神経感染症
内容
神経内科のエキスパートをめざす医師のための新シリーズ、好評第4弾!
Q&A形式の本文とワンポイントコラム「pearls」で神経感染症診療のポイントを効率的に学べるほか,各章の最後には症例を交え解説する「Case approach」など充実の内容.基礎から応用まで,診療の中で誰もが遭遇する疑問に明快に回答します.以降,「末梢神経疾患」「運動ニューロン疾患」と続刊予定.
序文
序 文
シリーズ「神経内科Clinical Questions & Pearls」は,慶應義塾大学医学部神経内科 鈴木則宏先生のご監修のもと主要な神経疾患について,「Clinical Questions(CQ)& Answer」の形式でまとめられた分かりやすい解説書として企画され,神経内科専門医を志す医師や神経疾患を扱う臨床現場の医師を対象に作成されています.今回,神経感染症についても独立したモノグラフとして編集の機会を頂きました.御礼申し上げます.多くの教科書や解説書では,神経感染症は代表的疾患が取り上げられておりますが,神経系感染症全体について網羅的に示されている解説書は極めて少ないと存じます.このような意味からも本書の企画は,実際の臨床において,しばしば診断や治療に難渋することの多い神経感染症のより良い解説書になればと願っております.
神経感染症は,適切な早期治療が患者の転帰の上から重要であるNeurological emergencyとして位置づけられている疾患も多いという特徴があります.しかし,病因確定診断が得られるまでには一定の時間を要します.この点から画像を含めた神経学的所見に基づく推定診断により治療を開始する場合も多くあり,これら疾患の臨床像や神経放射線学的特徴を把握することは極めて重要であると考えます.これら神経感染症では,実施臨床の場ではその診断や治療において,しばしば教科書に記載された通常の治療をしても,その診断や治療において,治療効果が十分に得られない,併発症が出現した,診断が確定できないなど,「はて困ったな.どうすれば良いのか.」と難渋する場合が多くあります.本書では,そうした実地臨床の場において直面する諸問題について,まず広く総論的立場からまず解説していただき,さらに各論として,細菌感染症・真菌感染症・ウイルス感染症・遅発性ウイルスやプリオン病・その他の中枢神経系感染症と網羅的に分類し,それぞれCQを掲げて,各ご専門のエキスパートの諸先生に,診療上のキーポイントについて分かりやすく,その回答を解説して頂きました.さらに,代表的疾患については,実際の症例をご呈示して頂き,Case approachとして,各症例で実地臨床の場で直面した難渋した課題に,現場でどのように考え,どのように対応したかについて,そのポイントを分かりやすくご執筆頂きました.各先生におかれましては,企画者の意図をご理解賜り,ご多忙の中ご執筆賜りましたこと厚く御礼申し上げます.
本書が,神経感染症の診療現場において,少しでも患者の診断や治療の一助となりますことを願いながら,ご挨拶とさせて頂きます.
2017年7月吉日
日本大学医学部内科学系神経内科学分野
亀 井 聡
シリーズ刊行にあたって
神経内科は,現在のわが国の専門医制度においては内科のsubspecialtyの一つであり,初期研修あるいは専門医への専攻医研修においては内科の必須研修科目の一つになっています.しかし神経内科疾患を「患者の主訴」という切り口で眺めてみると,「神経内科」はきわめて広い守備範囲を持っています.たとえば,「物がダブって二つに見える」「手がしびれる」「目がチカチカした後に激しい頭痛がする」などの感覚障害,「片側の手足が動かない」「ふらついて転びやすい」「呂律が回らない」「物が飲み込みにくい」などの運動障害,「朝食の内容を思い出せない」「自分の家族が誰であるかわからない」などの認知機能障害,「いくら呼んでも目を覚まさない」「時々失神する」などの意識障害など,さらには救急車で搬送されるような「激しい回転性めまいがして歩けない」「痙攣が止まらない」などの救急症状まで多岐にわたります.これらの多彩でかつ一般的な主訴から神経内科特有の疾患を鑑別し診断するのが神経内科なのです.神経疾患には,中枢神経の疾患(脳梗塞や脳出血等の脳血管障害,脳炎,髄膜炎,頭痛,てんかん,認知症,パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症,多発性硬化症,視神経脊髄炎など),末梢神経疾患,(Bell麻痺,Guillain—Barré症候群,慢性炎症性脱髄性ニューロパチーなど),筋疾患(筋ジストロフィー症,多発筋炎,周期性四肢麻痺など),神経筋接合部疾患(重症筋無力症,Lambert—Eaton筋無力症症候群など)が含まれ,きわめて多くの疾患があります.
