新 臨床耳鼻咽喉科学
喉頭・気管・気管支・食道・音声言語
加我君孝 他編著
B5判 358頁
定価25,300円(本体23,000円 + 税)
ISBN978-4-498-06240-5
2002年12月発行
在庫なし
トップページ > 耳鼻咽頭科・頭頸部外科 > 喉頭・気管・気管支・食道・音声言語
新 臨床耳鼻咽喉科学
喉頭・気管・気管支・食道・音声言語
加我君孝 他編著
B5判 358頁
定価25,300円(本体23,000円 + 税)
ISBN978-4-498-06240-5
2002年12月発行
在庫なし
今日の耳鼻咽喉科,頭頸部科の臨床に必要とされる知識を善5冊に集大成した,臨床家のための新しいテキストである.
「各論」は疾患編は本邦で現在見られる疾患,稀ではあるが重要な疾患に重点をおいて,その病態と最新の診断・検査・治療を解説し,「基本手術手技」は主に東大系の著者らの行っている手技を中心に,現在行われている手技のポイント,コツを図解により解説したものである.
序
「臨床耳鼻咽喉科学」が上梓されてから4半世紀がたったことになる.この25年の間の科学技術の変化は目を見張るものがある.特に情報科学の進歩とそれに伴う計算機の発展と普及は,第二の産業革命といってもよい社会の変化をもたらした.それに呼応して耳鼻咽喉科学も大きく変化した.従来の(古典的な)耳,鼻,喉の病気を扱うTriologyといわれる臨床医学から頭頸部外科およびコミュニケーション障害医学という2つの大きな柱をもつ臨床医学に発展したのである.
頭頸部外科は単に病巣を切除するだけでなく,機能の回復を目的とした機能外科的な色彩が強い.形成外科的な手法の導入により,頭頸部腫瘍切除術後の機能再建,音声機能の改善を目的とした音声外科などが日常的に行われている.また,情報処理技術の発展に伴った新しい画像診断技術の実用化がこの領域の発展を加速した.今回完成した第4巻では,そのような背景で喉頭科学,気管・気管支科学,食道科学が第1部として執筆されている.この領域は呼吸と摂食嚥下という生命維持に関連したきわめて重要な機能に関与しているのである.
今日の耳鼻咽喉科学のもう一つの柱として,コミュニケーション障害を対象とした医学である.第2部として音声言語についてかなりのペ ージが割かれている.コミュニケーションが我々の生活と文化に如何に大きな意味をもっているかは様々な方面で論じられている.コミュニケーションの手段として最も正確で,かつ能率が良いのは話し言葉によるものであることは論を待たない.また,話し言葉は人間だけがもつ知的な行動である.言い換えれば話し言葉を操ることは人間の証であるといえよう.第1部で取り上げた生命維持に関連した領域がきわめて大切である一方,人間らしい生命を保つためには第2部で取り上げられている領域は大層重要である.話し言葉によるコミュニケーションの機構と,その病態を理解することも本巻の目的である.耳鼻咽喉科医は音声障害には比較的なじみがあるが,言語障害についてはとかく敬遠しがちである.しかし高次機能としての言語活動とその障害は我々耳鼻咽喉科医の守備範囲であり,また耳鼻咽喉科医こそ,それを扱う専門職であることを,この巻を手にして再認識していただければ,編者としては望外の喜びである.
