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書籍詳細

ここまできた肝の科学

ここまできた肝の科学

戸田剛太郎 他編著

B5判 320頁

定価7,920円(本体7,200円 + 税)

ISBN978-4-498-04286-5

2002年11月発行

在庫なし

肝臓に関わる基礎医学的な知識から,肝炎,肝硬変,肝癌などの成因,考え方,診断・治療についてを最新の知見により解説した書.
平明な表現で,約60項目にわたりそれぞれ読み切りになるようまとめて,親しみやすく今日の肝臓の科学を学ぶことができるように編まれている.
随所に「キーワード」,「トピックス」を配して,知識の整理,理解をはかれるよう配慮してある.


 肝臓の生理,生化学に関する知見は,目覚ましい進歩を遂げつつある分子生物学的な手法の導入によって増加の一途をたどっている.本書は肝病態の発現および肝病態にともなって出現するさまざまな症状,徴候の発現が肝臓の生理,生化学,免疫学,肝炎ウイルスに関する最近の知見を基盤にしてどのように理解されているかをわかりやすく解説することを目標に編纂された.
 肝の病態の発現は外的あるいは内的要因による肝細胞の死,肝細胞死に続発する肝細胞の再生と間質における線維増生を基盤に成り立っている.これらの事象が制御された形で起きている限り,生体の防御反応としてホメオスターシス維持に重要な役割を演じている生理的な反応であり,これらの事象が制御不能になったとき肝の病態は発現すると考えられる.本書では外的要因としてのウイルス,アルコール,薬物を,また,これらの侵襲に対する生体の反応としての細胞死,細胞の再生,線維化を取り上げた.わが国では外的要因としての肝炎ウイルスの占める役割は大きく,肝炎ウイルスに関する知見を除いて細胞死,細胞の再生,線維化について理解することは困難である.また,肝炎ウイルスの遺伝子産物は肝細胞転写因子との相互作用を介して肝発癌に関わっていることも明らかにされている.ウイルスによって惹起された肝の炎症も最終的には肝硬変,肝発癌という形で終結するとしても,私達臨床家はその過程に介入することによって肝硬変という望ましくない結末を抑止することがその役目と考える.このような観点から本書では治療も取り上げた.また,肝免疫は現在発展途上の領域である.肝免疫は単に肝炎発症のエフェクターとしての役割ではなく,肝移植の普及により生体の免疫学的ホメオスターシスにおける肝臓の役割が次第に明らかにされるとともに注目を集めている.
 肝炎に伴って起きてくるさまざまな生体反応,肝病態でみられる黄疸,胆汁うっ滞,肝硬変でみられるさまざまな合併症に関する生理学的,分子生物学的理解は日常臨床にきわめて重要である.特に近年目覚ましい進歩を遂げているのは肝細胞による物質輸送の分子生物学であり,さまざまなキャリアが同定され私達の肝病態に関する理解は一段と深みを増している.
 本書が,分子生物学の進歩を基盤にした最近の目覚ましい生理学,生化学,免疫学の進歩を踏まえて肝の病態発現のメカニズムを理解する一助となれば幸甚である.また,ご多忙にも関わらず快くご執筆をお引き受けいただいた諸兄姉,本書を刊行するにあたってご協力いただいた秀島悟氏をはじめ中外医学社の諸兄姉に深甚の感謝を申し上げる.

2002年10月
東京慈恵会医科大学内科学講座・消化器肝臓内科
戸田 剛太郎

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目 次

§1.肝の構造と機能
    1.肝臓を構成している細胞とその機能は?<高森頼雪>
    2.肝幹細胞とは?<高森頼雪>
    3.肝細胞死のメカニズムは?<光井 洋>
    4.肝再生のメカニズムは?<富谷智明>
    5.肝臓の線維化のメカニズムは?<池田 均>
    6.肝臓の機能は加齢によって変化するのか?<長谷川泰正,滝川 一>
    7.黄疸はどうして起きるのか?ビリルビン輸送のメカニズム<高田由紀子,滝川 一>
    8.肝細胞の有機アニオントランスポーターはどこまでわかったか?<小笠原 隆,滝川 一>
    9.黄疸と胆汁うっ滞はどこが違うのか?<小笠原 隆,滝川 一>
   10.胆汁酸はどのような働きをしているのか?<高田由紀子,滝川 一>
   11.胆汁うっ滞患者のかゆみはどうして起きるのか?<戸田敦子,滝川 一>

