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書籍詳細

整形外科インフォームドコンセントとパス

整形外科インフォームドコンセントとパス

松井宣夫 他編著

B5判 380頁

定価11,000円(本体10,000円 + 税)

ISBN978-4-498-05450-9

2003年01月発行

在庫なし


 インフォームドコンセントは1957年アメリカで生まれた法律上の言葉で,医師の説明義務に使われ,アメリカを中心に医の倫理,法理として尊重されるようになってきた.わが国では1980年代に医療面で生命倫理という言葉が使われ始め,インフォームドコンセントへの関心がたかまった.1983年医事法学会で医師の説明義務規範が示され,1990年日医の生命倫理懇談会(説明と同意)の報告,1994年に日本病院協会がインフォームドコンセントの院内掲示,入院案内の表記の指針がなされた.わが国では欧米と異なり,人権や自己決定権よりは,医師患者間の信頼関係を築くための重要な原則との考えが強い.1995年医療法改正ではインフォームドコンセントが医師,看護師,薬剤師,理学療法士,作業療法士等の医療担当者は「医療を提供するに当たり,適切な説明を行い,医療を受けるものの理解を得るように努めなければならない.」とされている.
 最近,クリティカルパスが多くの病院で導入されるようになった.クリティカルパスの実施により,患者により良い医療を効率よく提供し在院日数も短縮される.患者の立場からは,入院時パスの説明を受けることにより,医療の流れを理解し安心して医療を受けられる.従来の医療では医師と看護師が主導権を持ち医療を行ってきたが,必ずしも完全な意思の疎通のもとに行われていたとは限らない.1995年の医療法改正により,すべての医療担当者にインフォームドコンセントが徹底することにより,医師と看護師のみならず,薬剤師,理学療法士,作業療法士等それぞれのパートで,パスはインフォームドコンセントに有用であり,その導入により職種間の相互の理解と連携が高まり,医療チームとしての意思の統一が可能となる.平成13年(2001年)4月からの診療報酬改定で急性期特定入院加算の条件の一つに入院診療計画の作成があげられている.これらの点からも多くの病院で独自のクリティカルパスの作成と実行が進められることが予想される.
 さて,高度情報化社会が急速に進展しているわが国において,医師と患者関係が大きく変わりつつある.ITの普及で患者は医療情報の入手が容易となり,むしろ専門外の医師よりも患者の方が病気に詳しい事態もしばしば経験するところである.医師もうかうかしていられない.医療訴訟の多くは情報提供の不足や不充分なインフォームドコンセントに起因することが多い.すべてが契約社会の訴訟の多いアメリカでは,インフォームドコンセントは医師と患者の契約の基本である.残念なことに,わが国は欧米とまったく異なり,医師をサポートする専門的コメディカルスタッフが極めて少ない上に多忙すぎて,充分なインフォームドコンセントが必ずしも徹底していないのが現状である.しかしこのまま手をこまねいているわけにもいかない.病院中で最も多忙と言われている第一線の整形外科医がすべての整形外科的疾患について,適切なインフォームドコンセントを行うだけの知識を100%蓄えることは不可能に近い.
 本書「整形外科インフォームドコンセントとパス」は,これらの多忙なプライマリーケアで働く第一線の整形外科医師の日常診療のために,まさに時宜を得た有力なサポーターと考える.近年整形外科領域の細分化と進歩により,多くの疾患について万遍なく,間違えなく対処することは困難である.本書は細分化,専門化のしわよせを補足するために,救急外傷から慢性疾患に至るまで,可及的に幅広い疾患を網羅した.
 整形外科の代表的疾患について,患者のインフォームドコンセントを得るに必要な疾患の頻度,分類,手術のための解剖と診断のポイント,手術法の概略,治療成績,手術の危険度,合併症,予後,後療法,およびクリティカルパスを図や表を駆使し,可及的に簡潔に記載した.特に,治療成績や合併症に関する文献は現時点で最も権威のあると思われる文献データーに基づいた.インフォームドコンセントに際して,短時間に説明困難な場合には必要なページをコピーするなどして家族も含め後にゆっくり読んでもらい,納得させることも可能である.本書は整形外科臨床医一般のみならず,研修医,看護師,理学療法士,作業療法士等も対象とした.日常臨床の座右の銘となれば幸いである.

