救命救急24 最重症例から学ぶ現場の思考
内容
最重症患者が搬送される3次救急の現場では初療の出来が救命の成否を分ける。刻一刻と変化する状況のなか、いかなる思考過程で救命に導くのか。正解のない現場では、その時点での適切な選択と行動が何よりも重要となる。そこで本書は一般的な救急医療の本とは一線を画し、3次救急の現場でいかに頭を使い、それを行動に移すかにフォーカスを当て、実際の症例をもとにしたリアルな時間軸のなかで「救急医の頭の使い方」を学んでいく
序文
3次救急の初療における
“頭の使い方”とは?
私が勤務する東京都立墨東病院は,東京都墨田区にある772床の病院で,日々たくさんの救急患者を受け入れている.
都内には数多くの救急病院があるが,その分布は都心に密集しており,隅田川を東に越えると救命センターは当院だけとなる.そういった事情もあり,区東部の背景人口約180万人の3次救急を一手に担っている.
そのため3次救急の受け入れ数は年間2000件ほどで,本邦でもトップクラスの数を誇っている.
最重症患者が運ばれてくる3次救急の初療室では,初期治療の出来が救命の成否を分ける.どうやっても助からない症例,実は軽症であった症例も実際は存在するが,適切な初期対応を行わないと命を落とす最重症例も多く存在する.
刻一刻と状態が変化し,立ち止まって考える時間すらない症例に対して,いかなる思考過程で救命に導くか.正解などない救命救急の現場では,その時点での妥当な選択と行動を紡いでいくことが何よりも重要である.
さて,当院救命センターには,幸いにも多くの初期研修医,後期研修医がローテートしてくれており,また駆け出しの救急医も多く所属する.彼らの中には救急,集中治療の知識が豊富な人も多いのだが,いざ初療となると途端に動けなくなる人が実に多い.その原因のほとんどは,初療室での「頭の使い方」にあるように思う.
初療では最も大切なものの1つであるのに,世の中には思考訓練を目的とした医学書が実に少ない.そういった事情から,今回執筆する運びとなった.
本書は一般的な救急医療の本とは一線を画しており,3次救急の初療現場でいかに頭を使うか,というところにフォーカスを当てている.網羅的なものではないので,これを読んでも救急医学の知識の整理にはならないと思われる.ただ救急医療,特に最重症例においては,症例ごとに重要なエッセンスが詰まっていると確信している.
まず基本的に,検査はすぐに結果の出るものだけを扱っている.すなわち血液ガス,エコー,12誘導心電図である.最重症例では,一般の採血検査結果を待っている間に勝負がついていることも多い.本書では情報,身体所見,初期検査のみで初療が進んでいく.
また特徴的なところとして,初療室入室からの時間経過を分単位で載せている.瞬間ごとに何を考えどう行動したか,入室からどのくらい時間が経っているかも意識して読み進めていただきたい.
本書は,救急を志している初期研修医,そして実際に救急の道に進んだ後期研修医や駆け出しの救急医を意識して執筆した.本書を通じて初療での「頭の使い方」を学び,実臨床に生かしていただければ幸いである.
2018年9月
宮?紀樹
目次
CONTENTS
第1章 病院前情報と心構え
症例1 ▲60歳代男性の吐血
症例2 ▲80歳代女性の嘔吐
症例3 ▲60歳代男性の意識障害
第2章 臨床的ストーリーの構築
症例4 ▲70歳代男性の意識消失
症例5 ▲自宅で倒れていた80歳代女性
症例6 ▲60歳代男性の呼吸困難
第3章 判断・決断・行動
症例7 ▲60歳代男性の腹痛
症例8 ▲60歳代男性の吐血
症例9 ▲40歳代男性の呼吸困難
第4章 違和感と落とし穴
症例10 ▲60歳代女性の意識消失発作
症例11 ▲70歳代女性の意識障害
症例12 ▲60歳代女性の呼吸困難
第5章 変化に備える
症例13 ▲70歳代女性の腹痛
症例14 ▲50歳代女性の意識障害
症例15 ▲60歳代女性の吐血
第6章 意識障害
症例16 ▲70歳代女性の意識障害
症例17 ▲70歳代男性の意識障害
症例18 ▲80歳代男性の意識障害
第7章 ショック
症例19 ▲70歳代男性の意識障害
症例20 ▲50歳代男性の胸痛
症例21 ▲80歳代女性の意識障害
第8章 ECPR
症例22 ▲50歳代男性の院外心停止
症例23 ▲40歳代女性の胸痛,ショック
症例24 ▲20歳代女性の過量服薬
索引