運動ニューロン疾患

定価:
6,820円(本体価格6,200円+税)

在庫あり

書誌情報

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サイズ A5判
352頁
ISBN 978-4-498-22888-7
発行日 2017年09月19日

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内容

神経内科のエキスパートをめざす医師に贈る新シリーズの運動ニューロン疾患編。診療のエッセンスをエビデンスも交えてコンパクトに凝縮し,Q&A形式で読みやすく解説しました.各Q&Aの最後にはエキスパートの診療のエッセンスを学べるコラム「pearls」を掲載.基礎から応用まで,ALS診療のあらゆる「困った!」に第一人者がすべてお答えします。

序文

序 文

 神経内科医であれば,是非,筋萎縮性側索硬化症(ALS)に自信を持って対応できる力量を備えて欲しいと思いますが,ALSの臨床は難しいと思います.どの疾患も簡単ではないかも知れませんが,ALSの臨床が難しい理由はいくつかあると思います.1つめは神経内科医であればだれでも診療に携わる疾患でありながら,頻度はそれ程高くはなく,さらには臨床型や経過に大きなばらつきがあることです.言い換えれば,一部の専門機関でなければ,一度に多くの,さらにはさまざまな臨床経過の患者さんを担当することができない疾患だと思います.2つめは,診断の難しさとその病気の進行の速さから,最初に診断をする病院と,その後の療養を支援する医療機関が役割分担をせざるを得ない状況があります.たとえ,診断から療養支援まで行うことができる医療機関であっても,病気の進行により地域の医療機関との連携が必要になることがほとんどです.さらには患者さんが地域で生活をするためにはボランティアや福祉関係者を含めたさまざまな職種との連携も必要になります.

 現在の臨床研修システムでは多くの若手医師は,急性期病院で研修を行うことになりますが,そこでALSと診断された患者さんが,2〜3年の経過をかけてどのように病気が進行し,またどのように病気を理解して,生活をしていくのかを主治医として一緒に経験しないうちには,この病気の患者さんへの説明は難しいと云わざるを得ません.

 本書では臨床上の疑問に答える形で,ガイドラインには書いていない内容を含めて,エビデンスよりもエキスパートオピニオンを集めた内容になっています.ALSのような希少疾患は診療においてエビデンスレベルが高いものはごく一部であり,その他のほとんどは患者さんをみている専門家の意見を参考にしていただくのが良いと思います.さらには実際の患者さんの診療に際しては,患者さんや家族,支援者の意見を丁寧に聞き,看護師さんや保健師さん,地域の担当の先生など多くの人と相談をして進めてもらうことが大切だと思います.

 最後になりましたが,本書の作成にあたり多くの関係者に協力をいただきました.この場を借りて感謝申し上げます.

2017年8月吉日
東北大学大学院医学系研究科神経内科学教授
青 木 正 志



シリーズ刊行にあたって

 神経内科は,現在のわが国の専門医制度においては内科のsubspecialtyの一つであり,初期研修あるいは専門医への専攻医研修においては内科の必須研修科目の一つになっています.しかし神経内科疾患を「患者の主訴」という切り口で眺めてみると,「神経内科」はきわめて広い守備範囲を持っています.たとえば,「物がダブって二つに見える」「手がしびれる」「目がチカチカした後に激しい頭痛がする」などの感覚障害,「片側の手足が動かない」「ふらついて転びやすい」「呂律が回らない」「物が飲み込みにくい」などの運動障害,「朝食の内容を思い出せない」「自分の家族が誰であるかわからない」などの認知機能障害,「いくら呼んでも目を覚まさない」「時々失神する」などの意識障害など,さらには救急車で搬送されるような「激しい回転性めまいがして歩けない」「痙攣が止まらない」などの救急症状まで多岐にわたります.これらの多彩でかつ一般的な主訴から神経内科特有の疾患を鑑別し診断するのが神経内科なのです.神経疾患には,中枢神経の疾患(脳梗塞や脳出血等の脳血管障害,脳炎,髄膜炎,頭痛,てんかん,認知症,パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症,多発性硬化症,視神経脊髄炎など),末梢神経疾患,(Bell麻痺,Guillain—Barré症候群,慢性炎症性脱髄性ニューロパチーなど),筋疾患(筋ジストロフィー症,多発筋炎,周期性四肢麻痺など),神経筋接合部疾患(重症筋無力症,Lambert—Eaton筋無力症症候群など)が含まれ,きわめて多くの疾患があります.

