ここが知りたい 遺伝子診療 はてな?BOOK
内容
遺伝子レベルの情報が盛んに応用される時代となり,今や一部の医師や研究者だけが利用するものではなくなってきた.そこで本書は,初学者に向け,遺伝子診療の基本,臨床遺伝学や遺伝子関連検査,遺伝カウンセリングの基礎知識はもちろん,生殖・周産期関連などのテーマも含めて平易にわかりやすく解説した.臨床医,プライマリケア医,遺伝カウンセラー、臨床検査技師、看護師など,様々な立場の医療者の入門書として最適な一冊.
序文
序
遺伝子レベルの情報の医療への応用はこれまでは一部の専門家の仕事と考えられてきましたが,研究の進歩と技術革新の結果,ほとんどすべての医療従事者にとってゲノム情報を有効に活用することが必須なゲノム医療の時代が到来しました.
一方,20 世紀初頭に登場したgenetics ということばは,元来heredity(遺伝継承)と個体の多様性(variation)の両方を扱う学問のはずでしたが,我が国では比較的稀な遺伝病を扱う領域と長らく誤解されてきました.しかし,近年,遺伝と多様性の科学と再定義され,遺伝医学は稀な遺伝性疾患だけでなく,生活習慣病をはじめとする頻度が高い疾患に対する感受性や各種薬剤に対する反応の個人差まで広い範囲を対象とする学問であることが認識されてきています.
このような現状に立ち,本書「ここが知りたい 遺伝子診療 はてな? BOOK」はすべての医療従事者を対象として遺伝子診療・ゲノム医療に関する基本的事項の解説を56 の質問形式でまとめたものです.
総論と臨床遺伝学の基本では万国共通のルールによる家系図の書き方から民間保険への加入に際しての遺伝の問題,さらにはmissing heritability まで幅広く取り上げました.そして章末には遺伝のトリビアもあります.
ゲノム医療の中核となる遺伝子関連検査は,1.病原体核酸検査,2.体細胞遺伝子検査(癌組織など一部の細胞の遺伝子に後天的に起きた変化で次世代には伝わらないもの),3.遺伝学的検査(次世代に伝わる遺伝情報を扱う検査)に分けられますが,本書では2と3を扱います.医療現場では遺伝子関連検査がどこまで保険適応になっているのか,コマーシャルベースに乗りにくい遺伝学的検査はどこに頼めばよいのか,といった情報が必要になるので本書では最新の状況を紹介しました.
遺伝子診療においては専門外であっても知っておくべき最低限の必要知識があります.周産期医療に従事する方々にとっては常識であっても,他領域の方が正確に理解していないことも多々あるかと思います.そこで本書では医療従事者として知っておくべき生殖・周産期関連の基本事項の解説も充実させました.
ご多忙の中,ご執筆頂いた方々に心より御礼申し上げます.本書がゲノム医療・遺伝子診療の実践において読者の皆さまのお役に立てることを心より願っています.
2017 年12 月
野村文夫
羽田 明
長田久夫
目次
目 次
第1章 遺伝子診療総論
1 ゲノム医療・遺伝子診療とは? 〈野村文夫〉
2 遺伝情報を扱う検査(遺伝学的検査)と通常の臨床検査との違いは何ですか? 〈野村文夫〉
3 遺伝カウンセリングとは何か?依頼先や保険適応も含めて教えてください 〈野村文夫〉
4 遺伝子診療に関連する学会,資格,講習会にはどのようなものがありますか? 〈野村文夫〉
5 遺伝子診療に関連したガイドラインについて解説してください 〈西村 基〉
6 遺伝性疾患に関する最新情報の入手方法を教えてください 〈中山智祥〉
7 遺伝性疾患の患者会に関する情報を教えてください 〈宇津野恵美〉
8 遺伝性疾患患者が利用できる社会保障制度を教えてください 〈葛田衣重〉
9 遺伝学的検査を実施する際のわかりやすい情報提供の工夫を教えてください 〈浦尾充子〉
10 各種民間保険に入る際に遺伝要因はどこまで考慮されますか? 〈柳 準一〉
11 個人情報保護法の改正に伴う研究倫理指針改正について教えてください 〈羽田 明〉
12 遺伝のトリビア1:地球上に生物が出現後,現世人類の誕生まで 〈羽田 明〉
第2章 臨床遺伝学の基本事項
1 遺伝性疾患とはどのような疾患が含まれるか教えてください 〈羽田 明〉
2 家系図記載の基本ルールとそのポイントについて関連のソフトも含めて教えてください 〈小原令子〉
3 遺伝を理解するための基本的な言葉について教えてください 〈朽方豊夢〉
4 メンデルの法則について説明してください 〈朽方豊夢〉
5 メンデル遺伝の各形式の概要を教えてください 〈朽方豊夢〉
6 ミトコンドリア病,母系遺伝について説明してください 〈羽田 明〉
7 発症前診断と保因者診断について教えてください 〈小原令子〉
8 単一遺伝子病や多因子疾患で血縁者が同じ疾患に罹患する確率はどのように計算するのでしょうか?
