ER・ICU診療を深める1 救急・集中治療医の頭の中 Ver.2
小尾口邦彦 著
A5判 418頁
定価4,840円(本体4,400円 + 税)
ISBN978-4-498-06669-4
2016年11月発行
在庫あり
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ER・ICU診療を深める1 救急・集中治療医の頭の中 Ver.2
小尾口邦彦 著
A5判 418頁
定価4,840円(本体4,400円 + 税)
ISBN978-4-498-06669-4
2016年11月発行
在庫あり
救急・集中治療の現場では,いかに素早く的確な対応ができるかがポイントとなる.急性
大動脈解離,大量出血,DIC,呼吸マネジメント.本書はどの書籍でも紹介されているコモンなテーマを取り上げて,どこにも書かれていなかった達人の思考過程を分かりやすく解説し,大好評を得た.改訂第2版では,近年の進歩も踏まえ,ネーザルハイフロー,経肺
圧など最新トピックスを大幅加筆.シンプルかつ奥深い,目からのウロコの一冊である.
改訂版によせて
ER・ICUは最高の学びの場であると感じます.さまざまな患者が訪れ,相当の医療資源を投入することが許され病名を追求し治療を開始できます.筆者は救急集中治療医としての駆け出しのころ,各科専門医から多くを教えてもらえました.スペシャリストから,初歩的なことのみならず教科書に書かれないコツまで得ることができるのです.非常に幸せな環境でした.
一方,各科専門医より感性を磨かなければいけない部分もあります.例えば,「急性大動脈解離」は心臓血管外科の担当分野です.しかしそれの非典型発症から急性大動脈解離を疑い追求する能力は専門医よりER医に要求されるものです.確率の高い疾患と,確率は少なくても見逃すと死や後遺障害につながる疾患を常に頭の中で想起・検討しながらスピード感をもって患者に向きあう姿勢が救急集中治療医に求められます.
こういった経験からえた筆者なりの方法論をまとめたくなり,2013年秋,本書の初版を出版する機会をえました.筆者のドタバタ経験集であり世に受け入れられるか不安がありましたが,幸い「本,読みました!!」と声をかけていただく機会が少なからずあり安堵しました.
初版の出版から3年がたちました.筆者は以前に増して,医療安全を追求することが何より大切であると思うようになりました.若手医師や看護師を指導する機会が増えたからかもしれません.改訂版においては,医療安全に寄与しうる記事を大幅に加筆しました.また,3年にも関わらず大きな変化がありました.例えば,呼吸関連分野をとってもネーザルハイフローが大スターとなり,一方,「自発呼吸の温存」が重症呼吸不全管理の要諦であったはずが「自発呼吸の害」がいわれるようになりました.筆者なりの切り口でアップデートしました.
初版で強調した「シンプルに考える」「イージーに考えない」メッセージに変わりはありません.読者に届くことを望みます.
平成28年11月
小尾口邦彦
初版の序
オッカムの剃刀(かみそり) Occam’s Razor「1つの原因は観察されるすべての事象の源」
ヒッカムの格言Hickham’s dictum 「どの患者も偶然に複数の疾患に罹患しうること」
「オッカムの剃刀」は,できる限り目の前でおこっていることを一元論で考えようとする方針です.
「ヒッカムの格言」は,偶然に複数の疾患にかかりうるため複数の原因追及をすべきという考えです.
筆者は,まずは「オッカムの剃刀」で考え抜いた後に,「ヒッカムの格言」があると信じています.
筆者がER・ICU医の駆け出しであったころ,難しい症例にあたったとき,「複雑に,複雑に」考えようとしました.
そして頭脳明晰な外科医S先生にいつもたしなめられました.
「難しい事象に当たった時こそ,シンプルに考えなければいけないんだよ.」
筆者は今,「シンプルに考える」ことの重要性を強く感じます.「シンプルに考えぬいた」むこうに「実は複雑なストーリーが隠されていた」世界があります.
一方で,
「シンプルに考える」≠「イージーに考える」です.
ICUに収容される患者には難しい病態が少なくありませんが,あまりに「イージーに診断・治療される」シーンをみかけることが少なくありません.血小板が減少しているからDICといった具合に.
本書における2大テーマは
・シンプルに考える
・イージーに考えない
です.
