序 文
循環器疾患における集中治療は当初Coronary Care Unitとして開設された.すなわち急性心筋梗塞症や狭心症などの虚血性心疾患を対象として集中治療を行う部門として発展してきた.国立循環器病研究センターでは1977年に開設され40年近くの歴史を有する.その間 急性心筋梗塞症に対しては冠動脈インターベンションによる再灌流療法が主流となり,院内死亡率は開設当時の20%から近年では数%へと劇的に減少した.さらに3つの大きな流れが近年顕著である.第一に,治療にスピードが求められるようになり,その活動は“院外へ”とひろがってきている.第二に,虚血性心疾患に限らず,心不全,動脈瘤などの血管疾患,重症不整脈など対象疾患が多様化し,Cardiovascular Care Unitへと変化してきた.第三に,重篤な症例に対しては特に,医師(内科・外科・放射線科),看護師,臨床工学技士など多職種による集学的治療(チーム医療)が重要な位置を占めるようになった.本書では,これらの変化にも対応した内容とした.
一方 時代を超えて普遍的なもの それは疾患に対する知識と理解(理論)である.本書では,必要な情報をコンパクトにまとめると共に,実践的なポイントについてもサイドメモやピットフォールとして解説を加え,理解の助けとなるように配慮した.
最後に本書が成るにあたり大勢の執筆者にご協力をいただいた.日常の診療で忙しいなか,依頼を引き受けていただいた各位に,この場を借りてお礼を申し上げたい.
2015年4月
国立循環器病研究センター心臓血管内科部門長 安田 聡