シリーズ『神経内科Clinical Questions & Pearls』はこのような神経内科を標榜し,さらに専門医を目指すという大きな志を抱く若き医師を対象として立案・企画されました.神経内科疾患を主な領域別に分け,各領域を独立したシリーズとして刊行することとし,各巻ごとに当該領域におけるオピニオンリーダーに責任編集者として内容を企画していただきました.テーマとしては,広い神経内科疾患の領域の中から,脳血管障害,パーキンソン病,認知症,頭痛,てんかん,多発性硬化症・視神経脊髄炎などの中枢脱髄性疾患,神経感染症,小脳失調症,高次脳機能障害,運動ニューロン疾患,末梢神経疾患そして筋疾患の12領域を抽出し,それぞれ1冊単位の独立したモノグラフとしました.ただし,各巻相互に統一性を持たせるため,編集骨格は神経内科診療の現場で遭遇する疑問・課題を,諸疾患の診療ガイドラインで一般化した「Clinical Questions(CQ)形式」として50〜100項目をとりあげ,それぞれについてエビデンスも踏まえて解説するという方針としました.構成としては,疾患の病態理解のための要点,診断と治療の要点,そして外来・病棟での実臨床の要点をQ&A形式にまとめ,それを中核にして前後に総説あるいはコラムなどを交えて解説するという形をとりました.さらに各章の結びとして「Pearls」と題するコラムを設け,診療のポイント,コツ,ピットフォール,最新の知見,読んでおきたい重要文献などについて紹介する工夫を施したことも本シリーズの特徴といえると思います.すなわち,本シリーズは各神経疾患診療に必要な知識を学び,現場での実践力を身につけることができるようまとめられた,新しいコンセプトに基づく神経内科ガイドブックといえるでしょう.最後に,各疾患領域におけるCQを精力的かつ網羅的に抽出していただいた各巻の分担編集者の先生方,ならびに本シリーズ全体の企画編集にご協力いただきました慶應義塾大学医学部神経内科専任講師 清水利彦先生に心から感謝したいと思います.
本シリーズが,神経内科専門医を志す方々にとって血となり肉となり,将来の臨床の場において大きな花を咲かせ,そして大きく豊かな実を結ぶことを期待しています.
2016年5月吉日
慶應義塾大学医学部神経内科教授
鈴 木 則 宏
目次
Contents
I 神経感染症総論
1 神経感染症の分類〈亀井 聡〉
2 神経感染症の発生頻度〈森田昭彦〉
3 感染症法による届け出は,どんな神経感染症でするべきでしょうか?〈奥野英雄〉
4 神経感染症診療の手順〈石川晴美〉
5 症候と画像診断から迫る神経感染症〈亀井 聡〉
6 神経感染症の病理〈高橋健太,片野晴隆,長谷川秀樹〉
II 細菌感染症
1 細菌性髄膜炎の症状や発症経過はどのようなものでしょうか?〈石川晴美〉
2 細菌性髄膜炎を疑った時にはどうしたらよいでしょうか?〈三木健司〉
3 細菌性髄膜炎成人例の急性期治療はどのようにしたらよいでしょうか?〈亀井 聡〉
4 細菌性髄膜炎小児例の急性期治療はどのようにしたらよいでしょうか?〈細矢光亮〉
5 結核性髄膜炎の症状や発症経過はどのようなものでしょうか?〈高橋育子,佐々木秀直〉
6 結核性髄膜炎の診断はどのように行うのでしょうか?〈高橋輝行,田村正人〉
7 結核性髄膜炎の治療はどのように行うのでしょうか?〈石川晴美〉
8 脳膿瘍はどのように診断して治療したらよいでしょうか?〈茂呂修啓〉
9 腸管出血性大腸菌感染症による脳症はどのように診断して治療したらよいでしょうか?〈種市尋宙〉
case approach 細菌性髄膜炎症例〈菅野 陽,荒木俊彦〉
