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書籍詳細

小児薬物療法ハンドブック

小児薬物療法ハンドブック

吉田一郎 編著

A5判 570頁

定価7,480円(本体6,800円 + 税)

ISBN978-4-498-04588-0

2002年01月発行

在庫なし

小児に対して薬を使用する際に必要な知識を実践的に解説した臨床書である.成人と違って注意すべき点,有効性・安全性を踏まえて用量・用法をどのように行うか,副作用,併用療法の注意についてなどを,現在得られているデータ,EBMに基づいて実際に役立つように示している.総論として基本的な知識を解説した後,薬効分類別にその考え方・作用・適応・有効性と安全性・使用法・副作用・禁忌・相互作用・注意点等を具体的に記載した.正しい小児薬物療法の啓蒙書であると同時にベッドサイドマニュアルとして役立つことを目的とした画期的な書である.



 小児の薬物療法は小児医療の中核をなすものである.しかし,成人に比し,適応や用量が明記されず(オフラベル使用),製薬会社も非採算性のため,関心をもつことが少なかった.40年もの昔のShirkeyのTherapeutic Orphanは今なお小児医療における新しい課題である.
 明日の世界を担う小児医療のこのような現状を打破するため,1997年,クリントン米国前大統領の声明をきっかけに,小児の薬物開発の国際的な共同作業が進行中である(ICH topic E 11).我が国では大西鐘壽日本小児臨床薬理学会運営委員長の御尽力により,オフラベル使用の問題が行政レベルで取り上げられ,松田一郎日本小児科学会薬事委員長のもと,新しい小児の薬物開発ガイドラインも作成された.今後は米国のPPRU(Pediatric Pharmacology Research Unit)のようなネットワーク作りが必要であろう.
 この本は2000年秋に久留米市で開催させていただいた第27回日本小児臨床薬理学会の開催に間に合わせて出版する予定であったが,刊行が大幅に遅れてしまった.早くから素晴らしい原稿を届けてくださった執筆者の方々には,申し訳ない気持ちでいっぱいである.しかし,お届け下さった原稿に目を通させていただくと,いままでにない本当に有用な小児の薬物ハンドブックができたと自負するものである.欧米にもこのような本はないと思う.
 小児の臨床薬理学(発達薬理学)は成人の臨床薬理学にはない,発達という視点からのダイナミズムがあり,多くの魅力にあふれている.成人の臨床薬理学よりも,専門的な知識を要するレベルの高い領域といえよう.この本を読まれた若い方々が,発達薬理学に関心をもち,EBMによる小児の薬物治療を確立して欲しいと願っている.
 この本は日本小児臨床薬理学会の生みの親である吉岡 一先生ならびに私に発達薬理学だけでなく,医学教育学,先天性代謝異常症,小児栄養,新生児スクリーニング,トータルケア,行動科学的アプローチ,POSなどの新しい医療,海外医療協力など多くのコンセプトを植え込んで下さった恩師,山下文雄先生に捧げるものである.
 お世話になった中外医学社の荻野邦義氏ならびに上村裕也氏には貴重なコメントを頂いた.
 最後に,盆や正月,土日もなく,ワーカホリックでほとんど家庭を顧みる余裕がなく,毎日,深夜帰りのbad husbandに少ししか不平をいわなかった妻ひでみにも感謝したい.