〈羽田 明〉
9 血族婚(近親婚)は次世代の疾患リスクをどの程度高めますか? 〈羽田 明〉
10 ゲノム多様性と疾患との関連について説明してください 〈羽田 明〉
11 見つかっていない遺伝率(missing heritability)について説明してください 〈羽田 明〉
12 エピジェネティックスとは?世代を超えて伝わるエピゲノム変異はありますか? 〈羽田 明〉
13 遺伝のトリビア2:ハダカデバネズミ 〈羽田 明〉
第3章 遺伝子関連検査関連事項
1 遺伝子関連検査にはどのようなものがありますか? 〈野村文夫〉
2 遺伝子関連検査が必要となる臨床の場面について説明してください
(1)体細胞遺伝子検査
1固形がん 〈松下一之〉
2血液疾患 〈三村尚也 井関 徹〉
(2)遺伝学的検査
1分子遺伝学的検査 〈野村文夫〉
2染色体検査 〈朽方豊夢〉
3生化学的遺伝学的検査 〈高柳正樹〉
3 遺伝子関連検査はどこまで保険収載されていますか? 〈野村文夫〉
4 先進医療とは? 〈堤 正好〉
5 保険未承認の検査が保険適用となるまでの流れを教えてください 〈堤 正好〉
6 遺伝学的検査はどこに依頼できますか? 〈野村文夫〉
7 遺伝学的検査の実施に際してなぜ遺伝カウンセリングが必要なのですか? 〈別府美奈子 宇津野恵美〉
8 遺伝学的検査の同意の取り方・検体の採取と保存における注意点は? 〈宇津野恵美〉
9 遺伝子関連検査技術全般について説明してください
(1)分子遺伝学的検査 〈石毛崇之〉
(2)染色体検査(アレイも含む) 〈朽方豊夢〉
10 次世代シーケンサー(NGS)技術はどこまで進歩し,実際の医療にどのように応用されていますか?
〈西村 基〉
11 Incidental/Secondary Findings とは? 〈西村 基〉
12 遺伝学的検査結果の異常にはどのような種類があり,その結果はどのように記載・報告されていますか?
(1)分子遺伝学的検査 〈渡邉 淳〉
(2)染色体関連検査 〈渡邉 淳〉
13 全自動遺伝子解析装置はどこまで簡便になっていますか? 〈糸賀 栄〉
14 Direct—to—Consumer Genetic Testing(いわゆる遺伝子検査ビジネス)についてどのように考えたら
よいのでしょうか? 〈野村文夫〉
15 国家プロジェクト未診断疾患イニシアチブ(IRUD)について説明してください 〈野村文夫〉
第4章 医療従事者として知っておくべき生殖・周産期関連の基本事項
1 母体保護法と人工妊娠中絶について教えてください 〈都甲明子〉
2 不妊症とその頻度について教えてください 〈長田久夫〉
3 男性不妊と男性の年齢が妊娠に与える影響について教えてください 〈市川智彦〉
4 女性の高齢妊娠が先天異常に及ぼす影響は? 〈秋山奈々 長田久夫〉
5 流産・死産・不育について教えてください 〈長田久夫〉
6 ART(生殖補助医療)にはどのようなものがありますか? 〈長田久夫〉
7 着床前診断・着床前スクリーニングのわが国における現状を説明してください 〈長田久夫〉
8 出生前診断法にはどのようなものがありますか? 〈秋山奈々 長田久夫〉
9 胎児の超音波検査(胎児エコー)で何がどこまでわかりますか? 〈長田久夫〉
10 無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)の現状について教えてください 〈長田久夫〉
11 妊婦の薬剤服用・妊娠中の放射線被曝の影響について教えてください 〈都甲明子〉
12 妊娠中の喫煙(受動喫煙も含む),飲酒,ウイルス感染の影響について教えてください 〈飯塚美徳〉
13 先天異常の頻度,種類について教えてください 〈秋山奈々 長田久夫〉
14 新生児を対象とした先天代謝異常のスクリーニング検査について教えてください 〈飯塚美徳〉
15 新生児聴覚スクリーニングについて教えてください 〈都甲明子〉
第5章 個別化医療のためのファーマコゲノミクス
1 ファーマコゲノミクスとは? 〈有吉範高〉
2 ファーマコゲノミクスは薬物の副作用回避や投与量の調節にいかに役立っていますか? 〈有吉範高〉
3 コンパニオン診断とその最新状況 〈松下一之〉
索引