 シリーズ『神経内科Clinical Questions & Pearls』はこのような神経内科を標榜し,さらに専門医を目指すという大きな志を抱く若き医師を対象として立案・企画されました.神経内科疾患を主な領域別に分け,各領域を独立したシリーズとして刊行することとし,各巻ごとに当該領域におけるオピニオンリーダーに責任編集者として内容を企画していただきました.テーマとしては,広い神経内科疾患の領域の中から,脳血管障害,パーキンソン病,認知症,頭痛,てんかん,多発性硬化症・視神経脊髄炎などの中枢脱髄性疾患,神経感染症,小脳失調症,高次脳機能障害,運動ニューロン疾患,末梢神経疾患そして筋疾患の12領域を抽出し,それぞれ1冊単位の独立したモノグラフとしました.ただし,各巻相互に統一性を持たせるため,編集骨格は神経内科診療の現場で遭遇する疑問・課題を,諸疾患の診療ガイドラインで一般化した「Clinical Questions(CQ)形式」として50〜100項目をとりあげ,それぞれについてエビデンスも踏まえて解説するという方針としました.構成としては,疾患の病態理解のための要点,診断と治療の要点,そして外来・病棟での実臨床の要点をQ&A形式にまとめ,それを中核にして前後に総説あるいはコラムなどを交えて解説するという形をとりました.さらに各章の結びとして「Pearls」と題するコラムを設け,診療のポイント,コツ,ピットフォール,最新の知見,読んでおきたい重要文献などについて紹介する工夫を施したことも本シリーズの特徴といえると思います.すなわち,本シリーズは各神経疾患診療に必要な知識を学び,現場での実践力を身につけることができるようまとめられた,新しいコンセプトに基づく神経内科ガイドブックといえるでしょう.最後に,各疾患領域におけるCQを精力的かつ網羅的に抽出していただいた各巻の分担編集者の先生方,ならびに本シリーズ全体の企画編集にご協力いただきました慶應義塾大学医学部神経内科専任講師 清水利彦先生に心から感謝したいと思います.

 本シリーズが,神経内科専門医を志す方々にとって血となり肉となり,将来の臨床の場において大きな花を咲かせ,そして大きく豊かな実を結ぶことを期待しています.

2016年5月吉日
慶應義塾大学医学部神経内科教授
鈴 木 則 宏

目次

Contents

I 病型,病態,病因,経過(予後)
 1 ALSの自然歴,予後予測因子はどのようにわかっていますか?〈熱田直樹 祖父江 元〉
 2 発症が多い集積地はありますか?〈山下 徹 阿部康二〉
 3 孤発性ALSの病因・病態はどこまでわかっていますか?〈荒若繁樹 加藤丈夫〉
 4 SBMAの病態はどこまでわかっていますか?〈飯田 円 近藤直英 佐橋健太郎 勝野雅央〉
 5 ‌脊髄性筋萎縮症(SMA)の病態はどこまでわかっていますか?
   また成人発症のSMAは存在しますか?〈斎藤加代子〉
 6 ALSは単一疾患ですか,どのような亜型が存在しますか?(予後を含む)〈森田光哉〉
 7 傍腫瘍性の運動ニューロン疾患は存在しますか?〈若林孝一〉
 8 プリオン仮説とはどのようなものですか?〈寺田 真 玉岡 晃 長谷川成人〉
 9 多系統タンパク質症とはどういった疾患概念ですか?〈井泉瑠美子〉

II 診断,遺伝学的検査
 1 ‌ALSの診断にどのくらい時間を要しますか?診断基準をどのように用いますか?〈熱田直樹〉
 2 ALSの原因遺伝子にはどのようなものがありますか?本邦と欧米で異なりますか?〈高橋祐二〉
 3 遺伝学的検査はどのように行いますか?〈割田 仁〉
 4 ALS mimicの鑑別はどのように行いますか?〈佐々木彰一〉
 5 ALS mimics:封入体筋炎との鑑別診断〈内野 誠〉

