フレイルのみかた
内容
超高齢化社会へと突き進む中,医療・介護従事者や医療系学生ならば正しく理解しておく必要がある概念,「フレイル」.本書では,フレイルの正確な概念を理解し,どのように診断,予防,介入を実践するべきか,どう目の前の患者と関わればいいのか,立場の異なる各職種の専門家が解説している.通読すれば,フレイルとそれを取り巻く事柄についての知識が網羅的に身に付き,現場での患者診療・ケアがより充実したものになる1冊だ.
序文
序文
平成25年5月に日本老年医学会がそれまで「虚弱」と訳されていたFrailtyの訳を「フレイル」とすることを提言してから,4年以上経過して「フレイル」はかなり浸透してきたように思われる.平成26年3月に設立された日本サルコペニア・フレイル研究会は,平成28年9月には日本サルコペニア・フレイル学会となり,平成29年10月14,15日に京都で開催された第4回目の学術集会では約800名の参加者に恵まれ,フレイルとともにサルコペニアに対する関心の高まりを実感できた.また,日本サルコペニア・フレイル学会以外の学会においてもフレイルが話題になることが増えつつあると聞いている.学会などでフレイルについての研究成果を発表し情報交流することはきわめて重要であるが,同時に全国的にフレイルの概念が浸透し,その予防対策・介入が多くの地域,施設で適切に行われることが望まれる.それがひいては国民の健康寿命の延伸と要介護高齢者の減少につながると確信している.今回その一助となるよう多くの医療介護専門職がフレイルの概念を理解し,診断,予防,介入を実践するための「フレイルのみかた」を企画した.本書では,フレイルの概念をはじめ,いかにスクリーニング,診断を行うか,そしてどのように予防,介入を行うかについて,さらには様々な疾患との関連も含めて第一線で活躍している方々に執筆をお願いした.本書が読者のお役に立ち,フレイル予防が進んで,要介護高齢者の減少につながることを祈念している.
2018年3月
国立長寿医療研究センター 荒井秀典
目次
目次
I フレイルを理解する
1 フレイルとは?〈牧迫飛雄馬〉
❖フレイルの概念
❖健康長寿におけるわが国でのフレイルの位置づけ
❖フレイルの多面性
❖フレイルサイクル
❖フレイルの可逆性
2 フレイルの頻度は?〈土井剛彦〉
❖フレイルの頻度を考える前に
❖フレイルの種類による頻度の違い
3 フレイルの危険因子・保護因子〈堤本広大〉
❖社会統計学的因子
❖身体的因子
❖生物学的因子
❖生活習慣因子
❖心理学的因子
❖その他の因子
4 フレイルの転帰〈田中友規〉
❖身体的フレイルの転帰
❖多面的なフレイルも見過ごせない
❖フレイルの可逆性への期待
5 認知的フレイルとは?〈杉本大貴 櫻井 孝〉
❖IANA/IAGGによる認知的フレイルの操作的基準
❖認知的フレイルの有症率と意義
❖新たな認知的フレイルの操作的基準
6 社会的フレイルとは?〈藺牟田洋美〉
❖社会的フレイルの意義
❖社会的フレイルの定義とその指標
❖社会的フレイルがもたらすもの
7 オーラルフレイルとは?〈枝広あや子〉
❖オーラルフレイルとは
❖オーラルフレイルの構成要素
❖オーラルフレイルのみかた
8 フレイルの評価方法〈清野 諭〉
❖客観的項目を含む評価方法
❖主観的項目(質問紙)のみによる評価方法
❖まとめと課題
II フレイルを予防する
1 フレイル予防のための栄養とは〈木下かほり〉
❖フレイルと低栄養
❖高齢者の体重減少をきたす要因
❖低栄養(体重減少)を予防するためのスクリーニング方法
❖高齢者の背景や機能に合わせた提案が疾患由来ではない低栄養の予防に繋がる
2 ポリファーマシー対策(処方の適正化)はフレイルを改善するか?〈溝神文博〉
❖ポリファーマシーとフレイルの関係性
❖ポリファーマシーに対するアプローチ
❖ポリファーマシー対策はフレイルを改善するか?
