リウマチ足の診かた,考えかた
内容
関節リウマチの足病変につき,その疫学,診察方法から外科的治療法まで,すべてを網羅した意欲作.比較的簡単に診察できる上肢に比べて,足趾は関節リウマチ診察の盲点とも言え,足病変に苦しむリウマチ患者は多い.ここに着目し,「足」を専門に修練を積んだ新進気鋭の整形外科医が送る本書は,リウマチ診療に関わるすべての医療者の必読書である.
序文
巻頭言
関節リウマチは,関節炎が長期間持続して,関節が変形し,身体機能を著しく損なう病気である.女性に多く,仕事ばかりでなく家事労働にも影響があり,社会的負担はとても大きい.
このような大変な病気ではあるが,関節リウマチに対する治療は過去10年間で著しく進歩し,治療成績は著しく改善した.そして早期から十分な治療をして寛解状態を維持すれば,関節の変形も起こらず,痛みやこわばりもない生活を送ることができるようになった.
しかし,このような新しい治療がなかった時代に発症した患者さんや,合併症などのために十分な治療を受けられない患者さんでは,関節変形が進行して悩んでおられる方が多い.
足は,ある意味で診察の盲点である.患者さんが受診した際に,上肢の関節は簡単に視診,触診ができるが,足趾はDAS28評価関節から外れていることもあって,患者さんが訴えない限りルーチンには診ないことが多い.したがって主治医が知らないうちに病変が進行していることが多いのも足である.
本書は,関節リウマチの足病変に焦点を当て,診察法から治療法までを網羅した良書である.
筆者の矢野紘一郎先生は,東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターリウマチ関節外科講師として将来を嘱望されている若手のホープであるが,早くから関節リウマチの足病変に注目し,外来診療でも,手術症例でも豊富な経験を積み重ねてこられた.本書には文献から学んだ知識だけでなく,矢野先生が自ら会得した経験や技術もふんだんに盛り込まれており,なるほどそうなのか,と気づかされる点も多い.足の病変で悩んでいる患者さんにも,関節リウマチ診療に携わる医療関係者にも,是非目を通していただきたいと思う.
最後に,多忙な日常診療の中で1冊の本にまとめられた矢野紘一郎先生の情熱と勤勉さ,そして監修の猪狩勝則先生の指導力に敬意を表するとともに,両氏の更なる発展を祈念して,巻頭言としたい.
2017年2月
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター所長
山中 寿
監修の序
本書は若手医師でありながらすでにリウマチ足分野におけるエキスパートの一人である矢野紘一郎先生が,これまでの豊富な経験をもとに心血を注いで執筆した意欲作です.リウマチ足の疫学から診察方法,保存治療,外科的治療まで網羅した良書で,関節リウマチの診療を行っている多くの先生方にとって有益な書となると確信しています.
矢野先生は平成16年に富山医科薬科大学(現・富山大学医学部)を卒業され,一般病院で研修を重ねた後に,平成20年に東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターリウマチ関節外科に入局し,これまで我々とともにリウマチ整形という分野で研鑽を積んできました.
当センターの入院部門は東京女子医科大学病院ですが,国内でもっともリウマチの手術を行っている施設であると数年前に報道されました.その医療圏は広大で,関東のみならず,中部,東北地方までをカバーしており,中には九州からの患者さんもいらっしゃいます.様々な関節の手術を行っていますが,実は部位別に見ると最も手術件数が多いのが足部です.整形外科の中では足の外科はマイナーな領域であると認識されていますが,少なくとも当センターでは花形であり,その礎を築きエースとして君臨しているのが矢野先生です.彼は当センター入局後,早くから足の外科を志望し,リウマチ足の手術といえば切除関節形成術しか行われていなかった時代から精力的に活動してきました.今思えば,彼にはリウマチ足というニッチな分野がはっきりとBlue oceanとして見えていたのだと思います.
矢野先生は常に真摯に患者さんに向き合ってリウマチ診療を行いながら,地道かつ緻密にデータを収集し,リウマチ足に関する多くのインパクトのある業績を積み重ねてきました.本書は彼にとって最初の成書ですが,間違いなく今後長く続いていく道程の第一歩であると確信しています.是非お手にとってご一読ください.
