
4.クッシング病の治療
■4.SITSH(不適切TSH分泌症候群)〈永野秀和 田中知明 横手幸太郎〉
1.SITSHを呈する疾患と病態
2.治療
■5.下垂体性ゴナドトロピン産生腫瘍〈山田正三〉
1.病態
2.非機能性のゴナドトロピン産生下垂体腺腫(sGPA)
3.機能性のゴナドトロピン産生下垂体腺腫(fGPA)
4.治療
■6.プロラクチノーマ〈小野昌美 三木伸泰〉
1.病態
2.疫学と臨床像
3.検査と診断の進め方
4.治療の進め方
■7.下垂体機能低下症(ACTH単独欠損症,シーハン症候群)〈橋本尚武〉
1.症状
2.ACTH単独欠損症(isolated ACTH deficiency:IAD)
3.シーハン症候群
■8.下垂体炎〈岩間信太郎 有馬 寛〉
1.病態
2.疫学
3.主要徴候
4.検査
5.診断
6.治療
7.予後
■9.中枢性尿崩症,腎性尿崩症〈石川三衛〉
1.病態
2.疫学
3.主要徴候
4.検査
5.診断
6.治療
7.予後
■10.SIADH(抗利尿ホルモン不適切分泌症候群)〈西村元伸〉
1.低Na血症の影響,症状
2.低Na血症の鑑別
3.原因検索
4.治療
5.浸透圧性脱髄症候群
6.SIADHと鑑別が難しい疾患
B 甲状腺疾患
■1.甲状腺機能亢進症〈吉村 弘〉
1.病態
2.疫学
3.主要症候
4.検査
5.診断
6.治療
7.予後
■2.甲状腺機能低下症と甲状腺炎〈吉原 彩〉
1.病因
2.頻度
3.主要症候
4.診察所見
5.検査
6.診断
7.治療
■3.非機能性甲状腺腫と甲状腺新生物〈伴 俊明〉
1.腫瘍(新生物)性病変
2.非腫瘍性病変
■4.薬剤と甲状腺〈江本直也〉
1.下垂体からのTSH分泌を抑制
2.甲状腺ホルモンの消化管からの吸収を阻害
3.甲状腺ホルモンの合成・分泌・代謝に影響
■5.妊娠と甲状腺〈荒田尚子〉
1.疫学
2.妊娠中の甲状腺機能の生理的な変動
3.妊娠初期の甲状腺機能亢進症の鑑別
4.バセドウ病と妊娠
5.甲状腺機能低下症と妊娠
C 副腎疾患
■1.原発性アルドステロン症〈大村昌夫〉
1.原発性アルドステロン症の病態
2.原発性アルドステロン症のスクリーニング検査と治療
3.手術治療の希望のある原発性アルドステロン症の診断と治療
■2.クッシング症候群とサブクリニカルクッシング症候群〈樋口誠一郎 横手幸太郎 田中知明〉
1.病態について
2.診断
3.内分泌学的検査所見
4.画像検査
5.治療
サブクリニカルクッシング症候群
1.病態
2.診断
3.臨床像
4.治療
■3.褐色細胞腫・パラガングリオーマ〈方波見卓行 月山秀一〉
1.定義,概念
2.疫学
3.主要症候
4.検査
5.診断
6.治療,フォローアップ
■4.アジソン病〈沖 隆〉
1.副腎皮質機能の評価
2.副腎皮質機能低下症治療の留意点
■5.副腎偶発腫瘍〈内海孝信 鈴木啓悦〉
1.副腎偶発腫瘍
2.疫学
3.画像検査
4.内分泌機能検査
5.治療
6.経過観察
■6.副腎酵素異常症〈上芝 元〉
1.病態
2.疫学
3.主要症候
4.検査
5.診断
6.治療
7.予後
D 骨カルシウム代謝性疾患
■1.副甲状腺機能亢進症〈岡崎 亮〉
1.Caの測定
2.高Ca血症の原因疾患と鑑別診断
3.高Ca 血症緊急症
4.原発性副甲状腺機能亢進症のマネージメント
5.画像診断
6.手術不能もしくは手術をしない場合の原発性副甲状腺機能亢進症のマネージメント
7.続発性副甲状腺機能亢進症
■2.副甲状腺機能低下症〈皆川真規〉
1.病態
2.疫学
3.主要症候
4.検査
5.診断
6.治療
7.予後
■3.骨粗鬆症〈竹内靖博〉
1.原発性骨粗鬆症の診断
2.続発性骨粗鬆症の原因となる内分泌疾患
3.続発性骨粗鬆症の原因となる内分泌疾患を見落とさないポイント
4.骨粗鬆症類縁疾患
5.続発性骨粗鬆症の治療指針
■4.リン代謝異常症〈福本誠二〉
1.病態,病因
2.診断
3.治療
E 性腺疾患(日常臨床で重要な内分泌)
■1.男性における性腺疾患(LOH症候群を含めて)〈今本 敬 市川智彦〉
1.男性における性腺内分泌疾患
2.加齢に伴うアンドロゲンの低下
■2.女性における性腺疾患(PCOSを含めて)〈木下俊彦〉
1.無月経の原因
2.無月経の重症度の判定
3.多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
F 多発性内分泌疾患と内分泌腫瘍
■1.内分泌腫瘍の分子病態(遺伝子異常と病態)〈川堀健一 橋本貢士〉
1.内分泌腫瘍の分類と遺伝性(家族性)腫瘍
2.遺伝性内分泌腫瘍の原因遺伝子
■2.多発性内分泌腫瘍症(MEN)〈杉原 仁〉
1.病態
2.疫学
3.主要症候
4.検査
5.診断
6.治療
7.予後
■3.Neuroendocrine Tumor(NET)(インスリノーマ,ガストリノーマを含めて)〈齋藤 淳〉
1.概念
2.分類・疫学
3.症状・症候・診断
4.インスリノーマ
5.ガストリノーマ
6.その他の機能性NET
7.腫瘍局在診断
8.治療
9.治療効果判定・腫瘍マーカー
■4.カルチノイド,カルチノイド症候群〈高野幸路〉
1.病態
2.疫学
3.主要症候
4.検査
5.診断
6.治療
7.カルチノイドクリーゼについて
■5.自己免疫と内分泌疾患〈時永耕太郎〉
1.APS1型について
2.APS2型について
3.APS3型について
4.APS4型について
G その他
■1.内分泌とHIV/AIDS〈青木孝弘 岡 慎一〉
1.HIV感染と甲状腺
2.HIV感染と副腎
3.HIV感染とカルシウム
■2.免疫チェックポイント阻害薬の副作用と自己免疫性内分泌疾患
〈登丸琢也 佐藤哲郎 渋沢信行 解良恭一 山田正信〉
1.ICI誘発性甲状腺機能障害
2.ICI誘発性下垂体炎と下垂体機能障害
3.ICI誘発性1型糖尿病
■3.IgG4関連疾患〈川野充弘 唐島成宙 松井祥子 赤水尚史〉
1.病態
2.疫学
3.主要徴候
4.検査
5.診断
6.治療
7.予後
■4.内科医が知るべき小児内分泌〈横谷 進〉
索 引