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書籍詳細

十二指腸内視鏡ハンドブック

基本からERCP・膵管内視鏡まで

十二指腸内視鏡ハンドブック

田尻久雄 著

B5判 166頁

定価14,740円(本体13,400円 + 税)

ISBN978-4-498-04150-9

1996年04月発行

在庫なし


 この度田尻久雄博士の労作“十二指腸内視鏡ハンドブック  基本からERCP・膵管内視鏡まで”が上梓されるにあたり,その序文を書かせていただくことは,私にとって非常な喜びであり,また大変光栄に思う次第である。
 まず最初にこの度の上梓に対し、心からお祝いを申し上げるとともに,あらためて同君のこの間のご労苦に対し,敬意を表させていただきたい。
 同君と私とは,私が防衛医科大学校教授在職中,無理にお願いして国立がんセンター中央病院から第2内科講師として赴任していただき,昨年私が同校を定年退官するまでの数年間,共に研究にあたってきた間柄である。
 同君は昭和51年に北海道大学医学部を卒業後,臨床研修を経て,昭和52年より癌研究会付属病院にて消化管X線診断学,ついで昭和56年からは国立がんセンター中央病院内視鏡部において消化管内視鏡の研鑚を積まれたが,この頃より膵領域の研究に興味をもたれ,今回の上梓の基礎はすでにその頃築かれたものとも言える。防衛医科大学校においては消化管内視鏡全般に加えて,特に膵胆領域のグループのチーフとして臨床、研究とともに研修医,学生の教育にも熱心にあたってこられた。
 同君は国立がんセンター,防衛医科大学校を通じて,消化管全般に亙っての幅広い臨床的研究を始めとして,腫瘍親和性物質を用いたレーザー内視鏡による癌の蛍光診断と治療,早期胃癌の内視鏡的治療の適応を巡る細かい検討,その手技の開発改良,さらには本書の大きい部分をなす膵疾患の研究に熱心にあたられ,特に膵癌の発育速度と進展様式,実験膵癌による発癌初期像の解明,加えて膵管内視鏡の開発,その臨床応用に積極的にあたられ,この領域に関して国内外の学会で発表された独創的な研究は数多く,いずれも高い評価を得ているのは周知のごとくである。
 本書の内容は同君の長年にわたる一連の臨床的研究の成果に基づくもので,いま改めてこの間の同君の熱心かつ真摯な研究態度が思い起こされる。防衛医科大学校では平日は午後11時45分まで図書館が開館されているが,研究の合間を縫って,毎夜閉館近くまで,同君が図書館で熱心に文献を探索され,検討を続けられていた姿を懐かしく思い出す。
 この度の本書の上梓は,これまであまりまとまった書物のなかった,十二指腸から膵さらに胆に焦点をあて,一冊にまとめられたもので,まことに時宜を得たものと思っている。
 本書の各章は,大きく十二指腸内視鏡検査,ERCP,膵管内視鏡,胆道疾患に対する内視鏡的アプローチに分けられ,まずこの領域の基礎となる十二指腸内視鏡検査についてその基本が説明され,かなり珍しい症例にも触れた後,同君のもっとも得意とする膵・胆の内視鏡検査の実際が述べられている。いずれも,厳選された豊富な症例について精緻な写真と共に,詳細なシェーマが付され,簡にして要を得た記述で具体的に分りやすく解説されている。形態学を通して,疾患の病態解明と生物学的特性まで明らかにしたいというのが,同君を含め私共の哲学であるが,その考えがこの書物にもよく発揮されていると言えよう。
 昨年同君は,防衛医科大学校から国立がんセンター東病院内視鏡部長という大変責任ある重職に栄転され,ここでまた大勢の医局員と共に,より高い立場から消化管疾患の幅広い臨床に当たるとともに,この領域の臨床的,実験的研究に一層励まれることとなった。ご承知のごとく同病院はがん研究のメッカであり,ここでまた同君が水を得た魚の様にますます発展されることを期待している。
 今回の本書の上梓は,同君にとって,これまでの一連の臨床的研究の成果の決算であるとともに,また新たな研究の進展をめざしての一里塚とも言うべきものであって,同君のこれまでの臨床的研究成果のエッセンスを皆さんとともに本書で勉強できることは大変な幸せだと思っている。
 是非とも本書を日常診療の場で有効に役立たせていただきたいと願っている。また同時に同君の新任地,国立がんセンター東病院における益々のご精進を期待して,本書の序文とさせていただく。