§2.ウイルス性肝炎,肝細胞癌
   12.肝炎ウイルスにはどんなものがあるのか?<新谷良澄>
   13.肝炎ウイルスはどのようにして肝障害を起こすのか?<光井 洋>
   14.新生児期・幼児期のB型肝炎ウイルス感染はどうして慢性化するのか?<丸山稔之>
   15.C型肝炎ウイルス感染はどうして高率に慢性化するのか?<平山美樹>
   16.肝炎ウイルスの変異は病態にどのような影響を与えるのか?<堤 武也,小池和彦>
   17.HBsAg陰性HBVキャリアとは?<新谷良澄>
   18.B型肝炎ウイルスキャリアはどのような自然経過をたどるのか?<堤 武也,小池和彦>
   19.B型肝炎ウイルスの感染マーカーはどう読んだらいいのか?<丸山稔之>
   20.慢性肝炎の組織学的分類にはどのようなものがあるのか?<大野明彦>
   21.慢性肝炎の組織学的分類と臨床検査とは相関するか?<大野明彦>
   22.肝細胞はどのようにして癌化するのか?<森屋恭爾,小池和彦>
   23.肝炎ウイルス感染は肝細胞癌にどのように関連しているのか?B型肝炎
     ウイルス発癌とC型肝炎ウイルス発癌<森屋恭爾,小池和彦>
   24.肝炎ウイルス持続感染者における肝発癌のリスクファクターとは?<四柳 宏>
   25.肝細胞癌の多中心性発癌とはどういう意味か?<藤江 肇>
   26.肝炎劇症化のメカニズムはどこまでわかったのか?<新井雅裕>

§3.アルコール,薬物,代謝異常
   27.肝臓におけるアルコールの代謝はどのように行われるのか?<大畑 充>
   28.アルコールはどのようにして肝細胞を傷害するのか?<大畑 充>
   29.アルコール性肝障害,低酸素血症での肝小葉の中心静脈域が障害されるのはなぜか?<山内眞義>
   30.大酒家のすべてに肝障害がみられるとは限らないのはなぜか?<山内眞義>
   31.アルコールは肝発癌のリスクファクターか?<山内眞義>
   32.肝臓における薬物の代謝はどのように行われるのか?<小笠原 隆,滝川 一>
   33.薬物性肝障害はどうして起きるのか?<佐藤昭宏>
   34.脂肪肝は肝硬変へと進展するのか?<山内眞義>
   35.先天性代謝異常による肝疾患の遺伝子変異はどこまで明らかにされたか?<古坂明弘>

§4.肝と免疫
   36.肝局在リンパ球の特殊性とは?<高橋宏樹>
   37.肝臓による免疫学的寛容の誘導とは?<高橋宏樹>
   38.HLA不一致にもかかわらず移植肝が拒絶されないのはなぜか?<高橋宏樹>
   39.自己免疫性肝炎の遺伝子背景はどこまで明らかにされているか?<渡辺文時>
   40.自己免疫性肝炎発症のトリガーは?<銭谷幹男>
   41.原発性胆汁性肝硬変は自己免疫疾患か?<銭谷幹男>
   42.原発性胆汁性肝硬変の遺伝学的背景はどこまで明らかにされているのか?<銭谷幹男>
   43.原発性胆汁性肝硬変における抗ミトコンドリア抗体は病態生理的意味をもっているのか?<田中 篤>
   44.Autoimmune cholangitisとは?<銭谷幹男>

