Pocket Echo Life Support 教育シリーズ みるミルできるポケットエコー 2 経鼻胃管・誤嚥性肺炎
内容
「安全・簡単・低コスト」なポケットエコーは,急速に変わり続ける医療業界の中で,医師のみならず看護師や療法士,鍼灸師などにも活用が広がっている.シリーズ第一弾「膀胱」では,その有用性と具体的な操作方法を分かりやすく解説して好評を得た.第二弾では,在宅・訪問看護の場でも頻繁に遭遇する「経鼻胃管・誤嚥性肺炎」を特集.病院外の限られた条件の中でのエコー画像は,確かなケアと治療へ繋がる拠り所となるだろう.
序文
はじめに
本格的な高齢社会に突入した日本で,誤嚥性肺炎は医療機関内だけで治療できる限界を超えており,在宅医療や訪問看護におけるケアの質向上が期待されています.「安全・簡単・低コスト」で実施可能なポケットエコーは,看護師を中心に多くの医療者の「第2の聴診器」として広がりつつあります.2016年4月より開催しているPELS第1弾「膀胱エコーによる体液管理」は,全国各地の学会・病院・訪問看護ステーションなどで計100回を超えました.ポケットエコーによる膀胱評価が,看護業務改善,患者満足度,家族安心感,働く医療者の教育と安心に役立っていることが,実践はもとより,学会などでも報告されるようになりました.そして,ポケットエコーを活用し始めた看護師らは,体液管理のための下大静脈エコー,担がん患者の腹水エコー,排便ケアのための直腸エコー,そして誤嚥性肺炎ケアに肺エコーなどへ取り組み始めています.
PELS 第2弾の本書では,「経鼻胃管」と「誤嚥性肺炎」をテーマにしました.倫理・道徳的是非はともかく,経鼻胃管の挿入・留置の件数はとても多く,誤挿入などのトラブルも頻発しています.世界的にも,単純X線写真が容易に撮影できない現場において,エコーを用いた経鼻胃管の確認方法は期待されています.現在,PMDAより経鼻胃管留置は複数の方法で実施することを明示されていますが,その1つとしてエコーが適切に活用されるよう本書を記しました.また,誤嚥性肺炎は在宅などでケア中の患者に高頻度に生じますが,医療機関受診や治療適応・経過観察の判断の一助として,エコーが役立つことを期待しています.
本書で提案する使用方法・判断基準は,まだ十分なコンセンサスが取れているわけではありません.従来の検査室内の精密検査エコーとは異なる,Internet of things(IoT)端末としてのスマートフォンのように活用されるポケットエコーは,誰もが使える機器です.だからこそ,その質を担保し,地域で有益かつ誠実に活用されるための指針の第一歩として,本書とPELSが役立つことを切に願います.
著者を代表して
弘前大学医学部附属病院 総合診療部 小林 只
監修のことば
日本が抱える急速な高齢化に向けて,社会保障制度の見直しによる医療・介護政策の転換に向けて,地域包括ケアシステムなどを通じた,在宅医療や訪問看護による医療支援体制が示されました.それを支える看護師の役割がクローズアップされてくることを踏まえ,多くのスタッフが患者さんの沢山の情報をマネージメントする中で「身体の中が透けて見える」画像が共有化できれば,現場におけるアセスメント精度が向上し,対処を迅速かつ的確に行えるようになるでしょう.その結果として,効率的で質の高い医療の提供につながるであろうポケットエコー・ライフ・サポート(Pocket Echo Life Support : PELS)教育シリーズ「第1巻」の編集に取り掛かりました.
PELS教育シリーズの第1巻「みるミルできるポケットエコー1膀胱」が2016年に発刊されましたが,新元号を迎えた今,周りの環境はどう変化したでしょうか.東京オリンピック開催の2020年は65歳以上の世帯主は東京都,愛知県を除く45道府県で40%を超え,75歳以上である高齢者の1人暮らしは東京,大阪,神奈川という大都市圏で増えると予想されており,2025年問題が現実味を帯びています.その環境における医療や介護の現場では,より高度な判断や手技が求められています.ポケットエコーを用いた身体内の画像取得,そしてITを用いた情報共有は,より正確にかつ安全に行うための一助となります.
