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書籍詳細

Annual Review呼吸器2015

Annual Review呼吸器2015

【編集】 / 永井 厚志  東京女子医科大学統括病院長 / 巽 浩一郎  千葉大学教授 / 桑野 和善  東京慈恵会医科大学教授

B5判 258頁

定価10,780円(本体9,800円 + 税)

ISBN978-4-498-13013-5

2015年01月発行

在庫なし

注目すべきトピックを厳選し,その分野の第一人者が内外の文献を踏まえて最新の進歩を展望する.定評あるシリーズの最新年度版である.

目 次


I.呼吸器系の生物学

1.呼吸器疾患におけるオートファジー
〈桑野和善 荒屋 潤 原 弘道〉
  オートファジーの分子機構
  呼吸器疾患におけるオートファジー
2.Oncostatin Mを介する肺線維化のメカニズム
〈十合晋作 長濱久美 高橋和久〉
  oncostatin Mと肺疾患
  呼吸器疾患におけるOSMとTGF-βの線維化病態形成における相違点
  OSMの線維化促進作用
3.がんにおけるエピジェネティック異常
〈岩間厚志〉
  がんにおけるDNAメチル化異常
  ヒストン修飾と転写制御
  エピジェネティック治療薬の現状
4.ペリオスチンと呼吸器疾患
〈出原賢治 有馬和彦 太田昭一郎〉
  気管支喘息のメディエーターとしてのペリオスチンの発見
  ペリオスチンの特徴
  間質性肺炎におけるペリオスチンの役割
  気管支喘息におけるバイオマーカーとしてのペリオスチンの有用性間質性肺炎におけるバイオマーカーとしてのペリオスチンの有用性
5.肺動脈性肺高血圧症における血管内皮間葉系細胞転換の関与
〈長岡鉄太郎〉
  上皮間葉系細胞転換と血管内皮間葉系細胞転換
  血管内皮間葉系細胞転換のmolecular mechanism
  TGF-βsuperfamilyと肺動脈性肺高血圧症
  肺高血圧症の血管病変と血管内皮間葉系細胞転換
6.癌細胞の耐性化における幹細胞の役割
〈牧 佑歩 三好新一郎 豊岡伸一〉
  殺細胞性抗癌剤と癌幹細胞
  放射線治療と幹細胞
  分子標的薬耐性と幹細胞
7.上皮間葉細胞形質転換(EMT)による肺癌細胞の耐性化
〈清家正博〉
  上皮間葉形質転換(epithelial to mesenchymal transition:EMT)癌の浸潤,転移におけるEMT
  抗癌剤および放射線療法耐性機構におけるEMT
  分子標的薬耐性機構におけるEMT
  EMT克服に向けた治療戦略
8.間歇的低酸素血症と肺血管の動態
〈永井恒志〉
  睡眠時無呼吸症候群における肺高血圧
  高血圧の発症メカニズム
9.樹状細胞の起源
〈樗木俊聡〉
  樹状細胞の分化系譜
  肺の樹状細胞


II.疾患の病因と病態

1.薬剤性間質性肺炎の原因遺伝子
〈萩原弘一〉
  エクソーム解析
  民族間頻度差の検討 Gene X
2.アレルギー疾患とGWAS
〈中山次久 広田朝光 玉利真由美〉
  ゲノム関連解析(genome-wide association study:GWAS)
  気管支喘息のGWAS
  アトピー性皮膚炎のGWAS
  吸入抗原への感作のGWAS
  詳細な臨床情報に基づくGWAS
  GWASの関連領域の機能解析
3.COPD病態とビタミンC
〈小池建吾〉
  現在の罹患率
  COPDの発症メカニズム
  ビタミンC
  COPDモデル動物
  ビタミンCとCOPD研究
4.PM2.5と呼吸器疾患
〈上田佳代 新田裕史〉
  粒子状物質の曝露とその健康影響発生のメカニズム
  疫学研究からみたPM2.5が呼吸器系に及ぼす影響
  今後の課題
5.CT/MRIを用いた呼吸機能イメージング
〈大野良治〉
  CTによる肺機能イメージング
  MRIによる肺機能イメージング
  PC-MRIによる肺血流評価
6.肺の損傷と発癌機序
〈谷口源太郎 折茂 彰〉
  喫煙と肺損傷と発癌
  慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)に合併した発癌
  ROSにより誘導される細胞障害と発癌
  慢性炎症や肺線維化の合併による癌化
7.呼吸器疾患におけるPTENの役割
〈柳 重久 坪内拡伸 中里雅光〉
  PTEN signaling pathway
  癌進展制御におけるPTENの役割
  PTEN制御機構
  肺癌とPTEN
  急性呼吸促迫症候群,肺線維症とPTEN
  その他の呼吸器疾患とPTEN
8.非小細胞肺癌におけるKeap1-Nrf2システム
〈光石陽一郎 本橋ほづみ〉
  Keap1-Nrf2システムの生理的機能
  がん細胞におけるKeap1-Nrf2システムの破綻
  肺扁平上皮癌でのKeap1-Nrf2システムの破綻
  肺腺癌でのKeap1-Nrf2システムの破綻
  恒常的に安定化したNrf2はがん細胞の生存と増殖を促進する
  Nrf2はがん遺伝子か?
  肺癌治療においてNrf2活性化剤とNrf2阻害剤のどちらが有益か?
9.閉塞性肺疾患とミクロビオーム
〈吉川裕喜 平松和史 門田淳一〉
  ミクロビオームとは
  閉塞性肺疾患におけるミクロビオーム


