POC心エコー ただいま診断中!
内容
超高齢化社会を迎えるにあたり、診断ツールとして心エコーの重要度がますます高まっている。とくにベッドサイド、在宅、診療所でも活用できるPOC(ポイント・オブ・ケア)心エコーは、心疾患を的確に表現し、最適な治療へと導くためのハートチームの共通言語として欠かせない手技となっている。本書は、そのPOC心エコーの基本から応用まで、症例ベースにフローチャートを用いてわかりやすく解説され入門者必携の書なっている
序文
序
みなさんは「POCUS(Point of Care Ultrasound)」を知っていますか?
この本を手にしている方の多くは,ERや病棟のベッドサイド(Point ofCareを略してPOCと呼ぶ)であてる簡便な超音波検査が「POCUS」であることをご存知かもしれません.この「POCUS」は,近年の本邦での専門医制度の変化や研修方法の多様化に伴ってとくに注目を集めています.循環器疾患は緊急性が高いため初期対応の差がその後の診断や治療に大きく影響しますが,循環器領域のPOCUSである『POC心エコー』はその初期対応に大きな差を生み出します.そのため,循環器疾患の初期対応にあたる際,『POC心エコー』を十分に理解しておけば緊急時や診断に困る場合に有用な武器となります.
『POC心エコー』には「Focused Cardiac Ultrasound(FOCUS)」と「Limited Transthoracic Echocardiography(TTEL)」という概念があり,心エコーを専門としない医療従事者において,心エコー経験値に左右されにくいFOCUSの有用性が認識されています.一方,TTELは「知識と経験を要する診断を導くための心エコー」と定義され,循環器専門医など心エコー上級者によるエキスパートオピニオンとして活用されます.この本では,FOCUSやTTELのハウツーを記すのみでなく,どのようにFOCUSとTTELが解釈されたのか,どのようにその後の検査や治療に活かされたのかに注目して実症例から学べるようにしました.私の立場上やや循環器専門医よりの目線となってしまっているかもしれませんが,内容に至らない点があれば是非ご指摘いただければ幸いです.
本書を作成するにあたり中外医学社 宮崎さん,沖田さんには多大なアドバイスを頂き,この場を借りて厚くお礼申し上げます.また,いつも最大のサポートをしてくれる家族にも重ねて感謝したいと思います.
2018年12月吉日
柴山謙太郎
巻頭言
循環器疾患を取り巻く世界は大きな変化を起こし続けている.特に高齢者が治療対象に含まれるようになり,それぞれの症例は多様性を増している.このような変化に柔軟に対応するために,多職種で構成されるハートチームは循環器疾患の対応に必須の組織になった.
そのようなチームでは,心疾患を的確に表現し,最適な治療を導くための共通言語が常に求められている.その代表は心エコー図で,質の高いハートチームには質の高い心エコー図が必ず用いられている.特に重要なことは心エコー図の数字を一人歩きさせることなく,その論理的背景を理解し,その結果を的確に応用することである.心エコー図に限ったことではないが,基礎を確実に理解することは,最先端を理解し,最適な診療に導く重要な学びである.
POC心エコーは心エコー図の基礎を再定義している.心エコー図を専門とするスタッフにとって,その内容は特に目新しいものではない.しかし初心者にとっては,POC心エコーで整理された基礎をしっかりと理解し,新しい世界に進むための最も効率のよい学びとなるであろう.
本書は柴山謙太郎医師の熱意に溢れている.POC心エコーからその応用まで,論理的骨格がフローチャートによって可視化され,症例ベースに実例が明示された.さらに,実際の記録方法が丁寧に示されており,本書の学問的価値と実用的価値を高めている.
この本が広く迎えられ,1人でも多くの症例を救うことに繋がることが私達ハートチームの願いである.
2019年1月吉日
東京ベイ・浦安市川医療センター ハートセンター長
渡辺弘之
目次
Contents
本書の使い方
序論
状況による心エコー分類
主訴からフローチャートで考える
1 心エコーを描出しよう
1 エコープローブの選び方
エコープローブの種類
プローブ選択のポイント
2 エコープローブの使い方
エコープローブの持ち方
エコープローブの操作方法
3 体位と呼吸
体位
呼吸
4 アプローチと基本断面
心エコープローブのアプローチ
心エコー図の描出断面
心エコー図の基本断面
5 Mモード法,ドプラ法
Mモード法
カラードプラ法
連続波ドプラ
パルスドプラ
組織ドプラ
2 How to POC心エコー―FOCUSとTTELはこう使う―
A.FOCUSで病態評価
1 FOCUSの評価ポイント
FOCUS基本断面とチェックポイント
1.傍胸骨左縁アプローチ
2.心尖部アプローチ
3.心窩部アプローチ
2 FOCUSフローチャート: ショック
1.血液分布異常性ショック・循環血液減少性ショックの除外
2.閉塞性ショックの除外
3.心原性ショックの鑑別
4.TTELへすすむ
3 FOCUSフローチャート: ショック以外
1.血液分布異常や循環血液減少をきたす疾患の除外
2.閉塞性疾患や特殊な病態がないか?
3.心疾患の鑑別
4.TTEL
コラム RUSHとFOCUSは区別する?
B.TTELで鑑別診断
1 急性心不全
2 心タンポナーデ
3 急性冠症候群
4 大動脈弁狭窄症
ASの血行動態
ASの視覚的スコア
重症度ステージ評価
ASの成因
低拍出低圧較差ASとは?
5 急性大動脈弁逆流症
急性ARをきたす主な原因
6 急性僧帽弁逆流症
急性MRのおもな原因
7 拡張型心筋症
特定心筋疾患の分類
8 閉塞性肥大型心筋症
肥大型心筋症の肥大様式の分類
9 急性心筋炎
10 感染性心内膜炎
11 肺血栓塞栓症
Simplified Well’s Score
12 急性大動脈解離
3 実践で学ぶPOC心エコー―主訴からフローチャートで考える―
1 ショック
1 元気な高齢女性を襲ったショック
低拍出低圧較差AS
血行動態が不安定なASへの緊急対応
2 若年女性の発熱と胸痛を伴うショック
急性心筋炎の治療
3 呼吸苦を伴うショック
肺血栓塞栓症の臨床分類
2 胸痛
心血管の“6 Killer”chest pains
1 通勤中に生じた突然の胸痛
緊急冠動脈造影を考慮するハイリスク症例
再灌流時間
2 腰背部痛を伴う胸痛
Stanford A型大動脈解離に対する急性期治療
3 失神
1 高齢男性の繰り返す失神
完全房室ブロックの原因と頻度
2 軽労作で生じた失神
肥大型心筋症の突然死リスク
経皮的中隔心筋焼灼術
4 呼吸困難
1 若年男性の呼吸困難
低拍出量症候群
特発性拡張型心筋症の診断基準
2 微熱を伴う突然の呼吸困難
IEに対する早期手術についての推奨とエビデンスレベル
5 動悸
1 動悸で紹介された中年女性
僧帽弁狭窄症
抗凝固薬の選択
6 浮腫
1 若年男性の全身浮腫
高心拍出量症候群
付録 心エコー図の基準値
索引