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書籍詳細

呼吸器内科処方ノート

呼吸器内科処方ノート

山口佳寿博 編著

B6変 560頁

定価7,150円(本体6,500円 + 税)

ISBN978-4-498-03142-5

2003年03月発行

在庫なし

本書は多義に渡る呼吸器疾患の現時点での最も正しいと考えられる治療法を示したベッドサイドマニュアルである.
そのためEBMやガイドラインがあるものは出来るだけそれに準拠して具体的な治療方法を記述している.前半の「疾患別処方」では各々の疾患に際し,どう対処し,治療・管理すればよいかを可能な限りきめ細かに解説して実際に真に役立つことを目指した.
また後半では「薬効別薬物リスト」を掲載して,この領域で使用する薬物の詳細(投与量・禁忌・副作用など)が確認できるように構成されている.
ハンディながら,現在,呼吸器疾患の治療には本書1冊で十分に役立つという便利な実践書である.

はじめに
 薬物療法をはじめ種々の医学的治療の効果に関して客観的エビデンスevidenceが求められる時代になった.発症頻度の高い疾患ではある治療法に対して大規模検討を行いEBM(evidence-based medicine)を確立することは比較的簡単である.しかしながら,発症頻度の低い疾患あるいは病態が明確に同定されていない疾患ではある治療法に対して確実なEBMを得ることは困難である.現時点においてもEBMを基礎として確立された治療法の数はそれほど多いわけではなく,多くの治療法には確実なEBMが存在しない.以上の事実はEBMを確立していくことは重要なことであるが,そればかりにこだわっていては臨床の現場で実際の治療にあたることができないことを意味する.EBMが明確でない治療を行うということは,ある意味で“経験”に基いた治療を行っていることになる.このような場合には,その疾患の病態を確実に把握し,それに対して薬理作用上有効と考えられる薬物を副作用の発現を最小におさえながら投与するように努力する必要がある.薬物の有効性ならびに副作用の発現は投与量のみではなく投与期間ならびに患者個体の薬物代謝・排泄の効率にも依存する問題であり,患者個体の状況に合わせ投与量・投与期間の調整が必要である.また,薬物間には正の,あるいは負の相互作用が存在する場合があるので複数の薬物を同時投与する際には各薬物間の相互作用に注意を払いながら治療にあたる必要がある.副作用のない薬物は存在しない.それゆえ,不確実なEBMしか存在しない薬物治療を選択しなければならない場合には効果を最大に,副作用を最小に維持する投与法を常に模索する必要がある.
 呼吸器疾患は多岐にわたり,呼吸器感染症(一般細菌,結核,真菌など),気道疾患〔慢性閉塞性肺疾患(COPD),気管支喘息,気管支拡張症など〕,間質性肺疾患,肺血管病変(肺血栓塞栓症など),急性肺損傷ならびに肺癌を中心とした悪性腫瘍が治療の主たる対象となる.これら肺・胸郭内に発生する疾患に加え原発性肺胞低換気症候群など脳幹部に存在する呼吸中枢異常に起因するもの,あるいは睡眠時無呼吸症候群など睡眠関連疾患も広義の呼吸器疾患として取り扱われる.