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書籍詳細

医のアート

医のアート

――ヒーラーへのアドバイス

Richard Colgan  著 / 塚原知樹 訳

A5判 182頁

定価(本体2,400円 + 税)

ISBN978-4-498-04868-3

2019年04月発行

在庫あり

 「よき医療者とはなにか」.この問いを軸に、アメリカ家庭・地域医療の医師が,主に若い医療者へのアドバイスという形で書き記した.単に医学の知識や技術を得るのではなく,癒し手としてどのように成長すべきか優しく語られた原著は,現地で研修医の必携書として上げる人もいるほどの好評を得ている.先人たちの教えを踏まえたうえで,現代に即した具体的かつ革新をついた提言の数々は,まさに今を生きる医療者のバイブルだ.

著者

Richard Colgan, MD

Professor
Family & Community Medicine
University of Maryland School of Medicine
経歴、業績、受賞歴などは下記URLを参照。
https://www.medschool.umaryland.edu/profiles/Colgan-Richard/



訳者略歴

塚原知樹(つかはら ともき)

腎臓内科医、ブロガー。
2005年に慶應義塾大学医学部を卒業、2008年に渡米。2011年にアリゲニー総合病院で内科レジデンシーを修了。2013年にアイオワ大学病院で腎臓内科フェローシップを修了(同年にFellows As Clinician Educatorsプログラムを修了)。2016年より、つくばセントラル病院腎臓内科。ブログ「SZD」(単著)、「僕たちのキセキ」(共著)を更新中。

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 ありがたいことに第1版『若い医師へのアドバイス:医のアートについて』が成功を収め、第2版を書く機会に恵まれた。そこで第1版を見直したところ、内容の多くは若い医師たちだけでなく、すべての年代の医療者たちにもあてはまることに気づいた。また、登場させる人物もひろく多様な中から選んだほうがよいと思われた。そこで、第2版は読者層をひろげて内容を大幅に加筆している。職種を問わず多くを共有している医療者は、お互いから学ぶことができるし、実際学んでいる。医師、看護師、歯科医師、薬剤師、ソーシャルワーカー、心理士、フィジシャン・アシスタント、ナース・プラクティショナーなど、みんながひとつの仲間であり、人類同胞に身を捧げる天職に召されている。この第2版は、臨床に携わるすべての人々(若い人も、そうでない人も)の心に残るものを目指して書かれた。

 第1版の読者からは、本書が実際は2冊の本がひとつになっているという指摘を受けた。私もそれに同感であり、それを際だたせるため第2版は全体を2部構成とした。第1部では、過去から今までの歴史を振り返って読者にインスピレーションを与えることに焦点をあてている。そして第2部では、今を生きる医療者の心に響くアドバイスをまとめ、第1版よりも内容を拡充している。

 登場させる人物に女性、西洋以外の医師、医師以外の職種をふくめたのも、第1版と第2版のおおきな違いだ。違いを簡潔に述べるなら:

 ・第1版では女性が登場しなかった。そこで、医療職でもっとも私たちに影響力を与えた女性たちについて調べたところ、一人の女性がずばぬけて際だっていた。彼女の名は、フローレンス・ナイチンゲール。医療者ならば誰もが、夜回りを欠かさず「ランプの貴婦人」の異名をとった彼女から多くを学べると考え、彼女の魅力的な生涯について加筆している。
 ・「建安の三神医」についての興味深く感銘を与える話を加筆している。古代中国医学の話ではあるが、現代の私たちにも役立つ内容だ。
 ・私たちは専門のセラピストではないが、しばしば悩み相談にのるので、医療者のカウンセラーとしての側面についても加筆している。
 ・オスラーについての章を拡充し、オスラー研究者でもある医師のチャールズ・S・ブライアンによる多くの鋭い観察を含めている。
 ・そのオスラーは、古代エジプトの医師イムホテプが「古代のなかで特筆すべき最初の医師」と書いている。今回加筆した彼の業績は、現在にも通用するものであり、読者にもきっと楽しんでもらえるだろう。

