神経発達障害診療ノート
内容
(児童)精神科医はもちろん,小児科医も神経内科医も,神経発達障害を守備範囲とすることが求められる時代となった.本書は,データの羅列や,専門的な議論に陥ることを避け,神経発達障害の基本的な理解と,実地診療で必要な診かた・考えかたの基本をしっかりと記述することを心掛けたオーソドックスな入門書である.
序文
はじめに
神経発達障害(神経発達症)は,小児科や児童精神科あるいはリハビリテーション科でも症例数が増えているといわれています.統計学的にも小児の気管支喘息と大差がない頻度でその存在が認められています.当院でも,小児科や神経内科の守備範囲の一つとして,神経発達障害を対象とした診療を行っています.
わが国では発達障害者支援法の成立後,ますます神経発達障害に対する注目が集まり,医療に対するニーズが増えているようです.しかし,成人では精神科だと神経発達障害を診てもらえる施設が少なく,小児科でも患者数が多すぎてスタッフや設備が不足し,年齢や通院年数などで独自の診療制限をかけざるを得ないところもあるようです.それほど患者さんは多い,ということのようです.
それを受けて神経発達障害を扱った数々の出版物が刊行されていますが,データがたくさんあってどれがポイントなのか把握し辛い,専門的過ぎて初学者には難しい,などいろいろな書籍があるようです.
そこで,最も基本的な部分をしっかり押さえようという目標を達成しようと書き下ろしたものが,本書です.つまり,難しい理論の話はほぼ出てきませんが,実地診療で必要なみかた,考え方の基本をしっかりと押さえておこう,というわけです.
本書では,疾患名はDSM-5に準拠しているので,それ以前の広汎性発達障害やアスペルガー症候群などの用語は,基本的には使用していません.2005年に施行された発達障害者支援法では,神経発達障害を発達障害と呼称し,その範囲を「自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」と定義されており,この行政上の区分と学術上の区分には差異があります.しかしながら,この差異は今後も変化していくものと考えられています.
本書がみなさんの日常診療のお役に立つことがあれば,幸いです.
2018年 新春
橋本 浩
目次
目 次
Part1 総論
入門編
▪神経発達障害とは
▪疫学と社会的背景
▪採算性を含む診療体制の問題
▪かかりつけ医と専門家および専門家同士の連携
▪かかりつけ医が発達障害を疑ったら
Column 臨床心理士もいろいろ
▪参考文献
基本編
▪神経発達障害の分類
▪神経発達障害診療の基本
▪治療とフォローアップの基本
▪NICU退院児と神経発達障害
▪神経発達障害と耳鼻咽喉科・眼科
Column 日本の学校教育のIQ偏重による弊害
▪参考文献
Part2 各論
A.疾患各論
▪知的発達症(群)
▪コミュニケーション症(障害)
▪自閉スペクトラム症(ASD)
▪注意欠如・多動症(ADHD)
▪限局性学習障害(群)
▪運動症
B.治療・療育・連携・支援の概要
▪心理療法
▪リハビリテーション
▪ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)とライフ・スキル・トレーニング(LST)
▪ペアレントトレーニング
▪神経発達障害と食事
▪薬物療法
Column 困った母親が増加している…?
▪参考文献
Part3 応用・発展編
▪ライフサイクルと支援
▪就労支援への取り組み
▪神経発達障害をもつ児の入院管理
Column 未来の神経発達障害治療は,栄養療法が中心に?
▪参考文献
Part4 症例編
▪症例1
▪症例2
▪症例3
Column 神経発達障害に対する法律と差別の問題
索引