序
MRIの出現により医学全体の診断学の体系が大きく変貌しつつある.整形外科領域においては,外来での初診の後,まず単純X線を撮影し,その後に必要に応じ入院の上諸検査を行うことが多かった.しかし,現在では単純X線の後,引き続き外来でMRIを行うということが多くなってきている.特に疾患が脊椎の炎症か腫瘍か,椎間板ヘルニアか脊髄腫瘍かなどの場合には無侵襲にさしたる時間もかからずに画像診断可能であり,既存のミエログラフィーやディスコグラフィーはむしろMRIの確認のために行うことすらあるようになってしまった.さらに整形外科領域では静止器官を扱うことが多く,骨軟部腫瘍・各種骨病変・軟骨病変・軟部組織病変とその応用は広がりつつあるのみである.
CTが出現した時,特に脊椎,脊髄の診断は一躍進歩を遂げた.しかし,CTによる画像はreconstructionによる矢状断も可能ではあったが,原則として,あくまでも横断面であった.その点MRIの特性の1つとして,各方向での断面像を得ることができるという点があり,矢状面・冠状面を駆使することにより,診断はより正確性を増した.
MRIが無侵襲であるということは,まさに時代の要請である.診断のために,針を刺したり,小さいとはいえ皮切を加えたりし,患者に苦痛を与えることは将来的に原則として消滅するであろう.多少なりとも侵襲的である検査は関節鏡視下手術のごとく,治療効果を持ったもののみが残存すると思われる.
MRIによる画像がさらに鮮明となり,spectroscopyにより,無侵襲に筋肉の代謝まで診断可能となりつつあり,さらにその用途は拡大するであろう.
本書は,MRIが現時点において整形外科領域でどの程度まで有用であるかを示すことができればと願い編集したものである.
1991年9月
守屋秀繁