2001年10月
吉田一郎

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目 次

I.総 論
1.EBMと薬物療法  <吉田一郎>
  1.テーラーメイド医療
  2.EBMにおける治療評価
  3.P-drugをどのようにして決定するか
  4.薬物情報をどのように入手するか
2.こどもの臨床薬理  <中村秀文>
  1.薬の吸収と初回通過効果
  2.薬の分布と蛋白結合率
  3.薬の代謝
  4.薬の腎臓からの排泄
  5.肝機能低下時の薬物投与
  6.腎機能低下時の薬物投与
3.小児臨床薬理学者の役割  <中村秀文>
  1.薬の臨床試験/薬物動態学・薬力学の研究
  2.臨床コンサルテーション
  3.EBM(Evidence-based Medicine)の実践
  4.小児臨床薬理学の啓蒙/教育
  5.小児臨床薬理学スタッフの育成
4.Therapeutic Drug Monitoring(TDM)  <石崎高志>
  1.小児科領域におけるTDMの必要性
  2.血中薬物モニターにおいて必須となる臨床薬物動態理論
  3.対象薬物とその適応クライテリア−どんな薬物でどんな時か
  4.薬物血中濃度測定の意義
  5.薬物血中濃度解釈上の注意
  6.TDMの落とし穴
  7.TDMの我が国における保険適用
5.妊娠・授乳中の薬物治療  <伊藤真也>
  1.妊娠中の薬物治療
  2.授乳時の薬物治療
6.こどもの薬の上手なのませ方  <木下博子>
  1.薬はどうやってのませるの?
  2.のみづらい薬はどうやってのませればいいの?
7.薬理遺伝  <田上昭人>
  1.薬物代謝の遺伝的要因
  2.薬物反応性の遺伝的要因
8.薬の副作用  <伊藤 進>
  1.薬の副作用の定義
  2.薬の副作用の分類と重篤度
  3.こどもと薬の副作用
  4.薬の副作用と症状
9.新薬の開発をどう行うか  <辻本豪三>
  1.薬理ゲノミックス
  2.ゲノム創薬
  3.SNPとテーラーメイド医療
  4.今後の小児臨床治験