これら多様の呼吸器疾患の中で,COPD,気管支喘息に関しては多施設大規模検討から得られたEBMをもとにその具体的治療・管理指針(ガイドライン)が示されている.その他,確実なEBMを基礎としているわけではないが,治療・管理ガイドラインが提唱されているものには市中肺炎,院内肺炎,抗酸菌症などの呼吸器感染症,急性肺血栓塞栓症などがある.一方,間質性肺疾患・急性肺損傷の治療に関しては明確なガイドラインが存在しない.肺癌に関する治療原則はほぼ確立されているが手術適用のない進行性肺癌に対する集学的治療の具体的内容がガイドライン化(マニュアル化)されているわけではない.手術時期を逸した進行性肺癌に対して抗癌薬による化学療法ならびに放射線療法が積極的に施行されるようになっているが,現在施行可能な如何なる治療法も進行期にある肺癌を根治するものではなく,あくまでも肺癌患者の生命予後を延長させるのみである.その意味で,少しでも生命予後を改善させる集学的治療法を求めて種々の新規抗癌薬が積極的に開発されている.さらに,受容体型チロシンキナーゼ抑制物質を用いた分子標的治療など従来のものとは質的に異なる新たな治療法が臨床の現場で試みられるようになった.このように,進行性肺癌の世界にあっては適用薬物が流動的で多岐にわたるのが現状である.現在使用されている抗癌薬は単剤で使用する限り何れの薬物もほぼ同等の奏効率を示す.しかしながら,単剤による化学療法を行うことは少なく,薬理作用の異なる抗癌薬を複数個組み合わせた治療法が選択されることが多い.その場合には単剤使用時の効果からは予測できない反応を示すことがある.その意味で,抗癌薬に関しては単剤の効果とともに他の抗癌薬と組み合わせた時の効果を別々の検討によって検証していかなければならない.このように化学療法の内容が流動的であるため,原則は確立されていてもその具体的治療法としてどの抗癌薬(厳密には,どの抗癌薬とどの抗癌薬の組み合わせ)が最も優れているかに関して短期間の間では普遍的な結論を得ることができない.
 呼吸器分野の以上のような現状を踏まえ,各呼吸器疾患に対して現時点で最も正しいと考えられる治療内容を提示することを目的として本書を編集した.治療・管理のためのガイドラインが存在するものに関してはその内容をできる限り正確に紹介するとともにそれ以外の治療法も必要に応じて挿入した.疾患別処方の項においては実際のベッドサイドで真に役立つことを目指し,このような場合にはどう対処,治療すればよいかをできる限りきめ細かく,具体的に提示することを試みた.同じCOPDでも安定期と急性増悪期では治療法が質的に異なる.同じ気管支喘息でも妊娠時,外科手術時などにはどのような工夫をすべきか,逆流性食道炎が増悪因子となっている喘息の治療はどうすればよいかなど,臨床の現場でニーズが高いと考えられる内容をなるべく網羅したつもりである.肺癌に関しても脳転移,高カルシウム血症などに対する対処法,疼痛管理,栄養管理など,実際のベッドサイドで必要な内容に焦点を合わせ記載することを試みた.使用する薬物の詳細(薬物動態,投与量,副作用など)を常に念頭に置くことは重要なことである.そこで薬効別薬物リストを本書の末尾に掲載することによって今使用している薬物の詳細を常時参照できるように構成した.本書が各呼吸器疾患のベッドサイドでの治療に対して真に役立つ内容を提供することを心から願うものである.