S先生は口が悪く,べらんめえ口調でしたが,シンプルに考えることの重要性を教えてくれたことを今非常に感謝し,またそのような出逢いがあった自身の幸運を感じます.
本書を通じて読者の皆さんに
「シンプルに考える」
「イージーに考えない」
メッセージが届くことを望みます.
平成25年10月
小尾口邦彦
目次
Theme 01 診断
Chapter 01 急性大動脈解離ハンターになろう
指導医は急性大動脈解離をどこで疑ったのか?
常に急性大動脈解離を頭の片隅におく
頭をやられた患者は血圧が高くてあたりまえ
急性大動脈解離診断の2大ツール
痛みのない急性大動脈解離 外傷による胸部大動脈損傷のメカニズム
壁損傷の違いによる病型 診断のポイント 治療
コラム:窒息による心肺停止
Chapter 02 脳と心臓の両方を同時にダウンさせる最強キラー くも膜下出血
たこつぼ型心筋症とくも膜下出血
コラム:嘔気・嘔吐の原因の覚え方
Chapter 03 妊娠反応検査
妊反の感度 妊反と健康保険 妊娠反応検査施行に患者の許可はいるのか?
Chapter 04 異所性妊娠は急死がありうる怖い疾患
異所性妊娠の怖さ 主訴「下痢」 ER業務は常にアンカリングとの戦い
病院間転送 トラブルを1人でかかえこまない
コラム:医療トラブルに遭遇したとき
Chapter 05 肺結核前編 画像提示
Chapter 06 肺結核後編 画像解説
肺結核の画像所見 肺結核疑い患者をみつけたら
Chapter 07 血液培養結果の解釈
臨床的に,判定が問題となることが圧倒的に多いCNSとは?
コラム:持続性菌血症
Chapter 08 低リン血症
低リン血症 低リン血症がおこりやすいor低リン血症の存在を疑う病態
低リン血症によりおこされる症状 リンが減少する原因 治療
Theme 02 外傷・輸血マネジメント
Chapter 01 重症外傷の大量出血マネジメントに強くなる
トラウマ パンスキャン(外傷時の全身CT撮影)
大量出血による血圧低下とカテコラミン
従来の外傷性大量出血に対しての輸血プロトコール
日本の血液製剤の使用指針 新しい「重症外傷による大量出血時の輸血方針」
普段の輸血基準を捨てる 血小板数検査も頻回に行う
輸血ルートの確保 危機的出血時の非常事態宣言
輸血部(血液検査)技師と相談しなければいけないこと
どれぐらい血液を確保するのか? 緊急時の適合血の選択
筆者施設の方針 低体温は死を招く
出庫直後の冷たい濃厚赤血球を急速注入!?
輸液・輸血温度マネージメントの実際 従来の血液加温装置
コラム:レンジャーなどの急速輸血・輸液加温装置がない状況では
Chapter 02 本当は怖い,本当に怖い輸血業務
ミスによる異型輸血(不適合異型輸血)は最大のスキャンダル
輸血実務を理解しよう 輸血Tips
Chapter 03 宗教的輸血拒否に関するガイドライン
エホバの証人の立場 18歳以上 自己決定能力がある場合
18歳以上 自己決定能力がない場合 家族は無輸血方針
15歳以上18歳未満 自己決定能力がある場合 家族は無輸血方針
15歳以上18歳未満 自己決定能力がない場合 家族は無輸血方針
15歳未満 家族は無輸血方針 病院側の対応における注意点
Chapter 04 ERでの破傷風予防
トキソイド 破傷風免疫グロブリン(TIG)
コラム:破傷風抗体迅速検査キット(Tetanus Quick Stick:TQS)
Chapter 05 頸椎カラーの装着法・バックボードのはずし方
頸椎カラー 頸椎カラーのはめ方(準備編)
頸椎カラーのはめ方 (その[1]) 頸椎カラーのはめ方(その[2])
バックボードのはずし方
Theme 03 循環マネジメント
Chapter 01 うっ血性心不全の治療
Chapter 02 急性心筋梗塞とアスピリン
アスピリンのいろいろ
Chapter 03 院内心肺停止とPEA
4つの心停止波形 院内心肺停止についての論文
院外心肺停止についての論文 PEAの理解を深めよう! PEAの予後
Chapter 04 心肺蘇生とアドレナリン
筆者がアドレナリンの“強さ・怖さ”を感じたエピソード
[復習]心肺蘇生においてアドレナリンを使う理由
アドレナリンは薬か毒か?