III.診断の進歩

1.シークエンス技術の発展と肺癌のdriver oncogene
〈冨樫庸介 西尾和人〉
  driver oncogeneとは
  次世代シークエンサー
  次世代シークエンサーの特徴とインパクト
  代表的な肺癌のdriver oncogene次世代シークエンサーによる近年の成果
  今後の展望
2.気管支鏡ナビゲーションシステムの進歩
〈浅野文祐〉
  navigational bronchoscopyとシステム
  navigational broncho-scopyの臨床成績
  navigational bronchoscopyの利点,問題点と今後
3.BIM遺伝子多型とEGFR-TKI耐性
〈矢野聖二 竹内伸司〉
  BIM遺伝子多型
  BIM多型に起因するEGFR-TKI抵抗性を克服する戦略
4.血中遊離DNAを用いた肺がん遺伝子診断
〈荒金尚子〉
  血漿遊離DNAとがん
  高感度検査法の開発に伴う新展開
  re-biopsyとの比較
  今後の展望
5.遺伝子診断ネットワークLC-SCRUM-Japanによる希少肺癌のスクリーニング
〈後藤功一 葉 清隆 松本慎吾〉
  RET融合遺伝子の発見
  RET融合遺伝子の頻度
  全国規模の遺伝子スクリーニング体制(LC-SCRUM-Japan)の構築
  LC-SCRUM-Japanにおける登録基準
  バンデタニブの医師主導治験(LURET study)
  LC-SCRUM-Japanの成果
  LC-SCRUM-Japanと企業治験との連携および,multiplex遺伝子解析の導入
6.遺伝性間質性肺疾患の診断と治療
〈瀬戸口靖弘〉
  分類
  診断と治療
7.肺癌におけるFDG-PET/CTの問題点
〈村上康二〉
  治療前診断におけるPET検査
  放射線治療計画におけるPET検査
  治療効果判定におけるPET検査
  再発診断におけるPET検査
8.呼吸器感染症と非感染症の画像による鑑別診断
〈坂井修二〉
  画像による鑑別ポイント
9.肺MAC症の治療反応性と菌遺伝子型タイピング
〈菊地利明〉
  M. aviumのVNTR解析
  樹形図分析
  ロジスティック回帰分析


IV.治療の進歩

1.がんの分子免疫療法
〈高 遼 高橋和久〉
  免疫療法の評価
  免疫チェックポイント分子を標的とした抗体療法
  その他開発中の分子免疫療法
2.次世代ALK阻害剤
〈赤松弘朗 山本信之〉
  ALK陽性肺癌におけるcrizotinibの現況
  次世代ALK阻害剤
3.間質性肺炎合併肺癌の手術とリスク因子
〈伊達洋至〉
  IPFに合併する肺癌
  手術後の急性増悪とは
  手術適応と予後術式選択と手術時の工夫
  術後急性増悪発症のリスク因子探索―多施設共同研究
4.肺アスペルギルス症の治療の進歩
〈?園貴弘 泉川公一〉
  侵襲性肺アスペルギルス症(invasive pulmonary aspergillosis: IPA)
  慢性肺アスペルギルス症(chronic pulmonary asper-gillosis)
  アゾール耐性A. fumigatus
  新規抗真菌薬
  今後の展望
5.新規LAMA/LABA/ICSによるCOPDの治療
〈桑平一郎〉
  長時間作用性抗コリン薬(LAMA)
  長時間作用性β2刺激薬(LABA)
  LAMA/LABA配合薬
  ICS/LABA配合薬
  薬剤の選択
6.新規ICS/LABA/LAMAによる気管支喘息の治療
〈平田一人 浅井一久〉
  喘息治療におけるICSとICS/LABA配合薬
  アセチルコリンとムスカリン受容体と抗コリン薬の作用
  気管支喘息における抗コリン薬の意義
  気管支喘息におけるICS/LABA/LAMAの臨床的意義
7.b-FGF胸腔内投与による肺の再生
〈吉増達也〉
  肺気腫の治療
  肺に対する再生医療の基礎研究
  肺気腫に対する再生医療の臨床試験
  basic-FGFによる肺の再生
  徐放化basic-FGF製剤の胸腔内投与
  動物実験による検証
  徐放化basic-FGF製剤の胸腔内投与の臨床試験における効果と問題点
8.気管支内バルブ留置によるCOPD治療の有効性
〈峯下昌道 宮澤輝臣〉
  緒言
  一方向弁によるBLVR