III 検査,機能評価
 1 運動ニューロン疾患で重要な機能評価はどのようなものですか?〈山下 賢〉
 2 ‌電気生理学的検査はどのように行いますか?
  (針筋電図,伝導検査,RNS,経頭蓋電気刺激検査を含む)〈岩佐直毅 野寺裕之〉
 3 前頭側頭型認知症の認知機能評価はどのように行いますか?〈馬場 徹〉
 4 診断や進行の目安となるバイオマーカーはありますか?(画像,血液・脳脊髄液など)〈大久保卓哉〉

IV 治療,治験,将来的治療
 1 運動ニューロン疾患の薬物治療にはどのようなものがありますか?〈永野 功〉
 2 在宅療養の現状はどのようになっていますか?〈菊池仁志〉
 3 国内外の治験にどのように参加できますか?(患者として)〈浅田隆太〉
 4 ロボットスーツHALは運動ニューロン疾患に有効ですか?〈中島 孝 池田哲彦〉
 5 iPS細胞を用いた研究や細胞移植療法はどのように行われていますか?〈鈴木直輝〉
 6 運動ニューロン疾患に対する核酸医療は将来どうなりますか?〈永田哲也 吉岡耕太郎 横田隆徳〉

V リハビリテーション・代替コミュニケーション
 1 ‌ALSに対してどのようなリハビリテーションがあり,どの程度が適切ですか?〈四條友望〉
 2 ALS患者の排痰補助として,どのような方法が有用ですか?〈山本 真〉
 3 代替コミュニケーション機器はいつ,どのように導入しますか?〈成田有吾〉
 4 ‌ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)開発はどこまで進んでいますか?〈吉峰俊樹 平田雅之〉

VI 栄養管理,経管栄養
 1 運動ニューロン疾患の嚥下機能をどのように評価しますか?〈山本敏之〉
 2 ‌栄養評価をどのように行い,胃瘻造設のタイミングをどのように決めますか?〈清水俊夫〉
 3 胃瘻造設困難/希望されない場合の栄養管理はどうしますか?〈尾野精一〉
 4 胃瘻・腸瘻・食道瘻のメリット・デメリットはどのようなものですか?〈吉澤奈央〉
 5 経腸栄養の管理をどのように行いますか?〈川内裕子 加藤昌昭〉

VII 呼吸管理,緩和ケア
 1 気管切開・呼吸器導入のタイミングをそれぞれどのように決めますか?〈溝口功一〉
 2 筋萎縮性側索硬化症に対してNIVを使用することはありますか?〈秋山徹也〉
 3 ‌TIV導入の際にどのような説明をするのが適切ですか?〈宮地隆史〉
 4 呼吸困難にはどのように対応しますか?〈野中道夫〉
 5 ‌疼痛にはどのようなものがあり,どのように対応しますか?(強オピオイド使用法を含む)〈小野洋也〉
case approach オピオイド使用による緩和ケアの実際〈難波玲子〉

VIII 告知,その他
 1 ALS 病気の告知について〈木村文治 小野美鈴〉
 2 前頭側頭型認知症の告知をどのように行いますか?〈新井哲明〉
 3 利用できる社会資源にはどのようなものがありますか?(適切な申請タイミングを含む)〈池田謙輔〉
 4 遺伝カウンセリングはどのようなものですか?〈青木洋子〉
 5 多職種連携チームをどのように組織しますか?その有用性はどのようなものですか?〈今井尚志〉
 6 患者・家族に対してどのように支援するのが適切ですか?〈関本聖子〉