case approach 結核性髄膜炎症例〈高橋育子,佐々木秀直〉
III 真菌感染症
1 クリプトコッカス髄膜脳炎はどのような病気で,どのように診断・治療するのですか?〈樽本憲人,大野秀明〉
2 アスペルギルス・ムコール症による中枢神経系感染症はどのような病気で,どのように診断・治療するのですか?〈西原秀昭,小笠原淳一,神田 隆〉
3 カンジダ症による中枢神経系感染症はどのような病気で,どのように診断・治療するのですか?〈中山晴雄,岩渕 聡,渋谷和俊〉
case approach クリプトコッカス髄膜脳炎症例〈佐治越爾,下畑享良〉
case approach ムコール症例〈道勇 学〉
IV ウイルス感染症
1 単純ヘルペス脳炎成人例の症状や発症経過はどのようなものでしょうか?〈矢部一郎〉
2 単純ヘルペス脳炎小児例の症状や発症経過はどのようなものでしょうか?〈細矢光亮〉
3 単純ヘルペス脳炎成人例の診断や治療はどのようにしたらよいでしょうか?〈石川晴美〉
4 単純ヘルペス脳炎小児例の診断や治療はどのようにしたらよいでしょうか?〈河島尚志〉
5 水痘帯状疱疹ウイルスによる中枢神経感染症はどのような病気で,どのように診断・治療するのですか?〈中嶋秀人〉
6 ヒトヘルペスウイルス6型脳炎はどのような病気で,どのように診断・治療するのですか?〈河村吉紀,吉川哲史〉
7 サイトメガロウイルス脳炎の診断や治療はどうしたらよいのでしょうか?〈鈴木 裕〉
8 フラビウイルス感染症—日本脳炎・ウエストナイル脳炎はどのような病気で,どのように診断・治療するのですか?〈高崎智彦〉
9 インフルエンザ脳症の診断や治療はどのようにしたらよいでしょうか?〈森島恒雄〉
10 HTLV—1関連脊髄症(HAM)の診断と治療はどうしたらよいのでしょうか?〈松浦英治,出雲周二〉
11 HIV感染症における中枢神経系感染症にはどんな疾患があり,どのように治療するのでしょうか?〈三浦義治,岸田修二〉
12 エンテロウイルスD68に関連した急性弛緩性脊髄炎はどのような疾患でしょうか?〈多屋馨子〉
case approach 単純ヘルペス脳炎症例〈石原正樹〉
case approach 水痘帯状疱疹ウイルス脊髄炎症例〈高橋輝行,田村正人〉
case approach インフルエンザ脳症成人例〈森田昭彦〉
V 遅発性ウイルス感染症・プリオン病
1 亜急性硬化性全脳炎の診断や治療はどのようにしたらよいでしょうか?〈細矢光亮〉
2 進行性多巣性白質脳症の診断や治療はどのようにしたらよいでしょうか?〈雪竹基弘〉
3 プリオン病にはどのような疾患があり,どのくらいの頻度でみられるのですか?〈濱口 毅,山田正仁〉
4 Creutzfeldt—Jakob病はどのように診断するのですか?〈塚本 忠,水澤英洋〉
5 プリオン病の感染予防はどのようにするのですか?〈岸田日帯,児矢野繁,田中章景〉
case approach 家族性Creutzfeldt−Jakob病症例〈濱口 毅,山田正仁〉
VI その他の中枢神経系感染症
1 神経梅毒はどのように診断し,治療するのでしょうか?〈池口邦彦〉
2 ツツガムシ病はどのように診断し,治療するのでしょうか?〈藤田信也〉
3 吸虫症による中枢神経感染症はどのように診断し,治療するのでしょうか?〈桐木雅史,千種雄一〉
4 ライム病(神経ボレリア病)はどのように診断し,治療するのでしょうか?〈白井慎一,佐々木秀直〉
5 トキソプラズマ脳症はどのように診断し,治療するのでしょうか?〈松永晶子,米田 誠〉
事項索引
薬剤関連索引