2017年2月
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター准教授
猪狩勝則
序
私が「足」を専門にしようと決心したのは,医師5年目の時でした.整形外科医の中で「足」を専門にしている医師が極端に少なかったことが影響しています.「足」専門の医師が少ない理由は,足に問題を抱えている患者さんが少ないからかとも思っていました.しかし私が所属する東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターには足の症状・変形を有し困っている患者さんが多数存在していました.当センターで足の診療・手術・研究を行っていくことが患者さんの利益となり,なおかつ自分のレベルアップにつながると考えて「足」を専門にすることを決心しました.しかし当時から足の教科書の数は少なかったため,どのように勉強すればいいか困っていました.そのため日本足の外科学会学術集会や日本足の外科学会教育研修会に朝から晩まで積極的に参加することで知識の補充を行っていました.
今回この「リウマチ足の診かた,考えかた」の企画をいただき,非常に光栄であるとともに身の引き締まる思いがしました.「足」に興味を持たれている若い先生方が,当時の私と同じように学習方法に悩んでいることも十分予想できました.そのため「リウマチ足」に限らず,「一般足」でも通用する内容も含めることを意識して執筆しました.「リウマチ足」もあくまで「足」の一部ではありますが,その一方で「リウマチ足」特有の事情・症状・治療法も多数存在しています.「リウマチ足」に関するエビデンスは多くはないため,自分の経験から得た知識・技術も可能な限り含めたつもりです.本教科書が若い先生方の日々の「リウマチ足」診療に少しでも助けとなれば幸いです.
最後に,このような機会を与えていただいた中外医学社の五月女謙一氏,私のつたない文章を根気よく訂正・指導し監修いただいた猪狩勝則先生,そして日々の診療で多くの手助け・助言をいただいている山中寿所長をはじめとする当センター全医局員にこの場を借りて深謝します.
2017年2月
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター講師
矢野紘一郎
目次
第1章 疫学
1 足初発の頻度
2 足部症状合併の頻度
3 足診療の現状
4 RA疾患活動性と足
5 リウマチ足の関節破壊重症化予測因子
第2章 診察方法と理学所見
1 診察姿勢
2 診察方法
1.後足部の診察
2.中足部の診察
3.前足部の診察
3 リウマチ足の特徴的な所見
1.外反母趾 Hallux valgus
2.槌趾・鉤爪趾
3.内反小趾 Bunionette
4.開張足 Splay foot
5.扁平三角状変形 Flat triangular deformity
6.角化異常症(胼胝・鶏眼)
7.扁平足 Flat foot
8.リウマチ性後足部障害
9.後脛骨筋腱腱鞘滑膜炎
第3章 画像所見
1 単純X線
1.足正面
2.足斜位
3.足側面
4.種子骨撮影
5.足関節正面
6.足関節側面
7.距骨下関節撮影
8.Hip-to-calcaneus view(HC view)
2 超音波検査
3 Computed Tomography (CT)
4 Magnetic resonance imaging (MRI)
5 足底圧
modified Total Sharp Score(mTSS)
第4章 保存治療
1 薬物治療
2 運動療法
3 注射療法
4 装具療法
5 フットケア
1.皮膚潰瘍
2.白癬
3.巻き爪(陥入爪・弯曲爪)
靴選びのポイント
ハイヒールは本当に悪か?
私の足関節注射の方法
第5章 手術治療
1 リウマチ足手術の推移
2 当センターでの周術期管理
1.抗リウマチ薬の休薬
2.ステロイドカバー
3.予防的抗菌薬
4.包帯交換
3 前足部
1.関節非温存手術
2.関節温存手術
4 中足部(距舟関節・踵立方関節・距骨下関節)
1.単関節固定術
2.二関節固定術
3.三関節固定術
5 後足部
1.距腿関節+距骨下関節の二関節固定術
2.距腿関節固定術
3.鏡視下距腿関節固定術
4.人工足関節置換術(TAA)