2002年10月
新美成二
目 次
第1部 喉頭・気管・気管支・食道
第1章 喉 頭
I.診療法・検査法・画像診断
I−1.視診・触診 〈森 浩一〉
I−2.検 査 〈森 浩一〉
A.喉頭観察法の歴史
B.検査手技
1)間接喉頭鏡検査
2)喉頭直達鏡検査
3)喉頭用硬性内視鏡(側視鏡)検査
4)喉頭用撓性内視鏡(喉頭ファイバースコープ・喉頭電子内視鏡)
C.声帯振動の観察
1)喉頭ストロボスコピー
2)高速度撮影
D.所見の記録と保存
1)写真撮影
2)映画・ビデオ
3)音声の録音
I−3.喉頭の画像診断 〈熊川孝三〉
A.喉頭X線検査
1)単純撮影法
2)喉頭高圧撮影法
3)喉頭低圧撮影法
4)デジタル撮影法
5)喉頭断層撮影法
B.喉頭のCT検査
C.喉頭のMRI検査
D.喉頭の超音波検査
1)Bモード法
2)細径高周波プローブ法
3)ultrasound laryngography
I−4.喉頭筋電図検査 〈岩本容武〉
A.神経,筋生理学的記録法
B.筋電計と導出電極
1)表面電極
2)組織内電極
C.筋電図信号処理法
D.内喉頭筋活動電位導出法
1)輪状甲状筋
2)甲状披裂筋
3)披裂間筋
4)外側輪状披裂筋
5)後輪状披裂筋
E.筋電図の評価
1)正常筋電図
2)異常筋電図
F.筋電図検査の適応
1)声帯運動障害の診断
2)神経筋疾患の診断
3)痙攣性発声障害の評価とモニター
4)発声訓練のバイオフィードバックへの応用
G.誘発筋電図
II.喉頭の疾患
II−1.喉頭の炎症 〈角田晃一〉
A.急性炎症
B.慢性炎症
1)慢性喉頭炎
2)声帯結節
3)声帯ポリープ
4)ポリープ様声帯
5)声帯嚢胞
6)声帯溝症
II−2.喉頭麻痺 〈角田晃一〉
A.喉頭の神経支配
B.喉頭の神経の走行
C.病 態
D.今後の展望
II−3.喉頭外傷 〈田山二朗〉
A.新鮮喉頭外傷
B.陳旧性瘢痕性外傷
II−4.喉頭先天性疾患 〈小崎寛子〉
A.小児の喉頭の特徴
B.小児喉頭検査の実際
C.症状と診断
D.各 論
1)喉頭脆弱症
2)声門下狭窄
3)喉頭麻痺
4)喉頭裂・気管喉頭裂
5)喉頭横隔膜症
6)嚢胞
7)喉頭瘤・喉頭室脱出症
8)新生物
II−5.喉頭狭窄 〈角田晃一〉
A.原因・症状・診断・治療
B.参考例
III.呼吸困難と喉頭 〈肥後隆三郎〉
A.呼吸困難とは
B.検 査
1)問診・視診・聴診
2)血液検査
3)呼吸機能検査
4)X線検査
5)内視鏡検査
C.鑑別診断
1)上気道病変
2)喉頭病変
3)気管,肺疾患
4)循環器疾患
5)中枢性疾患・神経,筋疾患
6)その他
D.呼吸困難の管理
1)気道の確保
2)気管内挿管
3)気管切開
4)人工呼吸器
第2章 気管・気管支
I.検査法
A.気管,気管支内視鏡 〈田山二朗〉
1)内視鏡の種類
2)検査の実際
B.画像診断 〈野澤久美子,板井悠二〉
1)X線検査
2)CT(computed tomography)
3)MRI(magnetic resonance imaging)
4)超音波検査
II.気管,気管支の疾患
A.炎 症 〈寺本信嗣,松瀬 健〉
1)急性炎症
2)慢性炎症
B.腫 瘍 〈中川 健〉
a.良性腫瘍
1)上皮性腫瘍
2)非上皮性腫瘍
b.悪性腫瘍
1)気管の腫瘍
2)肺 癌
3)その他の腫瘍
C.気管支喘息 〈森田 寛〉
D.気管,気管支の先天性疾患 〈橋都浩平〉
1)診断法
2)気管無形成
3)喉頭気管食道裂(LTEC)
4)声門下狭窄症
5)気管狭窄症
6)血管輪
7)気管軟化症
E.異 物 〈水野正浩〉
第3章 食道
I.検査法
A.食道鏡 〈田山二朗〉
1)撓性食道鏡
2)硬性食道鏡(直達食道鏡)
B.画像診断 〈横山正人〉
1)X線検査
2)CT
