臨床推論の落とし穴 ミミッカーを探せ!

定価:
4,950円(本体価格4,500円+税)

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書誌情報

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サイズ A5判
262頁
ISBN 978-4-498-01028-4
発行日 2023年01月13日

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内容

医師にとってもっとも重要かつ掴みどころのない臨床推論というプロセスにおいて,著者がこれまで現場の経験や日々の努力で集めてきたCommon Diseaseをマネする疾患“ミミッカー”を挙げ,直観的な診断と分析的な診断を上手く組み合わせることで効率よく鑑別の漏れを減らし正しい診断に至る方法をわかりやすく解説している.Pivot and Cluster Strategyによる鑑別診断リストを具体的に提示しながら診断力の向上への道筋を示す書.

序文

監修の言葉

 長野広之先生は学生のころからよく知っています.2010年当時の大阪大学で,関西で(おそらく全国でも)最大規模の医学生を集めた勉強会が開かれた際にお招きいただき,大きな講堂で1日がかりの勉強会を皆で行ったことがありました.その主催者のひとりが長野君でした.そこから十数年がたち,こうして今でも親交を保ってくださっている彼からの友情と,また同じ専門領域で著者─監修者の関係で本書の執筆に関わることができる幸運に感謝します.
 この原稿を書いている今は2022年,診断学領域においてSituativity(状況性)の概念の提唱から2年,Diagnostic Excellenceやダニエル・カーネマンらによるNoiseの概念が打ち出されて1年という,まさに診断学業界が大きく動いている時期です.状況性や不確実性の中において,しかしその中核に位置する診断プロセスの要素は依然,医師の思考であることは変わらないでしょう.
 本書は,医師の診断思考におけるもっとも自然でエネルギー倹約性の高いプロセスのひとつであるPivot and Cluster Strategyを活用したCluster(鑑別診断リスト)の具体的な提示と言えます.認知診断理論としてはベイズ確率論,閾値モデル,およびメタ認知の概念を包含したものであり,また最近は件のカーネマンの文献でも扱われるDecision Hygiene(決定衛生と訳されるでしょうか)の戦略の観点からも,このようなリストの具体的提示は臨床的な効果が高いものと考えられます.本書ではこのような「似たもの疾患」が旧来より慣用されるmimicker(ミミッカー)としてリストアップされています.ミミッカーをリストアップしたのちに重要なことはそれぞれの疾患の「差分」の理解が重要で,具体的な鑑別ポイントは何か,というillness scriptの違いを理解することが鑑別上,次の要点となります.この点についても本書は表と詳細な長野先生の記述を通し,丁寧に説明が加えられています.この辺りの作りは,長野先生のこれまでの内科医としての研鑽の中で培われた真摯な姿勢が大変反映されていると感じます.また,作成の中で長野先生と相談しましたが,本書は若手医師向けの書籍ということを念頭に執筆され,そのため後輩向けの視点を大切にしたいという思いから作成されているため,そのような論調での記載をご理解いただけますと幸甚です.
 最後に,本書の監修作業において忍耐強くお付き合いくださった中外医学社の宮崎雅弘様,桑山亜也様,皆様に心より感謝申し上げます.
 本書が読者の皆様にとって明日からの診療に役に立ち,診断の質の向上に貢献することを心より願っています.

2022年11月
獨協医科大学 総合診療医学・総合診療科 教授
志水太郎


序文

 臨床推論は掴みどころのないプロセスである.医師になりたての頃,上級医が診断に至る思考過程が全くわからなかった.疾患を勉強しても,自身でまた症候からその疾患を診断できるのか自信が持てなかった.「キーフレーズとミミッカー」.自分は今この2つを臨床推論の切り口として持っている.日々の臨床や臨床推論の勉強会,そしてケースを読む際などで診断に迷ったら,「この症例をキーフレーズ化するなら何なのか」「ミミッカーの視点で考えると正しい診断にたどり着けないか」を考えている.
 キーフレーズとは「鑑別を絞るために適切に表現されたproblem」を指す.診療から得た病歴,身体所見,ラボデータといった情報を正しく医学言語化し,鑑別が絞りやすいように上手く選択し組み合わせることでキーフレーズを作成する.この作業を行うことで効率よく鑑別診断を絞り込むことができる.このキーフレーズについては「ジェネラリストのための内科診断キーフレーズ」(医学書院;2022年)で扱っているので,興味がある方は読んで頂きたい.
 今回本書では,もう1つのミミッカーを扱っている.診療中に診断を俯瞰的に見直すのは難しい.その日の体調や現場の忙しさで論理的な考えができず,初めに思いついた診断から離れられない経験は誰でもしたことがあるのではないだろうか.しかし,初めに直観的に思いついた診断にはバイアスがかかっていることが多い.そこでミミッカーの考え方は,直観的な診断と分析的な診断を上手く組み合わせる方法である.直観的な診断のミミッカーとなる疾患を考えることで,労力少なく鑑別の漏れを減らすことができる.本書で扱っているミミッカー達は,筆者が臨床現場の経験や日々の勉強から集めてきたものである.本書で解説しているミミッカーの考え方が,皆様の診断力の向上につながれば幸いである.
 最後に学生時代からお世話になりお忙しい中,本書籍を監修して頂いた志水太郎先生,これまで指導して頂いた天理よろづ相談所病院,洛和会丸太町病院の先生方,そして筆の遅い私を辛抱強く支えてくださった宮崎雅弘さん,本書を編集して頂いた桑山亜也さんなど中外医学社の皆様に心より感謝申し上げたい.