 診察室や病棟で患者が医師、看護師、コメディカルとやりとりしているとき、多くの場合に患者はストーリーを語ろうとしている。これらのストーリーをひきだし、その価値を理解する力は、患者の役に立つだけでなく、私たち自身にとっても計り知れないほど有用だ。そんな患者たちのストーリーを2つ加えたので、読んで楽しく勉強になれば幸いである。「現代の家族」ではジョーとエルズィーの間の特別な愛について、「意味ある人生」では遅発性ジスキネジアを患うテッドを生かしているのは何かについて、それぞれ紹介している。

 ごくふつうの医療者たちが、親切で思いやりにあふれた信じられないほど素晴らしいことを患者に行っている。そうした行為について聞くとき、私は思わず立ち止まってそれに思いを致さずにいられない。そこで、無名な医療者が何気なくしている親切や、相手を自分より大事に思う気持ちで日々やっていることも、あえて取り上げることにした。「謳われない英雄たち」は、無名だが自分の患者さんたちのことを思いやる医療者たちの偉大さについて書かれたものだ。

 また、第1版にも画像や詩などを転載したが、第2版にはルーク・フィルズ卿の描いた絵画『医師』の画像を加えた。この絵は医療の本質を表している芸術作品のなかでもっとも影響あるものの一つだが、これが何を伝えようとしているのかについて私が解説するあいだ、読者はまるで絵のなかで土の床の小屋でこの医師と一緒に立っているように感じることだろう。

米国メリーランド州ボルチモアにて
リチャード・コルガン




訳者序

水滴が石に孔をあけるのは、力ではなく継続によってである。
オウィディウス(紀元前43〜紀元後18頃)

 本書を手にとったあなたは医療職かもしれないし、そうでないかもしれない。医療職だとしても卒業前かもしれないし、熟練者かもしれない。しかしどんな立場であれ、医のアートへの関心が高まって内側から突き動かされた点では同じだろう。2013年に原著の第1版を手にした訳者がそうであったように。

 当時の訳者は、内科と腎臓内科の研修で成長を実感していた。オーダーなどの「お仕事」、問診やプレゼンの「技術」、診断・治療に至るための「思考過程」と数え切れないほどの「最新エビデンス」、患者や家族への「思いやり」、医学知識をわかりやすく「教えること」などを学ぶのはどれも楽しかった。

 しかしそんな訳者の頭にあったのは「それで、どうなのか?」という問いだった。研修後の進路を考えるべき時期にありながら、実存にかかわる本質的なこの問題を避けて通れずにいたのだ。そんな時に、参加していたClinician Educatorプログラムの推薦図書にあげられていたのが本書だったと記憶している。

 本書を読むことは、冒頭の引用句に触れるようなものだと思う。最先端の診療も時代が経てば滑稽なほど古くなり、間違っていることすらあるだろう。しかし、時代が変わっても、場所が違っても(わが国でよく知られた「雨だれ石を穿つ」は古代中国の『漢書』が元だそうだ)、ヒーラーが目指す変わらない何かがある。

 本書はそれを「アート」とよび、その会得を目指す者へのアドバイスを、歴史的な観点と実践的な観点の二部構成でまとめている。ここでいう「アート」は、「道」ともいえる。その後、紆余曲折を経ていまだ道遠い訳者だが、本書はずっと医局の本棚にいて、その「道」を照らすかがり火であり続けた。

 名札を見せて診察を始め(7章参照)、励ましの言葉で締めくくるよう努め(4章参照)、電子カルテに羅列されたデータだけをみる「スリップ・ドクター」(5章参照)にならぬよう戒める、などは本書の教えだ。「症例」ではなく「ひと」としての患者と関わって得た詩情を日誌に書いてやりがいの糧にしているのも、本書の影響が大きい(9章参照)。

 しかし本書はいわゆる「マニュアル」ではなく、「読みもの」に近い。ミュージカル『ラ・マンチャの男』の名場面やテート美術館の名画(いずれも11章参照)が適切な文脈で登場する医学書はあまりないだろう。高尚だが眠くなりがちな医学史や医療倫理なども、実臨床と教育に長年携わってきた原著者(1章参照)ならではの機智と臨場感に溢れ、味わい深く読むことができる。