3)MRI
4)超音波検査
C.嚥下機能検査 〈横山正人〉
1)食道透視
2)嚥下圧
II.食道の疾患
A.炎 症 〈山口宏也〉
1)腐食性食道炎
2)逆流性食道炎
B.腫 瘍 〈吉田 操〉
a.良性腫瘍
1)上皮性良性腫瘍
2)食道の間葉系腫瘍
b.悪性腫瘍
1)食道癌の発生,発育,進展
2)食道の早期癌と進行癌
3)食道癌の病型分類
4)特殊型食道癌
5)腺 癌
6)治療成績に影響する画像所見
C.食道の先天性疾患 〈橋都浩平〉
1)食道閉鎖症
2)食道狭窄症
3)食道重複症
4)食道憩室
D.食道静脈瘤 〈手塚克彦〉
E.外傷・食道狭窄 〈手塚克彦〉
1)外 傷
2)食道異物
3)食道狭窄
4)噴門部アカラジア
5)輪状咽頭筋アカラジア
F.機能性疾患 〈手塚克彦〉
第2部 音声言語
第1章 音声障害と言語障害 〈新美成二〉
A.コミュニケーションと音声言語
B.言語障害(狭義)
C.構音障害
1)器質的(性)構音障害
2)運動障害性構音障害
3)機能的(性)構音障害
D.音声障害
1)器質的(性)音声障害
2)機能的(性)音声障害
3)心因性音声障害
第2章 音声障害
I.検査法 〈熊田政信〉
A.音声障害と検査法の意義
B.話声位と声域
1)概 論
2)方法論
3)測定値
4)注意点
C.音質の検査
1)概 論
2)聴覚心理学的評価:GRBAS尺度
3)音響分析
D.最長発声持続時間
1)概 論
2)方法論
3)測定値
4)注意点
E.声帯振動の観察法:ストロボスコピー
1)概 論
2)方法論
3)観察事項
4)注意点
F.喉頭筋電図
1)概 論
2)方法論
3)測定値
4)注意点
G.空気力学的検査
1)概 論
2)方法論
3)測定値
4)注意点
II.音声障害をきたす疾患
II−1.概 説 〈牛嶋達次郎〉
A.音声障害と発声障害
1)音声障害の定義
2)発声障害とは
B.音声障害の分類
1)分類の例と考え方
2)器質的音声障害と全身疾患
3)機能的音声障害に関する新しい考え方
4)声の老化
5)年齢,性別からみた音声障害の種類
C.音声所見の特徴のみで診断の容易な疾患と慎重さが必要な疾患
1)問診時で診断の見当が容易につく音声障害
2)音声所見が類似していても安易に即断してはいけない音声障害
II−2.器質的音声障害
A.喉頭の部分的な病変によるもの
1)急性喉頭炎(出血性声帯炎・急性声門下浮腫を含む) 〈渡辺剛士,田山二朗〉
2)慢性喉頭炎 (学童嗄声・浮腫性声帯炎を含む) 〈渡辺剛士,田山二朗〉
3)特殊な喉頭炎 (喉頭結核・喉頭梅毒) 〈渡辺剛士,田山二朗〉
4)声帯ポリープ(別名:喉頭ポリープ) 〈渡辺剛士,田山二朗〉
5)ポリープ様声帯(別名:Reinkeの浮腫) 〈渡辺剛士,田山二朗〉
6)声帯結節(別名:謡人結節) 〈渡辺剛士,田山二朗〉
7)竹節状声帯 〈内藤 雪〉
8)喉頭癌(声門癌) 〈朝陰孝宏〉
9)喉頭白板症 〈朝陰孝宏〉
10)その他の喉頭腫瘍 〈朝陰孝宏〉
11)喉頭外傷 〈横山正人〉
12)声帯嚢胞 〈松永 敦〉
13)声帯溝症 〈松永 敦〉
14)喉頭アミロイドーシス 〈三枝英人〉
15)リウマチ性疾患における被裂関節炎と反回神経麻痺 〈内藤 雪〉
B.喉頭の神経,筋疾患によるもの
1)反回神経麻痺(別名:喉頭神経麻痺) 〈石井甲介〉
2)混合性喉頭麻痺 〈石井甲介〉
3)重症筋無力症 〈三枝英人〉
4)筋ジストロフィ 〈三枝英人〉
5)Parkinson病 〈三枝英人〉
C.喉頭の全体的な病変によるもの
1)喉頭形成不全 〈角田晃一〉
2)内分泌機能異常 〈牛嶋達次郎〉
II−3.機能的音声障害
A.心因の関与や情緒的要因によるもの(典型的な機能的音声障害) 〈牛嶋達次郎〉
