頭蓋咽頭腫パーフェクトブック
内容
頭蓋咽頭腫診療のための新しい決定版!丁寧な解説とモバイル/ PC対応の動画で,第一線で活躍するエキスパートが腫瘍摘出術の詳細を鮮明に伝える.さらに従来の教科書では語られなかった,摘出後に残る多くの日常生活上の課題,後遺症についても網羅し,症例を通じて治療法の考え方が学べる構成.患者が外来で訴える症状を症状発生のメカニズムから解説し,その対応を具体的に記載することに力を注いだ.
序文
監修の序
頭蓋咽頭腫は頭蓋内腫瘍のうち膠芽腫や星細胞腫などの悪性腫瘍と比較して,病理学的には良性腫瘍に分類されています.しかし,頭蓋咽頭腫の発生部位が頭蓋の中心で,さらに頭蓋底であることから,種々の困難な課題が発生いたします.腫瘍の前方には視神経,内頚動脈,前大脳動脈,後下部には下垂体,下垂体茎,上方には視床下部が存在します.腫瘍が巨大になれば脳室を占拠します.これらの血管や器官は人の生命維持に重要な役割を持っているために,腫瘍が原因であるいは治療過程で日常生活に影響が大きい内分泌障害,視力障害,記銘力障害,症例によっては高次脳機能障害さえ生じます.したがって,頭蓋咽頭腫は病理学的には良性とされてはいますが,臨床的あるいは患者の日常生活上は多くの困難性を伴います.医療は,単に頭蓋咽頭腫を摘出するだけではなく,本疾患から派生し患者の日常生活に起きる多くの困難な課題にも対応できることが肝要だと考えられます.従来の教科書では,頭蓋咽頭腫を如何に障害を残さないで摘出するかに多くの紙数が割かれておりました.しかし,摘出後に残る多くの日常生活上の課題(後遺症)に答える教科書はほとんど見当たりません.本書は頭蓋咽頭腫の医学的解説,特に腫瘍摘出に重きを置いただけでは解決できなかった課題にも十分対応できる解説を付けて編集いたしました.
解説の仕方も重要と考え,一般論では解りにくい考え方を習得するために,具体的な症例を用いて,治療法の考え方を学べるようにしました.また,患者が外来で訴える症状を症状発生のメカニズムから解説し,その対応を具体的に記載することに力を注いでおります.本書は,従来患者が医師に訴えても医師が症状のメカニズムを理解していないために起こる無対応な課題も,十分に対応できるようになる工夫がされています.
本書は,脳神経外科医のみならず,患者家族,小児科医,内分泌内科医および小児期の頭蓋咽頭腫から派生する多くの課題に対応するために,学校の先生にも参考になる内容となっています.
本書を読めば,頭蓋咽頭腫の患者目線で患者が真に困っている課題に適切に対応できるようになると確信致しております.
平成28年夏 (一社)日本脳神経外科学会専門医試験を終えて
(一社)日本脳神経外科学会理事長
山形大学医学部先進がん医学講座
嘉山孝正
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あとがき
本書は,頭蓋咽頭腫の現状を把握し理解し,さらには未解決の問題点を浮き彫りにして将来に向けての頭蓋咽頭腫の治療の道しるべになるべく企画されました.
頭蓋咽頭腫はWHO grade Iの腫瘍であり,以前と比較すると治療成績が向上してきているのは事実だと思います.しかしながら,境界部分の病理組織学的特徴(interdigitation, finger-like projections),視床下部・視路・下垂体茎・下垂体・穿通枝を含めた血管などの周囲構造物との関係,これらの構造物との癒着,などが障壁となり,治療が容易ではない脳腫瘍の一つに数えられます.治療の第一選択である手術だけをみても全摘出は容易ではなく,また治療方針のコンセンサスも得られていないのが現状であります.さらに,術後の肥満・過食をはじめとして解明されていない点も決して少なくないと思います.
本書ではどの項目も現在各領域で第一線で活躍なさっている先生方に執筆をお願いしたのは言うまでもありませんが,選定した項目にもこれまでの同類の書物とは異なる特徴を出したつもりです.現在の時代背景を十分に考慮した内容になっています.この点から,外科治療の項目も意図的に多岐にわたっておりますので,各項目の内容に少々の重複があることはお含みおきください.後半の各管理に関する項目では,過去の同類書あるいは各学会でも取り上げられることが少なかったにも関わらず,時代背景的にQOL上重要であったり,将来的に必ず着目されるであろう分野を取り上げました.よって完全な教科書的内容については選定されていない項目もあります.
どの項目も先生方の甚大なるご努力により極めてレベルの高い内容になったと確信しております.本書が頭蓋咽頭腫の治療成績の向上,さらには将来の確たる治療の確立や本腫瘍の完全克服に向けての参考になれば,望外の喜びであります.大変ご多用の中,本書にご寄稿いただいた全ての先生方に深謝申し上げます.
最後になりますが,本書の上梓まで真摯な態度で大変なご協力をいただきました中外医学社のスタッフの皆様に心より感謝申し上げます.