2002年11月
編者を代表して
松井宣夫

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目 次

第1部 総論
1.整形外科手術の一般的注意事項  〈松井宣夫,関谷勇人〉
 a.術者の心構えと態度
 b.術前の患者準備
 c.麻酔法の選択
 d.抗生物質の予防的投与
 e.患者の体位
 f.止血帯
 g.患者の皮膚の準備
 h.皮切と軟部組織の処置
 i.骨の処置
 j.ドレーンの留置
 k.創内の洗浄と閉鎖
2.新鮮外傷の処置  〈松井宣夫,関谷勇人〉
 a.外傷一般の処置
 b.整形外科的外傷の処置
3.骨折手術総論(内固定,創外固定,髄内固定)  〈今泉 司〉
 a.内固定剤の種類
 b.内固定剤の形
 c.固定法の種類
4.麻酔に伴う危険性  〈伊藤彰師,勝屋弘忠〉
 a.全身麻酔
 b.脊椎麻酔
 c.硬膜外麻酔
 d.伝達麻酔
 e.高齢者の麻酔
 f.麻酔法別偶発症発生率
5.ペインクリニックにおけるインフォームドコンセント  〈北原雅樹〉
 a.痛みの構成因子と治療モデル
 b.急性痛と慢性痛
 c.集学的ペインクリニックで使用される治療法
 d.ペインクリニックにおける診察時のインフォームドコンセント
 e.神経ブロック施行時のインフォームドコンセント
■インフォームドコンセントの歴史と倫理規定の要約  〈出沢 明〉

第2部 各論
1.鎖骨骨折整復固定術  〈後藤英之〉
2.肩鎖関節脱臼整復固定術  〈杉本勝正〉
3.腱板完全断裂(鏡視下デブリドマン)  〈緑川孝二,原 正文〉
4.反復性肩関節前方(亜)脱臼  〈福島 直,米田 稔〉
5.人工肩関節置換術  〈鈴木一秀,筒井廣明〉
6.肘周辺骨折  〈土屋大志〉
 A.成人上腕骨遠位端骨折
 B.高齢者上腕骨通顆骨折
 C.小児上腕骨顆上骨折
 D.小児上腕骨外顆骨折
7.肘部管症候群  〈関谷勇人〉
8.手関節周辺の骨折  〈関谷勇人〉
 A.橈骨遠位端骨折
 B.舟状骨骨折
9.手根管開放術〔鏡視(下)手術,観血手術〕  〈奥津一郎〉
10.屈筋腱損傷縫合術  〈堀井恵美子〉
11.伸筋腱損傷縫合術  〈西源三郎〉
12.切断指再接着  〈藤 哲,三浦一志,小山内あや子,品川弘子〉
13.頸椎前方除圧固定術  〈川上 守,玉置哲也〉
14.椎弓形成術  〈出沢 明〉
15.脊髄腫瘍  〈三井公彦〉
16.脊柱側彎症  〈川上紀明〉
17.胸椎前方椎間板ヘルニア摘出術  〈出沢 明〉
18.後方腰椎椎間板ヘルニア摘出術  〈 田宗人〉
19.腰椎前方椎体間固定術  〈山縣正庸〉
20.腰部後方除圧術  〈西島雄一郎〉
21.腰椎固定術  〈中井定明〉
 A.後方進入腰椎椎体間固定(PLIF)
 B.腰椎後側方固定(PLF)
22.脊椎腫瘍摘出術  〈村上英樹,川原範夫,富田勝郎〉
23.脊椎周囲感染症手術  〈斉藤正史〉
24.人工股関節全置換術  〈和田孝彦,飯田寛和〉
25.臼蓋回転形成術(骨切り術)  〈村瀬鎮雄〉
26.大腿骨頭壊死に対する骨頭温存手術  〈神宮司誠也,高杉紳一郎〉
27.大腿骨頸部内側骨折  〈安藤謙一〉
28.大腿骨頸部外側骨折  〈有田栄一〉
29.大腿骨骨幹部骨折  〈田中 正,豊根知明〉
30.人工膝関節置換術  〈種田陽一〉
31.膝関節鏡視下滑膜切除術  〈小林正明,松井宣夫〉
32.高位脛骨骨切り術  〈齋藤知行,腰野富久〉
33.膝前・後十字靱帯再建術  〈安達伸生,越智光夫〉
34.膝半月板切除術・縫合術  〈木村雅史〉
35.下腿骨骨折  〈高田直也〉
 A.顆部骨折
 B.骨幹部骨折
36.足関節脱臼骨折  〈申 基定〉
37.アキレス腱縫合術  〈松村重之〉
38.足関節固定術  〈井口 傑〉
39.骨腫瘍
 A.悪性骨腫瘍  〈阿部哲士〉
 B.良性骨腫瘍  〈大塚隆信〉
40.軟部腫瘍
 A.手術療法・化学療法  〈渋谷 勲〉
 B.温熱療法  〈大塚隆信〉
 C.放射線治療  〈大塚隆信〉

■索引

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