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書籍詳細

スタートアップ腹部MRI

スタートアップ腹部MRI

大友 邦 編著

B5判 183頁

定価5,170円(本体4,700円 + 税)

ISBN978-4-498-04086-1

1998年10月発行

在庫なし

腹部MRIをこれから学ぶ人のために,読影に必要な基礎知識から肝,胆,膵,脾,腎,副腎,後腹膜,子宮,卵巣まで臓器別に重要な疾患のMRI診断のポイントを,画像を豊富に盛り込みつつ明快にまとめた入門書.各頁とも見開きにまとめて,どの項目から読むこともできるように構成している.肉眼病理像を多数提示して,画像と病理の対比も理解できるように配慮した.



 1983年に荒木力先生(現山梨医科大学教授)の指導のもとで東芝中央病院に設置されていた0.15テスラの常伝導装置で数例の肝腫瘤性病変の画像を撮像したのが,私にとって肝臓を中心とした腹部領域のMR診断の最初の経験であった.当時は静岡県立総合病院に勤務しており,なかには静岡からわざわざ来て下さった海綿状血管腫の方もおられた.84年4月に東大病院にもどり,導入された直後の0.35テスラの超伝導MR装置の肝臓への臨床応用に従事する機会に恵まれた.板井悠二先生(現筑波大学教授)の指導のもと,T2強調のスピンエコー像でやたらに高信号を呈する海綿状血管腫と肝細胞癌の鑑別診断をテーマとした.84年の北米放射線学会(RSNA)のWork in progressの演題募集の締め切りが迫り,鑑別診断の定量的指標として肝臓と腫瘍の信号強度比,T1値とT2値の3つの選択肢があるなか,TEの異なる2つの画像から計算されたT2計算画像が妙にきれいだったので,とりあえずT2値を計測したところ,80ミリ秒を境にみごとに血管腫と肝細胞癌が分かれてしまった.なんだかきつねにつままれたような気持ちだったが結局このテーマで北米放射線学会で3回発表することができ,その後医学博士も取得することができた.緩和時間のなんたるかもろくに理解していない私としては当時を振り返るとまさに冷や汗ものであるが,黎明期だから許されたことなのかもしれない.その後のMRIのハード・ソフト両面の進歩にはまさに目を見張るものがあり,ここ2〜3年間だけでも,夢の撮像法といわれたecho planar imagingを中心とした様々な高速撮像法,その臨床応用である拡散強調画像,functional MRI,そしてMR hydrography,高速撮像法の欠点を補うphased array coil,そして肝臓を主な対象とした臓器特異性をもったMR造影剤が次々と臨床に導入されている.
 このような背景のもと,腹部領域のMR診断のテキストも従来のスピンエコー法で得られた画像を中心にMRIのコントラスト分解能を強調する第1世代から,先に述べた様々な新技術によって得られるX線CTに匹敵する空間分解能を有する画像を中心とした第2世代へと移行する必要があるとの認識に基づいて企画執筆されたのが本書である.したがって婦人科領域を含めた腹部臓器の正常解剖と代表的な疾患について,可能なかぎり最新の画像をもとに病理標本との対比を行いながら解説することに主眼がおかれている.本書をとおして一人でも多くの方が,腹部領域のMR診断に精通し,他の様々な画像診断法との使い分けに関する基準を構築されれば幸甚である.
 おわりに,本書の企画,校正などすべての面で御世話になった中外医学社小川孝志さんと高橋洋一さんに深謝する.

1998年7月
大友 邦

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目 次

1 読影に必要な基礎知識
 1.主な撮像法の特徴  〈大友 邦〉
  1.spin echo(SE)法とfast spin echo(FSE)法
  2.gradient echo(GRE)法
  3.脂肪抑制法の原理と有用性
 2.MR hydrography  〈市川智章〉
  1.原 理
  2.撮像パルス系列
  3.臨床的有用性
 3.echo planar imaging  〈岡田吉隆〉
  1.原 理
  2.特 徴
  3.症 例
 4.MR造影剤  〈大友 邦〉
  1.非特異的細胞外液分布型
  2.肝特異性造影剤
  3.経口消化管造影剤
 5.実際の検査法: 上腹部,骨盤  〈大友 邦〉
  1.検査の基本的枠組み
  2.上腹部
  3.骨 盤
 6.生体を構成する成分の信号強度と背景因子  〈大友 邦〉
  1.石灰化
  2.金 属
  3.脂 肪
  4.軟部組織
  5.血管外の血液(血腫)
  6.血液以外の液体
  7.血 流
  8.主な臓器の腫瘤性病変の信号強度と病理組織

