行動医学テキスト
内容
2023年3月上旬 改訂2版 刊行予定
序文
序文
日本行動医学会は設立20年を経過しましたが,長年の懸案でありました「行動医学テキスト」を刊行することになりました.近年に至って,医学教育コアカリキュラムの重要な科目として「行動科学」が取り上げられ,また臨床場面で「行動医学」の重要性が増してきています.これまで,欧文テキストは多く刊行されていますが,日本の行動医学の確固としたテキストはありません.そこで,日本行動医学会では行動科学・行動医学コア・モデルカリキュラムを策定し,それに準拠したテキストを編纂することとなりました.
行動医学は,「健康と疾病に関する心理社会科学的,行動科学的および医学生物学的知見と技術を集積統合し,これらの知識と技術を病因の解明と疾病の予防,診断,治療およびリハビリテーションに応用していくことを目的とする学際的学術」(国際行動医学会憲章,1990)であり,多くの専門分野にまたがる学際領域であるといえます.したがって,本書は,行動医学の概念や基礎的な知見,臨床応用への方法論ならびに臨床実践の具体的な方策など,広範な内容となっております.
本書は,「行動医学」のすべてがわかる初学者向けの入門書ですので,医学,看護学,心理学などの教育におけるテキストとして,また医療スタッフが実際の臨床に活用できるマニュアルとして編纂されています.本書が,日本の行動医学の発展ならびに国民の健康長寿の実現,医療の質・患者のQOLの向上に少しでも貢献できることを願ってやみません.
平成27年7月吉日
日本行動医学会理事長
編集委員代表 野村 忍
目次
目 次
I.総 論
1 行動医学とは:行動医学の歴史と発展〈川上憲人〉
1.行動医学とは
2.行動医学の歴史
3.日本の行動医学の発展
4.行動医学の研究テーマと関連諸領域
5.医学教育と行動医学
2 行動の生物学的理解
a 行動と脳〈大平英樹〉
1.行動を支える脳の構造と機能
2.感情を起動する扁桃体
3.感情と身体反応
4.報酬を追求する線条体
5.前頭前皮質の制御機能
6.目標志向行動と習慣行動
7.精神疾患と脳の機能
b 行動の神経内分泌学(摂食などに関する内分泌ホルモンなど)〈改元 香 勝浦五郎 乾 明夫〉
1.神経内分泌学
2.神経内分泌学と摂食行動
3.視床下部と報酬系の相互作用
4.摂食を調節する薬剤
5.今後の展望
c 行動の薬理学〈蜂須 貢〉
1.一般行動観察法
2.抑うつ様行動の評価法
3.不安関連行動の評価法
d 行動と遺伝(エピジェネティクス)〈武田弘志 宮川和也 辻 稔〉
1.エピジェネティクスとは
2.うつ病とエピジェネティクス
3.統合失調症とエピジェネティクス
4.Rett症候群とエピジェネティクス
5.ストレス抵抗性の形成機構におけるエピジェネティクス制御の可能性
3 行動の心理学的理解
a 認知の情報処理〈岩永 誠〉
1.人の認知情報処理
2.不安と抑うつにおける認知情報処理
b 行動と性格〈井澤修平〉
1.行動医学における行動と性格
2.タイプA行動パターン
3.怒り・敵意
4.がん関連性格
5.タイプDパーソナリティ
6.アレキシサイミア
c 行動とライフサイクル〈中尾睦宏〉
1.ライフサイクルとは
2.ライフサイクルの発達課題
3.ライフサイクルに関連した行動医学のトピック
d 行動の心理学的測定法(心理行動アセスメント)〈武井優子 鈴木伸一〉
1.心理行動アセスメントとは
2.アセスメントの目的と標的行動の明確化
3.代表的な測定法
4.ケースフォーミュレーション(問題の定式化)
5.心理行動アセスメントの実際
4 行動の社会医学的理解
a 対人行動と社会行動〈島津明人〉
1.自己の心理的要因と人間関係
2.対人行動
3.集団における行動
4.文化と行動
b 行動と社会〈堤 明純〉
1.個人の行動を変容させるために,社会や環境に働きかけるという視点
2.健康の社会的決定要因と健康格差
3.メカニズムの解明から集団へのアプローチへ
c 行動医学と生物統計学〈国里愛彦〉
1.行動医学と生物統計学
2.臨床的疑問の定式化
3.研究デザイン
4.統計的解析
5.研究結果の評価と推奨
5 行動の全人的理解
a 行動科学と健康科学〈津田 彰 坂元きよう〉
1.行動科学とは
2.行動科学の発展
3.わが国における行動科学の最近の動向
4.行動科学のテーマと範囲
5.行動科学の意義
6.全人的医療の展開と実践
7.健康科学とは
8.健康の概念
9.健康科学の発展
10.健康科学の専門的活動,意義
11.健康科学と代替医療
b 行動と心身医学〈福土 審〉
1.心身医学の診断学
2.心身医学療法概論
c 行動と予防医学〈小田切優子〉
1.行動
2.予防医学
3.社会環境の重要性
II.各論
1 行動心理学理論
a 行動心理学における学習理論〈大月 友〉
1.行動心理学における“行動”と“学習”
2.古典的条件づけによる行動の変化