 索引

執筆者一覧

  • 慶應義塾大学医学部神経内科教授 鈴木則宏  シリーズ監修
  • 東北大学神経内科教授 青木正志  編集
  • 名古屋大学医学部附属病院神経内科講師 熱田直樹 
  • 名古屋大学神経変性・認知症制御研究部特任教授 祖父江 元
  • 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学講師 山下 徹 
  • 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学教授 阿部康二 
  • 大阪医科大学内科学IV教室神経内科教授 荒若繁樹 
  • 山形大学第3内科教授 加藤丈夫 
  • 名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学 日本学術振興会特別研究員 飯田 円 
  • 名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学医員 近藤直英 
  • 名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学助教 佐橋健太郎
  • 名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学教授 勝野雅央 
  • 東京女子医科大学附属遺伝子医療センター所長・教授 斎藤加代子
  • 自治医科大学リハビリテーションセンター准教授 森田光哉 
  • 弘前大学医学研究科脳神経病理学講座教授 若林孝一 
  • 筑波大学医学医療系臨床医学域神経内科学 寺田 真 
  • 筑波大学医学医療系臨床医学域神経内科学教授 玉岡 晃 
  • 東京都医学総合研究所認知症・高次脳機能研究分野分野長 長谷川成人
  • 東北大学大学院医学系研究科神経内科学 井泉瑠美子
  • 国立精神・神経医療研究センター病院神経内科診療部長 高橋祐二 
  • 東北大学病院神経内科院内講師 割田 仁 
  • あがの市民病院神経内科部長 佐々木彰一
  • 総合リハビリテーションセンター城南病院理事長・院長 内野 誠 
  • 熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学准教授 山下 賢 
  • 徳島大学病院神経内科 岩佐直毅 
  • 徳島大学病院神経内科講師 野寺裕之 
  • 東北大学大学院医学系研究科高次機能障害学講師 馬場 徹 
  • 東京医科歯科大学大学院脳神経病態学分野(神経内科)助教 大久保卓哉
  • 国立病院機構宮城病院院長 永野 功 
  • 村上華林堂病院理事長 菊池仁志 
  • 岐阜大学医学部附属病院先端医療・臨床研究推進センター副センター長 浅田隆太 
  • 国立病院機構新潟病院院長 中島 孝 
  • 国立病院機構新潟病院神経内科医長 池田哲彦 
  • 東北大学病院神経内科助教 鈴木直輝 
  • 東京医科歯科大学大学院脳神経病態学分野(神経内科)特任講師 永田哲也 
  • 東京医科歯科大学大学院脳神経病態学分野(神経内科)特任助教 吉岡耕太郎
  • 東京医科歯科大学大学院脳神経病態学分野(神経内科)主任教授 横田隆徳 
  • 東北大学大学院医学系研究科神経内科学 四條友望 
  • 大分協和病院院長(理事長) 山本 真 
  • 三重大学医学部看護学科基礎看護学教授 成田有吾 
  • 大阪大学国際医工情報センター臨床神経医工学特任教授 吉峰俊樹 
  • 大阪大学国際医工情報センター臨床神経医工学寄付研究部門教授 平田雅之 
  • 国立精神・神経医療研究センター嚥下障害リサーチセンターセンター長 山本敏之 
  • 東京都立神経病院脳神経内科部長 清水俊夫 
  • 帝京大学ちば総合医療センター神経内科客員教授 尾野精一 
  • 公立昭和病院外科・消化器外科医長 吉澤奈央 
  • 東北大学病院神経内科 川内裕子 
  • 総合南東北病院神経内科科長 加藤昌昭 
  • 国立病院機構静岡富士病院神経内科院長 溝口功一 
  • 東北大学大学院医学系研究科神経内科学 秋山徹也 
  • 国立病院機構柳井医療センター副院長 宮地隆史 
  • 北祐会神経内科病院医務部部長 野中道夫 
  • 東北大学大学院医学系研究科神経内科学 小野洋也 
  • 神経内科クリニックなんば院長 難波玲子 
  • 大阪医科大学神経内科教授,難病総合センターセンター長 木村文治 
  • 大阪医科大学附属病院難病総合センター医療相談部 小野美鈴 
  • 筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学教授 新井哲明 
  • 東北大学大学院医学系研究科神経内科学 池田謙輔 
  • 東北大学大学院医学系研究科遺伝医療学分野教授 青木洋子 
  • 医療法人徳洲会ALSケアセンターセンター長 今井尚志 
  • 東北大学病院地域医療連携課宮城県神経難病医療連携センター 関本聖子 
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