Annual Review 糖尿病・代謝・内分泌2014
- 定価:
- 10,780円(本体価格9,800円+税)
在庫なし
書誌情報
| サイズ | B5判 |
|---|---|
| 頁 | 216頁 |
| ISBN | 978-4-498-12352-6 |
| 発行日 | 2014年01月24日 |
内容
序文
序にかえて
伊勢神宮式年遷宮
―糖尿病代謝内分泌学の“基礎と臨床”を思う
2013年,伊勢神宮の式年遷宮(しきねんせんぐう)が挙行された.1300万人以上の参拝者が“おいせさん”に詣で,それぞれに,心新たな時を迎えた.
20年に一度,定期的(式年)に,神様が宿る正殿(しょうでん)の隣に,全く同じ様式の新正殿を建て,御神体を遷す.この遷御(せんぎょ)の儀が神無月に行われた.正殿だけでなく,御垣内(みかきうち)の建物全て,14の別宮(べつぐう)の社殿や鳥居なども造り替えられ,1576点におよぶ神宝(しんぽう)なども,新調されて納められた.この祭事は,飛鳥時代,持統天皇在位中の690年に始まり,1300年以上続いている.
全システムを定期的に全くリニューアルするというコンセプトが古代日本人の精神構造の中に芽吹き,そしてそれが連綿と継承されてきたことに驚嘆した.常にみずみずしさを尊ぶ神道の「常若(とこわか)」の考えに根差していると言われている.
何故「20年」なのかも興味深い.技術継承が可能な期間という説,穀物の貯蔵の限界期間説などがあるが,定かではない.5カ年計画というように,5年はわれわれの活動を一つ区切らせる程度の年月,10年は一昔,記憶をたどらないと思いだせないほどの昔,そして20年は大昔となるが,これだけの“初期化”の実行には確かに適切な,あるいは“すこし早目”の時間間隔かもしれない.(そういえば,我々臨床教室の教授在任期間の限界値もこのあたりにある.)
今回も,糖尿病,代謝,内分泌学の基礎,臨床にわたる最先端の領域を我々3人の編者が選び出し,それぞれ執筆を御依頼した先生方により見事に説明いただいた.その概要に関しては,各編のOverviewをご参照いただきたい.
医学は,「恒常性の維持」の破綻のプロセスとその人的制御の可能性の窮理であるが,糖尿病・代謝・内分泌の領域はまさにその中心に位置する.
長期にわたりその構造機能を可能な限り維持する努力を重ねながらも,定時を設定しておいてその時期が来ると,躊躇うことなく全システムを一新する.その様式を持ってはじめて精神母体の常若が実現されるという事実を目の当たりにして,内分泌代謝学の基礎研究と臨床開発の新たな方向性をみる思いがした.
細胞,臓器間の精緻な情報ネットワークの中で保たれる生命の維持と,個体の死を乗り越えた世代継承のメカニズムとして,局所炎症とその(過)修復,分化脱分化のゆらぎ,エピジェネティックによる遺伝子情報の書き換えなど様々なパラダイムが本書において紹介されている.時間の流れの中で連続的に進むこうした慢性的な生命現象とはまた別に,なにか我々がまだ見つけていない“不連続的なイベント”が生体恒常性維持には必要ではないかと予感した.
我々臨床家にとって基礎研究の臨床応用は極めて魅力的なチャレンジである.本書でも示されているように,エネルギー代謝における腸管内分泌学の進歩から生まれたインクレチン製剤が糖尿病診療を一変させ,脂質代謝研究の中から見出だされたPCSK9阻害薬・CETP阻害薬の臨床応用等も進みつつある.しかしながら,これまで,まさに浜の真砂のように報告されてきた基礎研究成果を実際の臨床の場にトランスレーションすることに成功した事例は極めて少ない.基礎と臨床の“不連続性”を我々は痛感している.我々の体に本来存在する,生命のメッセンジャーであるホルモンを注視することは,その不連続性を乗り超えるひとつのヒントになると思う.
糖尿病,代謝,内分泌の基礎と臨床に関して,序文とはかなり趣を異にした雑感を述べさせていただいた.2013年は,20年に一度の年であったということで何卒ご容赦いただきたい.最後に,ご多忙にもかかわらず各テーマの最先端の研究を真撃にレヴューいただいた執筆者の先生方に深く感謝申し上げる.
2013年12月
編集者一同