3.オペラント条件づけによる行動の変化
4.観察による行動の変化
5.行動医学と行動心理学
b ストレス・コーピング〈齋藤恵美 神村栄一〉
1.ストレスと健康
2.ストレス・コーピング
3.ストレスマネジメント
c ストレス評価法〈野村 忍〉
1.ストレス評価の重要性
2.ストレス評価法のタイプ
3.ストレス評価法の応用
4.ストレス評価の実際
2 行動変容技法
a 行動療法〈佐藤友哉 嶋田洋徳〉
1.行動療法とは
2.行動療法の特徴
3.行動療法の治療原理と治療技法
4.近年の行動療法の展開
b 認知療法〈大野 裕〉
1.認知行動療法の基本構造
2.認知療法の治療関係
3.治療関係を支える治療構造
4.認知と行動に働きかける
c 認知行動療法〈福井 至〉
1.認知行動療法の定義
2.初期の代表的な認知行動療法
3.障害ごとの認知行動療法のパッケージ
4.認知行動療法の効果とさらに効果的な認知行動療法
d マインドフルネス〈熊野宏昭 大内佑子〉
1.マインドフルネスとは何か
2.マインドレスになる基盤
3.マインドフルネスの実践
e バイオフィードバック〈都田 淳 端詰勝敬〉
1.バイオフィードバックとは
2.バイオフィードバックの適応疾患
3.バイオフィードバックの臨床応用について
4.バイオフィードバックの展望について
f 行動変容のステージモデル〈竹中晃二〉
1.トランスセオレティカル・モデルの概要
2.TTM構成概念間の関係
3.TTMの強み
3 行動変容の応用
a 禁煙〈高橋裕子〉
1.禁煙治療の変遷
2.喫煙有害性
3.禁煙治療
4.禁煙継続支援
5.うつを有する喫煙者への禁煙支援の留意点
6.体重増加
7.女性と子どもへの禁煙支援
8.禁煙に同意しない喫煙者へのアプローチ
b 肥満・糖尿病〈野崎剛弘 小牧 元〉
1.生活習慣病としての肥満・糖尿病
2.減量治療への導入
3.行動変容のための治療技法
c 運動・身体活動〈井上 茂 涌井佐和子〉
1.どのくらい身体活動を行えばよいのか
2.行動変容理論の応用
3.地域環境と身体活動
d 不眠症に対する認知行動療法〈足達淑子〉
1.睡眠と健康
2.睡眠問題の課題
3.不眠症と睡眠の評価
4.不眠に対する行動療法
5.CBT-Iの行動技法と適用
e タイプA行動〈萱場一則〉
1.A型行動パターンの概要
2.TABPの判定
3.冠動脈疾患危険因子としての有意性
4.TABPへの介入
5.敵意性や怒りへの介入
6.今後の課題
f 摂食障害〈田村奈穂 石川俊男〉
1.摂食障害とは
2.摂食障害の診断
3.摂食障害の治療
4.摂食障害の治療における行動医学の実践
g うつ病〈竹内武昭 中尾睦宏〉
1.うつ病の疫学
2.うつ病の診断
3.うつ病と近縁疾患
4.身体疾患とうつ病
5.自殺のリスク
6.睡眠の異常
7.治療の基本
8.認知行動療法
9.うつ病と生活習慣
h 不安症〈高梨利恵子 清水栄司〉
1.不安とは
2.不安症と関連疾患の病態モデル〜認知行動療法の観点から〜
3.不安症の治療の実際
4.不安症の治療の重要性
i 慢性痛〈細井昌子〉
1.痛みの定義と慢性痛の定義
2.慢性痛の分類
3.慢性痛と学習理論
4.慢性痛と社会的報酬
5.慢性痛と行動医学的対応
6.慢性痛の認知行動療法
7.慢性痛の認知行動療法の実際
j 緩和ケア〈吉内一浩〉
1.緩和ケアとは
2.わが国の行政の動き
3.緩和ケアにおける行動医学の役割
4.緩和ケアにおける介入方法
k アルコール依存症の治療〈佐久間寛之 樋口 進〉
1.アルコール依存症の心理的特性
2.飲酒に関連した認知の歪み
3.認知行動療法
4.GTMACKの概要
5.新たな取り組み
4 医療における患者対応
a 医療面接〈坪井康次 坊 裕美〉
1.医療面接とは
2.患者中心であることの意味
3.患者中心の面接と医師中心の面接の統合
4.面接は,促進の技法を駆使して展開される
5.促進の技法(質問の技法)
6.関係構築の技法
b 動機づけ面接〈原井宏明〉
1.MIの概要
2.MIの進め方
3.MIのエビデンス
4.MIの学習・習得
c 悪い知らせを伝える〈藤森麻衣子〉
1.患者が医師に求めるコミュニケーション
2.医師のコミュニケーションに対する患者の意向に関連する要因
3.悪い知らせを伝える医師のコミュニケーションの能力
4.悪い知らせを伝える医師のコミュニケーションの学習方法
d 健康行動と健康教育(ヘルスプロモーション)〈中山健夫 藤本修平 高田明美〉
1.健康教育の定義
2.健康教育の目的
3.健康教育の対象
4.健康教育の代表的な教育モデル
5.健康教育におけるヘルスコミュニケーション
6.セルフコントロールと衝動性
7.共有環境
e QOL〈山本洋介 福原俊一〉
1.QOLとは何か?
2.QOL尺度の具体例─SF-36を中心に
3.行動医学におけるQOLの評価の役割
4.おわりに─健康関連QOLはどのように用いられるべきか?
索 引