2003年1月
山口佳寿博

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目 次

疾患別処方
A.呼吸器感染症
 1.かぜ症候群[長谷川直樹]
  a.インフルエンザウイルス
  b.その他のウイルス
 2.細菌性肺炎[伯野春彦]
  a.肺炎双球菌
  b.黄色ブドウ球菌
  c.Streptococcus milleri
  d.インフルエンザ桿菌
  e.肺炎桿菌
  f.緑膿菌
  g.モラクセラカタラーリス
  h.嫌気性菌
  i.ノカルジア
  j.炭疽菌
 3.異型性肺炎[伯野春彦]
  a.マイコプラズマ
  b.クラミジア
  c.レジオネラ
  d.リケッチア(Q熱)
 4.肺結核[長谷川直樹]
      非薬剤耐性結核
      薬剤耐性結核
 5.肺非結核性抗酸菌症[長谷川直樹]
  a.肺Mycobacterium avium complex症
  b.肺Mycobacterium kansasii症
  c.MAC,M. kansasii症以外の肺感染症
 6.肺真菌症[峰松直人]
  a.クリプトコッカス属
  b.アスペルギルス属
      脈管侵襲性アスペルギルス症
      慢性壊死性肺アスペルギルス症
      肺アスペルギローマ
  c.カンジダ属
 7.ニューモシスティスカリニ[峰松直人]
 8.サイトメガロウイルス[峰松直人]
 9.寄生虫[宮尾直樹]
 10.市中肺炎(原因菌同定前)[清水三恵]
 11.院内肺炎(原因菌同定前)[清水三恵]
 12.誤嚥性肺炎(原因菌同定前)[宮尾直樹]
 13.膿胸[宮尾直樹]
B.慢性閉塞性肺疾患(COPD)とその周辺疾患
 1.安定期[山口佳寿博]
 2.急性増悪[仲村秀俊]
 3.収縮性細気管支炎[仲村秀俊]
      特発性成人型閉塞性細気管支炎
      移植後閉塞性細気管支炎
      NOx吸入後閉塞性細気管支炎
      膠原病関連閉塞性細気管支炎
      びまん性汎細気管支炎
C.気管支喘息とその周辺疾患
 1.安定期[中溝ひかる,浅野浩一郎]
 2.急性発作[中溝ひかる,浅野浩一郎]
 3.妊娠時[鈴木雄介]
 4.外科手術時[鈴木雄介]
 5.アスピリン喘息[中溝ひかる,浅野浩一郎]
 6.運動誘発喘息[鈴木雄介]
 7.ステロイド抵抗性喘息[中溝ひかる,浅野浩一郎]
 8.咳型喘息[松崎 達]
 9.胃食道逆流症[松崎 達]
 10.アレルギー性気管支肺アスペルギルス症[松崎 達]
D.気管支拡張症…[石井 誠]
E.間質性肺炎
 1.特発性間質性肺炎[余語由里香]
      IPF/UIP215
      RB-ILD221
      DIP/AMP222
      NSIP/NCIP223
      AIP224
 2.特発性器質化肺炎[余語由里香]
 3.サルコイドーシス[余語由里香]
 4.過敏性肺臓炎[山田稚子]
 5.放射線肺臓炎[山田稚子]
F.好酸球性肺炎…[中島隆裕]
 1.急性好酸球性肺炎
 2.慢性好酸球性肺炎
G.血管炎…[仲村秀俊]
 1.アレルギー性肉芽腫性血管炎
 2.Wegener肉芽腫症と顕微鏡的多発動脈炎
 3.isolated pulmonary capillaritis
H.好酸球性肉芽腫症…[工藤裕康]
I.過誤腫性肺脈管筋腫症…[工藤裕康]
J.肺癌
 1.非小細胞癌[副島研造]
 2.小細胞癌[副島研造]
 3.癌性胸膜炎,癌性心膜炎[副島研造]
 4.高カルシウム血症[石井 誠]
 5.脳転移[中島隆裕]
 6.疼痛管理[渡辺秀生]
 7.嘔吐管理[渡辺秀生]
 8.白血球減少予防管理[工藤裕康]
 9.栄養管理[山田稚子]
K.悪性中皮腫…[清水三恵]
L.縦隔腫瘍…[石井 誠]
 1.胸腺腫
 2.胸腺癌
 3.胸腺カルチノイド
 4.胚細胞腫瘍
 5.神経原性腫瘍
 6.リンパ性腫瘍
 7.先天性嚢胞
M.肺血管病変…[坂巻文雄]
 1.急性肺血栓塞栓症
 2.慢性肺血栓塞栓症
 3.原発性肺高血圧症
 4.肺動静脈瘻
N.急性呼吸窮迫症候群…[黄 英文]
O.肺胞蛋白症…[黄 英文]
P.睡眠時無呼吸症候群…[小山田吉孝]
Q.原発性肺胞低換気症候群…[小山田吉孝]
R.過換気症候群…[小山田吉孝]
S.慢性呼吸不全…[石井 誠]
T.禁煙…[仲村秀俊]

