早期発見・早期管理 軽症糖尿病
- 定価:
- 6,270円(本体価格5,700円+税)
在庫なし
書誌情報
| サイズ | B5判 |
|---|---|
| 頁 | 204頁 |
| ISBN | 978-4-498-02496-0 |
| 発行日 | 1999年12月01日 |
内容
国民病とも云われ,増加する一方の糖尿病を軽症のうちにいかに発見し,管理・治療したらよいかを実践的に解説した臨床書である.発症間近の糖尿病,罹病期間が長くとも血管合併症などのない,いわゆる「軽症糖尿病」の考え方・問題点から病態の理解の仕方,早期診断の進め方,管理・治療の実際,老年者糖尿病その他関連病態の対処法までを,最新の進歩,診断基準・分類により解説した.
序文
序
今,本邦を始めとする先進諸国では“糖尿病放置病”が蔓延している.検診でせっかく早期に軽症の時期に糖尿病を発見されていながら,「食事や運動に気をつければいいだけか」と放置する患者が多い.一方,多くの医師も糖尿病放置病に罹っているかもしれない.症状がないから,血管合併症が全く発症していないから,血糖管理を今は厳格にする必要がない,と“放置”しているうちに血管合併症が徐々に進展し続ける.現在,糖尿病血管合併症の終末像を呈する患者があまりに多い.この20年間,全ての糖尿病患者で完璧な血糖管理がなされた,とは決していえないことから,今後も失明,透析導入,壊疽による下肢の切断は増え続けるであろう.私ども糖尿病専門医が,糖尿病発症直後の軽症の時期から積極的に治療しよう,と運動を展開している.
2型糖尿病はインスリン分泌不全とインスリン抵抗性が並存して初めて発症する.多くの糖尿病患者を長年にわたって観察していると,宿命的ともいえるインスリン分泌の特徴に気が付く.遺伝表現型として「食後の血糖値上昇に対応して瞬時に分泌されるインスリン追加分泌が欠如している,血糖値の上昇に遅れてインスリンが分泌される,分泌量も少ない」という特徴を有していても,糖尿病が発症するわけではない.発症前にはインスリンの感受性がむしろ亢進していて,糖のながれを正常化させている.やがて,インスリン感受性が低下するにつれて糖の処理が不充分になる.これを血糖応答の面から見ると,最初の異常として,食前正常血糖値,食後のみ短期間血糖値が高くなることが見られ,高血糖の持続時間が徐々に遷延し,やがて次の食前血糖値が高くなる,さらに12時間にも及ぶ絶食にもかかわらず,朝食前空腹時血糖値が高くなる.すなわち,空腹時血糖値が126mg/dl以上となって糖尿病と診断された時には,既に罹病期間が長くなっている可能性があろう.一方,肥満が糖尿病の引き金と捉えられがちだが,遅延して分泌されるインスリンが糖や脂肪を脂肪細胞に取り込ませることとなり,肥満を助長させる,と考えることができる.すなわち,宿命的なインスリン分泌動態が肥満を起こし,インスリンの働きを低下させ,糖尿病を発症させると考察できる.
早期・軽症糖尿病の病態把握・管理が,いま最も求められているのではなかろうか.
1999年9月
河盛隆造
目次
目 次
対談1 今なぜ軽症糖尿病を取り上げるのか その概念・考え方・問題点
<河盛隆造・門脇 孝>
I章 軽症糖尿病の病態
1.軽症糖尿病の成因と病態の多様性 <岩本安彦>
A.糖尿病とは
B.糖尿病の新しい成因分類
C.日本糖尿病学会における糖尿病の新分類
D.病態,病期を考慮した二次元の分類
E.遺伝因子と環境因子
F.インスリン抵抗性とインスリン分泌不全
G.糖尿病の早期発見・早期管理を目指して
2.インスリン分泌低下からみて <河津捷二>
A.軽症糖尿病にみられるインスリン分泌低下
B.インスリン分泌低下の臨床的意義
C.むすび
3.インスリン抵抗性からみて <戸辺一之・岡田光正・門脇 孝>
A.インスリン抵抗性とは?
B.インスリン抵抗性の測定法
C.ブドウ糖はどの臓器にとりこまれるのか
D.インスリン抵抗性をきたす要因
E.インスリン抵抗性の遺伝的素因
F.インスリン抵抗性の環境的要因
G.インスリン抵抗性,肥満,高血圧,糖尿病,脂質代謝異常などの動脈硬化危険因子はなぜ同一の個体に多重積するのか
H.どの程度インスリン抵抗性が続くと糖尿病や動脈硬化性疾患が発症するのか
4.ブドウ糖毒性からみて <斎藤雄二・河盛隆造>
A.ブドウ糖毒性とは
B.インスリンの糖取り込み促進作用とglucose toxicity
C.インスリンのグリコーゲン合成促進作用とglucose toxicity
D.インスリン分泌とglucose toxicity
E.糖尿病の進展因子としてのブドウ糖毒性
5.細小血管症のリスクファクターとしての意義 <伊藤千賀子>
A.細小血管障害と耐糖能
B.網膜症
C.糖尿病性腎症
D.多変量解析による細小血管障害の危険因子
6.大血管症とそのリスクファクターとしての意義 <山崎義光>
A.軽症糖尿病の動脈硬化の危険因子
B.軽症糖尿病の危険因子に対する治療効果
II章 軽症糖尿病の疫学
1.厚生省糖尿病実態調査からみて <野田光彦・高橋義彦・門脇 孝>
A.糖尿病実態調査
B.糖尿病実態調査が示すもの
2.住民検診の成績からみて <富永真琴・江口英行>
A.軽症糖尿病の有病率
B.軽症糖尿病の合併症
C.軽症糖尿病発症のリスク因子
D.軽症糖尿病の予防
3.国際比較の成績からみて <松島雅人・田嶼尚子>
A.軽症糖尿病の疫学から何を学ぶか?
