抗不安薬プラクティカルガイド 今だから知っておきたい正しい使い方
- 定価:
- 3,520円(本体価格3,200円+税)
在庫あり
書誌情報
| サイズ | A5判 |
|---|---|
| 頁 | 196頁 |
| ISBN | 978-4-498-11704-4 |
| 発行日 | 2015年01月30日 |
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内容
不安は誰にでも備わっている本質的な感情ですが、それが個人の生活や活動、健康に悪影響を及ぼすとすればそれは病的なものであり、安全かつ適切な薬の使用は有効な治療手段となりえます。本書では「現場でプラクティカルに抗不安薬を使えるようになること」に重点を置き、抗不安薬の種類と特徴、治療における抗不安薬の意義や使い方、注意を要する場合の適切な使用法などについてわかりやすく解説します。
序文
序 文
21世紀は「心の時代」とも呼ばれ,人の心の健康についての関心が高まっている.その一方で現代社会はますます複雑化し,不安やストレス要因も多種多様で個別性が著しい.特に今の日本は,自然災害や社会・経済,そして治安や健康上の問題など,「不透明で先行きが見えない」,「何となく落ち着かない」,「安心できない」といった様相にあり,全般的に緊張感が高く心の余裕を欠き,不安の種は尽きないように思われる.このような不安は,地域や時代の中で共有されるものであり,現代は本能的不安や恐怖が賦活化されやすい,人の心が不安定化しやすい時代といえるであろう.
不安には,誰しもが経験する「正常不安」と,過敏で過剰なものといえる「病的不安」がある.また不安は誰にとっても日常的に生じる情動であるが,その起こり方には個人差が大きい.取るに足らない些細な事柄にも不安を抱く人もいれば,当然不安が惹起されるような状況にあっても平然としている人もいる.この個人差には,心身の健康状態に加え,生来の不安脆弱性や今までの経験に基づく不安の条件づけ,対処や認知のパターンを含むパーソナリテイ,サポートなど様々な要因が関わっている.このような不安に耐え,健全に対応しようとすることは,個人の強さや対処能力を育み,心的成長を促し,人生や生活に深みや抑揚を加えるものとなるであろう.しかしこの過程で,もし心身の健康を損なう事態が生じるとすれば,専門的知識に基づく安全で適切な抗不安薬による薬物療法は,回復を後押しする有力なサポーターとなりうるものである.
本書は,エキスパートの先生方による,いわゆる「抗不安薬」を中心とした不安の薬物療法全般に関する解説書である.各章には,不安のメカニズムや各抗不安薬の薬理学的作用機序といった基礎的知識から,不安が関わる心身の病気,さらに妊産婦や高齢者,勤労者,身体疾患患者などへの臨床的応用まで,最新のエビデンスに基づく様々な情報やヒントが散りばめられている.特に薬物療法の適正化,そして多剤併用処方の是正が喫緊の課題とされる今だからこそ,抗不安薬の適切な使用法の習得が重要になると考える.実際,抗不安薬は今なお最も処方量が多い,実臨床での応用範囲が広い向精神薬であり,我々がその特性やメリット・デメリットなどを熟知して,そのリスクにも十分に配慮し,安全に効果を最大限発揮できるよう用いるとすれば,現在でも有用性が高い薬物の一つであるだろう.さらに抗不安薬を用いる対象が,精神科領域に留まらず,身体疾患全般にわたることは本書の構成からも明らかである.
本書が精神科医に限らず,各診療科,あるいはプライマリーケアを担う先生方,看護や介護,心理職など医療スタッフの方々,その他不安に対する薬物療法を学ぼうとする皆さんにとって,抗不安薬の理解を深めるための良き資料となり,また実臨床における手引きとして,これを必要とする患者さんへの治療の中で有効活用されるとすれば,著者一同のこの上ない喜びである.