2016年8月
東京女子医科大学脳神経外科
川俣貴一
目次
目 次
CHAPTER 1 疫学,症状,内分泌所見〈碓井 智 栗栖 薫〉
A.疫学
B.症状
C.内分泌所見
CHAPTER 2 小児の臨床像〈藍原康雄 川俣貴一〉
A.小児頭蓋咽頭腫の疫学
B.小児期発症頭蓋咽頭腫の初発症状
C.視機能障害(長期予後)
D.視床下部障害(長期予後因子)
E.視床下部性肥満の疫学
F.外科的摘出術
G.術後合併症
H.腫瘍再発時放射線治療
I.頭蓋咽頭腫における標準化死亡比
J.長期フォローアップガイドライン
K.ヘルス・リテラシー(health literacy)
CHAPTER 3 画像診断
1 総論〈立花 修〉
A.頭蓋単純撮影
B.頭部CT
C.頭部MRI
D.鑑別疾患と画像診断
E.術後の画像撮影
2術前シミュレーション〈斉藤延人 金 太一〉
A.融合3次元画像について
B.アプローチ別の検討
C.頭蓋咽頭腫シミュレーションの実際
CHAPTER 4 外科解剖〈松尾孝之〉
A.視床下部・下垂体・下垂体茎
B.経鼻アプローチで必要な解剖
C.分類
CHAPTER 5 外科治療
1 Pterional approach〈中尾直之〉
A.術前検討
B.手術手技
C.合併症およびピットホール
D.症例
2 Dolenc approach〈井川房夫〉
A.体位,皮膚切開,開頭
B.頭蓋咽頭腫に対するDolenc approachの実際
C.頭蓋咽頭腫に対するDolenc approachの利点
3 Interhemispheric(translamina) terminalis approach〈川俣貴一 天野耕作 藍原康雄〉
A.術前の注意点・要点
B.手術手技(準備とアプローチ)
C.手術手技(腫瘍摘出など)
D.合併症・術後の注意点
E.症例提示
4 Transventricular approach〈岡 秀宏〉
A.手術アプローチの選択
B.術前術後の注意点
C.経脳室法の手技
D.合併症
E.症例
5 Transpetrosal approach〈後藤剛夫 大畑建治〉
A.手術適応
B.術前画像診断
C.手術法
6 Endonasal surgery〈西岡 宏〉
A.経鼻手術の発展と頭蓋咽頭腫
B.鞍内・鞍隔膜下頭蓋咽頭腫に対する経鼻手術
C.鞍上部頭蓋咽頭腫に対する拡大経鼻手術
D.適応と限界
E.合併症
7 Endoscopic transventricular surgery〈高野晋吾〉
A.神経内視鏡手技
B.症例提示
C.結果
D.考察
8 Endoscopic keyhole surgery(Supraorbital keyhole approach)〈阿久津博義〉
A.手技
B.合併症
9 Extended transsphenoidal approach〈北野昌彦〉
A.術前術後の注意点
B.手技
C.合併症
D.症例
CHAPTER 6 定位的放射線治療〈林 基弘 川俣貴一〉
A.ガンマナイフによる頭蓋咽頭腫治療戦略
B.ガンマナイフ術前術後の注意点
C.ガンマナイフ治療手技
D.ガンマナイフによる腫瘍制御
E.ガンマナイフによる治療後合併症と再発対策
F.症例提示
G.考察
CHAPTER 7 病理所見
1 組織型,mutation〈鈴木 諭 岩城 徹〉
A.病理学的所見141
B.電子顕微鏡所見143
C.鑑別診断143
D.遺伝子異常146
2 ラトケ胞との関係〈井下尚子〉
A.頭蓋咽頭腫の組織像
B.ラトケ胞とは
C.肉芽腫性変化との鑑別
D.胞性病変の考え方
成人術後管理
1 水・電解質・内分泌管理〈藤尾信吾 有田和徳〉
A.周術期管理
B.慢性期管理
2 性腺ホルモン管理〈三木伸泰 小野昌美〉
A.下垂体機能低下症の特徴
B.下垂体機能低下症の実態
C.性腺機能低下症
3肥満・過食管理〈小野昌美 三木伸泰〉
A.視床下部性肥満の発症頻度と時期
B.視床下部性肥満と解剖学的障害部位
C.視床下部性肥満の発症メカニズム
D.視床下部性肥満を発症させる危険因子
E.治療
小児術後管理
1 水・電解質・内分泌管理〈伊藤純子〉
A.術前の評価
B.周術期の水・電解質管理
C.退院に向けた管理
2 長期成長管理〈長崎啓祐〉
A.症例
B.小児頭蓋咽頭腫術後の成長管理
再発,難治性,悪性転化〈廣畑倫生 松野 彰〉
A.再発・難治性頭蓋咽頭腫
B.再発頭蓋咽頭腫の症例提示
C.悪性頭蓋咽頭腫
あとがき
索引