AHA蘇生ガイドライン2015アドレナリンの項目における変更点 まとめ
コラム:傾向スコアマッチング法(propensity score matching)に死角はな
いのか?
Chapter 05 脳低温療法
脳低温療法の目的 冷水輸液のコツ 強い意志をもって体温を下げる
「低体温を維持することが重要」ではなく「高体温にしないことが重要」?
蘇生後脳症に対する脳低温療法マニュアル
コラム:重症熱中症にも冷水輸液は有用
Theme 04 誤解の多い酸素療法
Chapter 01 誤解の多い酸素療法(1)ネブライザー付き酸素吸入装置
ネブライザー付き酸素吸入装置 トータル流量早見表の意味は?
ネブライザー付き酸素吸入装置のキーワードは30L /分
ネブライザー付き酸素吸入装置のまとめ
ではネブライザー付き酸素吸入装置に意味がないかというと……
シンプルマスクのグッドパフォーマンス? ダイソンはベンチュリーが大好き
Chapter 02 誤解の多い酸素療法(2)リザーバー付きマスク177
リザーバー付きマスクの原理 リザーバーをきちんと伸縮させるためには
再呼吸式と非再呼吸式 マスクの呼気口形状の違いにも理由がある
Chapter 03 誤解の多い酸素療法(3)その能力と限界を見極めたい ネーザルハイフ
ローⓇ
筆者の邪推 HFTの構造 加温&加湿の重要性
MR850(F & P社)の温度表示
HFTは他酸素療法に比して設定酸素濃度の信頼性が高い
HFTの効果 解剖学的死腔を理解するために(前編)
解剖学的死腔を理解するために(後編) 誤解を招きやすいCPAP “設定”
HFT使用の実際 HFTの設定 筆者がHFTに感じる危惧
吸収性無気肺とは?
Chapter 04 誤解の多い酸素療法(4) オキシマスクTM
Chapter 05 誤解の多い酸素療法(5) バッグバルブマスクはシンプルマスクの代わり
とならず,ましてリザーバー付きマスクの代わりとはならない
バッグバルブマスク(Bag Valve Mask:BVM)
インテーク/リザーバーバルブ リアル心肺蘇生は理想通りにはいかない!!
自己膨張式バッグの構造が複雑であるが故のトラブル
肺保護換気的ではない自己膨張式バッグ
圧開放弁(リリーフバルブ)付き自己膨張式バッグは諸刃の剣
自発呼吸の評価・自発呼吸があるときの使用
自己膨張式バッグのウォーミングアップ
バッグバルブマスクはシンプルマスクの代わりとならず,ましてリザーバー付き
マスクの代わりとはならない
なぜ「フリーフロー酸素が流れない特性」があるのか?
自己膨張式バッグのメリット
Chapter 06 誤解の多い酸素療法(6) ジャクソンリース回路の再呼吸を考える
弁 バッグ加圧時の酸素の向かう方向
設定3への自己膨張型バッグによる対応は?
ジャクソンリース回路を用いたマスク換気の最大の敵はリーク
再呼吸議論の前振り ジャクソンリース回路における再呼吸議論
理想的な調節換気時 再呼吸を防ぐためには休止時間が重要
自発呼吸患者の換気時 休止時間がないときは高酸素流量が必要
単純な構造にも理屈があり… 再呼吸がないか実際に確認するために
Theme 05 人工呼吸マネジメント
Chapter 01 肺保護換気とは?
コラム医学のあちらこちらにあるラプラスの法則
Chapter 02 SIMVはA/Cより優れた呼吸モード?
SpO2は酸素需給バランスを反映するか?