2015年1月
松永寿人
目次
目 次
第1章 抗不安薬とは何か(総論)
1 抗不安薬〜その歴史,現在,そしてこれから〈松永寿人〉
I.ベンゾジアゼピン系薬物の登場以前
II.ベンゾジアゼピン系薬物の登場
III.ベンゾジアゼピン系薬物の拡がりと社会問題化
IV.その他の抗不安薬と薬物療法の今後の位置づけ
2 抗不安薬の薬理〜どこにどのように作用するのか?〈河野仁彦,稲田 健,石郷岡純〉
I.ベンゾジアゼピン系薬剤の作用機序
II.セロトニン系薬剤の作用機序
3 抗不安作用の生物学的背景〈森信 繁〉
I.不安・恐怖の神経回路
II.不安・抗不安作用と神経伝達物質
III.不安・恐怖記憶の分子メカニズム
4 抗不安薬の臨床〜どのような状態に何を目的として使われるのか?〈尾鷲登志美〉
I.不安は誰にでもある
II.抗不安薬治療を要する状態とは
5 抗不安薬の正しい使い方〜より安全に用いるための注意点は?〈松本俊彦〉
I.抗不安薬依存症患者の臨床的特徴
II.抗不安薬依存症の背景にある要因
III.乱用頻度の高い抗不安薬
IV.常用量依存の概念と弊害
V.薬処方に際しての注意点
第2章 抗不安薬の種類と特徴
1 ベンゾジアゼピン系抗不安薬〈吉村玲児〉
I.ベンゾジアゼピン系抗不安薬の適応症
II.ベンゾジアゼピンとカテコールアミン神経系
III.不安障害とノルアドレナリン神経系
IV.不安とGABA神経系
V.ベンゾジアゼピン受容体
VI.BZ系抗不安薬の種類と分類
2 セロトニン(5-HT1A)部分作動薬〈松永寿人〉
I.薬理学的特性
II.作用機序
III.臨床での適応,そして応用
3 不安に用いるその他の薬剤(SSRIなど)〈富田 克〉
I.抗うつ薬
II.抗けいれん薬
III.抗精神病薬
IV.抗ヒスタミン薬
4 抗不安薬のこれから〈河野美帆,稲田 健,石郷岡純〉
I.SSRI選択の重要性
II.新規抗不安薬の候補物質
第3章 治療における抗不安薬の意義と使い方
1 パニック症などの不安症群〈塩入俊樹,岡 琢哉〉
I.不安症群とパニック症,そして抗不安薬
II.不安症群の治療における抗不安薬の意義
III.不安症群の治療における抗不安薬の使い方
Column フロイトの「不安神経症」
Column パニック発作
2 強迫性障害〈中尾智博〉
I.OCDの標準的な治療
II.OCD治療における抗不安薬の実際の用い方
3 気分障害治療における抗不安薬の意義と使い方〈渡部芳徳〉
I.臨床試験での気分障害治療薬の効果判定と実臨床での評価
II.うつ病と不安の併存:うつ症状と不安症状の定量化
III.気分障害の不安症状に対する治療方針
4 不眠症〈松井健太郎,井上雄一〉
I.不眠症の診断
II.不眠症薬物治療の実際
Column 抗不安作用を有する抗うつ薬について
5 心気症の病態と治療〜抗不安薬の適用と注意点を含めて〈林田和久,松永寿人〉
I.心気症の定義
II.病因論
III.診断
IV.臨床症状
V.鑑別診断
VI.治療
6 心身症
A 呼吸器系〈保坂 隆〉
I.過呼吸症候群
II.気管支喘息
B 循環器心身症治療における抗不安薬の意義と使い方〈折目直樹,鈴木雄太郎〉
I.循環器心身症に用いられる抗不安薬
II.各病態における抗不安薬の意義と使い方
C 胃腸系〈大坪天平〉
I.FGIDsの一般論
II.機能性胃腸症(FD)
III.過敏性腸症候群(IBS)
IV.抗不安薬使用の意義
7 女性ホルモンと不安障害〈砂田尚孝,加藤正樹〉
I.女性ホルモンと中枢神経系
II.更年期障害
III.月経前不快気分障害
IV.その他
第4章 注意を要する場合の抗不安薬の使い方
1 児童・思春期に用いる場合〈新開隆弘〉
I.治療の特殊性
II.児童・思春期における不安障害
III.引きこもりの若者の5人に1人強が不安障害
IV.引きこもりの若者の悩み
V.児童・思春期の不安障害
VI.薬物治療の基本
VII.抗不安薬の作用機序
VIII.抗不安薬の作用時間と使い分け
IX.副作用と注意点
2 妊産婦に用いる場合〈清野仁美〉
I.妊婦における抗不安薬の薬物動態
II.妊娠期における抗不安薬使用
III.妊娠期における睡眠薬の使用
IV.授乳期における抗不安薬の使用
V.授乳期における睡眠薬の使用
3 高齢者に用いる場合〈宇和典子〉
I.高齢者の薬物療法の実際と問題点
II.高齢者の薬物動態
III.高齢者における抗不安薬の臨床効果
IV.抗不安薬の副作用と有害事象
V.高齢者における抗不安薬の使用上の留意点
VI.服薬管理
4 勤労者に対して抗不安薬を使用する際に知っておきたいこと〈堀 輝〉
I.ベンゾジアゼピン系薬剤の特徴と本邦の処方特性
II.勤労者にベンゾジアゼピン系薬剤を投与する際に把握しておくべき副作用
〜業務に影響が出る可能性がある副作用〜
III.運転と抗不安薬
IV.職種と抗不安薬使用
5 他の薬剤と併用する場合(向精神薬,身体的治療薬)〈三原一雄,中村明文,近藤 毅〉
I.薬物動態からみた抗不安薬の分類
II.薬物動態学的相互作用
III.薬力学的相互作用
6 身体疾患を有する人に用いる場合〈吉村知穂,山田 恒〉
I.肝機能障害を有する患者への使用について
II.腎機能障害を有する患者および透析患者への使用について
III.呼吸器疾患を有する患者への使用について
IV.循環器疾患を有する患者への使用について
V.悪性疾患を有する患者に使用する場合
索引