索 引

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 種々の疾患において臨床研究,病態解明が著しく進展し,疾患概念や疾患をどのような視点から捉えるべきかのフェノタイプ(表現型)に関する研究が注目されている.今日における医学・医療の発展は,ある疾患に対する臨床上のフェノタイプから始まり,症候,生理学的あるいは形態学的特徴によるフェノタイプへと進み,さらに分子生物学的検索によるフェノタイプへと細分化され,これらの研究成果から新たな治療法が開発され,その評価(効果)により臨床面でのフェノタイプが再び提示される循環を形成している.呼吸器領域でも例外ではなく,多くの疾患においてきめ細かい効果の優れた治療法の開発が精力的に進められている.我が国にあっては,高齢化社会に伴い感染症,腫瘍性疾患,炎症性疾患など多岐にわたる疾患の罹患数が飛躍的に増大し,これらの治療,管理には高度の臨床技術に加え,新たな予防・治療法の開発が切に求められている.この「Annual Review呼吸器2015」では,このような現状に鑑み,呼吸器領域における研究の中から重点項目につき焦点を当て,今日の,あるいは今後の疾患対策を如何にすれば良いかを考えるための基本的な情報を提供する意図で編纂したものである.
 本年も物理学の分野で日本人3名のノーベル受賞者が決定され,科学の歴史に残る業績として讃えられ喜ばしい次第であるが,基礎的な研究から人類に役立つまでの過程には如何に知恵と努力と歳月のかかることかを如実に感じさせるものでもあった.本書も,臨床実践されているものから,基礎的研究までと幅広い内容が簡潔に解りやすく掲載されているが,その背景には研究や臨床に関わった多くの方々の切れ目ない努力の結晶であると思えば,簡単に読み飛ばすことはできない.
 呼吸器疾患には多くの未解決な問題があり,臨床的に確実で著しい実効性のある治療法は限定されている.治療・管理の困難な疾患に直面している呼吸器科医にとって,現状の研究成果は十分に満足する段階とはいえない.本書に取り上げられた興味深い内容を理解し,これからの新たな視点に立った呼吸器学のさらなる研究開発を切に望むしだいである.
 
2014年12月
永井厚志

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執筆者一覧

【編集】  
永井 厚志  東京女子医科大学統括病院長  
巽 浩一郎  千葉大学教授  
桑野 和善  東京慈恵会医科大学教授  
高橋 和久  順天堂大学教授  
【著者】  
桑野和善  荒屋 潤  原 弘道  
十合晋作  長濱久美  高橋和久  
岩間厚志  出原賢治  有馬和彦  
太田昭一郎  長岡鉄太郎  牧 佑歩  
三好新一郎  豊岡伸一  清家正博  
永井恒志  樗木俊聡  萩原弘一  
中山次久  広田朝光  玉利真由美  
小池建吾  上田佳代  新田裕史  
大野良治  谷口源太郎  折茂 彰  
柳 重久  坪内拡伸  中里雅光  
光石陽一郎  本橋ほづみ  吉川裕喜  
平松和史  門田淳一  冨樫庸介  
西尾和人  浅野文祐  矢野聖二  
竹内伸司  荒金尚子  後藤功一  
葉 清隆  松本慎吾  瀬戸口靖弘  
村上康二  坂井修二  菊地利明  
高  遼  赤松弘朗  山本信之  
伊達洋至  高園貴弘  泉川公一  
桑平一郎  平田一人  浅井一久  
吉増達也  峯下昌道  宮澤輝臣  

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