 それらの意味で、本書は米国で読み集めてきた何百何千の論文にも劣らず価値があると思っている。ずっと訳したかったが、こうして実現したのは本当に「キセキ」としか言いようがない。時間と継続(力ではなく!)、そして何より多くの方々の助けがあって、訳書を完成させることができた。お世話になった方々に、この場を借りて心から感謝申し上げたい。

 まず、訳者を信じて中外医学社に推薦くださった、慶應義塾大学医学部医学教育統轄センターの門川俊明教授に感謝申し上げる。そして、企画から完成まで導いてくださった鈴木真美子様、笹形佑子様はじめ中外医学社の皆さまにも感謝申し上げる。人文科学の引用文献について資料提供と助言をくださった、早稲田大学法学部の塚原史教授にも感謝申し上げる。

 原著内の引用で既訳があるもののうちでそのまま使わせていただいた部分については、引用を快諾くださった関係諸氏に深く感謝申し上げる(そうでないものは訳者が訳した)。なお翻訳作業はおもに朝晩の通勤電車内でスマートフォンを用いて行われたので、そのような働き方を許してくれる現在の職場にも(家族にも!)深く感謝したい。

 本書がいつかどこかで、あなたの何かを豊かにしたなら、望外のよろこびである。

2019年1月
塚原知樹

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Part I 歴史上のヒーラーたちから学べること
 Chapter 1 はじめに
 Chapter 2 古代医学から
  イムホテプ
  ハンムラビ
  ヒポクラテス
  ヒポクラテスの誓い
  古代ギリシャの先人たち
 Chapter 3 漢方医学、中世医学から
  建安の三神医
  張仲景
  華佗
  董奉
  ラーゼス
  アヴィセンナ
  マイモニデス
  マイモニデスの誓いと祈り
 Chapter 4 20世紀から
  ナイチンゲール
  フロレンス・ナイチンゲールの看護覚書に学ぶケアのアート
  サンタ・フィロメナ
  ウィリアム・オスラー卿
  時間をきちんと管理せよ:防日区隔室
  天職を見つけよ:目指す理想に忠実に
  メンターを見つけよ:若者の友
  前向きであれ:「友人たちに惜しみなく与える王子」
  学び、教えよ:プラトンの馬車を乗りこなせ
  注意深く思いやれ:感傷を排し、実際に役に立つように
  フランシス・ウェルド・ピーバディ
  アルベルト・シュヴァイツァー
 Chapter 5 現代の巨人たち
  セオドア・E・ウッドワード
  エドムンド・D・ペレグリノ
  医の倫理原則
  ポール・ファーマー
  謳われない英雄たち
  患者との信頼関係を最優先すること
  時間という贈り物
  可塑性
  アクセス
  患者を思いやること

Part II 現代のヒーラーへの実践的なアドバイス
 Chapter 6 若い医療者のサバイバル・マニュアル
  プレゼンテーションの技術
  実践するほど診療の腕が上がる
  よいコミュニケーション
  カラマズー・コンセンサス・ステートメント
 Chapter 7 礼儀正しさ
  礼儀正しい医師が心がけている6つの習慣
  礼儀作法、25の掟(ヒーラーのためのダイジェスト版)
 Chapter 8 開業から得た教訓
  カウンセラーとしての医療者
  患者をSOAPしながらBATHEするには
  優れた診療を選ぶ
  医療過誤の定義
  主な医療訴訟
  心筋虚血の見逃し
  急性腹症の見逃し
  重症度についての説明不足
  訴訟弁護士からのアドバイス
 Chapter 9 医師の日誌
  人生における真実の詩を求めて
  回想の数々
  開業時代の詩情
  2度謝った患者
  現代の家族 
  意味ある人生
 Chapter 10 汝自身を癒せ
 Chapter 11 ヒーラーとは
  ヒーラーの人格
  ヒーラーと患者との関係
  ヒーラーの使命
  『医師』(ルーク・フィルズ卿作)
  ヒーラーの祈り

原著の文献に記載されたウェブサイトのうち2019年1月現在閲覧できないものについて、参考文献の場合は省略し、引用文献の場合は、可能なかぎり参考として関連サイトを付記した。

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執筆者一覧

Richard Colgan    著
塚原知樹 つくばセントラル病院腎臓内科 訳

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