2022年11月
長野広之

目次

目 次

 はじめに
 [コラム]ミミッカーリストはどのように作る?

1 急性冠症候群(ACS)
急性冠症候群とは?
 1 たこつぼ型心筋症
 2 冠攣縮性狭心症
 3 急性心膜炎/心筋炎
 4 大動脈解離
 5 特発性冠動脈解離
 6 その他

2 肺炎
肺炎とは?
 [コラム]誤嚥性肺炎を診るときに考えること
1 心原性肺水腫
2 特発性器質化肺炎,慢性好酸球性肺炎
3 結核
4 悪性腫瘍
5 肺梗塞
6 その他

3 喘息
喘息とは?
 [コラム]アスピリン喘息について
 1 心不全
 2 COPD
 3 アナフィラキシー
 4 EDAC,気管支軟化症
 5 声帯機能不全
 6 その他

4 敗血症
敗血症とは?
1 熱射病(heat stroke)
 [コラム]無汗症の背景疾患は?
 [コラム]抗コリン作用は副作用の宝庫!
2 薬剤誘発性高体温症
 [コラム]抗コリン性トキシドロームについて
3 甲状腺クリーゼ
 [コラム]ショックバイタルが改善しないときに念頭に置くべき疾患

5 感冒,インフルエンザ
感冒,インフルエンザとは?
 1 伝染性単核球症(様症状)
 2 麻疹
 3 風疹
 [コラム]麻疹,風疹とワクチン接種歴
 4 成人Still病
 5 急性心筋炎
 [コラム]COVID-19
 6 上気道症状の3つのうち1つのみきたす疾患
 [コラム]初期に発熱以外に所見の乏しい感染症

6 くも膜下出血(SAH)
くも膜下出血とは?
 1 RCVS
 2 頸動脈/椎骨動脈解離
 3 脳静脈洞血栓症
 4 特発性低髄液圧症候群
 5 その他

7 脳梗塞/一過性脳虚血発作(TIA)
脳梗塞とは?
一過性脳虚血発作とは?
 1 低血糖
 [コラム]糖尿病の関与しない低血糖の原因は
 2 大動脈解離
 3 てんかん
 4 脳占拠病変
 5 その他

8 てんかん
てんかんとは?
 [コラム]NCSEについて
 1 血圧低下を起こす疾患
 2 離脱症状(アルコール,ベンゾジアゼピン系薬剤)
 [コラム]せん妄を診断するときにも離脱症候群を考える
 3 低血糖
 4 心因性非てんかん発作
 5 その他

9 虫垂炎
虫垂炎とは?
 Obturator sign
 1 PID,その他の婦人科急性腹症
 2 大腸憩室炎
 3 回腸末端炎
 4 腹膜垂炎
 5 尿路結石

10 感染性腸炎
感染性腸炎とは?
 [コラム]慢性下痢の鑑別
 1 Toxic shock syndrome
 2 CD腸炎
 3 消化管出血
 4 アナフィラキシー
 5 甲状腺クリーゼ
 6 SFTS

11 肝性脳症
肝性脳症とは?
 1 肝性脳症以外の高アンモニア血症をきたす疾患
 2 アルコール離脱症候群
 3 Wernicke脳症
 4 低血糖
 5 頭蓋内出血(SAH,硬膜下血腫,硬膜外血腫)
 6 その他
 [コラム]急性アルコール中毒のミミッカー
 [コラム]アルコール常用者で考えるべき鑑別とは?

12 リウマチ性多発筋痛症(PMR)
リウマチ性多発筋痛症とは?
 1 巨細胞性動脈炎
 2 感染性心内膜炎
 3 高齢発症関節リウマチ
 4 Paraneoplastic syndrome
 5 血管炎
 6 その他

13 関節リウマチ
関節リウマチとは?
 1 PMR
 2 ウイルス感染に伴う関節炎
 3 結晶性関節炎
 4 脊椎関節炎
 5 抗核抗体関連疾患
 6 その他

14 血管炎(顕微鏡的多発血管炎)
血管炎とは?
顕微鏡的多発血管炎とは?
 [コラム]GPAもMPAミミッカーの1つ
 1 感染性心内膜炎
 2 リンパ腫
 3 薬剤性ANCA関連血管炎
 [コラム]ANCAが陽性になる疾患
 4 コレステロール塞栓
 5 抗糸球体基底膜抗体関連疾患
 6 クリオグロブリン血症

15 悪性リンパ腫
悪性リンパ腫とは?
 [コラム]IVLについて
 1 特発性多中心性Castleman病/TAFRO症候群
 2 HIV,EBV(CAEBV),CMV
 3 全身性エリテマトーデス(SLE)
 [コラム]SLEのミミッカー
 4 薬剤
 5 サルコイドーシス
 6 結核性リンパ節炎
 7 IgG4関連疾患
 8 成人Still病

16 尿路結石
尿路結石とは?
 [コラム]診断精度研究論文の解釈は難しい
 1 結石性腎盂腎炎
 2 腹部大動脈瘤
 3 腎梗塞
 4 その他

17 深部静脈血栓症(DVT)
深部静脈血栓症とは?
 [コラム]May-Thurner症候群について
 1 筋損傷
 2 Baker囊胞破裂
 3 リンパ浮腫
 4 静脈不全
 5 その他

18 その他

 索引

執筆者一覧

  • 京都大学大学院医学研究科医療経済学分野医学専攻博士課程,よしき往診クリニック非常勤講師 長野広之
  • 獨協医科大学総合診療医学・総合診療科教授 志水太郎 監修
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