EBM血液疾患の治療2025-2026
内容
最新のエビデンスを盛り込んだ「EBM血液疾患の治療」2025-2026年版
血液疾患における諸問題をいかに解決し,対応すべきか,最新のエビデンスをもとに解説したレファランス.治療に必須の知見を「序論・指針・エビデンス・根拠となった臨床研究の問題点と限界・患者に適応する際の注意点・コメント」の順に紹介し,今日の時点における最新の治療法,考え方だけでなく,現場で判断に迷うような事柄・問題点に指針を与えるものとなっている.血液疾患診療を網羅的に学ぶために最適な一冊.
序文
序
「EBM血液疾患の治療」の2025—2026年版が完成した.本シリーズは長年にわたって好評をいただいており,前版の2023—2024年版は発刊から1年を経過しているにもかかわらず2023年10月の日本血液学会総会において売り上げ上位にランクされた.本書が高い評価をいただける理由はなにであろうか? 次々と新規薬剤,新規治療法が出現する中で,正確な情報を網羅的に把握することは難しくなっている.しかし,私たちはそれぞれの薬剤,治療法の特性を理解して,臨床データを読み取り,そして,単に無作為比較試験の結果やガイドラインの推奨を鵜呑みにするのではなく,(EBMの産みの親の1人であるGuyatt氏も強調しているように)目の前の患者さんの特有の病状,人生観,診療環境などに応じて治療を考えなくてはならない.時にはエビデンスレベルとしては劣るサブグループ解析の結果を重視することもあれば,主要評価項目において敗れた治療をあえて選択することもありえる.そのためには臨床データを詳細に把握することが重要であり,本書はそれを短時間で実現するためのツールとして重宝されているのだろう.
今回の2025—2026年版も引き続き評価をいただける良書に仕上げるべく,過去数年間に大きな変化があった領域をとりあげながらも,目立った新薬等がないような領域についても最新情報を提供できるように幅広く紹介している.また,記載するエビデンスの選択,あるいは個々のエビデンスの解釈においても個人差があるのは必然であり,本書では同一のテーマについて前版とは異なる執筆者に依頼することによって視点の多様性を表現している.2023—2024年版と2025—2026年版を比較することによって,その領域の進捗とともに筆者による考え方のちがいをみることも参考になる.
今,本書は書店の目立つところに平積みされているであろう.しかし,医学書はナマモノである.鮮度は急速に低下し,1年後には次版の準備が始まるにちがいない.それでも,2025—2026年版は次版が出るまでの間,確実にその役割を果たしてくれると信じている.本書が診療現場で活用され,一人でも多くの患者さんの診療に貢献することを祈念している.最後に,ご多忙の中,素晴らしい原稿をご執筆くださった先生方への感謝を申し上げたい.
2024年9月
編者一同
目次
I.赤血球系疾患
1.鉄欠乏性貧血に対する高用量静注鉄剤 〈川端 浩〉
2.再生不良性貧血に対するTPO—RA 〈中村文美〉
3.再生不良性貧血に対する蛋白同化ステロイド剤 〈山口博樹〉
4.再生不良性貧血に対する造血幹細胞移植 〈中邑幸伸〉
5.遺伝性骨髄不全症候群の診断と治療 〈吉田奈央〉
6.赤芽球癆に対する治療 〈中澤英之〉
7.先天性溶血性貧血の診断と治療 〈槍澤大樹〉
8.ステロイド不応自己免疫性溶血性貧血(AIHA)に対する治療 〈高森弘之 植田康敬〉
9.寒冷凝集素症に対する薬物治療 〈和田秀穂〉
10.発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療 〈上野志貴子 川口辰哉〉
11.低リスクMDSに対する治療 〈森田泰慶〉
12.高リスクMDSに対する治療 〈安東恒史〉
Topics1 骨髄不全症と炎症性腸疾患について 〈嶋田 明〉
II.白血病