薬効別薬物リスト
A.抗生物質…[長谷川直樹]
 1.抗菌薬
 2.抗真菌薬
 3.抗ウイルス薬
 4.抗寄生虫薬・原虫薬(カリニ原虫を含む)
 5.抗結核薬
 6.インフルエンザワクチン
 7.肺炎球菌ワクチン
B.気管支拡張薬…[仲村秀俊]
 1.b刺激薬
 2.抗コリン薬(吸入)
 3.キサンチン誘導体
 4.配合剤
C.抗アレルギー薬…[浅野浩一郎]
 1.抗ヒスタミン薬
 2.メディエーター遊離抑制薬
 3.ロイコトリエン阻害薬
 4.トロンボキサン阻害薬
 5.Th2サイトカイン阻害薬
D.ステロイド薬…[鈴木雄介]
 1.吸入用ステロイド薬
 2.内服ステロイド薬
 3.注射用ステロイド薬
E.鎮咳薬…[伯野春彦]
 1.中枢性麻薬性鎮咳薬
 2.中枢性非麻薬性鎮咳薬
 3.鎮咳去痰配合薬
F.去痰薬…[中島隆裕]
 1.気道分泌促進薬
 2.気道粘液溶解薬
 3.気道粘液修復薬
 4.気道潤滑薬
 5.界面活性薬
 6.塩類去痰薬
 7.刺激性去痰薬
G.呼吸刺激薬…[小山田吉孝]
 1.中枢性呼吸刺激薬
 2.末梢性呼吸刺激薬
 3.麻薬拮抗薬
H.免疫抑制薬…[余語由里香]
 1.代謝拮抗薬
 2.アルキル化剤
 3.生物活性化物質
I.抗悪性腫瘍薬…[副島研造]
 1.アルキル化薬
 2.代謝拮抗薬
 3.抗生物質
 4.植物アルカロイド薬
 5.トポイソメラーゼ阻害薬
 6.白金製剤
 7.非特異的免疫賦活薬
 8.分子標的治療薬
J.鎮痛薬…[峰松直人]
 1.非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
 2.非麻薬系鎮痛薬(オピオイド)
 3.麻薬
K.制吐薬…[渡辺秀生]
 1.セロトニン(5-HT3)受容体拮抗薬
 2.抗ドパミン薬
 3.フェノチアジン系
 4.副腎皮質ステロイド
L.顆粒球コロニ−刺激因子(G-CSF)…[工藤裕康]
M.骨・カルシウム代謝薬…[石井 誠]
 1.骨代謝改善薬(ビスフォスフォネート系)
 2.骨吸収抑制薬(カルシトニン製剤)
N.抗凝固薬…[宮尾直樹]
 1.血栓溶解薬
 2.ヘパリン
 3.経口抗凝固薬
 4.血小板凝集抑制薬
 5.アンチトロンビンIII製剤
O.血管拡張薬…[坂巻文雄]
 1.Ca拮抗薬
 2.プロスタサイクリンおよびその類似物質
P.利尿薬…[黄 英文]
 1.サイアザイド系利尿薬
 2.サイアザイド系類似薬
 3.ループ利尿薬
 4.K保持性利尿薬
 5.炭酸脱水素抑制薬
Q.禁煙補助薬(ニコチン置換薬)…[仲村秀俊]
R.抗胃食道逆流症薬…[松崎 達]
 1.胃酸分泌抑制薬(H2受容体阻害薬)
 2.胃酸分泌抑制薬(PPI)
 3.消化器運動機能改善薬(抗ドパミン薬)
S.高カロリー輸液…[山田稚子]
 1.高カロリー輸液用基本液
 2.高カロリー輸液用アミノ酸・糖・電解質液
T.経胃瘻/腸栄養剤…[清水三恵]

事項索引
薬品名索引

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