§5.肝硬変
   45.臨床的に肝硬変を診断するには?<大西敏樹>
   46.肝硬変では門脈血の流れはどのように変わるのか?門脈圧亢進症の発生機序<小笠原 隆,滝川 一>
   47.肝硬変における腹水はどのように出現するのか?<田中洋行>
   48.肝性脳症はどのようにして起きるのか?<大橋正紀,滝川 一>
   49.肝不全患者の高アンモニア血症はなぜ起きるか?<村上重人>
   50.肝硬変患者では低蛋白血症,アミノ酸パターンの変化が起きるのはなぜか?<山内眞義>
   51.慢性肝炎・肝硬変患者の腎障害はどうして起きるのか?<鈴木千春,滝川 一>
   52.肝硬変患者では耐糖能の低下が起こるのはなぜか?肝の糖代謝<村上重人>

§6.画像診断
   53.びまん性肝疾患診断における超音波・CT・MRIのそれぞれの長所・短所は?<長谷川泰正,滝川 一>
   54.肝細胞癌診断における超音波・CT・MRI・血管造影のそれぞれの長所・短所は?<小笠原 隆,滝川 一>
   55.胆道疾患診断における超音波・CT・MRI・胆道造影の長所・短所は?<西川 稿>

§7.肝疾患治療
   56.ウイルス性肝炎においてインターフェロンはどのようにして抗ウイルス効果を示すのか?<三好秀征>
   57.ウイルス性肝炎に対する抗ウイルス薬にはどのようなものがあるのか,またその効果は?<平山美樹>
   58.インターフェロン治療は肝発癌率を低下させたか?<三好秀征>
   59.肝細胞癌治療について有効性に差があるのか?<四柳 宏>
   60.肝細胞癌治療後の再発,多中心性発癌を予防することはできるか?<藤江 肇>

索 引

Key word
  アポトーシスとネクローシス<光井 洋>
  HBVのプレコア変異株<堤 武也,小池和彦>
  HCVのエンベロープ遺伝子変異<堤 武也,小池和彦>
  癌遺伝子,癌抑制遺伝子<森屋恭爾,小池和彦>
  BV-DNA組み込みと細胞癌遺伝子との関係<森屋恭爾,小池和彦>
  HBx<森屋恭爾,小池和彦>
  HCVゲノムの構造<森屋恭爾,小池和彦>
  アルコール代謝にかかわる酵素の遺伝子多型<山内眞義>
  生体肝移植後の原発性胆汁性肝硬変再発<高橋宏樹>
  AMA陰性PBC<銭谷幹男>
  variant syndrome<銭谷幹男>
  Child分類<大西敏樹>
  類洞の毛細血管化<小笠原 隆,滝川 一>
  特発性細菌性腹間炎(SBP)<田中洋行>
  3D-CT cholangiography<西川 稿>
  MRCP(magnetic resonance cholangiopancreatography)<西川 稿>
  randomized study<四柳 宏>
Topics
  肝細胞増殖因子<富谷智明>
  TGFβ<池田 均>
  体質性黄疸と遺伝子異常<高田由紀子,滝川 一>
  Mrp(multidrug resistance protein)ファミリー<小笠原 隆,滝川 一>
  家族性肝内胆汁うっ滞と遺伝子異常<小笠原 隆,滝川 一>
  胆汁酸とFXR<高田由紀子,滝川 一>
  肝障害と活性酸素<光井 洋>
  肝障害とサイトカイン<光井 洋>
  HCV-NS5A遺伝子の変異<堤 武也,小池和彦>
  YMDD株<堤 武也,小池和彦>
  急性B型肝炎治癒後のウイルス血症<堤 武也,小池和彦>
  薬物代謝酵素の遺伝子多型<小笠原 隆,滝川 一>
  テイラーメイド医療<小笠原 隆,滝川 一>
  薬物性肝障害の個人差<佐藤昭宏>
  non-alcoholic steatohepatitis(NASH)<山内眞義>
  NKT細胞<高橋宏樹>
  NOとエンドセリン<小笠原 隆,滝川 一>
  難治性腹水の治療<田中洋行>
  肝性脳症の予防と治療<大橋正紀,滝川 一>
  ウイルス性慢性肝炎の肝外症状<鈴木千春,滝川 一>
  造影超音波画像検査<小笠原 隆,滝川 一>
  インターフェロン投与後の体内C型肝炎ウイルスの動態<三好秀征>

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