A.急性骨髄性白血病(AML)
1.リスク分類に基づく初発AMLの治療方針 〈宮本敏浩 菊繁吉謙〉
2.再発・難治AMLに対する救援療法 〈細野奈穂子 山内高弘〉
3.FLT3異常を伴うAMLの治療 〈石井敬人〉
4.AMLに対するベネトクラクス併用療法の実際 〈吉本五一〉
5.小児AMLの治療 〈佐藤 篤〉
6.AMLに対する造血幹細胞移植の適応と治療成績 〈田上 晋 矢野真吾〉
7.AMLに対する分子標的治療薬開発の現状 〈石川裕一〉
8.がんゲノム情報に基づくAML診療の現状と展望 〈小川弥穂 南谷泰仁〉
Topics2 クローン性造血と白血病 〈横山泰久〉
Topics3 抗がん剤使用後の骨髄性腫瘍の診断と治療 〈永沼 謙 木崎昌弘〉
Topics4 胚細胞系列素因を伴う骨髄系腫瘍の病態と診断 〈吉田健一〉
Topics5 ダウン症に伴う骨髄性腫瘍の診断と治療 〈照井君典〉
B.急性前骨髄球性白血病(APL)
1.初発APLの治療 〈藤田浩之〉
2.再発・難治APLの治療 〈木口 亨〉
C.急性リンパ性白血病(ALL)
1.成人Ph陽性ALLの治療 〈佐々木宏治〉
2.フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に対する維持療法 〈立花崇孝〉
3.成人Ph陰性ALLの治療 〈宮尾康太郎 澤 正史〉
4.再発・難治ALLの治療 〈賀古真一〉
5.小児およびAYA世代ALLの治療 〈豊田秀実〉
6.高齢者ALLの治療 〈土橋史明〉
7.T—ALLに対する薬物治療の最近の動向 〈高橋 勉〉
8.B—ALLに対する免疫・細胞療法 〈土岐典子〉
9.ALLに対する同種造血幹細胞移植の適応と実際 〈長藤宏司〉
D.慢性骨髄性白血病(CML)
1.初発CML—CPに対する適切な治療選択と治療目標 〈高橋直人〉
2.進行期CMLの治療 〈近藤 健〉
3.TKI治療の効果判定のモニタリングと中止基準確立の動向 〈小野孝明〉
4.CMLに対する2次治療,3次治療の実際 〈吉丸 崚 南 陽介〉
E.骨髄増殖性腫瘍(MPN)
1.真性多血症の治療 〈後藤明彦〉
2.本態性血小板血症の治療 〈桐戸敬太〉
3.原発性骨髄線維症の治療 〈山内拓司〉
4.慢性好中球性白血病の病態と治療 〈大矢瑛子 杉本由香〉
5.慢性好酸球性白血病の病態と治療 〈杉本由香〉
6.若年性骨髄単球性白血病の診断と治療 〈大園秀一〉
Topics6 肥満細胞増殖症の診断と治療 〈片桐誠一朗〉
Topics7 MPNに対する新規治療薬の開発の状況 〈竹中克斗〉
III.リンパ系腫瘍
A.慢性リンパ性白血病(CLL)
1.初発CLLの治療方針 〈鈴木律朗〉
2.再発・難治性CLLの治療方針 〈瀧澤 淳〉
3.CLLに対する今後の分子標的治療薬 〈小島研介〉
B.Indolent B細胞リンパ腫
1.限局期濾胞性リンパ腫の治療方針 〈冨田章裕〉
2.進行期濾胞性リンパ腫の治療方針 〈渡辺 隆〉
3.再発・再燃濾胞性リンパ腫の治療方針 〈山口素子〉
4.リンパ形質細胞性リンパ腫・マクログロブリン血症の治療方針 〈錦織桃子〉
5.Indolent B細胞リンパ腫における維持療法 〈入山智沙子〉
C.マントル細胞リンパ腫(MCL)
1.若年者MCLの治療方針 〈福原規子〉
2.高齢者MCLの治療方針 〈伊豆津宏二〉
3.再発・難治MCLの治療方針 〈古林 勉〉
D.Aggressive B細胞リンパ腫
1.限局期びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療方針 〈丸山 大〉
2.若年進行期びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療方針 〈鈴木康裕 永井宏和〉