2 肝 臓
 1.正常解剖  〈岡田吉隆〉
 2.脂肪肝  〈岡田吉隆〉
 3.鉄沈着症  〈岡田吉隆〉
 4.重症肝炎  〈岡田吉隆〉
 5.肝硬変  〈岡田吉隆〉
 6.肝嚢胞(典型例,非典型例)  〈岡田吉隆〉
 7.肝膿瘍  〈岡田吉隆〉
 8.炎症性偽腫瘍  〈大友 邦〉
 9.限局性結節性過形成  〈岡田吉隆〉
 10.肝腺腫  〈岡田吉隆〉
 11.肝海綿状血管腫(典型例・小さいもの)  〈岡田吉隆〉
 12.肝海綿状血管腫(典型例・巨大なもの)  〈岡田吉隆〉
 13.肝海綿状血管腫(非典型例)  〈岡田吉隆〉
 14.単結節型肝細胞癌  〈岡田吉隆〉
 15.早期肝細胞癌・過形成結節  〈岡田吉隆〉
 16.塊状型肝細胞癌  〈大友 邦〉
 17.びまん型肝細胞癌  〈岡田吉隆〉
 18.肝細胞癌の治療後の変化  〈岡田吉隆〉
 19.胆管細胞癌  〈岡田吉隆〉
 20.乏血性転移性肝腫瘍  〈岡田吉隆〉
 21.多血性転移性肝腫瘍  〈岡田吉隆〉
 22.非上皮性悪性腫瘍  〈大友 邦〉
 23.血管性疾患  〈岡田吉隆〉

3 胆 道
 1.正常解剖  〈市川智章〉
 2.胆嚢結石,胆嚢炎  〈市川智章〉
 3.膵管胆管合流異常症  〈市川智章〉
 4.胆嚢腺筋症  〈市川智章〉
 5.小さな胆嚢癌  〈市川智章〉
 6.進行した胆嚢癌  〈市川智章〉
 7.胆管結石  〈市川智章〉
 8.胆管癌(乳頭結節型)  〈市川智章〉
 9.胆管癌(浸潤型)  〈市川智章〉
 10.総胆管嚢腫  〈市川智章〉

4 膵 臓
 1.正常解剖  〈市川智章〉
 2.急性膵炎  〈市川智章〉
 3.腫瘤形成性膵炎  〈市川智章〉
 4.慢性膵炎,仮性嚢胞  〈市川智章〉
 5.漿液性嚢胞腺腫  〈大友 邦〉
 6.粘液嚢胞腺腫・腺癌  〈市川智章〉
 7.粘液産生性腫瘍  〈市川智章〉
 8.小さな膵癌  〈市川智章〉
 9.進行した膵癌  〈市川智章〉
 10.膵島細胞腫  〈市川智章〉
 11.solid and papillary epithelial neoplasm (solid and cystic tumor: SCT)〈市川智章〉

5 脾 臓
 1.正常解剖  〈大友 邦〉

 2.多脾症  〈大友 邦〉
 3.脾 腫  〈大友 邦〉
 4.脾臓の嚢胞性腫瘤  〈大友 邦〉
 5.脾臓の充実性腫瘤(1)  〈大友 邦〉
 6.脾臓の充実性腫瘤(2)  〈大友 邦〉

6 腎,副腎,後腹膜
 1.正常解剖  〈赤羽正章〉
 2.馬蹄腎  〈赤羽正章〉
 3.腎嚢胞  〈赤羽正章〉
 4.重複腎盂尿管(水腎症)  〈赤羽正章〉
 5.炎症性腎腫瘤  〈赤羽正章〉
 6.腎細胞癌  〈赤羽正章〉
 7.腎血管筋脂肪腫  〈赤羽正章〉
 8.嚢胞性腎腫瘍  〈赤羽正章〉
 9.副腎腺腫  〈可知謙治〉
 10.褐色細胞腫  〈可知謙治〉
 11.転移性副腎腫瘍  〈可知謙治〉
 12.神経芽細胞腫  〈可知謙治〉
 13.腹部大動脈瘤  〈可知謙治〉
 14.リンパ節転移  〈可知謙治〉

7 子宮,卵巣,腹膜腔
 1.正常解剖  〈宮澤昌史〉
 2.子宮筋腫  〈宮澤昌史〉
 3.子宮腺筋症  〈宮澤昌史〉
 4.子宮頚癌  〈宮澤昌史〉
 5.子宮体癌  〈宮澤昌史〉
 6.子宮肉腫  〈宮澤昌史〉
 7.内膜症性嚢胞  〈宮澤昌史〉
 8.卵巣奇形腫  〈宮澤昌史〉
 9.漿液性嚢胞腺癌  〈宮澤昌史〉
 10.卵巣粘液性嚢胞腺腫  〈可知謙治〉
 11.卵巣癌  〈可知謙治〉

付 録
 1.主なメーカーの画像付帯情報の解読法  〈大友 邦〉
 2.読影に必要なMRI略語集  〈赤羽正章〉

索 引

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