1996年3月
帝京大学客員教授 丹羽 寛文

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はじめに
 著者が“膵CT・ERCP読影の実際”(森山紀之博士と共著)を出版してから6年たった。この間の内視鏡を含む機器の進歩と新しい手技の導入により,画像診断も変遷してきている。内視鏡についてはファイバースコープと電子内視鏡とが共存する時代から電子内視鏡が主流となりつつある。細径膵管内視鏡の臨床応用も定着化し,最近では細径プローブによる胆管・膵管内超音波検査も応用され,さらに膵液を用いた遺伝子解析による早期膵癌診断の可能性も模索されている。十二指腸内視鏡検査とくにERCPを基本とした手技の工夫とこの分野における機器開発・改良は今後もますます進歩し,より微細で正確な診断学が確立していくものと思われる。
 本書では十二指腸内視鏡検査の基本的事項として検査方法,各病変の所見の読み方について内視鏡画像を主体に解説した。ERCP,膵管内視鏡についても実際に遭遇する機会のある疾患を図説した。本書が読者にとって十二指腸内視鏡検査の基本と典型的症例を理解するためのお役に立てば幸いである。
 著者が防衛医科大学校第2内科勤務中,内視鏡学を御指導いただき,本書の執筆の機会を与えて下さった丹羽寛文前教授(現帝京大学客員教授)に深く感謝致します。研究協力いただいた防衛医科大学校第2内科の消化器グループの諸先生,臨床研究に対して御指導と御支援をいただいた前国立がんセンター中央病院内視鏡部長小黒八七郎先生,国立がんセンター東病院吉田茂昭副院長ならびに国立がんセンターの諸先生に心から感謝致します。また,貴重な症例を提供して下さった須賀俊博先生をはじめとする諸先生の御厚意に感謝します。企画の最初から不慣れな著者に御助言と編集の労を惜しまず尽力いただいた中外医学社の荻野邦義氏,上村裕也氏に深甚の謝意を表します。

1996年3月
田尻久雄

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目 次

1章 十二指腸内視鏡検査
 A.十二指腸の解剖
 B.十二指腸潰瘍
   (1)十二指腸潰瘍の内視鏡検査法
   (2)球部内の観察
   (3)十二指腸潰瘍の型
   (4)AGMLに伴う十二指腸びらん
   (5)double pylorus
 C.十二指腸炎
   (1)内視鏡診断
   (2)十二指腸球部にみられる血管透見像
 D.CROHN病の上部消化管病変
 E.放射線照射による潰瘍
 F.十二指腸乳頭
  1.傍乳頭憩室
  2.総胆管十二指腸瘻
  3.乳頭炎
  4.乳頭開口部からの出血
  5.膿性胆汁の排泄
  6.口側隆起の腫大
  7.粘液産生膵腫瘍にみられる乳頭部の腫大
  8.乳頭部癌
   (1)発見,診断の契機
   (2)内視鏡診断
   (3)腺腫との鏡別診断
  9.乳頭部腺腫
 G.良性隆起性病変
  1.リンパ濾胞過形成
  2.過形成性ポリープ
  3.BRUNNER腺腺腫
  4.異所性胃粘膜
  5.管状腺腫
  6.家族性大腸ポリポーシスに伴う管状腺腫
  7.管状絨毛腺腫
  8.粘膜下腫瘍(嚢腫)
  9.脂肪腫
  10.迷入膵
 H.十二指腸悪性病変
  1.十二指腸癌
  2.カルチノイド
  3.平滑筋肉腫
  4.悪性リンパ腫
  5.転移性腫瘍
  6.膵癌の十二指腸浸潤
  7.胆道癌の十二指腸浸潤
  8.幽門部胃癌の十二指腸浸潤

2章 ERCP
 A.適応と禁忌
 B.前準備
   (1)インフォームドコンセント
   (2)術前検査
   (3)前処置
   (4)器具
 C.スコープの挿入
 D.カニュレーション
 E.造影
 F.偶発症と予防
 G.読影の基礎
  1.正常の膵,胆道像
  2.膵管癒合不全
  3.膵胆管合流異常
  4.先天性胆道拡張症
  5.慢性膵炎
  6.外傷性膵炎
  7.膵癌
  8.粘液産生膵腫瘍
  9.膵嚢胞
  10.内分泌腫瘍
  11.solid cystic tumor
  12.胆石症
   [胆嚢結石]
   [総胆管結石]
   [肝内結石]
  13.胆嚢の良性隆起性病変
  14.胆嚢腺筋腫症
  15.胆道癌
   [胆嚢癌]
   [胆管癌]
  16.良性胆管狭窄
   [MIRIZZI症候群]
   [原発性硬化性胆管炎]
   [慢性膵炎や膵嚢胞による胆管狭窄]
   [その他]
  17.内胆汁瘻
 H.膵癌の組織診断,癌遺伝子診断

3章 膵管内視鏡
 A.機種および手技
 B.膵管内視鏡所見
  1.正常膵管
  2.慢性膵炎
  3.膵癌
  4.粘液産生膵腫瘍
 C.画質,操作性の向上に対する改良,工夫
 D.膵癌の診断に対する本検査法の意義

4章 胆道疾患に対する内視鏡的アプローチ
 A.内視鏡的乳頭括約筋切開術
   (1)方法
   (2)合併症
 B.胆石砕石術
 C.内視鏡的減黄術
 D.経口的胆管鏡

索引

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