3.高齢者進行期びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療方針 〈遠西大輔〉
Topics8 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫治療における細胞起源の考え方 〈遠西大輔〉
4.再発・再燃びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療方針 〈宮崎香奈〉
5.眼内リンパ腫の治療方針 〈三宅隆明 大國典子 高橋史匡〉
E.T/NK細胞リンパ腫
1.CD30陽性末梢性T細胞リンパ腫の初回治療方針 〈吉田 功〉
2.CD30陰性末梢性T細胞リンパ腫の初回治療方針 〈坂田(柳元)麻実子 末原泰人〉
3.再発・難治性T細胞リンパ腫の治療方針 〈島田和之〉
4.節外性NK/T細胞リンパ腫の治療方針 〈近藤英生〉
F.成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)
1.ATLLの初回治療方針 〈七條敬文 安永純一朗〉
2.ATLLに対する同種造血幹細胞移植 〈福島卓也〉
3.再発・難治ATLLの治療 〈吉満 誠〉
G.ホジキンリンパ腫
1.限局期ホジキンリンパ腫の治療 〈三浦勝浩〉
2.進行期ホジキンリンパ腫の治療 〈棟方 理〉
3.再発・難治ホジキンリンパ腫の治療 〈楠本 茂〉
IV.多発性骨髄腫と関連疾患
1.腎障害を伴う単クローン性ガンマグロブリン血症MGRSの診断と治療 〈菊池 拓〉
2.初発多発性骨髄腫(移植適応/非適応)の治療戦略 〈佐藤 剛 伊藤薫樹〉
3.再発・難治多発性骨髄腫の治療方針 〈塚本 拓 黒田純也〉
4.高リスク多発性骨髄腫の治療方針 〈多林孝之〉
5.多発性骨髄腫に対するCAR—T療法と二重特異性抗体の実際と今後の展望 〈今井陽一〉
6.多発性骨髄腫に対する造血幹細胞移植の実際と位置づけ 〈塚田信弘〉
7.原発性アミロイドーシスの治療 〈西村 直 河野 和〉
8.POEMS症候群の診断と治療 〈高橋康之 木崎昌弘〉
9.キャッスルマン病の診断と治療 〈上田真寿〉
10.TAFRO症候群の診断と治療 〈塩入勇翔 塚本祥吉 堺田惠美子〉
V.出血・血栓性疾患
1.特発性血小板減少症(ITP)の診断・治療 〈加藤 恒〉
2.後天性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP)への治療アプローチ 〈濱村貴史 酒井和哉 松本雅則〉
3.血友病治療薬の進歩と未来 〈野上恵嗣〉
4.VWDの病態と遺伝子異常 〈岡本修一〉
5.小児血栓性疾患の診断と治療 〈江上直樹 石村匡崇 大賀正一〉
6.抗血小板薬の進歩と使い方 〈山之内 純〉
7.造血器悪性腫瘍に合併する血栓症の病態と治療 〈深津真彦 池添隆之〉
Topics9 CAR—T療法と凝固・線溶異常 〈新井康之〉
Topics10 血友病保因者診断の現状 〈篠澤圭子〉
VI.支持療法・輸血
1.造血器腫瘍に対する化学療法後の一次予防としてのG—CSFの有用性 〈神山祐太郎〉
2.BTK阻害薬と侵襲性真菌症 〈木村俊一〉
3.ムーコル症の治療 〈田代将人〉
4.大量出血時の輸血療法 〈山本晃士〉
VII.造血幹細胞移植・免疫細胞療法
1.急性GVHDに対する2次治療 〈近藤忠一〉
2.慢性GVHDに対する2次治療 〈稲本賢弘〉
Topics11 COVID—19の造血幹細胞移植への影響 〈名島悠峰〉
3.臍帯血移植とHLA半合致移植の比較 〈小沼貴晶〉
4.女性ドナーから男性患者への同種造血幹細胞移植でのGVHDと再発 〈玉置雅治〉
5.CAR—T療法後のサイトカイン放出症候群の管理 〈吉原 哲 吉原享子〉
6.CAR—T療法後の免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群の管理 〈後藤秀樹〉
索引