3 生活習慣病の管理によるフレイル予防〈杉本 研 楽木宏実〉
❖生活習慣病とフレイルとの関連
❖生活習慣病管理によるフレイルへの影響
4 社会参加によるフレイル予防〈藤原佳典〉
❖社会参加のステージと社会関係
❖インフォーマルな社会関係と健康
❖社会参加によるフレイル予防
❖まとめと展望
5 口の健康とフレイル予防〈白石 愛〉
❖フレイルサイクルと口腔を取り巻く問題
❖口腔機能の簡便,見える化スクリーニング
❖オーラルフレイルの予防
6 ホルモンとフレイル予防〈柴崎孝二〉
❖病的ホルモン異常とフレイル
❖テストステロンとフレイル
❖成長ホルモン,インスリン様成長因子-1とフレイル
❖グレリンとフレイル
❖複合的ホルモンとフレイル
❖その他のホルモンとフレイル
7 サプリメントとフレイル予防〈小林久峰〉
❖フレイルとサルコペニア
❖骨格筋におけるタンパク質合成のアミノ酸による促進
❖高齢者の骨格筋におけるロイシン高配合必須アミノ酸の効果
III フレイルを治す
1 運動によりフレイルを治す〈山田 実〉
❖フレイルと運動
❖身体的フレイルと運動
❖精神心理的フレイルと運動
❖社会的フレイルと運動
2 栄養によりフレイルを治す〈大黒正志〉
❖フレイルと栄養
❖フレイルとタンパク質
❖フレイルとビタミンD
❖フレイルに関係のあるその他の微量栄養素
❖地中海食と日本食
❖フレイルと多職種連携
❖最後に
3 摂食嚥下訓練からフレイル改善へ〈前田圭介〉
❖サルコペニアの摂食嚥下障害とは
❖サルコペニアの摂食嚥下障害対策
❖リハビリテーション栄養
❖フレイル改善とサルコペニア対策
4 漢方薬の可能性〈新見正則〉
❖漢方の使い方
❖高齢者に処方するときのヒント
❖実際の処方
IV フレイルの関連病態
1 フレイルとサルコペニア〈渡邊裕也〉
❖サルコペニアとは
❖サルコペニアのメカニズム
❖サルコペニアの判定
2 フレイルとロコモティブシンドローム〈石橋英明〉
❖ロコモ予防は健康寿命の延伸が目標
❖ロコモの概念とフレイル対策における意義
❖ロコモの評価法
❖ロコモの対策
❖フレイルとロコモの関係
3 フレイルとカヘキシア〈足立拓史 山田純生〉
❖カヘキシアの概念と病態
❖カヘキシアの定義と診断基準
❖フレイルにおけるカヘキシアの位置づけ
❖カヘキシア対策の基本的な考え方
4 フレイルと骨粗鬆症〈河尾直之 梶 博史〉
❖骨粗鬆症
❖フレイルと骨粗鬆症の関連
❖サルコペニアと骨粗鬆症
❖筋骨連携
❖フレイルと骨粗鬆症の治療的アプローチ
V フレイル介入の実践
1 病院での実践〈サブレ森田さゆり〉
❖老年期とフレイル
❖高齢者の問題点
❖フレイルの基本的な予防
❖高齢者は多様である
❖包括的な評価
❖多職種介入によるフレイル予防
❖フレイル予防糖尿病教室の紹介
❖病院が果たす役割
2 フレイル介入の実践 在宅医療〈和田忠志〉
❖在宅医療におけるフレイル進行予防対策
❖体重・身長測定とBMIの計測(推定)
❖栄養管理
❖リハビリテーションと関連事項
❖絶食と入院の回避
❖ケアマネジャーへの助言
3 通所サービスでの実践〈吉松竜貴〉
❖通所サービスにおけるフレイル評価の総論
❖栄養面でのフレイルに対する方策
❖活動面でのフレイルに対する方策
❖疲労・消耗をきたしたフレイルに対する方策
❖身体機能面でのフレイルに対する方策
4 施設での実践〈大河内二郎〉
❖入所サービスにおけるフレイル対策
❖通所リハビリテーション(デイケア)におけるフレイル対策
❖短期入所(ショートステイ)におけるフレイル対策
❖介護予防サロン
索引