1)心因性失声症(別名:ヒステリー性失声症)
2)音声衰弱症
3)ピッチ障害(うら声発声)
4)仮声帯発声
5)過緊張性発声障害
6)狭義の変声障害(別名:遷延性変声)
B.特殊な機能的音声障害 〈熊田政信〉
1)歌声障害
2)老人性発声障害
C.痙攣性発声障害 〈小林武夫〉
1)痙攣性発声障害とは
2)痙攣性発声障害の治療
3)痙攣性発声障害患者の抱える問題
II−4.音声障害の治療 〈山口宏也〉
A.音声障害の薬物療法
1)薬物療法の目的
2)投与方法
3)治療薬
B.音声治療
1)音声障害症例への取り組み方
2)音声治療の目的
3)音声治療を行う環境
4)病歴の聴取
5)喉頭の観察
6)カウンセリング
7)音声訓練
C.音声外科
1)喉頭へのアプローチの方法
2)経口的(内視鏡的)アプローチ
3)経皮的アプローチ
第3章 言語障害
I.音声言語生成のモデル 〈本多清志〉
A.概 要
B.音声言語生成の思考過程
1)思考過程の形式モデル
2)思考と言語のモデル
C.音声言語生成の言語学的過程
1)形式的な言語音生成過程のモデル
2)並列階層的な言語音生成過程のモデル
3)音節の構成要素のモデル
4)音韻処理から音声生成へ
D.音声言語生成の生理学的過程
1)音声言語中枢のモデル
2)音声生成と音声知覚の神経回路
3)発話の運動制御モデル
4)発声発話器官の機能モデル
E.音声言語生成の音響学的過程
1)音源フィルター理論
2)声道の音響現象
3)母音生成の音響学的特性
4)子音生成の音響学的特性
II.言語障害
II−1.思考過程の障害
A.精神医学と言語:症状としての言語に関する一考察 〈関根義夫〉
1)症例A
2)症例B
3)症例C
B.精神発達遅滞と言語 〈田中美郷〉
1)「精神(発達)遅滞」について
2)精神(発達)遅滞児の言語
3)言語発達の経過と予後
4)対 策
II−2.言語過程の障害
A.失語症 〈杉下守弘〉
1)失語の定義
2)失語の分類
3)実際のテスト
4)失語と言語優位半球
5)古典的分類による失語の各臨床型
B.言語発達遅滞 〈阿部雅子〉
1)発症要因別にみた言語発達遅滞の特徴
2)言語発達遅滞の検査と治療
II−3.生理学的過程の障害
A.器質的構音障害
1)口蓋裂による言語障害 〈阿部雅子〉
2)その他の器質的構音障害 〈熊田政信〉
B.機能性構音障害 〈船山美奈子〉
1)機能性構音障害とは
2)小児の構音障害
C.聴覚障害による構音障害 〈阿部雅子〉
1)言語音の音響的特徴と聴こえの関係
2)難聴児の構音の問題
3)構音検査
4)構音訓練
D.運動障害性構音障害 dysarthria:神経,筋疾患と構音障害 〈石毛美代子〉
1)運動障害性構音障害のタイプ
2)検査および診断
3)治 療
E.全身疾患と構音障害 〈熊田政信〉
1)発達の段階での適切な構音獲得の障害を招くもの
2)いったん獲得された構音を障害するもの
II−4.吃 音 〈森山晴之〉
A.吃音の症状
1)言語症状
2)言語症状以外の吃音症状
3)吃音現象
B.定 義
C.原 因
D.発吃年齢,吃音者の数
1)発吃年齢
2)吃音者の数
3)性 差
4)年 齢
5)家族的背景
6)併発疾患
E.吃音の進展
F.自然治癒
G.検査・評価
1)必要な情報
2)言語検査
3)吃音の評価
H.治 療
1)臨床の流れ
2)訓練の適応
3)環境調整
4)間接的言語訓練
5)直接的訓練
6)相談面接
索 引
執筆者一覧
加我君孝 他編著
株式会社中外医学社 〒162-0805 東京都新宿区矢来町62 TEL 03-3268-2701/FAX 03-3268-2722
Copyright (C) CHUGAI-IGAKUSHA. All rights reserved.