PELS第2巻である本書は,「経鼻胃管誤挿入の防止を目指した教育コース」と「誤嚥性肺炎のアセスメント向上を目指した教育コース」を扱いました.世界的には仮想現実(VR)を含むデジタルシミュレータが増えていますが,PELSではアナログシミュレータを用いて,より実臨床に近い感覚を養うことを目指しています.在宅医療を支える看護師をはじめ,多くの医療者が「身体の中が透けて見える」ポケットエコーというツールを適切に活用することで,的確な手技の習得はもちろんのこと,なによりも患者さんへの一歩進んだアセスメントに貢献できますよう,本書が活用されますことを願っております.
一般財団法人ヘルスケア人材育成協会 松崎正史
目次
もくじ
第1章 ポケットエコーの活用方法と教育
1-1 ポケットエコー・ライフ・サポート(PELS)とは?
1-2 看護・介護で役立つポケットエコー導入ポイントの代表例
ポータブルエコーと訪問看護の親和性
1-3 ポケットエコーの活用はコミュニケーションツール
ポケットエコー×クローズドSNSの活用
第2章 学習方法・シミュレータの使い方
2-1 エコー学習・習得の方法
2-1-1 エコーの基礎
2-1-2 エコー画像の見方
2-2 プローブの持ち方,操作の仕方
2-2-1 コンベックスとリニアの持ち方
2-2-2 プローブ操作と練習方法
第3章 PELS経鼻胃管
3-1 経鼻胃管シミュレータ作成の背景
3-1-1 終末期と人工栄養(経鼻胃管,胃ろう,静脈栄養)
3-1-2 経鼻胃管の臨床的価値とジレンマ
3-1-3 経鼻胃管の誤挿入に関連した事故は多い
3-1-4 経鼻胃管の確認方法:複数方法による確認の推奨
3-1-5 経鼻胃管に対するエコーの検出精度
3-1-6 経鼻胃管に対するエコーの役割
3-2 やってみよう! 経鼻胃管エコー
3-2-1 使用するエコー機器
3-2-2 経鼻胃管シミュレータモデルの説明・エコー画像
3-2-3 使用方法(経鼻胃管確認エコーの操作手順)
3-3 症例
経鼻胃管,ちゃんと入ってる? 入ってない?
1 症例1:実際にエコーをやってみよう
2 症例1:解説
まとめ
3-4 患者さんに実施する時の注意点
3-4-1 人の頸部食道エコー画像
3-4-2 Q&A
第4章 PELS誤嚥性肺炎
4-1 誤嚥性肺炎シミュレータ作成の背景
4-1-1 死因としての肺炎・誤嚥性肺炎
4-2 嚥下・誤嚥,肺・呼吸の基本知識
4-2-1 嚥下の機能解剖
摂食嚥下関連エコー
4-2-2 誤嚥の病態生理
摂食嚥下リハビリの現状
4-2-3 肺・呼吸の機能解剖
4-3 誤嚥性肺炎の概説
4-3-1 誤嚥性肺炎の病態生理
4-3-2 誤嚥性肺炎の診断
4-3-3 誤嚥性肺炎の治療
4-4 誤嚥性肺炎とエコー
4-4-1 誤嚥性肺炎に対するエコーの精度
4-4-2 誤嚥性肺炎に対するエコーの役割
4-5 やってみよう! 肺エコー
4-5-1 使用するエコー機器
4-5-2 肺エコーの基本
4-5-3 誤嚥性肺炎におけるエコー実施方法
4-5-4 誤嚥性肺炎シミュレータとエコー画像
4-5-5 使用方法(誤嚥性肺炎エコーの操作手順)
4-6 さあ,やってみよう! 症例
4-6-1 症例2 微熱が出てきて,咳も増えてきました
症例1の患者さんの続きです
1 症例2:実際にエコーをやってみよう
2 症例2:解説
まとめ
発熱のワークアップ
自分の安心と患者さんの安心のためにエコーを使っています
4-6-2 症例3 誤嚥性肺炎が再発していないか心配なんです
症例2の患者さんの続きです
1 症例3:実際にエコーをやってみよう
2 症例3:解説
まとめ
高齢の方でもリラックスしてエコーが行えるように工夫したい
心不全? 肺炎?
4-7 患者さんに実施する時の注意点
4-7-1 Q&A
あとがき
索引