II.各 論
1.救急蘇生薬  <安次嶺 馨>
  小児の心肺蘇生の特徴
  救急蘇生薬使用の基本的考え方
  蘇生薬の使用法
  蘇生薬使用時の注意
2.解毒剤  <市川光太郎>
  解毒剤使用時の臨床医学的条件
  解毒剤の種類と投与法
3.静脈栄養輸液剤  <山東勤弥,岡田 正>
  基本輸液(糖・電解質液)
  アミノ酸製剤
  脂肪乳剤
  ビタミン
  微量元素
4.経腸栄養  <雨海照祥>
  小児の栄養療法の目標設定と介入
  栄養療法の効果判定の構成項目
  栄養アセスメントの横軸と縦軸
  経口摂取の構成要素
  小児における経腸栄養法の意義
  特殊栄養素の吸収機序
  主な経腸栄養剤の組成
  特殊病態の経腸栄養
5.皮膚外用薬(ステロイド外用剤)  <山本一哉>
  外用剤使用の基本的考え方
  揃えると便利な外用剤
  ステロイド外用剤の現況
  日本皮膚科学会による「アトピー治療ガイドライン1999」
  スキンケア
6.眼科用薬  <山川良治>
  眼組織の特異性
  点眼液・眼軟膏の小児に対する安全性
  点眼について
  投与方法について
  小児に特有の眼疾患
7.全身麻酔・局所麻酔・鎮痛薬  <田村高子>
 全身麻酔薬
  全身麻酔薬使用の基本的考え方
  全身麻酔薬の薬理作用
  全身麻酔薬(全身麻酔)の適応
  有効性と安全性からの全身麻酔薬の選択
  全身麻酔薬の使用法と使用時の注意
 吸入麻酔薬
  静脈麻酔薬
  局所麻酔薬
  局所麻酔薬使用の基本的考え方
  局所麻酔薬の薬理作用
  有効性と安全性からの局所麻酔薬の選択
  局所麻酔薬の使用法
  小児への局所麻酔薬使用時の注意
  局所麻酔薬中毒
 鎮痛薬
  小児の疼痛管理と鎮痛薬使用の基本的考え方
  鎮痛薬の選択
  使用法と注意
8.解熱薬  <吉田一郎>
  解熱薬使用の基本的考え方
  解熱薬の薬理作用
  解熱薬の適応
  有効性と安全性からの解熱薬の選択
  解熱薬の使用法
  解熱薬使用時の注意
9.呼吸器用薬,アレルギー薬  <岩田 力>
 呼吸器用薬
  呼吸器用薬使用にあたっての基本的な考え方
  呼吸器用薬の薬理作用
  鎮咳薬
  去痰薬
  気管支拡張薬
 アレルギー薬
10.循環器系用薬  <門間和夫>
  慢性心不全の治療用の利尿薬
  ジギタリス薬
  血管拡張薬
  高血圧の降圧薬
  抗不整脈薬
  動脈管作動薬
11.神経系用薬  <山下裕史朗>
 抗てんかん薬
  てんかんの発作型分類とてんかん類型診断の重要性
  抗てんかん薬使用の基本的考え方
  抗てんかん薬をいつ始めるか
  血中濃度モニタリングの意義と評価
  抗てんかん薬をいつ中止するか
  熱性痙攣の薬物治療
  痙攣重積の薬物治療
 頭痛薬
  頭痛の診断と評価
  頭痛の発症機序
  頭痛の薬物治療
 脳圧降下剤
  頭蓋内圧亢進の臨床症状と原因
  脳浮腫
  頭蓋内圧亢進の治療
 小児の鎮静薬
12.向精神薬とその近縁の薬  <星加明徳,宮島 祐,武隈孝治>
  向精神薬とその近縁の薬を使用する際の基本的考え方
13.腎臓用薬  <軍神香美>
 利尿剤
  利尿剤使用の基本的考え方
  利尿剤の作用部位への到達機序および薬理作用
  薬物動態
  利尿剤の耐性
  利尿剤の適応
  副作用
  利尿剤使用時の注意(他剤との相互作用)
  利尿剤の使用法
  ループ利尿薬
  サイアザイド系利尿薬
  カリウム保持性利尿薬
  浸透圧利尿薬
  炭酸脱水素酵素阻害剤
 電解質剤
  電解質剤の基本的考え方
  輸液用電解質剤
  内服用電解質剤
14.内分泌用薬  <横谷 進>
15.糖尿病・低血糖治療薬  <浦上達彦>
 糖尿病治療薬
  糖尿病の治療の基本
  1型糖尿病の治療薬
  2型糖尿病の治療薬
 低血糖治療薬
  低血糖症の分類
  低血糖症の治療
16.先天代謝異常症治療薬  <大浦敏博>
  アミノ酸・有機酸代謝異常症治療薬
  ライソゾーム治療薬
  金属代謝異常症治療薬
  トランスポーター異常症治療薬
  プリン代謝異常症治療薬
  ビタミン依存症治療薬
  アシドーシス・酸性尿治療薬
17.貧血治療・造血薬  <吉田信之,宮崎澄雄>
18.出血・凝固異常治療薬  <白幡 聡>
19.抗腫瘍薬  <久保田 優>
  抗癌剤使用の基本的考え方
  抗癌剤の薬理作用
  抗癌剤の使用法
  抗癌剤の副作用
  利用するにあたって
20.消化器用薬  <小林昭夫>
21.抗菌薬,抗真菌薬  <津村直幹>
 抗菌薬
  小児に使用される主な抗菌薬
  小児の代表的な細菌感染症
  疾患別抗菌薬選択の考え方と実際
 抗真菌薬
  小児に使用される主な抗真菌薬
  代表的な真菌感染症の治療例
22.抗ウイルス薬  <後藤泰浩,森島恒雄>
  抗ウイルス薬使用の基本的考え方
  抗ウイルス薬の薬理作用
  抗ウイルス薬の適応
23.抗寄生虫薬  <山口真也,中村安秀>
  小児科領域における寄生虫疾患
  蟯虫症
  先天性トキソプラズマ症
  マラリア
  ランブル鞭毛虫症
24.リウマチ・膠原病薬,免疫調整薬  <藤川 敏>
  リウマチ・膠原病薬の基本的な考え方
  薬剤の作用機序
  適応
  禁忌と副作用
25.ワクチン,予防接種  <神谷 齊>
  予防接種の基本的考え方
  予防接種の種類と接種期間
  ワクチンの考え方
  各論
26.漢方薬の小児に対する使用法  <春木英一>
  漢方薬使用の基本的考え方
  漢方の薬理作用
  漢方薬の適応
  有用性と安全性からの漢方薬の選択
  漢方薬の使用方法
  漢方薬使用時の注意

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