B.有病率の国際比較
C.IGTから糖尿病への移行率
III章 糖尿病の早期診断をどう進めるか
1.血糖値からみて <原 均・尾崎加代・三登和代>
A.糖尿病の新しい診断基準について
B.新旧基準値,ADA・WHO基準および耐糖能障害区分の相違点
C.当所入院ドック受診者における75gOGTT判定区分
D.新旧の糖尿病判定基準別にみた糖尿病型への移行率
E.糖尿病者,IGT者,追跡調査後糖尿病型への移行者をいかにスクリーニングするか
F.糖尿病と診断され,追跡後糖尿病にとどまった症例と非糖尿病に改善した症例の比較
2.HbA1cの活用 <大澤春彦・大沼 裕・牧野英一>
A.HbA1cの測定
B.測定上の注意
C.日本におけるHbA1c測定の標準化
D.HbA1cの正常範囲と血糖コントロールの目標値
E.糖尿病の早期診断におけるHbA1cの意義
3.インスリン測定の意義 <田中 逸>
A.我が国のNIDDMにおけるインスリン分泌の特徴
B.軽症糖尿病者におけるインスリン測定の意義
C.内因性インスリン分泌の評価
D.インスリン抵抗性の評価
E.治療効果の評価
IV章 軽症糖尿病の管理と治療
1.軽症糖尿病の管理はなぜ必要か,どう進めるか <綾目秀夫・岡 芳知>
A.軽症糖尿病の実態
B.血糖・血圧コントロールと合併症
C.インスリン抵抗性と動脈硬化
D.糖毒性
E.糖尿病の発症・進展予防の大規模介入試験
F.軽症糖尿病管理はなぜ必要か
2.食事療法の進め方 <津田謹輔・清野 裕>
A.食事療法の重要性
B.食事療法の原則
C.食事療法の実際
D.食事療法への患者教育
3.運動療法の進め方 <阿部隆三>
A.運動療法で軽症糖尿病が改善した例
B.軽症糖尿病患者での糖・脂質代謝
C.境界型糖尿病での運動効果
D.耐糖能障害患者の運動療法による予後
E.運動療法の実際
F.運動療法を中断しないためのコツ
4.UKPDSにみる薬物療法選択の進め方 <渥美義仁>
A.UKPDSの目的と概要
B.血糖コントロールスタディー
C.比較試験2からわかること
D.血圧コントロールの効果
E.UKPDSを日常臨床に生かす
5.インスリン分泌促進薬の使い方 <菊池方利>
A.インスリン分泌刺激剤の特徴
B.SU剤の特性のまとめ
C.非SU剤の特性のまとめ
D.インスリン分泌促進薬の使い方
6.α-グルコシダーゼ阻害剤の使い方 <中村二郎>
A.α-グルコシダーゼ阻害剤の構造と作用メカニズム
B.α-グルコシダーゼ阻害剤の薬理作用
C.α-グルコシダーゼ阻害剤による治療の実際
7.インスリン抵抗性改善薬の使い方 <加来浩平・川崎史子>
A.作用および作用機序
B.臨床成績
C.適応と使い方
D.副作用
8.軽症糖尿病にみる高脂血症の病態と治療 <石橋 俊>
A.軽症糖尿病にみる高脂血症の病態
B.治療
C.薬物療法の注意点
9.軽症糖尿病における高血圧の病態と治療 <片山茂裕>
A.軽症糖尿病における高血圧の成因と病態
B.軽症糖尿病の高血圧の治療
V章 軽症糖尿病と関連した諸病態
1.老年者糖尿病 <服部明徳・井藤英喜>
A.糖尿病治療の目的
B.老年者糖尿病患者の治療
2.妊娠糖尿病 <佐中真由実>
A.妊娠時の糖代謝
B.妊娠糖尿病の定義
C.妊娠糖尿病のスクリーニング
D.妊娠糖尿病の診断基準
E.問題点
F.治療
G.分娩後のfollow-up
3.1型糖尿病 <丸山太郎>
A.1型糖尿病とは
B.「軽症糖尿病」における1型糖尿病の診断
C.「軽症糖尿病」における1型糖尿病診断の問題点
D.「軽症糖尿病」の病期における1型糖尿病の治療
4.清涼飲料水ケトーシス <山田研太郎>
A.清涼飲料水ケトーシスの特徴
B.清涼飲料水ケトーシスの鑑別診断
C.清涼飲料水ケトーシスの治療
対談2 まとめ 軽症糖尿病の病態と総合的な管理・治療
<河盛隆造・門脇 孝>
索引