ライトノベルでざっくり学べる感染病原体入門
ぼくのかわいい病原体
夏 緑 著
B6判 212頁
定価1,540円(本体1,400円 + 税)
ISBN978-4-498-00504-4
2011年06月発行
在庫なし
ライトノベルでざっくり学べる感染病原体入門
ぼくのかわいい病原体
夏 緑 著
B6判 212頁
定価1,540円(本体1,400円 + 税)
ISBN978-4-498-00504-4
2011年06月発行
在庫なし
読んで学べる基礎医学系ライトノベル!
なんの因果か、あらゆる病原体が美少女に見える能力が発現してしまった医学部一年生の白兎理央[はくと りお]。大腸菌のエシュリーやラクトバシラス属(乳酸菌)のラクティ、アデノウイルスのアディなどなど、所かまわず現れる病原体の女の子たちに囲まれた白兎の生活は果たしてどうなってしまうのか……!? 『獣医ドリトル』原作者の夏緑がおくる、病原体についてざっくり学べる世界初(たぶん)の基礎医学系ライトノベル!
著者からのコメント
大学に入って第二外国語を勉強しはじめた皆様は、たぶんこう感じたことがあるはずです。
「今まで英語が苦手だったけれど、第二外国語でドイツ語やフランス語をやると、なぜか英語もわかるようになった気がする」
それは、まったく未知なひとつの言語をただ丸暗記するより、似通った言語を体系立てたほうが理解しやすいからです。
病原体も同じです。はじめて習う病原体の特徴や症例について、ひとつひとつをただ丸暗記しようとしても、頭の中に入ってきません。
しかし、病原体を分類すると、その体系が見えてきます。大きくは、細菌・真菌・原虫・ウイルス。たとえばウイルスならエンベロープがあるか無いかで、感染方法も効果的な消毒方法も変わってきます。
それらの体系的なちがいを直感的に理解する方法が、昔ながらの擬人化と寓話による疑似体験の手法です。本書は「ライトノベルでざっくり学べる感染病原体入門」という副題のとおり、手軽に読めるライトノベルの物語による疑似体験をつうじて、感染病原体の体系をまずはざっくりと頭の中にインプリントしていただくための本です。
本書では、さまざまな感染病原体が脈絡無く登場するのではなく、エピソードごとに細菌・真菌・原虫・ウイルスと、登場する病原体を分けています。それぞれのエピソードと連動して、大きな分類とそれぞれの病原体の特徴が記憶にすりこまれていく仕組みです。
病原体をただ紹介するのではなく、体系として理解しやすくするため、菌叢(フロラ)の概念を強く出しています。それが、主人公「宿主」をめぐる病原体美少女たちの攻防につながっていきます。
また観点が偏らないよう、感染病原体の毒性だけでなく、メリットに関しても紹介しました。これは実際の患者さんに投薬するとき、投薬のリスク分岐を考える際に必要になる概念だからです。本書の主人公はつぎつぎに押しかける感染病原体に辟易しながらも、最後は大腸菌をはじめとする彼女らに対し「ぼくのかわいい病原体」と感じます。彼らのあいだにどんな事件があってその境地へ行きつくのか、どうぞお気軽に手にとってお確かめください。
病原体がなぜかわいい美少女になったのか……ですが、現在研究室で微生物をあつかわれている方はすでに、「彼女」(F因子が入ってる人は「彼」)たちの気まぐれに毎日振り回されていると思います。培地をインキュベーターに入れるとき、大腸菌がヘソを曲げると生えてきてくれないという代々つたわる言い伝えを守り、「ぼくのかわいい大腸菌、どうか生えてきてね」と祈るような気持ちでシャーレにささやくのは、微生物教室では定番の光景ですね。そこまで腰を低くしても生えてきてくれない小悪魔でツンデレな彼女たちに振りまわされた日々を、この本でなつかしんでください。
そして、これから医学を学んで行かれる新入生の皆様は、分厚い教科書を読むまえのウォーミングアップとして、この本を読んでください。ざっくりと頭の中にだいたいの体系が入ってから勉強すると、格段に理解度がUPするはずです。
本書の病原体たちのイラストは、トレーディングカード方式にしました。今回は残念ながら、登場した病原体全員はカードにできませんでしたし、そもそも本文に登場していない病原体もまだまだたくさんいるのですが、特徴的でかわいめの病原体をセレクトしてみました。コピーして色を塗って単語帳のように使うのもよし。病原体のデザインはそれぞれの特徴を暗喩しつつ、同一のイラストレーターさんのイラストで統一感をもって仕上げてあるので、それぞれの特性のちがいなどがビジュアルで直感的に頭に入ると思います。
また抗生物質カードや抗ウイルス薬カードを自分で作って、本気でトレカにして遊んでも楽しいかもです。パラメータは抗菌スペクトルと投薬量、もっとシビアに薬価も良し。ペニシリウム+製薬カードでペニシリンにクラスチェンジ、ワイルドカードな放線菌、アデノウイルスと黄色ブドウ球菌の鼻風邪デッキ、など攻防戦のストラテジーは多種多様。
この本で感染病原体入門の敷居をぐっと下げて身近に感じてもらい、これから本物の病原体と戦って患者さんたちを守っていく皆様への一助となりますように。
2011年5月 夏緑