Chapter 03 まずはVCV(従量式換気)の理解から〜人工呼吸器グラフィックモニ
ターも理解しよう〜
VCV(従量式換気) 症例
要注意!!“山がひとつしかないVCV気道内圧波形”
Chapter 04 人工呼吸の吸気だけでなく呼気に関心をもとう
症例 VCVモードグラフィック波形チェックポイント
人工呼吸中のトラブルを考えるとき,まずやるべきことは
Chapter 05 PCV(従圧式換気)とは
筆者がPCVの強さと弱さを実感した症例 その後の経過
吸気時間の設定 PCVモードグラフィック波形チェックポイント
Chapter 06 PSVとPCVの違いを説明できるようになる
ターミネーション設定変更 PSVの呼吸“サポート”量
Chapter 07 APRV (Airway Pressure Release Ventilation) を使いこなすために
なぜAPRV? 高いPEEPのメリットは? APRV設定の実際
高圧相PHigh(圧) THigh(時間) 低圧相PLow(圧) TLow(時間)
ドレーゲル社APRV設定
APRVスタート時は特にデリケートな管理が必要
APRV使用中は,気胸は必発ぐらいの気持ちで監視 APRVにふく逆風
Chapter 08 ARDSにまつわるホットなトピック「経肺圧」を理解する
“経肺圧”概念のブレイク 自発呼吸の害 筋弛緩薬の使用
重症ARDS管理において筋弛緩薬を使用すべきか?
日本におけるARDSに対しての筋弛緩薬使用の問題点は?
経肺圧を用いれば,禁断のプラトー圧30cm H2O突破もあり?
コラム:ARDS雑感
コラム:人工呼吸器講習会受講のすすめ
Theme 06 DICマネジメント
Chapter 01 DIC診断と治療
厚生省DIC診断基準 急性期DIC診断基準の登場 さよならSIRS
DIC治療の2通りの考え DICの原因は?
日本版敗血症ガイドライン2016ドラフト版における「DIC診断と治療」
コラム世界の“DICエキスパート”のDIC治療方針
コラム欧米と日本のDIC死亡率 ヘパリンとフサンⓇ・FOYⓇとアンチトロンビン製剤
Chapter 02 それって本当にDIC?
愚直なルールが大切 血小板減少をみたときの思考パターンをつくる
大量出血・輸血後希釈・低体温による凝固止血障害(≠外傷性DIC)
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT) 血栓性血小板減少症(TTP)
ADAMTS13 血球貪食症候群(HPS)
2009年に早期診断のために提案された診断クライテリア
血管内大細胞型B細胞性リンパ腫(IVLBCL) 輸血後紫斑病(PTP)
ヘパリンコーティングカテーテルの今後
コラム:血小板輸血
Theme 07 死亡診断・死体検案
Chapter 01 誤解の多い死亡診断・死体検案1
Chapter 02 誤解の多い死亡診断・死体検案2
医師法第20・21条をめぐる混乱
自然な死を迎えた患者が搬送されたが担当医でないときどうする?
ある日を境に警察・役所の対応が変わった!!
「異状死体には全て死体検案書が交付され,逆に死体検案書が交付された死体は全
て異状死体である.」という誤解
Chapter 03 はっきりしないことが多い心肺停止搬送患者の死体検案書記入
心肺停止搬送患者の死亡の種類・死亡原因をどうする?
死亡診断書・死体検案書の書き直し 死体検案にまつわる用語 後頭下穿刺
Theme 08 しってるつもり
Chapter 01 アセトアミノフェン前編 天使の顔
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の問題点
アセトアミノフェンの天使の顔 アセトアミノフェンの使用量
トラムセット®もアセトアミノフェン配合剤
アセトアミノフェン静注薬のおかげで……
アスピリン喘息に対しても使用可能(なことが多い)
Chapter 02 アセトアミノフェン後編 悪魔の顔
胃洗浄のレビュー 日本においては
Chapter 03 アルコール依存症とアルコール性ケトアシドーシス
AKAの治療 AKAを見逃さないために
ウェルニッケ脳症へのビタミンB1投与量
Chapter 04 カプノメーター(呼気終末二酸化炭素濃度測定装置・ETCO2モニター)
この実験からわかること エアウェイ管理にカプノメーターが重要
カプノメーターの基本波形
索引
執筆者一覧
小尾口邦彦 大津市民病院救急診療科 部長 著
株式会社中外医学社 〒162-0805 東京都新宿区矢来町62 TEL 03-3268-2701/FAX 03-3268-2722
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